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8.線形空間(ベクトル空間)
1
数ベクトルとは?
空間とは?
次元とは?
このようなことを厳密に扱いたい。
その前に、平面とベクトルの関係および、
空間とベクトルの関係を再考する。
まずは、座標を拡張する。
2
平面上のベクトル
3
基本ベクトルと座標
y
1 
e1    の係数
0 
0 
e2    の係数
1 
p  ( a, b)
0  b 倍
e2   
1 
O
a倍
1 
e1   
0 
x
p  ae1  be2
平面座標は、2本の基本ベクトル
の係数の組とみなせる。
4
ベクトルと点の表現
y
p
 x21 
x2   
 x22 
b' 倍
O
a' 倍
 x11 
x1   
 x12 
p  a ' x1  b ' x2
x
R 2の点は、
2つのベクトルの係数として
表現できる。(別に、基本ベク
トルでなくてもよい。)
5
平面を表現できない2つのベクトル
しかし、2本の 2  1 ベクトルで平面を表現できないときがある。
この2本のベクトルを何倍して、
加えてもこの点に到達できない。
y
p
1 
x '1   
2
O
 2
x '2   
 4
x
この2本のベクトルでは
直線(1次元)上の点
しか表現できない。
6
空間上のベクトル
7
基本ベクトルと空間座標
y
0 
e2  1 
 0 
p  (a1 , a2 , a3 )
a2 倍
a3
0 
e3   0 
1 
z
O
a1 倍
x
1 
e1   0 
 0 
p  a1e1  a2e2  a3e3  a1i  a2 j  a3k
空間座標は、3本の基本ベクトルの係数の組とみなせる。
(3つの基本ベクトルはお互いに直交するので、
8
直交座標系と呼ばれる。)
空間ベクトルと空間の点の表現
p
y
k3
 x31 
x3   x32 
 x33 
z
j
 x21 
x 2   x22 
 x23 
k2
q
 x11 
x1   x12 
 x13 
k1
x
R3
p  k1 x1  k2 x2  k3 x3
空間 R3 の点は、3つのベクトルの係数として表現できる。
このように、直交しないベクトルを用いても、一意に位置が
特定できる。(斜行座標系などと呼ばれる。)
9
空間を表現できない3つのベクトル
しかし、3本の 31 ベクトルで空間を表現できないものもある。
z
この3本のベクトルを何
倍して、加えてもこの点
に到達できない。
1 
x2 '   0 
1 
y
1 
x3 '  1 
 2 
0 
x1 '  1 
1 
R3
x
この3本のベクトルでは
平面(2次元)上の点
しか表現できない。
k本のベクトルが持つ表現能力を
見分ける方法を学ぶ。
10
n次元列ベクトル
定義(n次元列ベクトル)
n 個の R 成分 x1 , x2 , , xn を縦に並べた
n 1 行列をn項(実数)列ベクトルまたはn次元ベクトルという。
すなわち、
 x1 
x 
x   2
 
 
 xn 
はn次元ベクトル。
11
数ベクトル空間の定義
定義(n次元数ベクトル空間)
n
次元ベクトル全体から成る集合をn次元数ベクトル空間
という。記号では、 R n と書く。すなわち、
R   x | xはn次元ベクトル
n
記号からもわかるが、n次元数ベクトル空間は、
R の n 個の直積とみなすこともできる。
R  R R
n
R
n
12
低次元の実数ベクトル空間の例
y
R
2
x
O
平面:
2次元(実)ベクトル空間
x3
x2
R
3
空間:
3次元(実)ベクトル空間
O
x1
13
高次元の数ベクトル空間の例
R
4
4次元(実)ベクトル空間
R
5
5次元ベクトル空間
これらの空間は図示できないので、
記号で調べるしかない。
(しかし、例えば、5教科の点数は、5次元ベクトル空間
の1点をみなせる。他にも、一般に、n個のパラメータで
表されるデータはn次元空間の1点とみなせる。)
14
線形空間(ベクトル空間)
15
ベクトル空間
定義(ベクトル空間)
集合V が
「和の公理」および
「スカラー倍の公理」
を満たすと、
集合V を線形空間またはベクトル空間という。
数学では、空間は集合の別名で用いられる。
特に、ある特定の性質を満たす集合として、
いろいろな空間が考えだされている。
16
ベクトル空間における和の公理
定義(和の公理)
集合 V の任意の2つの元 a, b ОV に対して、
和
a+b
が定義され、次の性質を満たす。
(1) a + b = b + a (交換法則)
(2) (a + b ) + c = a + (b + c )
(3)すべての a ОV について、
a+0 = 0 +a = a
を満たす元 0 が存在する。
(4)各 a ОV について、
a+x = x+a = 0
を満たす x が存在する。
この x
を - a と表記する。
(結合法則)
(零元の存在)
(逆元の存在)
17
ベクトル空間におけるスカラー倍の公理
定義(スカラー倍の公理)
集合 V の任意の元 a ОV
に対して、スカラー倍
と、任意の実数 k О R
ka
が定義され、次の性質を満たす。
(5)
(6)
k (a + b ) = ka + kb
(スカラーの分配法則)
(k + l )a = ka + la
(ベクトルの分配法則)
(7)
(kl )a = k (la )
(スカラーの交換法則)
(8)
1a = a
(単位スカラー倍)
18
ベクトル空間例
(1)平面ベクトル全体
R 2 = {(x , y ) | x , y О R }
(2)空間ベクトル全体
R 3 = {(x , y , z ) | x , y , z О R }
(3)2次の正方行列全体
м
ь
йa b щ
п
п
п
ъ, a, b, c, d О R п
M 2 = нA | A = кк
э
ъ
п
п
c dъ
к
п
п
л
ы
п
п
о
ю
(4)実数係数のn 次多項式全体
F = {f | f (x ) = an x n + an - 1x n - 1 + L + a0x 0, ai О R }
19
多項式とベクトル空間
簡単のために、2次式とします。
F2 = {f | f (x ) = ax 2 + bx + c, a, b, c О R }
和
f1(x ) = a1x 2 + b1x + c1 О F2
f2 (x ) = a2x 2 + b2x + c2 О F2
f1(x ) + f2 (x ) = (a1 + a2 )x 2 + (b1 + b2 )x + (c1 + c2 ) О F2
スカラー倍
k ОR
f (x ) = ax 2 + bx + c О F2
f (x ) = (ka )x 2 + (kb)x + (kc ) О F2
20
1次独立と1次従属
21
1次結合
定義(1次結合)
r 個の n 次元ベクトル x1 , x2 , , xr  R n と
r 個のスカラー k1 , k2 , , kr  R に対して、
k1 x1  k2 x2 

 k r xr

をベクトルの集合 x1 , x2 , , xr の一次結合という。
また、 k i を xi の係数という。
座標の一種の拡張だと思えばよい。
22
例1(基本ベクトルの一次結合)
y
p  ( a, b)
0 
e2    b 倍
1 
O
a倍
1 
e1   
0 
x
p  ae1  be2
平面の点 p は、 a と b を係数とする
e1 と e2 の一次結合で表現できる。
23
例2(一般のベクトルの一次結合)
y
p
 x21 
x2   
 x22 
O
b' 倍
a' 倍
 x11 
x1   
 x12 
p  a ' x1  b ' x2
x
平面の点 p は、 a ' と b ' を係数とする
x1 と x2 の一次結合で表現できる。
24
行列積による一次結合の表現
一次結合は、行列積を用いても表現可能。
 kr xr   x1
k1 x1  k2 x2 
x2
すなわち、一次結合は、
X   x1
 x11
x
xk    12


 x1n
x2
x21
 k1 
k 
2

xr 
 
 
 kr 
 k1 
xk1 
k 

2

k

,
  として、


 
xkn 
 k r 
Xk と書ける。
座標系の拡張
座標の拡張
25
単位ベクトルによるn次元ベクトルの表現
単位ベクトルの一次結合によって、任意のn次元ベクトル
を表現できる。すなわち、
 x1 
1 
0
x 
0
1 
2

x
 x1    x2   
 
 
 
 
 
 
 xn 
0
0
 x1e1  x2 e2   xn en
0
 
 xn  
0
 
1 
単位ベクトルの一次結合は、
単なる座標とみなすことができる。
すなわち、各係数が座標値になる。
26
1次関係式
定義(一次関係式)
r 個の n 次元ベクトル x1 , x2 , , xr  R n
r 個のスカラー実数を係数とした次式
k1 x1  k2 x2 
をベクトル集合
こで、 k , k ,
1
 k r xr  0
 x1, x2 ,
2
に対して、
, kr  R
, xr の一次関係式という。こ
である。
係数がすべて0のとき、すなわち
k1  k2 
 kr  0
のときには、明らかに1次関係式を満たす。
このときの1次関係式を自明な関係式という。
27
1次独立と1次従属(重要)
定義(1次独立と1次従属)
r 個の n 次元ベクトル x1 , x2 ,
, xr  R n
に対して、
(1)自明な1次関係式しか存在しないとき、それらのベクト
ル集合 {x 1, x 2, L , x r }は、
1次独立
という。
(2)自明でない1次関係式が存在するとき、それらのベクト
ル集合 {x 1, x 2, L , x r }は、
1次従属
という。
28
1次独立の判定法1(定義に基づいた方法)
(1)1次独立かどうかを判定したい
x1 , x2 ,
線形関係式
, xr  R n
k1 x1  k2 x2 
r
個のベクトル
に対して
 k r xr  0
を構成する。
(2)上の(1)の線形関係式を同次n元連立方程式とみなして解
く。
(3)(I)連立方程式が自明な解しかなければ、
は一次独立である。
x1 , x2 , , xr
(II)連立方程式が自明でない解を持てば、
は一次従属である。
x1 , x2 , , xr




29
一次独立の例1
y
p  ( a, b)
0  b 倍
e2   
1 
O
a倍
1 
e1   
0 
x
k1e1  k2 e2  0
1 
 0   k1   0 
 k1    k2        
0
1   k2   0 
 k1  k2  0
よって、e1 , e2 は一次独立。
これ以外に可能性
が無い。
30
一次独立の例2
1 
1 
0
x1  1  , x2  0 , x3  1 
0
1 
1 
一次独立かを調べるために、任意のスカラー k1 , k2 , k3を用いて、
k1 x1  k2 x2  k3 x3  0
とおく。このとき、
1 
1 
0  k1  k2  0
k1 1   k2 0  k3 1   k1  k3   0
0
1
1  k2  k3  0
なので、 k1  k2  k3  0 だけしか上の式を満たせない。
よって、 x1 , x2 , x3 は一次独立。
31
一次従属の例
平面を表現できない2個の2次元ベクトルは一次従属。
p
y
1 
x1   
2
 2 
x2   
 4 
O
x
連立方程式
k1 x1  k2 x2  0
1 
 2   k1  2k2   0 
 k1    k2    
 

2
 4   2k1  4k2   0 
 k1  2k2
よって、 x1 , x2  は一次従属。
 k1  1  0
 k    2  0
 2    
などが存在する。
32
一次従属の例2
1 
1 
 2
x1  1  , x2  0 , x3  1 
0
1 
1 
3次元ベクトル3本が一次従属に
なるとき、それらは、同じ平面上
かあるいは、同じ直線上にある。
一次独立かを調べるために、任意のスカラー k1 , k2 , k3を用いて、
k1 x1  k2 x2  k3 x3  0
とおく。このとき、
1 
1 
 2  k1  k2  2k3  0
k1 1   k2 0  k3 1    k1  k3   0
0
1 
1   k2  k3  0
 k1   1  0
例えば、  k    1   0 が存在するので一次従属。
 2    
 k3   1 0
33
一次独立と一次従属の直感的意味
x1 , x2 ,
, xr  R n
最後のベクトル
x1 , x2 ,
とする。
x r が他の r  1個のベクトル
, xr 1
で表現できるとき(一次結合で表されるとき)、
その表現能力はベクトル r 本未満分の表現能力
しか無い。
一次従属
どのベクトルも他のベクトルで表現できないとき、
その表現能力を維持するにはどのベクトルが
欠けてもいけない。
一次独立
34
練習
次のベクトルの組(ベクトルの集合)が、一次独立であるか、
一次従属であるかを求めよ。
(1)
й1щ
x 1 = кк ъ
ъ
2
кл ы
ъ
й2щ
x 2 = кк ъ
ъ
1
кл ы
ъ
(2)
й- 4щ
x 1 = кк ъ
ъ
кл 6 ы
ъ
{x 1, x 2 }
{x 1, x 2 }
(3)
й1щ
къ
къ
x 1 = к2ъ
къ
к3ъ
кл ы
ъ
{x 1, x 2 }
й2 щ
x 2 = кк ъ
-к 3ъ
ъ
л ы
(4)
й- 1щ
к ъ
к ъ
x 2 = к0 ъ
к ъ
к1 ъ
кл ъ
ы
й0щ
й1щ
й1 щ
къ
къ
к ъ
къ
къ
к ъ
x 1 = к- 1ъ x 2 = к1ъ x 3 = к0ъ
къ
къ
к ъ
к1ъ
к1ъ
к0 ъ
ъ
кл ы
ъ
кл ы
ъ
лк ы
{x 1, x 2, x 3 }
35
1次独立の判定法2(正則性に基づく方法)
(正則行列と1次独立)
A を n 次正方行列とする。とする。
(1) A  a1
a2
an 
が正則行列であるための必要十分条件は、
a1, a2 ,
, an  が一次独立。
 b1 
b 
(2)
B   2  が正則行列であるための必要十分条件は、
 
 
 bn 
t
b
,
 1 b2 ,
t
, t bn  が一次独立。
36
証明
a1, a2 ,
, an  に対して、1次関係式を考える。
k1a 1 + k 2a 2 + L + kn a n = 0
Ы й
клa 1 a 2 L
йk1 щ
к ъ
кk ъ
к2ъ
щ
a n ък ъ=
ыкMъ
к ъ
кkn ъ
кл ы
ъ
й0щ
къ
к0ъ
къ
къ
кMъ
къ
к0ъ
кл ы
ъ
Ы Ak = 0
この同時n元1次連立方程式が、自明な解以外を持つため
の必要十分条件は、係数行列が正則なことである。
37
すなわち、
A №0
йk1 щ й0щ
к ъ къ
кk ъ к0ъ
к2ъ к ъ
Ы k = к ъ= к ъ= 0
кMъ кMъ
к ъ къ
кkn ъ к0ъ
ъ
кл ы
ъ кл ы
Ы a1 , a2 , , an  は1次独立。
また、同様の議論によって、
A = 0 Ы a1 , a2 ,
, an  は1次従属。
QED
38
例1
1 
1 
0
x1  1  , x2  0 , x3  1 
0
1 
1 
に対して、{x 1, x 2 , x 3 } は、一次独立だった。よって、
A   x1
実際、
x2
1 1 0 
x3   1 0 1  は正則行列。
0 1 1 
A  0  (1  1)  2  0
39
例2
й1 2 - 1щ
к
ъ
к
ъ
3
1
0
к
ъ は正則行列である。(各自確かめよ。)
к
ъ
к2 - 2 1 ъ
кл
ъ
ы
よって、
また、
й1щй2 щй- 1щ
кък ък ъ
кък ък ъ
к3ъ, к 1 ъ, к 0 ъ
кък ък ъ
к2ъ к- 2ъ к 1 ъ
кл ъ
к ъ
к ъ
ыл
ыл
ы
й1 щй3щй2 щ
к ъкък ъ
к ъкък ъ
к 2 ъ, к1ъ, к- 2ъ
к ъкък ъ
к- 1ъ к0ъ к 1 ъ
ъл
к ы
ъ кл ы
к ы
ъ
л
は一次独立。
も一次独立。
40
1次独立と1次従属の性質1
(ベクトルの部分集合に関する性質)
x1 , x2 ,
, xr , xr 1 ,
, xs  R n とする。
このとき、以下が成り立つ。
(1) x1 , x2 , , xr  が一次従属ならば、
 x1, x2 , , xs  も一次従属。
(2)  x1 , x2 ,
 x1, x2 ,
, xs  が一次独立ならば、
, xr  も一次独立。
証明略
41
例1
й0щ
й1щ
къ
къ
къ
къ
x 2 = к1ъ x 3 = к0ъ
къ
къ
к1ъ
к1ъ
кл ы
ъ
кл ы
ъ
й1 щ
к ъ
к ъ
x 1 = к- 1ъ
к ъ
к0 ъ
кл ы
ъ
й1щ
къ
къ
x 4 = к1ъ
къ
к0ъ
ъ
лк ы
とする。
(1) まず、{x 1, x 2 , x 3 } を考える。
щ とおくと、
A = й
x
x
x
2
3ъ
к
л1
ы
1
0 1
A = - 1 1 0 = (1 - 1) - 0 = 0
0
1 1
\ {x 1, x 2, x 3 } は1次従属。
\ {x 1, x 2, x 3, x 4 } も1次従属。
42
(2) 次ぎに、{x 2, x 3, x 4 } を考える。
щとおくと、
A = й
x
x
x
3
4ъ
кл 2
ы
0 1 1
A = 1 0 1 = 1 + 1 = 2 №0
1 1 0
\ {x 2, x 3, x 4 } は1次独立。
\ {x 2, x 3 }, {x 3, x 4 }, {x 2, x 4 } も1次独立。
43
練習
次のベクトル集合に対して、1次独立でしかもベクトルの本数
が最大となるようなベクトルの部分集合をもとめよ。
й2 щ
к ъ
к ъ
x 1 = к- 1ъ
к ъ
к0 ъ
ъ
лк ы
й1щ
къ
къ
x 2 = к0ъ
къ
к3ъ
кл ы
ъ
й- 2щ
к ъ
к ъ
x 3 = к1 ъ
к ъ
к0 ъ
кл ы
ъ
й0щ
къ
къ
x 4 = к1ъ
къ
к1ъ
кл ы
ъ
44
1次独立と1次従属の性質2
(ベクトル追加による1次独立から1次従属への変化)
x1 , x2 , , xr  R n に対して、
 x1, x2 , , xr  は一次独立とする。
このとき、 b  R n に対して以下が成り立つ。
(1)  x1 , x2 , , xr , b が一次従属ならば、
係数を k1 , k2 , , kr  R として、
b  k1 x1  k2 x2 
 k r xr
と表せる。
(2) b が(1)のように表すことができるとき、
その表し方は唯一である。
すなわち、係数の組が一意に定まる。
45
証明
(1)
 x1, x2 ,
, xr , b が一次従属なので、
k1 x1  k2 x2   kr xr  kb  0
 k1   0 
を満たす    
  
 kr  0 
   
 k  0
このとき、 k  0
が存在する。
を示す。
k  0 とすると、
k1 x1  k2 x2   kr xr  0
となるが、 x1 , x2 , , xr  は一次独立なので、
k1  k2   kr  0
これは、すべての係数が0になり矛盾を生じる。
46
よって、 k  0
したがって、
 k1 
 k2 
b     x1     x2 
 k
 k 
 kr

 k

 xr

(2) 次のように2通り表せるとする。
b  k1 x1  k2 x2 
 l1 x1  l2 x2 
 k r xr
 lr xr
 k1  l1  x1   k1  l1  x2 
  kr  lr  xr  0
 x1, x2 , , xr  は一次独立なので、
 k1  l1    k1  l1     kr  lr   0
 k1  l1 , k2  l2 ,
, kr  lr
このように、すべての係数は一意に定まる。
47
QED
例
1 
1 
 2
x1  1  , x2  0 , x3  1 
0
1 
1 
は1次従属であった。
b  x3 とし、1次関係式を考える。
k1 x1  k2 x2  kb  0
1 1 2  k1  0
1 0 1   k    0 

 2  
0 1 1   k  0
より、拡大係数行列を行基本変形する。
48
1 1 2 0  1 1 2 0  1 1 2 0 
1 0 1 0   0 1 1 0   0 1 1 0 

 
 

0 1 1 0  0 1 1 0  0 1 1 0 
1 0 1 0 
 k1   c 


 0 1 1 0 
  k2    c 
0 0 0 0 
 k   c 
c を用いて次のように表せる。
cx1  cx2  cb  0
b  x3  x1  x2 と一意に表せる。
ここで、任意定数
また、
x2  x3  x1
も同様に、一意に表せる。
x1  x3  x2
49
行列との積と一次独立
行列の積と1次従属
n 次の正方行列 A と、
n 次元ベクトル x1 , x2 ,
, xr  R n
に対して、以
下が成り立つ。
(1)  x1 , x2 , , xr が一次従属ならば、
 Ax1, Ax2 ,
, Axr も一次従属。
(2)A が正則行列で、 x1 , x2 ,
 Ax1, Ax2 ,
, xr  が一次独立ならば、
, Axr も一次独立。
50
証明
 k1   0 
  0
x
,
x
,
,
x
r
(1)  1 2
r が一次従属なので、  
 
 k r   0 
が存在し、
k1 x1  k2 x2 
 kr xr  0n
左から A を乗じて、
k1  Ax1   k2  Ax2  
よって、
 Ax1, Ax2 ,
 kr  Axr   0n
, Axr  も一次従属。
51
(2)
k1  Ax1   k2  Ax2  
 kr  Axr   0n
と仮定する。
1 が存在する。これを左から乗じて
は正則行列なので、
A
A
A k1  Ax1   A k2  Ax2  
1
1
 A kr  Axr   0n
 k1  A1 Ax1   k2  A1 Ax2  
 k1 x1  k2 x2 
 x1, x2 ,
1
 kr  A1 Axr   0n
 kr xr  0n
, xr  が一次独立なので、係数がすべて
0でなければならない。よって、
 Ax1, Ax2 , , Axr  も一次独立。
QED
52
例1
1 
1 
 2
x1  1  , x2  0 , x3  1 
0
1 
1 
は1次従属であった。
 0 1 2
A   1 0 0  とする。
 1 2 1 
このとき、以下のようになる。
0
x1 '  Ax1   1
 1
0
x2 '  Ax2   1
 1
1 2  1   1 
0 0  1    1
2 1  0  3 
1 2  1   2 
0 0  0   1
2 1  1   2 
 0 1 2 2  3 
x3 '  Ax3   1 0 0  1    2
 1 2 1  1   5 
 x1 ', x2 ', x3 ' は1次従属
53
例2
1 
1 
0
x1  1  , x2  0 , x3  1 
0
1 
1 
は1次独立であった。
 0 1 2
A   1 0 0  は正則行列である。
 1 2 1 
このとき、以下のようになる。
0
x1 '  Ax1   1
 1
0
x2 '  Ax2   1
 1
1 2  1   1 
0 0  1    1
2 1  0  3 
1 2  1   2 
0 0  0   1
2 1  1   2 
 0 1 2  0   3
x3 '  Ax3   1 0 0  1   0
 1 2 1  1  3
 x1 ', x2 ', x3 '
は1次独立
54
一次独立と階数
(一次独立と階数)
mn
A

R
行列
が、列ベクトルあるいは行ベクト
mґ n
ルを用いて、次のように表されているとする。
A   a1
 b1 
b 
an    2 
 
 
bm 
このとき、次の(1)、(2)、(3)は同じ数である。
(1) rank(A )
(2) a1 , a2 ,
t
t
b
,
(3) 1 b2 ,
証明略
, an より選べる1次独立なベクトルの最大個数
, t bn より選べる1次独立なベクトルの最大個数
55
例1
й1щ
й2щ
ъ, y = к ъ は一次従属である。
2つのベクトル x = к
к2ъ
к4ъ
кл ъ
кл ъ
ы
ы
A = й
клx
й1 2щ
к
ъ
yщ
=
ъ к2 4ъ
ы
кл
ъ
ы
とおいて、階数を求める。
й1 2 щ
й1 2 щ
к
ъ
к
ъ
к2 4 ъ
к0 0ъ
кл
ъ
кл
ъ
ы
ы
と基本変形できるので、 rank(A ) = 1
よって、一次独立なベクトルの最大数は1。
したがって、2個のベクトルは一次独立になれず、
一次従属。
56
例2
2つのベクトル x =
A = й
клx
й1
к
yщ
=
ъ к2
ы
кл
й1щ
й3щ
к ъ, y = к ъ は一次独立である。
к2ъ
к4ъ
кл ъ
кл ъ
ы
ы
3щ
ъ
4ъ
ъ
ы
とおいて、階数を求める。
й1 3щ
й1 3 щ
й1 3щ
к
ъ
к
ъ
к
ъ
к2 4 ъ
к0 - 2ъ
к0 1ъ
кл
ъ
кл
ъ
кл
ъ
ы
ы
ы
と基本変形できるので、 rank(A ) = 2
й1 0щ
к
ъ
к0 1ъ
кл
ъ
ы
よって、一次独立。
57
練習
次のベクトル集合に対して、階数をもとめることにより、1次独
立な最大のベクトル部分集合をもとめよ。
й1щ
къ
к1ъ
къ
x1 = к ъ
к1ъ
къ
к0ъ
кл ъ
ы
й4 щ
к ъ
к3 ъ
к ъ
x2 = к ъ
к2 ъ
к ъ
к- 1ъ
кл ы
ъ
й2 щ
к ъ
к1 ъ
к ъ
x3 = к ъ
к0 ъ
к ъ
к- 1ъ
кл ы
ъ
58
基底と次元
59
部分空間と次元
平面(R 2 )中の直線や、 3次元空間(R 3 )中の平面
のように、元の空間の一部を表す空間を考える。
このような空間を、元の空間の部分空間という。
y
p
y
y
1 
x '1   
2
O
 2
x '2   
 4
x
O
x
60
(線形)部分空間の定義
定義(部分空間)
V R
n
が、
(1)
x , y ОV Ю x + y О V
(2)
x ОV , k О R Ю kx ОV
を満たすならば、
V
は
R
n
の部分空間という。
(1)の性質を「加法について閉じている。」といいます。
(2)の性質を「スカラー積について閉じている。」といいます。
R
n
および
{0} は R n
の部分空間である。
これらを自明な部分空間という。
61
部分空間の性質
(部分空間の性質)
V R
n
が部分空間となるための必要十分条件は、
(1) ' x , y ОV , a, b О R Ю ax + by ОV
証明
(1)、(2)が成り立つとする。このとき、(2)より、
ax , by ОV
(1)より、
ax + by ОV
よって、 (1) ' が成立する。
逆に、(1) ' が成り立つとする。
a = b = 1 とおけば、(1)が成り立ち、
a = c, b = 0 とおけば、(2)が成り立つ。
QED
63
例
R 2 中の
3
R 中の
直線: y = 2x
平面: x + y + z = 0
y
p
z
y
1 
x '1   
2
O
 2
x '2   
 4
x
O
x
64
正射影による部分空間
м
ьп
й
щ
п
x
1
п
п
к ъ
п
п
п
п は
V = нx = ккMъ
x
ъ n = 0 эп
п
к ъ
п
п
x
п
п
кл n ъ
п
п
ы
п
п
о
ю
R
n
の部分空間。
最後の成分が常に0と言うことは、
Rn 中の対象が、
R n 1 の“面”に射影される。
(1次元分つぶれる。)
z
y
O
x
65
解空間
定義(解空間)
mґ n
行列 A = [aij ] О R m ґ n に対して、
V = {x О R n | A x = 0 }
は
R
n の部分空間である。
この部分空間を連立方程式 A x
解空間と呼ぶ。
= 0
の
66
例1
(1)
 x
2

R
,
 y
 
1 2   x  0 
 2 4   y   0  の解空間は、

   
直線: x  2 y  0
(2)
1 3   x  0 
 2 4   y   0  の解空間は、

   
 x
2

R
,
 y
 
 x  0
1点:     
 y  0
0 0  x  0
(3)  x   R 2 , 
0 0  y   0 の解空間は、
 y

   
 
R2
全体
67
生成する部分空間
定義:(生成される部分空間)
, xr  R n に対して、その一次結合全体て定義
される R n の部分空間を x1 , x2 , , xr  で生成
x1 , x2 ,
する(張られる)部分空間という。
L{ x1 , x2 ,
記号では、
, xr }
あるいは、
L[ x1 , x2 ,
, xr ]
と表す。
68
例
(1)
м
ьп
м
ьп
пй1 щ
пй1 щй2 щ
п
п
п
к
ъ
к
ъ
к
ъ
Lп
=
L
,
нк ъэ
нк ъ к ъэ
п
п
п
2
- 2ъ к- 4ъп
пк
ъ
п
пк
п
п
п
ол ып
ю
ол ыл ып
ю
直線 x  2 y  0 を表す。
(2)
м
ь
м
ь
й1щй3щ
й1щй0щ
п
п
п
п
п = L пк ъ, к ъп
к
ъ
к
ъ
Lп
,
нк ъ к ъэ
нк ъ к ъэ
п
п
пк0ъ к1ъп
п
2ъ к4ъп
пк
п
л
ыл
ы
л
ыл
ы
п
п
п
п
о
ю
о
ю
R 2 を表す。
(3)
e 1, e 2 , L , e n О R n
L {e 1, e 2, L , e n }
R n を表す。
とする。
69
基底
定義(基底)
集合 V のベクトルの組、  x1 , x2 , , xd 
に対
して、次の(1)、(2)を満たすとき、それらのベクトル
の集合を V の基底という。
(1)
 x1, x2 ,
, xd  が1次独立。
(2) V の任意のベクトルが、
1次結合で表現可能
 x1, x2 ,
, xd  の
空間を基底(ベクトル)の組み合わせ(1次結
合)で表現可能。空間に一種の番地を振る
作業。
70
標準基底
Rn
定義(標準基底)
の n 個の単位ベクトルの組
e1, e2 ,
, en 
は R n の基底である。
この基底を標準基底ともいう。
i, j, k として、3次元ユークリッド空間の
標準基底を表すことがある。。
71
例1(3次元ユークリッド空間の標準基底)
y
0 
e2  1 
 0 
p  (a1 , a2 , a3 )
a2 倍
a3
0 
e3   0 
1 
1次独立
a1 倍
p  a1e1  a2e2  a3e3  a1i  a2 j  a3k
z
{e 1, e 2, e 3 }
O
x
1 
e1   0 
 0 
は
R
3
の基底である。
1次結合で R 3 の全ての
点(ベクトル)が表現できる。
72
例2(基底の例)
原点を通る直線は線形空間である。
この線形空間の基底を考える
直線: y = 2x の基底としては、
 1  
    などがある。
2 
y
O
x
73
例3
原点を通る平面は線形空間である。
この線形空間の基底を考える
平面: x + y + z = 0
の基底としては、
 1   1  
    
  0  ,  1  などがある。
  1  0  
    
z
y
O
x
74
例4(3次元ユークリッド空間の標準でない基底)
p
y
k3
 x31 
x3   x32 
 x33 
z
j
{x 1, x 2, x 3 }
k2
q
 x11 
x1   x12 
 x13 
p  k1 x1  k2 x2  k3 x3
 x21 
x 2   x22 
 x23 
k1
x
R3
空間 R3 の点は、
3つのベクトルの係数として
表現できる。
も R3 の基底である。
75
次元の定義
いままでは、なんとなく用いてきた次元に関して、
厳密な定義を与える。
定義(次元)
集合V の基底を構成するベクトルの個数を
次元といい、
V
の
dimV
とかく。なお、
dim0  0
とする。
76
次元の性質1
(次元と一次独立・従属)
R の部分空間 V 中に、
「 d 個の1次独立なベクトルがあり、
d  1個以上のベクトルは必ず一次従属になる」
ような d がある。
n
このとき、
d  dimV
である。
1次独立と1次従属の
境界にあたるベクトル
の数
77
例1
й1 щ
к ъ
к ъ
x 1 = к- 1ъ
к ъ
к0 ъ
кл ы
ъ
й0щ
й1щ
къ
къ
къ
къ
x 2 = к1ъ x 3 = к0ъ
къ
къ
к1ъ
к1ъ
кл ы
ъ
кл ы
ъ
й1щ
къ
къ
x 4 = к1ъ
къ
к0ъ
ъ
лк ы
とし、
V = L {x 1, x 2, x 3, x 4 }とする。
{x 1, x 2, x 3, x 4 } は1次従属であり、
{x 2, x 3, x 4 } は1次独立であった。
よって、
dimV = dim L {x 1, x 2, x 3, x 4 } = 3
このことから、 {x 2, x 3, x 4 }は R 3 の基
底になれることがわかる。
78
基底と次元
(基底と次元)
x1 , x2 ,
A   x1
, xr  R n に対して、
x2
xr  ,
V  L  x1 , x2 ,
, xr 
とする。このとき、次が成り立つ。
(1)dim V  rank(A)
(2) x1 , x2 , , xr から適当な r  d  dimV 個のベクトル
の組を選ぶことにより、 V の基底を作れる。
証明略
79
例1
й1 щ
к ъ
к ъ
x 1 = к- 1ъ
к ъ
к0 ъ
ъ
лк ы
й0щ
й1щ
къ
къ
къ
къ
x 2 = к1ъ x 3 = к0ъ
къ
къ
к1ъ
к1ъ
кл ы
ъ
кл ы
ъ
й1 0 1 1 щ
к
ъ
к
ъ
A = к- 1 1 0 1ъ とする。
к
ъ
к 0 1 1 0ъ
кл
ъ
ы
й1 0 1 1щ й1 0 1 1щ
к
ъ к
ъ
к
ъ к
ъ
к- 1 1 0 1ъ® к0 1 1 2ъ®
к
ъ к
ъ
к 0 1 1 0ъ к0 1 1 0ъ
кл
ъ
ъ
ы кл
ы
й1щ
къ
къ
x 4 = к1ъ
къ
к0ъ
кл ы
ъ
とし、
階段の先頭要素に対応
するベクトルの集合は基
底にできる。
й1 0 1 1 щ
к
ъ
к
ъ
к0 1 1 2 ъ
к
ъ
к0 0 0 - 2ъ
кл
ъ
ы
と行基本変形できる。よって、
rankA = dim L {x 1, x 2, x 3, x 4 } = 3
また、階段行列の形から、{x 1, x 2 , x 4 }
3
も R の基底になれることがわかる。
80
練習
次のベクトル集合 { x1 , x2 , x3 , x4 } の生成する
線形空間 L[ x1 , x2 , x3 , x4 ] の基底および次元
dim L[ x1 , x2 , x3 , x4 ] を求めよ。
й1 щ
й2 щ
йщ
й3щ
къ
къ
к4ъ
къ
къ
къ
къ
к
ъ
x 1 = к2ъ, x 2 = к3ъ, x 3 = к4ъ, x 4 = к5 ъ
къ
къ
къ
къ
к3ъ
к4ъ
к6ъ
кл5ы
ъ
кл ъ
к
ъ
кы
ъ
ы
лы
л
81