行為にみられる日本らしさ - iクラス

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キリスト教倫理(THE312)
-一般倫理と聖書倫理-
中央聖書神学校
2008年度後期
1
何故嘘をついてはいけない
のか?
何故人を殺してはいけない
のか?
2
このクラス前半で理解すべきこと
1.ある行為が正しいかどうかの判断を正当化
する根拠は何か?
2.ある倫理的規範が正当かどうかを判断する
根拠は何か?
3.一般社会規範はどの様な過程で成立するの
か?
4.一般社会規範における3つのカテゴリーは
何か?
5.何故功利主義的倫理観を聖書的に受け入
れることができないのか?
3
行為に対する価値判断
その価値判断を正当化
する根拠は何か
何らかの行為の連続
4
行為に対する価値判断
恣意的でなく正当
倫
理
判
断
その倫理的規範の正当性
的
の
をどうして立証できるか
規
根
範
拠
行為に対する尺度
多井、pp.13-17
5
一般の人々は、現実の社会を
支配している倫理的規範を無
批判に受け入れ、自分の主観
的な価値判断に一致している
という理由だけで、その倫理的
規範の正当性を認めている。
(多井,p.15)
6
倫
理
的
規
範
主
主
観
観
的
的
価
価
値
値
判
判
断
断
7
(人々は日常生活の中で)自分
が(主観的に)認めている倫理的
規範がなぜ正しいか、その根拠に
ついて真剣に問うことなしに生活
している。
(多井,p.15)
8
二つの根拠
個々の行為
に対し価値
判断を下す
自分を正当
化する根拠
倫
理
学
価値判断に
倫理的規範
を適用する
自分を正当
化する根拠
9
行為に対する価値判断
規
範
の
正
当
性
倫
理
的
規
範
判
断
の
根
拠
行為に対する尺度
多井、pp.13-17 10
倫理とは

習慣(e[qo)づけによって社会に役立つ
ような性格をいかにして形成すべきかの方法

習慣によってその本性を変える人間
– 習慣の結果として習性(ethos)的(即ち道
徳--ethika的)の卓越性(即ち徳)を作り
出す(和辻)
– 繰り返されて行われる行為が”正しさ”を生み出
す(アリストテレス)
– 人間の行為に先行する神の義が倫理を生み出
す(アリストテレス倫理を批判するルター)
11
社会規範の発生
欲
求
生
き
る
た
め
の
欲
反求
充
復足
の
行た
め
為の
取反
復
捨行
為
選の
成
択果
行取
捨
為選
択
のさ
反れ
た
復
社
会
規
範
の
成
立
12
マズローの欲求階層説(1908-1970)
本能的欲求
安全の欲求
生理的欲求
13
マズローの欲求階層説
足欲
行求
為充
自己実現の欲求
評価の欲求
愛情の欲求
社会的欲求
本能的欲求
安全の欲求
生理的欲求
欲求充
足行動
14
一般倫理の社会規範
W.G. Sumner
 習俗
(Folkways)
– しても良い(May)レベル
 慣習
(Mores)
– すべき(Ought)レベル

法規 (Laws)
– しなければならない(Must)レベル
15
一般倫理の社会規範
W.G. Sumner
 習俗(Folkways)-しても良い(May)レベル
– 欲求充足行為において試行錯誤の結果とし
て生まれる社会規範
– 単なるしきたり・習慣として人が従う規範

食事の時の箸、ナイフとスプーン、ナイフとフォー
ク、男子のズボンと女子のスカート、スコットランド
男性のキルト
16
一般倫理の社会規範
W.G. Sumner
 慣習
(Mores)-すべき(Ought)レベル
– 集団の福利を保つための規範
– 作為・不作為に対する集団の拘束力
– 人倫にはずれる行為を制限する規範

違反者には社会心理的な罰則

刑事的責任範囲外の不当な行為に対する規範

葬儀における非常識な行動、不誠実な言動
17
一般倫理の社会規範
W.G. Sumner

法規(Laws)-しなければならない(Must)レベル
– 法制化された規範
– 社会的コンセンサスを得て文章化した規範



道徳的に中立である一部の法則(将棋のルー
ル・スポーツの規則など)
法規と慣習が対立したとき、往々にして慣習が
優先する
憲法、教会規則、スポーツのルールなど
18
社会規範

習俗、慣習、法規のいずれか?
– 愛国心
– 昼寝
– 学生マニュアル
– 披露宴
– 焼香
– 早天祈祷
– 豚のモツ
(
(
(
(
(
(
(
)
)
)
)
)
)
)
19
社会規範

習俗、慣習、法規のいずれか?
– 愛国心
– 昼寝
– 学生マニュアル
– 披露宴
– 焼香
– 早天祈祷
– 豚のモツ
(慣習)
(因習)
(法規)
(因習)
(慣習)
(因習・慣習・法規 )
(因習・法規
)
20
慣習と一般倫理

慣習の倫理形成機能
– 慣習的道徳(倫理)
主観的道徳(習俗的、慣習的倫理)
 随意性はあるが、自覚性にまで至らない規範
 規範的規則形成の存在的基盤

– 自覚的道徳(倫理)
 客観的道徳(倫理)-文言化された規範
 慣習から意図的、自覚的道徳への移行もしく
は転換 (cf.#9)
21
ジェレミー・ベンサム
Jeremy Bentham 1748~1832
ある行為が正しいの
は、それが「最大多数
の最大幸福」を生みだ
す場合である。
『道徳と立法の諸原理序説』
22
一般倫理と功利主義

一般倫理にある思考形式
– 一般倫理の共通分母としての功利主義(功利を一
切の価値の原理とする説-「最大多数の最大幸福」
– 行為そのものの構成要素の中にあるのでなく、行為
が生み出す結果の中にある道徳的・倫理的価値
(ジェレミー・ベンサム)
– 行為の結果の善悪によって決定される行為の善悪
23
功利主義的倫理観

主観的な価値判断に委ねられている行為の倫
理的評価

それぞれの時代、社会の支配的な価値観、文
化に左右される善悪の判断

行為の生み出す結果の善悪を、自分に取って
の善悪に限定する倫理観
24
功利主義と啓蒙主義
無限の知識欲
啓蒙主義
自然に対する
無限の支配欲
人
類
の
安
寧
と
繁
栄
科
学
技
術
の
進
歩
神
の
創
造
原
理
の
破
壊
25
キリスト教対功利主義的倫理観
客観的道徳
規範体系
キリスト教
倫
理
観
主観的な価
値判断によ
る規範体系
功利主義
26
功利主義の悪影響
功利主義はキリスト教の絶対
的道徳規範の解体現象を推し
進める主要な原理である。
(多井・上沼、p.37)
27
功利主義の悪影響

功利主義によって絶対的な道徳規範が次第に否定さ
れていくことによる結果
– キリスト教倫理そのものが否定される。
– 聖書の信憑性が零落する。

普遍妥当的な拘束力を持たない道徳規範は、道徳規
範に値しない。
28
キリスト教対功利主義的倫理観

キリスト教倫理-神が与えられた客観的道徳
規範体系

功利主義的倫理-各自が主観的に設定した
様々な価値を獲得・享受するのに有効なすべ
ての行為を正当化
– キリスト教道徳規範体系を内部から解体させる原
理である功利主義的原則
29
これまでのクラスで理解すべきこと
1.ある行為が正しいかどうかの判断を正当化
する根拠は何か?
2.ある倫理的規範が正当かどうかを判断する
根拠は何か?
3.一般社会規範はどの様な過程で成立するの
か?
4.一般社会規範における3つのカテゴリーは
何か?
5.何故功利主義的倫理観を聖書的に受け入
れることができないのか?
30
このクラス後半で理解すべきこと
1.日本独特の社会規範を生み出した基層文
化とは何か、それに対比する基層文化は
何か?
2.日本人一般と基督者とは倫理行為類型に
おいてどの様な違いがあるか?
3.聖書的倫理には何が反映されていなけれ
ばならないのか?
31
このクラス後半で理解すべきこと
4.一般倫理と聖書倫理において倫理規範
の根拠に根本的な相違がある。それは何
か?
5.一般倫理と比較して聖書的倫理にはどの
様な究極の目的があるのか?
32
人間の生活環境と規範
 自然環境
– 人間生活に不可分な関係
– 人間の生活様式に影響
– 人間の文化様式に影響
– 人間の思考様式に影響
33
人間の生活環境と規範
 社会環境
– 社会化(Socialization)の場を提供

母子関係の設立

家族関係の設立

友人関係の設立

雇用関係の設立
– 社会生活への適応性の育成
34
人間の生活環境と規範
 文化環境
– 人間の生活様式に影響 (物質的文化)
– 人間の行動様式に影響 (規範的文化)
– 人間の思考様式に影響 (精神的文化)
35
人間の生活環境と社会規範
自社
然会 文
宗
環環 化
教
境境 環
境
倫
世
価
理
人
界
値
観
生
観
観観
個
社
人
会
政
の
の
治
行
仕
の
動
組
形
み
態
36
規範成立過程-その底辺
牧畜民的基層文化
・移動的社会
・個人社会
・自律的個性
(個の倫理)
・男性原理
農耕民的基層文化
・定住的社会
・共同体社会
・他律的個性
(集団倫理)
・幼児・女性原理
37
規範成立過程-その底辺
水稲栽培的共同体構造
・日本文化の形成に決定的な役割果たす
・生活共同体結合意識を育成したムラ(群)集落
-自足性・閉鎖性・排他性の醸成
ー構成員の一体感・ムラ意識の形成
38
日本文化の基層と行動様式
水稲栽培的・共同体的農耕文化
ムラ共同体の自足的全体社会性・排他性
集団倫理対個の倫理
日本人の核パ-ソナリティーの形成
(荒木博之『日本人の行動様式』,p.46)
39
日本的精神構造
ー山本七平の日本教から-

連帯感を生み出す氏神的意識
–
村意識の培養
–
共同体の価値観で動く通過儀礼(結
婚式、葬式など)
–
誰かの失敗と連帯責任感
40
日本的精神構造

内容より形式を重んじる精神構造

型から内容へ(能、茶道)

包装紙が中身より大切

肩書き(立場)の重要性

何ができるかではなく(能力)、どこに属
するか(帰属)
41
日本人の社会的行為
 個別主義的性格 (Particularism)
- 「ヨソ者」意識に対する 「ウチ者」意識
-普遍的な規範より、所属集団に行為規定(中根)
 状況主義的性格 (Situationalism)
-多様な状況への柔軟な適合重視
-普遍的基準への準拠否定
-状況への相対的適応の肯定 (浜口)
42
規範行動類型

規範型行動

状況中心型行動
-状況に無関係の
規範行動
-与えられている行
動規範の回避
一公共的な価値観
や集団的規範に
依拠
-集団内の一定の価値
基準への準拠
-集団的に固定化さ
れた規範への遵守
-特定的状況への臨機
応変的対処
43
行為の構成要因

目標の選定

価値の選考

欲求の充足

手段となる選択肢


の採択
状況に置ける生起
基準への準拠

態度の確定
44
倫理行為類型

状況型行為

標準型行為

規範型行為

定律型行為
45
倫理行為類型(1)

状況型行為
恥 ム 対
– 自らがおかれている「状況」に対応した基準を自ら
ラ
の
人
が設定し、それに準拠して行動する
文
意
志
– 行為基準が志向のたびごとに状況に応じて設定さ
化 識 向
れる適応性・融通性に富んだ行為類型
の の 性
多神教、汎神論的伝統の支配的な環境に見ら
れる行為類型(ヒンドゥー教、仏教、道教など)
育 強 傾
「はじめに状況(Topos)ありき」
成 化 向


46
倫理行為類型(2)

標準型行為
– 自らが規定した状況にふさわしい「標準」
を採択、それに準拠する標準化された行動
*「標準」-特定の状況に対して多くの行為者
が、どのように振る舞うであろうか、という推
測を元にして形成された行為の準則
-「状況型行為」の本来的な姿 (濱口、p.120)
47
倫理行為類型(3)
 規範型行為
– 行為者の主観的状況に関わりなく、自己の内
に ある「望ましい」観念に基づいて定められた
行為基準
罪 個 内
の 人 部
文 主 志
– 内面化された規範と照合しつつ欲求充足を試
化 義 向
みる行為類型
の 的 性
「はじめに規範(Nomos)ありき」
育 行 傾
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など一神
成
動 向
教伝統文化環境に存在


48
倫理行為類型(4)
 定律型行為
– 個人的価値規範が定型化された集団的価値
規範への移行時にみられる行為
– ルーティーン化された基準に準拠し、各個価
値的規範設定が不必要

近代的官僚制機構にみられる行為類型
49
行為類型
 日本
状況型行為
標準型行為
アウトサイド・イン志向
 アメリカ
規範型行為
定律型行為
インサイド・アウト志向
50
行為規範の類型
アウトサイド・イン


外在する基準への
恥
準拠
文
他者関与的行為の
公準 化
インサイド・アウト


内在する基準への
罪
準拠
文
自己依拠的行為の
公準 化
(浜口-p.305ff)
51
日本人の行為規範
(R.Benedict)

多元的な生活圏、「状況」に個別的に対処
する行為志向(状況・相対的志向性)
– 状況に応じた個別的な「標準」
– 聖書の様な絶対的志向基準がなく、社会的に
是認される状況相対的志向
– 妥当と見なされる複合的基準の設定
52
日本人の社会的行為

他人志向的・状況主義的志向(リースマン)
-他律的な志向態度・「対人志向性」

個別的・状況主義的志向(浜口)
-外在的な行為基準の内面化による自己制御
機能・「他者関与志向性」
-世評という外在的な準拠点を持つ「恥」行為
53
日本人の対人行為

自己の存立・活動の手段・道具と
考えない

他者との対人関係自体を価値ある
ものとする

組織構造に影響する対人関係重
視主義
54
日本人は、慣例については口や
かましい。状況ごとに、しきたり
に全く反しない振る舞い方や、
きっちりと規定されている言葉使
いが要求される。誰でも、その通
例集に倣うべく、どれほど込み
入っていたり,面白くなかったり
する状況でも、それを正確に洞察
するであろう。(E.Reishchauer)
55
56
罪と恥の倫理
待自
に分
応自
じ身
ての
期
(Talcott Parsons)
罪 恥
す我
るが
否自
定ら
に
課
罰
と
し
て
、
自
で
き
な
か
っ
た
行
動
す
る
事
が
に他
応人
じの
て期
待
57
罪と恥の倫理
方反 内
向応 面
付と 化
けし さ
らて れ
れ自 た
た己 基
自準
身へ
のの
(Ruth Benedict)
罪 恥
付反 他
け応 者
らと の
れし 批
たて 評
他や
者嘲
に笑
方へ
向の
58
罪と恥の倫理
(Ruth Benedict)
一
神
教
罪
の
倫
理
恥
の
倫
理
多
神
教
59
文化的エートス
日本

個別・状況主義
– 行為の選択拠点を
自己の地位・役割
に求める
– 立場・状況に即応
する心理的心構え
アメリカ

普遍・論理主義
– 行為原理を状況に変
わることのない普遍的
な信念に求める
– それを誰に対しても妥
当するものと主張
60
文化的エートス(しつけ)

「インサイド・アウト」型
-自己依拠性-他人に依存しないこと
-自立促進型-早く独立すること

「アウトサイド・イン」型
-相互依存性ー他への義理をわきまえること
-「甘え」型-恥ずかしくない者になること
ー作法・礼儀をしること
61
インサイド・アウト型倫理
+
創個
造性
的的
-
均画
質一
的的
和 輪 倫
アウトサイド・イン型倫理
62
日本文化
型
個
性
の
抑
圧
個
人
差
の
不
問
絶
対
平
等
性
内
容
易行
63
日本人の状況倫理
 状況倫理(Situational Ethics)
– それぞれの状況に応じて個々に設定される行
動基準
– 特定の状況ないし対人関係に応じて選択的に
設定される志向基準

状況の的確な察知

状況に適正な基準の選択
64
アイデンティティーの複数性
欧米では一神教的思考が強いの
で、アイデンティティーは単数でな
ければならなかった。複数になる
と、それは多重人格になって、病
理現象になると考える。(しかし、)
複数のアイデンティティーをもつ者
は、思考に弾力性
65
アイデンティティーの複数性
があり、短絡的行動をしなくなる。
複数のアイデンティティーを持って
いて、なおかつそれを「一貫性を持
つ個人」と呼べるのか、が欧米人
の一番訊きたいところだろう。(河合
隼雄『日本文化のゆくえ』岩波書店、2000年、
p.256)
66
状況倫理の特性
・相対性
・非規範性
・個別性
・主体的判断
・現実対応性
・相互信頼
・柔軟性
・察知力
67
倫理行為類型

状況型行為

標準型行為

規範型行為

定律型行為
68
基督者の行為類型
(
)型行為
(
)型行為
69
一般倫理における倫理観の相違

社会学的原因
– 社会環境の文化的相違(David Riesman)

伝統志向性社会の倫理

内部志向性社会の倫理

対人志向性社会の倫理
70
一般倫理における倫理観の相違
 社会学的原因
– 社会環境の文化的相違(Ruth Benedict)

恥の文化環境

罪の文化環境
71
一般倫理における倫理観の相違
 社会心理学的原因
– Socializationの過程において

倫理観が個人の生活に内面化する過程
– Socializationの執行者

両親、兄弟、友達、教師、メディア

家族,グループ、と社会の三重のImpact
72
倫理観の発達段階(社会化)
George H. Mead
 準備段階
 ままごと段階
 ゲーム段階
73
倫理観の多様性の要因
社会学的要因
– 地域社会の文化コンテキスト
– 地域社会の社会学的規範のレベル
心理学的要因
– 社会化過程における倫理的価値観の習得
– 倫理規範が個人に内面化する過程におけ
る倫理観の確立
74
一般倫理と聖書倫理の定義の相違
社会における人と人と  神の前にキリストと共
に世に立つ人間の行
の関係を定める規範、
動様式
原理、規則の総体
 神と人とこの世との関
 人と人との関係の中
係の中に生まれる聖
に生まれる一般倫理
書倫理


習慣と自覚を基盤とし
ている一般倫理

書かれた啓示を基盤
としている聖書倫理
75
一般倫理と聖書倫理の根本的相違
(創3:1-24)

恥の倫理

罪の倫理

裸であることを恥ずか

主の声を聞いて御顔を
避ける倫理観

神の戒め(出20:2-17)・
契約(創9:9-17)に起因
する倫理

賦与された倫理
しく思う倫理観

人々の合意から生み出
されていく倫理

造り出された倫理
•聖書倫理は人間論から始まらない
•聖化の過程における習慣の重要性
76
一般倫理と聖書倫理の根本的相違
倫理規範は何処にあるか
 聖書倫理
 一般倫理
– 社会に所属
– 神に所属、聖書に記載
倫理規範実践力の養成は何処で行われるか
– 家庭
– 教会共同体の交わり
– 聖霊の導きのある場
77
一般倫理と聖書倫理の根本的相違
倫理規範の根拠を何処におくか

一般倫理
– 倫理規範設定の主
管者は人間
– 人間の理性的判断

聖書倫理
– 倫理規範設定の主管
者は人間を創造した神
– 霊感された神の言葉に
対する応答
78
ローマ人への手紙
そ
う
12~16章 い 1~11章
う
福
福
わ
音
音
け
の
の
倫理的行動
倫理的規範
で
実
教
す
践
義
か
79
人間は、キリストの義を通
してのみ倫理的に完全にな
りうる。…キリストは人格を
再創造することで人間を新
しくする。
(鄭正淑チョン・チョンスク、p.285)
80
聖書倫理における倫理観の相違

神学的背景に依存する聖書倫理規範の設定

聖書解釈・釈義の結果に依存する聖書倫理
規範の設定

神学的背景如何により影響を受ける聖書解
釈・釈義の結果

これらが倫理スタンスに影響
81
倫
理
ス
タ
ン
ス
聖
範書
の倫
設
理
定
規
聖聖
書書
釈解
義釈
神
学
的
背
景
82
新約倫理-山上の垂訓(1)

中世の解釈:信徒に対してではなく修道士だけ
の規範

ルターの解釈:すべての人間に妥当な規範

トルストイの解釈:文字通り実行に移すべき規範

シュバイッツアーの解釈:主が十字架に付けら
れるまでの暫定的・例外的規範

未来の律法としての解釈:現在に適用されない規範
(多井、pp.46-49)
83
新約倫理-山上の垂訓(2)

実存主義的解釈
– 自由の方向性に対する単なる示唆

個人倫理に関する道徳規範としての解釈
– 一対一の隣人関係においてのみ妥当とする規範

行為の一般原則としての解釈
– 自分の行為は自分の言葉に拘束されているとい
う原則
84
神の性質の反映としての聖書倫理
(マーレイ--pp.233-262)

神の道徳的属性に起因するキリスト教倫理
– 神の聖
 神の全存在を示す属性--神性とほぼ同意語
 他の一切から超越し、隔絶された絶対的な存
在を顕す属性
 抽象的な観念ではなく、贖罪の業に密接に関
係する属性
 神の道徳的属性であるばかりでなく、人に要
求される聖 (レビ19:2,1ペテ1:16) “
85
神の性質の反映としての聖書倫理
(マーレイ--pp.233-262)

神の道徳的属性に起因するキリスト教倫理
– 神の聖



神の道徳的属性であるばかりでなく、人に要
求される聖 (レビ19:2,1ペテ1:16)
聖別--主なる神との関係において(人の神に対
する倫理)
聖化--神の聖なる性質の分与 (神の人に対
する倫理)
86
神の性質の反映としての聖書倫理
(マーレイ--pp.233-262)

神の道徳的属性に起因するキリスト教倫理
– 神の義

規範となるべきもの、正しい基準の意 (申32:4)

神の聖と密接な関係--旧約において (イザ5:16)
– 神の聖--分離の業、神の聖なる性質に与らせ
る業
– 神の義--神の規範的な言葉と行為
87
神の性質の反映としての聖書倫理
(マーレイ--pp.233-262)

神の道徳的属性に起因するキリスト教倫理
– 神の義

神の義と救いの関係--新約において (ロマ1:17)

旧約時代--神の義と聖は悔い改めと信仰のしるし
であるいけにえによって満たされる。

新約時代--キリストの十字架によって最終的に完
全に満たされた。(マタ5:17、ロマ3:21ー26)
88
神の性質の反映としての聖書倫理
(マーレイ--pp.233-262)

神の道徳的属性に起因するキリスト教倫理
– 神の義
 倫理的要求の実現
– 新生--聖潔の要求に合う意向や性格の形成
– 義認--神の至高の権威によって罪人が義と認
められる
• 義認の根拠であるキリストの死と復活
• 聖化の基礎である義認
89

神の性質の反映としての聖書倫理
(マーレイ--pp.233-262)
神の道徳的属性に起因するキリスト教倫理
– 神の愛


神の道徳的属性であるばかりでなく、様々な行
為の善悪を規定する尺度になる最高の原則
– キリスト教倫理における道徳原則
倫理的に究極の価値を持つ愛
– 愛の起点(1ヨハ4:7)愛の啓示(ロマ5:8)
愛の認識(1ヨハ3:16)愛の根拠(1ヨハ
4:10,11,19)
90
神の性質の反映としての聖書倫理
(マーレイ--pp.233-262)

神の道徳的属性に起因するキリスト教倫理
– 神の愛

倫理的に究極の価値を持つ愛
– 手段としての愛
• 救いの完成、自己充足を得るため
– 目的としての愛
• 神は愛であるから (1ヨハ4:16)
• 神の戒めであるから(ヨハ13:34,1ヨハ
3:11,23)
91
キリスト教倫理の主要素

その土台...自由と規制の法則
– 律法からの解放(ロマ3:20ー28)
– 律法の成就(マタ5:17:20)
– 律法の確立(ロマ3:31)

その目的...神の栄光のため--神に対して
– キリスト者の行動・生活の究極の目的
– 神の栄光を顕すこと
– 神のみ旨の成就
– 神の御名が崇められるため
92
キリスト教倫理の主要素

その実質...全き愛--人に対して
– 動機において純粋
– 報いを求めぬ愛
だからの愛
 にもかかわらずの愛


その責務...潔めの成就--自己・社会に対して
– 内に向かっての潔め...キリストのごとくなる
– 外に向かっての潔め...み国の進展
93
これまでのクラスで理解すべきこと
1.ある行為が正しいかどうかの判断を正当化
する根拠は何か?
2.ある倫理的規範が正当かどうかを判断する
根拠は何か?
3.一般社会規範はどの様な過程で成立するの
か?
4.一般社会規範における3つのカテゴリーは
何か?
5.何故功利主義的倫理観を聖書的に受け入
れることができないのか?
94
これまでのクラスで理解すべきこと
1.日本独特の社会規範を生み出した基層文
化とは何か、それに対比する基層文化は
何か?
2.日本人一般と基督者とは倫理行為類型に
おいてどの様な違いがあるか?
3.聖書的倫理には何が反映されていなけれ
ばならないのか?
95
これまでのクラスで理解すべきこと
4.一般倫理と聖書倫理において倫理規範
の根拠に根本的な相違がある。それは何
か?
5.一般倫理と比較して聖書的倫理にはどの
様な究極の目的があるのか?
96
97
新約聖書の愛-
Ajgavph

世を愛する神の愛(ヨハ3:16)

罪人を愛する神の愛(ロマ5:8)

教会を愛する主イエスの愛(エペ
5:25)

個人を愛する主イエスの愛(ガラ
2:20)
98
社会規範

習俗、慣習、法規のいずれか?
– 愛国心
– 昼寝
– 学生マニュアル
– 披露宴
– 焼香
– 早天祈祷
– 豚のモツ
(慣習)
(因習)
(法規)
(因習)
(慣習)
(因習・慣習・法規 )
(因習・法規
)
99
日本文化
型
内
容
100
日本文化
型
個
性
の
抑
圧
個
人
差
の
不
問
絶
対
平
等
性
内
容
易行
101
個性と型
日本の伝統的芸能
 よい「型」を身につけると師匠クラスに
 日本式絶対平等感
 個人差・能力差の不問

102