中川 利彦 - 日本禁煙推進医師歯科医師連盟

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2009.2.7
第18回日本禁煙推進医師歯科医師連盟学術総会
た
ば
こ
規
制
と
法
令
~和歌山県未成年者喫煙防止条例から~
たばこ問題を考える会・和歌山 事務局長
弁護士
中 川 利 彦
1
1 未成年者の喫煙禁止のための法・規制
未成年者喫煙禁止法
和歌山県未成年者喫煙防止条例
自販機等の販売規制
(たばこ事業法22、24条)
学校敷地内禁煙
2 受動喫煙防止のための法・規制
健康増進法25条
病院等の敷地内禁煙
公共交通機関の喫煙規制
路上喫煙禁止条例
職場内の喫煙規制
神奈川県公共施設における受動喫煙防止条例
3 喫煙者が禁煙するための法・規制
パッケージの注意表示?
(たばこ事業法39条、施行規則36条)
4 その他
消防法・火災予防条例
たばこポイ捨て禁止条例
2
未成年者の喫煙禁止のための法・規制
未成年者喫煙禁止法
(明治33年3月7日)
第1条 満二十年ニ至ラサル者ハ煙草ヲ喫スルコトヲ得ス
第2条 前条ニ違反シタル者アルトキハ行政ノ処分ヲ以テ喫煙ノ為ニ所
持スル煙草及器具ヲ没収ス
第3条 未成年者ニ対シテ親権ヲ行フ者情ヲ知リテ其ノ喫煙ヲ制止セサ
ルトキハ科料ニ処ス
2 親権ヲ行フ者ニ代リテ未成年者ヲ監督スル者亦前項ニ依リテ処断ス
第4条 煙草又ハ器具ヲ販売スル者ハ満二十年ニ至ラザル者ノ喫煙ノ防
止ニ資スル為年齢ノ確認其ノ他ノ必要ナル措置ヲ講ズルモノトス
第5条 満二十年ニ至ラサル者ニ其ノ自用ニ供スルモノナルコトヲ知リ
テ煙草又ハ器具ヲ販売シタル者ハ五十万円以下ノ罰金ニ処ス
第6条 (略)
3
自動販売機の規制
たばこ事業法22条(たばこの小売販売には財務大臣の許可がいる)
24条(許可の条件は財務大臣が定める)
「製造たばこ小売販売業許可等取扱要領」(財務省が許可基準を定めたもの)
2008年4月改正・・・自販機に成人識別装置(※)を設置することを義務化
「許可の条件
イ (略)
ロ 「自動販売機により製造たばこを販売する場合には、成人識別装置(たばこを
購入する者が成人であることを確認する機能を有する装置をいう。)を装備した
自動販売機により、当該装置を常時作動させた上で販売すること。」
(※)タスポ方式、運転免許証方式、顔認証方式
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和歌山県未成年者喫煙防止条例
平成20年3月18日成立、4月1日施行。議員立法
条例の主な内容
1 条例の主目的は「健康の保護」の観点
2 未成年者の受動喫煙からの保護
3 未成年者をたばこから遠ざける
学校や児童施設での敷地内禁煙の要求
4 販売業者・たばこ購入希望者への義務付け
5 喫煙防止教育への県の協力など
6 罰則規定はない
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(1) 条例の目的(第1条)
「この条例は、未成年者の喫煙の防止に関し、県、保
護者、販売業者、事業者及び県民の責務を明らかに
するとともに、県の実施する施策について必要な事項
を定めることにより、未成年者の喫煙を防止するため
の社会環境の整備を図り、もって未成年者の健康の
保護及び健全な育成に寄与することを目的とする。」
神奈川県青少年喫煙飲酒防止条例は健全育成のみ
従って「受動喫煙防止」の視点がない
6
(2) 未成年者の受動喫煙からの保護
・ 保護者の責務(4条2項)
「保護者は、未成年者の受動喫煙がその健康に影響を
与えるものであり、 喫煙を誘発するおそれがあるもので
あることを踏まえ、当該保護者の監護に係る未成年者を
受動喫煙から保護するよう努めなければならない。」
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・ 事業者の責務(6条1項)
「事業者は、その雇用する未成年者の喫煙を防止し、
及びその雇用する未成年者を受動喫煙から保護するよ
う努めなければならない。」
・ 県民の責務(7条1項)
「県民は、未成年者の喫煙を防止し、及び未成年者を
受動喫煙から保護するよう努めなければならない。」
8
(3) 未成年者をたばこから遠ざけるための規定
・ 保護者の責務(4条1項)
「保護者は、未成年者の喫煙がその健康及び健全な
育成に影響を与えるものであることを踏まえ、当該保護
者の監護に係る未成年者の喫煙を開始させないよう努
めなければならない。」
・ たばこ購入依頼の禁止(11条)
「何人も、未成年者の喫煙を助長することがないよう、
未成年者に対し、たばこの購入を依頼してはならない。」
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・ 学校・児童福祉施設の敷地内禁煙(12条)
「知事は、未成年者の健康の保護及び健全な育成を
図るため、学校及び児童福祉施設の敷地内における喫
煙を禁止するよう必要な措置を求めるものとする。」
和歌山県では2002年4月1日から県内全て
の公立小、中、高校の敷地内を全面禁煙とした
が、この条例では公立に限られない。大学も含
まれる。
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(4) 販売業者・たばこ購入希望者への義務付け
・ 購入希望者の年齢確認義務(9条1項)
「販売業者は、たばこを購入しようとする者(以下「購入
希望者」という。)が成年に達していることが明らかであ
る場合を除き、その者の年齢を確認するために必要な
書類で規則で定めるものの提示を求め、その者の年齢
を確認しなければならない。」
・ 購入希望者の義務(9条2項)
「購入希望者は、前項の規定により年齢確認に必要な
書類の提示を求められたときは、販売業者に対し、当該
書類を提示しなければならない。」
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・ 自動販売機による購入希望者の成人識別(10条1項)
「販売業者は、自動販売機によりたばこを販売するとき
は購入希望者が成年に達していることを識別するのに必
要な機能を有する自動販売機によることとし、未成年者が
たばこを購入できないようにしなければならない。」
・ タスポカード等の譲渡、貸与の禁止(10条2項)
「何人も、前項の自動販売機から購入する際に必要と
なるカード等を未成年者に譲渡し、又は貸与してはなら
ない。」
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・ 知事の報告聴取(13条)、立入調査(14条)、勧告(15条)、業
者名の公表(16条)
「第13条 知事は、販売業者に対し、購入希望者の年齢確認その他の未成
年者の喫煙を防止するための措置状況に関する報告を求めることが
できる。
第14条 知事は、その職員に、販売業者の店舗その他の場所に立ち入り、
購入希望者の年齢確認その他の未成年者の喫煙を防止するため
の措置状況に関し、設備、帳簿書類その他の物件を調査させること
ができる。
第15条 知事は、販売業者が第9条第1項及び第10条第1項の規定に違
反していると認めるときは、当該販売業者に対し、必要な措置を構
ずべきことを指導し、又は勧告することができる。」
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(5) 喫煙防止教育等への県の協力(8条)
「知事は、学校において、その児童、生徒及び学生等
が喫煙の影響に関する正しい理解を深めることができる
よう、必要な情報を提供する等未成年者の喫煙の防止
に関する教育の充実に協力するものとする。」
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条例の特徴・意義
○ 未成年者の喫煙防止と受動喫煙の防止を前面
に打ち出している
○ 県民、保護者、県、販売業者、事業者が協力して、
県民運動として取り組むことを定めたもの
○ 販売業者や購入希望者の義務規定を設けた
○ 罰則はないが行政の介入規定を設けた
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受動喫煙防止のための法・規制
① 公共の場所 ・・・ 健康増進法25条
「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、
百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者
が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者に
ついて、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、
他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するた
めに必要な措置を講ずるように努めなければならない。」
(※)神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例
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② 公共交通機関
鉄
道 ・・・ 鉄道営業法34条
バ
ス ・・・ 旅客自動車運送事業等運輸規則
タクシー ・・・ 標準運送約款→禁煙タクシー
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③ 職
場
○ 労働安全衛生法71条の2、71条の3、ガイドライン
○ 健康増進法25条
○ 使用者の安全配慮義務(判例・通説)
○ 職場内は全面禁煙か完全分煙が必要、勤務時間中
の喫煙禁止は当然
○ 新たに従業員を採用する場合に、非喫煙者に限る
ことは合法(但しまだ裁判例はない)
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喫煙規制に対するよくある疑問・反論
○ 喫煙規制は、喫煙者の喫煙する権利を侵害しないか?
○ 酒やコーヒーと同じ嗜好品ではないか?
○ マナーの問題、規制はおかしい。
○ 車の排気ガスの方が悪いのに車は禁止されていないのは?
○ 合法的に販売されているのになぜ自由に喫煙できないのか。
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た ば こ の 特 性
1 たばこは完全有害製品
← ストレス解消に役立つという嘘
車との違い
2 屋外・屋内、職場・家庭、どこでも周囲の者に対し直接健康被害
悪影響を及ぼす(副流煙の方がより有害)
← マナーの問題ではない
酒やコーヒーとの違い
車との違い
3 ニコチンによる強い依存症・正しい情報が隠されている
自由意思による喫煙
← マナーで解決できない
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喫煙する権利・喫煙する自由を侵害しているのか?
権利 = 相手方に対し一定のことを正当に要求でき
それが法的に保護されること
「死ぬ権利・病気になる権利」はあるのか?
基本的人権 = 人が人である故に生まれながらにしてもつ自由、権利
人権の内在的制約
権利・自由 = 他人の権利や自由を侵害することはできない
「自由とは、他人の権利を傷つけない全てのことをなしうる力である」
(フランス憲法 人権宣言より)
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権利・自由であっても他人に迷惑をかけることは許されない
表現の自由 ← 名誉毀損
飲
酒 ← 酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に
関する法律
「酩酊者が、公共の場所又は乗物において、公衆に迷惑をかける
ような著しく粗野又は乱暴な言動をしたときは、拘留又は科料に処
する」
喫煙規制
・ 他人がきれいな空気を吸う自由・権利を侵害できない
・ 他人の健康に悪影響を及ぼすことはできない
・ 未成年者の喫煙につながる恐れのある行為は合理的な範囲で禁止され
てもやむを得ない
(→大学の研究室・・・研究機関であると同時に教育機関。研究室は個人の
ものではない)
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悪の根源「たばこ事業法」
1985年4月1日施行 たばこ専売制廃止
第1条
「この法律は、たばこ専売制度の廃止に伴い、製造たばこ
に係る租税が財政収入において占める地位等にかんがみ、
製造たばこの原料用としての国内産の葉たばこの生産及び
買入れ並びに製造たばこの製造及び販売の事業等に関し所
要の調整を行うことにより、我が国たばこ産業の健全な発展
を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全
な発展に資することを目的とする。」
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今 後 の 法 的 課 題
○ 公共の場所や職場での喫煙禁止の立法化
学校・病院等での敷地内全面禁煙立法化
○ 未成年者喫煙禁止法の改正・条例の制定
○ たばこ事業法等の改正
・ たばこ規制を厚労省の所管に移す
・ JTの完全民営化
・ たばこの広告・宣伝・警告表示の規制強化
○ たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の完全実施
(2003年5月21日採択、2005年2月27日発効)
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ご静聴ありがとうございました
中
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川
利
彦