日本の映画産業の今-未来

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Transcript 日本の映画産業の今-未来

早稲田大学土門晃二ゼミ4年
目次
1.
2.
3.
4.
5.
6.
はじめに
日本映画の現状
国際映画祭とアカデミー賞
アメリカの映画産業
フランスの映画産業
日本の映画産業の今後
はじめに
Q 日本の映画は衰退している?!
ほんと?うそ?
実際に衰退しているのか?
衰退しているとすれば、今後の日本映画産業
のモデル像を考える!!
日本映画の現状①
映画の仕組み
制作会社 ⇒ 配給会社 ⇒ 興行会社
*制作会社 ・・・ 文字通り映画を作ることがその役割
*配給会社 ・・・ 出来上がった映画の買い付け、
興行会社へとつなげる役割
*興行会社 ・・・ 映画の上映をする役割 すなわち映画館のこと
*興行収入 ・・・ 実際に映画館で発売されたチケットの総売上
*配給収入 ・・・ 興行収入のうち興行会社の取り分を差し引いたもの
日本映画の現状②
興行収入の内訳
○邦画の場合
配給会社:興行会社 = 5:5
○洋画の場合
一般的には 配給会社:興行会社 = 6:4
大作(ハリウッド等) 配給会社:興行会社 = 7:3
グラフ1
日本の映画館数と入館者数の推移
入場者数
入場者数と映画館数の推移
映画館数
1,200,000
8,000
1950‘s後半~1960’s前半
7,000
1,000,000
・観客動員数激減
6,000
800,000
・スクリーン数半分以下
5,000
600,000
4,000
3,000
400,000
2,000
200,000
1,000
0
0
1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000
年度
入場者数
映画館数
映画製作者連盟資料より作成
グラフ2
日本における映画興行収入の推移
金額(百万円)
250,000
興行収入
興行収入の推移
配給収入
興行収入は40年前と比べて2倍の増
加!
200,000
But…
150,000
当時の物価を考慮に入
れれば、あまり変化なし。
100,000
50,000
0
1955
1960
1965
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2000
映画製作者連盟資料より作成
年度
グラフ3
興行収入に占める配給収入の割合
%
配収/興収
配給収入/興行収入
70
洋画公開本数 本数
600
1985年~1995年
洋画の公開本数は伸長
60
500
⇔ 収入の増加は見られない
50
400
40
300
30
200
20
100
10
0
0
1955
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1965
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1975
1980
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1995
年度
映画製作者連盟資料より作成
グラフ4
日本における公開映画本数の推移
本数
公開本数の推移
邦画 本
洋画 本
合計 本
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
1987年 洋画が邦画
の公開本数を超える
1955
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1995
2000 年度
映画製作者連盟資料より作成
グラフ5
日本における配給収入額ベースのシェア
%
邦画・洋画のシェアの推移
90
邦画シェア
洋画シェア
シネマ・コンプレックス
の影響??
80
70
1985年~
圧倒的に洋画優勢
60
50
40
30
20
10
0
1955
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1975
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1990
1995
年度
映画製作者連盟資料より作成
シネマ・コンプレックスとは
• 略称 シネコン
:1990年代にアメリカに登場した、館内に複数のスクリー
ンを持つ複合映画館のこと
シネコンの多くはショッピングセンターなどと併設されて
いる。日本ではこれまで郊外に建設されてきたが、最近
になって都心部にも進出してきた。
日本の映画館数・観客者数も1990年代から増加している。
シネコンの台頭が大きく影響しているのではないか?
また、シネコンの大規模展開は洋画の公開本数の増加と
シェアにも関与しているかもしれない。
グラフ6:各国の興行収入に占める
国産映画とハリウッド映画の比率(%)
国名
アメリカ
94.6
フランス
32.2
日本
31.9
54.1
0
3.4
80.5
14
ドイツ
13.7
64.7
16.5
イギリス
5.4
3
78.6
20
40
60
国産映画
ハリウッド映画
その他の外国映画
7.4
80
100 %
『映像コンテンツ産業論』より作成
国際映画祭
•
映画祭の意義
▼3大映画祭、世界12大国際映画祭
複数の映画祭に出展できない
公平性が高い
国際的に優れた作品の指標になる
グラフ7
カンヌ国際映画祭 主な受賞国
他
の
ル
コ
そ
国名
ロ
シ
ア
ー
ヨ
他
合計
そ
の
連
パ
ッ
ロ
国
韓
湾
/香
港
ア
中
国
/台
イ
タ
リ
ツ
イ
ド
ス
イ
ギ
リ
本
日
ン
ラ
フ
ア
メ
リ
ス
カ
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
監督賞
)
グランプリ
ト
パルムドール
ソ
カンヌ映画祭
(
受賞回数
Yahoo!ムービーより作成
グラフ8
ヴェネチア国際映画祭 主な受賞国
ヴェネチア映画祭
金獅子賞
審査員特別賞
合計
そ
の
他
ア
そ
の
他
ア
ジ
ッパ
ロ
韓
国
他
ヨー
の
そ
(旧
ソ連
)
中
国
/
台
湾
シ
ア
イ
タリ
ア
ロ
ツ
ドイ
西
リス
イ
ギ
日
本
ス
ン
ラ
フ
ア
メリ
カ
受賞回数
14
12
10
8
6
4
2
0
国名
Yahoo!ムービーより作成
グラフ9
ベルリン国際映画祭 主な受賞国
他
ル
ト
ー
ヨ
他
国名
そ
の
合計
コ
パ
ッ
ロ
国
湾
/香
韓
港
ア
中
国
/台
イ
タ
リ
ツ
イ
ド
ス
イ
ギ
リ
本
日
リ
メ
ア
フ
ラ
ン
ス
カ
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
監督賞
の
銀熊賞
そ
金熊賞
ベルリン映画祭
受賞回数
Yahoo!ムービーより作成
アカデミー賞
●アカデミー賞
アメリカ映画界最大のイベント
▼審査方法
「映画芸術科学アカデミー 」会員による投票
▼対象作品
開催年の前年に公開された映画
アメリカ映画の変遷①
• 1920年代 「無声映画」から
「トーキー(音声)映画」の時代へ
• 1930年代 自己表現力のある監督の活躍
• 1940年代 戦時中は愛国主義映画、
戦争ドキュメンタリー盛ん
1946年はアメリカ映画界における
興行収入最高年
戦後は「自由と平和」がテーマに
アメリカ映画の変遷②
• 1950年代 「若者」が主題の時代
• 1960年代 インディペンデント映画の開花
(低予算、無名監督)
• 1970年代 映画学校卒業監督の活躍
現在のハリウッド映画の原点
• 1980年代〜 1990年代
「芸術」vs「商業主義」
• 現在は「家族愛」をテーマにする傾向がある
アメリカ映画の「大作主義」
• 1950年代〜1960年代 テレビの浸透
→ 映画業界ピンチに陥る
→ テレビと映画は互いに競争相手
• 同時に 映画はテレビとは違う路線へ
→ テレビが太刀打ち出来ないレベルの
金と時間をかけた大規模作品
= 「大作主義』路線へ
現在のアメリカ映画
• 社会環境・・娯楽としての映画の浸透
• 教育機関の存在・・若手育成
• 資金面での制度・・映画製作への助成
映画の完成保証保険
株式制度・・個人投資家による映画への投資
多種多様なジャンルの映画に
挑戦出来る土壌がある
フランスの映画産業①
• アメリカ映画=「娯楽産業」
• フランス映画=「芸術」
哲学的な内容のものが多い(というイメージ)
but 「TAXi」などコメディも大人気
フランスの映画産業②
• 1946年5月28日 「ブルム=バーンズ協定」
フランスとアメリカ間の片務的政治経済協定
・映画に関する特別条項
ーフランス国内の映画館で年間16週(30%)
のみ国産映画を上映することを義務化
・アメリカ映画の上映数の変化
1946年上半期38本→同年下半期144本
(同時期のフランス映画は50本程度)
フランスの映画産業③
• 「フランス映画擁護委員会」
「ブルム=バーンズ協定」に対抗して構成
• 1948年1月 フランス国内でデモ行進
1954年 パリ条約締結
フランス映画の割り当て義務は年間40週に増加
外国映画の上映は年間186本に制限
(内121本がアメリカ映画)
フランス映画産業の特徴
☆ CNCの存在
☆ 政府の映画担当省の明確さ
仏国映画産業政策について
CNCとは?
→フランス国立映画センターの略称。
フランス文化庁直轄組織。テレビ局、ビデ
オの売り上げ、映画館の売り上げのそれ
ぞれ5.5%、2%、11%を徴収 、財源とす
る。
CNC予算表 収入
CNC予算表 1997年度映画及ビデオ部門収入
(単位100万フラン)
5.2
76.5
入場収入の11% 502
644.1
テレビ番組の収入の
5.5% ビデオの販売収入の
2.0% 他の収入 『生き残るフランス映画』より作成
CNCの主な役割
(1)
(2)
(3)
(4)
映画製作費助成
国立映画大学助成
映画プリントの貸与(ADRC)
映画館上映設備の改装、
設備投資の補助
(5) 海外プロモーション活動
(1)映画製作費助成
• 若手、ベテラン監督問わず、制作費前貸し
→ 新人監督でも三作目まで助成。
• ジャンル問わず。
→ 採算見込めぬアート系映画も助成。
• 興行的に成功しなかったら返還義務なし。
→ 映画業界の若返りと活性化 。
ジャンルを問わず浸透
(2)国立映画大学助成
• フェミス国立映画大学設立。
• 最高の撮影環境、教授陣。
• 人件費、設備費をCNCが全て助成。
学生が安心して映画撮影、脚本の
勉強に打ち込む。
シンボル的な年間三万円の授業料。
(3)映画プリントの貸与
• ADRC(地方映画振興エージェンシー)
• 配給に関わる様々な経費を負う
• 都市部と地方の映画事情の格差を埋める
地方の映画館の活性化
地方における需要の発掘
(4)映画館への投資
• 映画館の改築、設備投資
• 映画館は常に良好な上映環境を整える
• サービス等の向上に 注力
チケットの値上げ、画質、
音質の劣化を防ぐ
(5)海外プロモーション活動
• 海外プロモーション組織ユニフランス
• アメリカ、ヨーロッパ近隣諸国、日本
の三本 柱
• 様々な映画祭を開催
学校教育における映画
• 2000年末 芸術教育発展計画
国民教育大臣と文化大臣の協作
総予算4000万ユーロを国から支給
2001年~2002年の一年間、全国の小学校で映画、
演劇、音楽、美術やダンスなど、全体で2万の
芸術関連プロジェクトを実施
また5カ年計画で、一部の中高等学校で
芸術文化計画(PAC)をテスト導入
日本映画産業のモデル像
(1)
(2)
(3)
(4)
映画産業への資金援助
映画産業における政府機関
若手育成の場
映画を「文化」として浸透させる
(1)映画産業の資金援助
☆文化庁管轄
☆日本貿易振興機構 (JETRO)
による活動
文化庁の活動
• 映画製作の支援
→有望監督、若手監督の映画制作の
ための資金を提供
• 海外映画祭の出品支援
→音声吹き替え、字幕スーパーなど
の出品準備費
JETROの活動
• 中堅・中小企業の映画作品の
海外展開を支援
→ 国際映画見本市への出品を支援
1作品あたり32万円の出品費用がかかる
例)2004年度カンヌ国際映画祭
JETROは出品費用1億円を助成
日本とフランスの総助成金額での比較
●フランス
→ テレビ局、ビデオ売上、映画館売上。
合計23億フラン(邦貨500億円)
●日本
→ 税金による。
合計17億3300万円
CNC予算表 支出
CNC予算表 1997年度映画及ビデオ部門支出
(単位100万フラン)
16.5
製作前貸し金(新人助成) 56.5
145
315.06
246.02
448.72
選択助成 自動助成及び銀行貸付保証
(製作・配給)
自動助成及び銀行貸付保証
(興行) 自動助成及び銀行貸付保証
(ビデオ) 管理経費 『生き残るフランス映画』より作成
(2)映画産業における政府機関
●フランス
→ 文化省(CNC)ひとつ
●日本
3つの官僚的縦割り機構
①経済面は経済産業省
②興行面は厚生労働省
③芸術面は文部科学省
→ 窓口が三つ バラバラ、互いに不干渉
(3)若手育成の場
●フランス
前出の「フェミス国立映画学校」
●日本
民間の「日本映画学校」はある
しかし国立の映画専門学校はない
(4)映画を「文化」として浸透させる
日本
アメリカ
フランス
イギリス
市場規模
1,935億円 6,600億円
920億円
850億円
自国映画封切り本数
278本
421本
160本
65本
スクリーン数
1,933
30.825
3,900
2,200
1スクリーン当たりの人口 63,000人
9,000人
25,000人
27,000人
平均観賞料金
1,260円
460円
800円
590円
観客動員数
1億5,300万人 13億9,000万人 1億2,500万人 1億4,800万人
年間観賞回数
1.22回
4.88回
2.42回
2.25回
日本は鑑賞料金が高
『日本産業最前線』より作成
フランスの無制限パス
フランス映画会社UGCが2000年に発売した定
額料金制映画チケット のこと
〇観客からは好意、業界からは凄まじい反発
〇 文化省が法的枠組みを発表
→パスによる入場者実数に応じて、配給、製作部門への配分保証
→パスに参加希望の中小興行館の受け入れ
〇中小興行館の猛反発が起こるも上記の法律で一応の決着を
みる
前年度比6%増の観客動員数を記録
(パリ市内では11%増)
潜在的観客を動員する効果