第3章 システムダイナミックス

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第3章 システムダイナミックス
京都大学大学院情報学研究科
社会情報学専攻
守屋 和幸
Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved.
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システムダイナミックスとは
 1950年代後半にマサチューセッツ工科大学
のフォレスター(J.W.Forrester)が工学分野
で用いられていたシステム分析の手法を、経
営学や社会科学の分野でのシステムの動的
な解析に利用するために開発した数値シミュ
レーションの手法の1つ
 種々の要因が相互に関連している複雑なシス
テムのシミュレーションや分析に有効なツール
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種々のシミュレーション技法
 決定論的シミュレーション
数学モデルのもとで、種々の入力条件に対応した出
力結果をシミュレートする技法
 モンテカルロ法
シミュレーションの過程の中で確率分布に従った変動
を考慮した技法
 マルチエージェントシミュレーション
それぞれ異なった判定アルゴリズムなどの特徴を
持ったエージェントモデルを用い、複数のエージェント
を設定し、与えたモデル(社会システム等)の中で
エージェントの相互作用をシミュレートする技法
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システムダイナミックスとマルチエージェント
シミュレーション
 システムダイナミックス
システムダイナミックスでは、システム全体の動的な
変化を概括的に(マクロに)とらえ、要素間の関連性を
検討する手法。
 マルチエージェントシミュレーション
社会システムの中での個人の意思決定などをエー
ジェントモデルで与えることにより、微視的(ミクロ)な
状況のシミュレーションが可能となる。個々のエー
ジェントの活動を反映したシステム全体の動的な変
化を検討することが可能。
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環境問題の分析に応用すると・・
 生態系を構成するいくつかの要因や人間の営みなど
を考慮し、指標となる物質(地球温暖化の原因物質
のひとつと考えられる二酸化炭素など)の流れに注目
したひとつの社会モデルを構築する
 作成したモデルでSDを実行することにより、要因間
の関連性や指標とした物質の流れを単に数値だけで
なく、グラフなどにより視覚的にも把握することができ
る
 いくつかのシナリオに対するSDの実行結果を比較・
検討することが容易に行えるので、意思決定や施策
検討のツールとして活用できる
※SD:System Dinamics(システムダイナミックス)
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アプリケーションソフトウェア
 STELLA(isee systems社製)
STELLAはSDの代表的なアプリケーションソフトであ
り、非常に分かりやすいグラフィカルユーザインター
フェイスを備えている(有償)
 Vensim
教育目的での使用が無償
STELLAとほぼ同じような機能が用意されている
http://www.vensim.com/software.htmlから
入手できる
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モデル記述の要素
 ストック(stock)
物を溜める容器に相当
 フロー(flow)
ストックへの流入、あるいはストックからの流
出を制御するバルブに相当
 コンバーター(converter)
ストック、フロー以外の要素で、補助変数や定
数を定義するために用いられる
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ストック、フロー、コンバータの記号
ストック
コンバータ
フロー
これらの要素を組み合わせて、モデルを組
み立てる。要素間の情報の流れを記述する
ために、コネクター(connector)を用いるこ
ともある
※コネクターは→で表し、始点から終点への
情報の流れを表現する
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複利計算モデル
利子収入
預金利率
 ストック:預金額
 フロー: 利子収入
 コンバータ:預金利率
図中赤の矢印線がコネクター
預金額
年
預金額(円)
0
10,000.00
1
10,500.00
2
11,025.00
3
11,576.25
4
12,155.06
5
12,762.82
預金額の初期値を10,000円、
預金利率を5%とした場合の結果
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複利計算の流れ
 ストック「預金額」の関係式
預金額(t)=預金額(t-dt)+利子収入*dt
 時間間隔(dt)を1年として、モデルを実行した場合
 1年後
預金額(1)=預金額(1-1)+利子収入*1
=預金額(0)+利子収入
利子収入=更新前のストックの状態*預金利率
=預金額(0)*0.05=10,000*0.05=500
預金額(1)=10,000+500=10,500
 2年後は、同様に計算すると
利子収入=10,500*0.05=525
預金額(2)=預金額(1)+利子収入=10,500+525=11,025
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正のフィードバックループ(1)
利子収入
預金額
預金額増加→利子収入増加→預金額
増加→利子収入増加・・・・
このように、一方が増加すると他方も
増加する関係にある。
預金利率
⇒この関係を正のフィードバックループ
と呼ぶ
 ストック「預金額」の状態が、フロー「利子収
入」に反映される。
 「預金額」多くなるほど、「利子収入」は増加し、
結果的に「預金額」がさらに増加する。
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正のフィードバックループ(2)
 正のフィードバックループは、要素間で変化の
方向が同じループ構造を意味している
 一方が減少すると他方も減少する場合も正の
フィードバックループである
 2つの要素間だけでなく、複数の要素間で連
続した正のフィードバックループも存在する
昇給
+
勤労意欲の上昇
+
業績の向上
+
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浴槽モデル
蛇口
浴槽
このモデルでは、目標レベルを設
定し、水位差に応じて蛇口からの
流入量を変化させる。
水位差が小さくなるほど、蛇口から
の流入量は減少する。
水位差
目標レベル




コンバーター「目標レベル」 :設定値 100リットル
ストック「浴槽」:初期値=0リットル
コンバーター「水位差」⇒水位差=目標レベル-浴槽
フロー「蛇口」 :蛇口=水位差*0.4
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浴槽モデルの実行結果
時間の経過とともに、浴槽
の水位の増加量が次第に
減少する。
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12
⇒フロー「蛇口」からストッ
ク「浴槽」への流入量が
(目標レベル-浴槽内の
水位)×0.4で与えられて
いるので、浴槽内の水位
が上昇するほど、目標レ
ベルとの差が小さくなり、
結果的に「蛇口」からの流
入量が低下する。
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負のフィードバックループ
 負のフィードバックループは、要素間で変化の
方向が反対となるループ構造を意味している
 一方が減少(増加)すると他方は増加(減少)
する
 浴槽モデルの場合、ストック「浴槽」の値が増
加するにつれ、目標レベルとの水位差が小さ
くなり、フロー「蛇口」から「浴槽」への流入量
が次第に減少する
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因果ループ図
 SDで検討する要素間の相互関係を図式化したもの
 全体としてシステムが正のフィードバックループを構
成するか、負のフィードバックループを構成するかの
判断材料になる
 2要素間の関係が正(両者が同じ方向に反応)なら+
を、また、負(両者が反対方向に反応)ならーを割り当
てる
 ーの数が奇数なら全体として負のフィードバックルー
プ、偶数なら全体として正のフィードバックループとな
る
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因果ループ図の例(1)
ー全体として正のフィードバックループー
昇給
+
勤労意欲の上昇
+
業績の向上
+
 昇給により勤労意欲が上昇(+)
 勤労意欲の上昇により業績が向上(+)
 業績が向上したことによりさらに昇給(+)
この例では、+が3、-が0なので全体として正
のフィードバックループとなる
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因果ループ図の例(2)
ー全体として負のフィードバックループー
+
サークル入会者
サークル会員数
-
+
サークル非会員
+
 サークル会員数が増えると、サークル非会員数は減少する(-)
 サークル非会員数が減るとサークル入会者数も減る(+:同じ方向
に反応するので)
 サークル会員数が増えると勧誘活動が活発になってサークル入
会者も増える(+)
 +が3つ、-が1つなので、全体としては負のフィードバックループ
となる
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因果ループ図の例(3)
ー全体として正のフィードバックループー
-
+
未処理の課題
作業量
新規の課題
+
+
作業の能率
ストレス
-
 この例だと、-が2つ(偶数)なので、全体としては正のフィードバッ
クループとなる
 未処理の課題がたまれば、ストレスがかかる(+)。ストレスが大き
くなると作業能率は低下する(-)。作業能率が低下すると、作業
量も低下する(+)。作業量が低下すると未処理の課題がたまる
(-)。
 結果的に、この因果ループでは未処理の課題がたまり続けること
になる(正のフィードバック)
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豊かな自然環境を活用した
地域活性化モデル の構築
SDの例題
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シナリオ
 対象とする地域Aでは、豊かな自然環境を活用した
農林水産業や観光業が地域産業の主体となっている。
 地域Aを訪れる観光客は豊かな自然環境の中での
種々の活動を楽しみにしており、観光業は地域の活
性化に大きな貢献を果たしている。
 一方、多くの観光客を誘致するためにリゾート開発な
ども行われ、そのことが地域経済の活力となっている。
 しかしながら、過度の開発は環境破壊の要因になり、
訪れる観光客が増加すると自然環境には種々の負
荷がかかる。
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シナリオを基にした検討課題
 「自然環境の豊かさ」、「観光魅力度」および
「地域活力度」の関係についてSDを用いて検
討してみる。
 観光客が増加することで環境負荷が高まるこ
とを表わす要因として「観光による負荷」、観
光客の誘致を促すための要因として「リゾート
開発」を加えてみる。
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SDモデルの仮定
 「地域活力度」が増すと、自然環境の保全の
ための努力が促される。
 「観光魅力度」が増加すると、「地域活力度」が
増加し、反対に「観光魅力度」が減少するとそ
れに伴い、「地域活力度」が減少する。
 「自然環境の豊かさ」が増加すると「観光魅力
度」が増加し、逆に「自然環境の豊かさ」の低
下が「観光魅力度」の低下を招く。
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因果ループ図
自然環境の豊かさ
-
+
-
観光による
リゾート
負荷
開発
+
+
+
観光魅力度
地域活力度
+
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フィードバックループの関係
 「自然環境の豊かさ」が増加すると、「観光魅力度」が
増加し、「観光魅力度」の増加は「地域活力度」の増
加を促す。
 「地域活力度」が増加すると結果的に「自然環境の豊
かさ」の増加を招くこととなる。
 「観光による負荷」と「リゾート開発」は「自然環境の豊
かさ」に対して負のフィードバックとなっているので、こ
れらが増加すると「自然環境の豊かさ」は減少するこ
とになる。
 モデルの中に負のフィードバックが含まれているた
め、「自然環境の豊かさ」、「観光魅力度」および「地
域活力度」が同じ方向に変化するとは限らない。
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SDモデルの作成
ストック、フロー、コンバータの決定
 ストック
「自然環境の豊かさ」、「観光魅力度」および「地域活
力度」
 フロー
「観光による負荷」および「リゾート開発」
「自然環境の豊かさ」、「観光魅力度」および「地域活力
度」の状態に関心があるので、これらはストックとして扱う。
「観光による負荷」および「リゾート開発」は、ストックの状
態に変化を与える要因なので、フローとして扱う
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SDモデル図
豊かさ増加
自然環境の豊かさ
豊かさ減少
観光による負荷
観光魅力度
魅力度低下
魅力度増加
リゾート開発
地域活力度
活力増加
活力低下
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SDモデルに与える数値(1)
 自然環境の豊かさ」、「観光魅力度」および「地域活力度」はいず
れも抽象的なものなので、ここでは初期値として50unitを割り当
てることにする。
 unitは架空の単位系として独自に設定したものである。
 50unitより値が増加する場合は、「自然環境の豊かさ」、「観光魅
力度」および「地域活力度」がそれぞれ望ましい状態になること
を、また、50unitより値が低下すると、望ましくない状態になること
を表わす。
 Unitの値で数値の大小関係を表現する。
 たとえば、「自然環境の豊かさ」のストックの値が50unitから
60unitへ増加すると、「自然環境の豊かさ」が10unit分望ましい
方向へ増加したことを表わす。
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SDモデルに与える数値(2)
 「自然環境の豊かさ」への流入フロー(「豊かさ増加」)は、「地域活
力度」の状態に依存していると定義した。
 「地域活力度」が50unitを超えている場合は、環境保全への関心
が高まり、「自然環境の豊かさ」に対して10unit貢献することがで
きるが、「地域活力度」が50unit未満の場合は、環境保全の努力
が行えないものと仮定した。
 「自然環境の豊かさ」からの流出フロー(「豊かさ減少」)は、2つの
コンバーター(「観光による負荷」と「リゾート開発」)で決定されるこ
ととした。すなわち、「観光による負荷」と「リゾート開発」の値の和
が正となれば、自然環境に悪影響を与えることになり、「自然環境
の豊かさ」を15unit低下させると定義した。
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SDモデルに与える数値(3)
 「観光魅力度」への流入フロー(「魅力度増加」)およ
び流出フロー(「魅力度低下」)はともに「自然環境の
豊かさ」の状態に依存していると仮定した。
 観光客は地域Aの豊かな自然に関心を持っており、
「自然環境の豊かさ」が直接「環境魅力度」に影響を
与える。そこで、「自然環境の豊かさ」の状態が
50unit以上であれば、「魅力度増加」フローの値を
10unitとし、「自然環境の豊かさ」が50unit未満であ
れば、「魅力度低下」フローの値を15unitとした。
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SDモデルに与える数値(4)

「地域活力度」への流入フロー(「活力増加」)
および流出フロー(「活力低下」)はともに「観
光魅力度」の状態に依存しているものとした。
 「観光魅力度」の状態が50unit以上であれば
「活力増加」フローの値を15unitとし、逆に
「観光魅力度」が50unit未満であれば「活力
低下」フローの値を15unitとした。
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SDモデルに与える数値(5)

コンバーター「リゾート開発」については、「観光魅力
度」と「地域活力度」がともに50unit以上のとき、
1unitとなるように定義した。
 観光客がたくさん訪れること、すなわち観光の魅力度
が高いことだけでなく、地域の活力度が高くなければ
リゾート開発意欲は高まらないという状況を仮定し
た。
 一方、コンバーター「観光による負荷」については、
「観光魅力度」が50unit以上となれば1unitとなるよ
うに定義した。
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STELLAで作成しモデルを表す数式
○
○
自然環境の豊かさ(t)=自然環境の豊かさ(t-dt)+(豊かさ増加-豊かさ低下)*dt
初期値 自然環境の豊かさ=50
インフロー:
豊かさ増加=if(地域活力度>=50) then(10) else(0)
アウトフロー:
豊かさ減少=if((リゾート開発+観光による負荷)>0) then(15) else(0)
観光魅力度(t)=観光魅力度(t-dt)+(魅力度増加-魅力度低下)*dt
初期値 観光魅力度=50
インフロー:
魅力度増加=if(自然環境の豊かさ>=50) then(10) else(0)
アウトフロー:
魅力度低下=if(自然観光の豊かさ<50) then(15) else(0)
地域活力度(t)=地域活力度(t-dt)+(活力増加-活力低下)*dt
初期値 地域活力度=50
インフロー:
活力増加=if(観光魅力度>=50) then(15) else(0)
アウトフロー:
活力低下=if(観光魅力度<50) then(15) else(0)
リゾート開発=if((観光魅力度>=50) AND (地域活力度>=50)) then(1) else(0)
観光による負荷=if(観光魅力度>=50) then(1) else(0)
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STELLAでのif文
 条件に応じて、処理を選択するために、STELLAではif文を用い
る。
 If文の書式は
if(条件式) then(式または値) else(式または値)
 たとえば「豊かさ増加=if(地域活力度>=50) then(10)
else(0)」は、「地域活力度」が50unit以上であれば「豊かさ増加」
に10unitが代入され、50unit未満であれば0unitが代入される
ことになる。
 複数の条件式を組み合わせるためにはAND(かつ)、OR(また
は)などを用いる。
 「リゾート開発=if((観光魅力度>=50) AND (地域活力度
>=50))then(1) else(0)」は「観光魅力度」が50unit以上、か
つ(AND)、「地域活力度」が50unit以上の場合に「リゾート開発」
には1unitが代入され、それ以外は0unitが代入される。
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実行例
150
自然環境の豊かさ
観光魅力度
地域活力度
unit
100
50
0
0
2
4
6
8
10
年
12
14
16
18
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20
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結果の説明
 1年目には、「観光魅力度」(■)と「地域活力度」(▲)の初期値(0
年目)がともに50unitであったため、「リゾート開発」と「観光による
負荷」がともに1となり、「豊かさ増加」<「豊かさ減少」となるので、
「自然環境の豊かさ」(○)は5unit低下する。この間、「観光魅力
度」と「地域活力度」は上昇する。
 「地域活力度」については、流入フローも流出フローも15unitであ
るが、「観光魅力度」は流入フローが10unit、流出フローが
15unitであり、「自然環境の豊かさ」の減少による影響の方が増
加による影響より大きいため、「地域活力度」に比べ「観光魅力
度」の方が「自然環境の豊かさ」の減少に早く反応して減少に転じ
ている。
 「地域活力度」の増減には「観光魅力度」のみがかかわっているの
で、「自然環境の豊かさ」の増減の影響は、「観光魅力度」を介在
した間接的なものとなる。
 このモデルでは「自然環境の豊かさ」の増減が引き金となって「観
光魅力度」および「地域活力度」が遅れて反応することになり、20
年間の間にそれぞれのストックは増減を繰り返すことになってい
る。
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SDによる複数シナリオの比較
 「自然環境の豊かさ」に影響を与える要因として「地
域活力度」と「リゾート開発」の2つの要因を取り上げ
たが、「地域活力度」が50unit以上であれば「豊かさ
増加」フローは常に10unitとなるように設定した。ま
た、「リゾート開発」は「豊かさ減少」にのみ影響し、
「活力増加」には直接は関与しないこととしている。
 このような仮定のもとで、SDによるシミュレーションを
実行した結果、「自然環境の豊かさ」の増減が「観光
魅力度」や「地域活力度」に影響を与えていることが
明らかになった。
 政策立案者として環境保全の努力とリゾート開発をど
の程度行なえば良いかという課題が与えられたとき、
SDを用いてどのような検討が可能であろうか。
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複数シナリオ検討のためのモデル
 「自然環境の豊かさ」を維持・増加させるために何らかの環境保全
努力を行なうことを想定してみる。また、リゾート開発は環境破壊
の原因ともなるが、一方で観光客の誘致や地域での雇用の促進
など、地域の活性化にも役立つことが期待される。そこで環境保
全努力とリゾート開発の影響を加味したモデルを考える。
 「保全努力量」と「リゾート開発量」に対してそれぞれ「保全係数」お
よび「開発係数」というコンバーターを用意する。
 これらのコンバーターは定数(係数)を与えるものである。
 モデル内で値を色々に変えてシミュレーションを行なう場合には、
このように変更対象のパラメーターを独立のコンバーターで定義し
ておくと便利である。
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複数シナリオ検討のためのSDモデル図
豊かさ増加
保全努力量
自然環境の豊かさ
豊かさ減少
観光による負荷
観光魅力度
保全係数
魅力度低下
魅力度増加
観光利益
開発係数
リゾート開発
地域活力度
活力増加
活力低下
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4つのシナリオ
 シナリオ1
環境保全の努力は行なわず(保全係数=0unit)、リ
ゾート開発を行なう(開発係数=5unit)場合
 シナリオ2
保全係数を5unitとし、リゾート開発を行なわない(開
発係数=5unit)場合
 シナリオ3
保全係数と開発係数をともに5unitとした場合
 シナリオ4
保全係数を15unit、開発係数を5unitとした場合
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シナリオ1の結果
保全係数=0unit、開発係数=5unitの場合
100
80
自然環境の豊かさ
観光魅力度
地域活力度
unit
60
40
20
0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
年
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シナリオ2の結果
保全係数=5unit、開発係数=0unitの場合
100
80
自然環境の豊かさ
観光魅力度
地域活力度
unit
60
40
20
0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
年
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シナリオ3の結果
保全係数=5unit、開発係数=0unitの場合
100
80
自然環境の豊かさ
観光魅力度
地域活力度
unit
60
40
20
0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
年
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43/46
シナリオ4の結果
保全係数=5unit、開発係数=5unitの場合
100
80
自然環境の豊かさ
観光魅力度
地域活力度
unit
60
40
20
0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
年
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シナリオの比較
 保全を行わず、開発のみの場合(シナリオ1)
はいずれのストックも著しく低下する
 保全と開発が同程度(シナリオ3)であっても、
観光の魅力度と、地域活性度は低下する。
 保全の努力を重視することで、いずれのストッ
クも維持できる(シナリオ2,4)
豊かな自然環境を活用した地域活性化を図るた
めには、自然環境の保全努力が重要であること
をこのモデルは示唆している
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より、実際的なモデル構築のために
 リモートセンシングを用いて地域全体の土地利用区分の分類を
行ったり、経時的に捉えたリモートセンシングデータから自然環境
のこれまでの変化の過程を把握したりすることにより、保全すべき
場所の範囲や保全方法等について検討ができる。
 生態系としてモデルを精緻化することにより、観光による負荷やリ
ゾート開発の影響をより具体的なものとしてモデルに組み込むこと
が可能となる。
 「観光魅力度」については、観光客数の動態などの統計資料や、
直接観光客へのアンケート調査を行うなどして、その評価指標を
検討することが有効であろう。
 さらに、「地域活力度」に関しては、単にリゾート開発や観光業の
みならず地域の産業構造や産業従事者の年齢構成、地域の人口
動態や経済指標などの情報を加味することでより詳細なモデルに
なる。
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