Transcript 負けない診断
病歴 ー多々益々辨ず?ー
どちらをやればいいの? • 詳細な病歴 • 要点を突いた病歴 あなた:イケダ先生はどうやっているんですか イケダ:使い分けている あなた:どうやって使い分けているんです イケダ:患者さんを診ながら臨機応変 あなた:つまり,行き当たりばったりってことですね イケダ:そういう表現の仕方もある
OPQRST :茶道のお作法? • • • • • • 確かに系統的な病歴聴取法かもしれない でも,全ての項目が常に必要なのだろうか? 全ての項目が常に等しく重要なのだろうか? 重要性が異なるのなら,それを踏まえて問診の掘 り下げ方向も決まってくるのではないだろうか? 指導医が実際には OPQRST を使っていないのは さぼっているのではなく,それなりの理由があるの ではないだろうか?
仮説演繹法 • 系統的に鑑別診断を挙げる – 部位(解剖・臓器)別:頭皮,筋肉,血管,頭蓋 骨,髄膜,髄液,脳実質 – 病態別: VINDICATE: Vascular, Inflammatory, Neoplasm, Degenerative, Intoxication, Congenital, Autoimmune/Allergy, Trauma, Endocrine この症例で考慮すべき疾患を○つあげてみよう いくつ挙げられる?いくつでも挙げられる?
仮説演繹法:茶道のお作法? • • • • • • 確かに系統的な鑑別診断法かもしれない でも,全ての項目が常に必要なのだろうか? 全ての項目が常に等しく重要なのだろうか? 重要性が異なるのなら,それを踏まえて鑑別の掘り 下げ方向も決まってくるのではないだろうか? 指導医が実際には仮説演繹法を使っていないのは さぼっているのではなく,それなりの理由があるので はないだろうか?
考慮すべき疾患って? どうやって決めるの? • • • • • • 可能性の高い疾患? 可能性は低くても,見逃せない疾患? 緊急性のある疾患? 治療法のある疾患? 自分が興味を持っている疾患? 先日学会で聴いた疾患?
• • あなた:どちらをやればいいんです か? 詳細な病歴聴取 • 要点を突いた病歴聴取 • Systematic Review • Focused Physical Exam 系統的な鑑別診断 • 診断の絞込み イケダ:使い分けるんだ あなた:どうやって?どういう患者さんが, どういう時に・・・ イケダ:うん,大切な問題だね.あっ,外来 に呼ばれたからまた後で・・・
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診断”とは何ぞや?
どうすればいいのか、誰も教えてくれない ↓ 診断リスクという面から考えてみよう
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負けない診断”という概念
外来:患者さんとの対局
“ 勝つ”のか“負けない”のか? 「雙六の上手といひし人に、その術を 問ひ侍りしかば、「勝たんと打つべか らず、負けじと打つべきなり。いづれ の手か疾く負けぬべきと案じて、その 手をつかはずして、一目なりとも遲く 負くべき手につくべし」と言ふ。」 (徒然草 第百十段)
負けない診断 診断リスクの低減
という発想
地雷はどこに埋まっているのか?
勝つ診断 負けない診断 • • • 安い手でも上がる 当てることが大切 注目する点 – 高有病率 – 検査の availability – 検査の感度 – 病歴・診察の比重低 • • • 振り込まない 重大な見逃しを防ぐ 注目する点 – 予後・緊急性 – 介入と予後の関係 – 検査の特異度 – 病歴・診察の比重高
診断リスク低減とは? 外来初診で主訴が頭痛だった場合 1.
2.
4.
5.
偏頭痛 筋収縮性頭痛 3.
脳腫瘍 くも膜下出血 髄膜炎 1.
くも膜下出血 2.
髄膜炎 3.
緑内障 4.
5.
側頭動脈炎 脳静脈洞血栓症 どちらが診断リスクが低いか?
負けない診断が目指すもの • • • • 診断リスクの低減 – 医師・患者両方の利益 効率の良い診断アルゴリズム – 診断にかかる時間 – 検査 – コスト エビデンスの構築 教育に生かす
負けない診断のイメージ 脆弱性の予想される部位を補強する
診断リスクとは何か? 診断リスクはどこにある? 診断リスク発生源? 患者,医療者,その間,そして病気
診断リスクの多様性 • • • 医療者側要因 – 生物学的要因(睡眠,疲労,視力,記銘力・・) – 社会的要因(教育・訓練歴,検査設備・・・・) 患者の持っている疾病 患者と医療者の相互作用から生まれる感情・ 行動
医療者・施設側のリスク
• 技術・知識の水準 • 環境 – ハードな環境 – ソフトな環境 • 労働時間,職場の雰囲気
診断リスクの多様性 • • • 医療者側要因 – 生物学的要因(睡眠,疲労,視力,記銘力・・) – 社会的要因(教育・訓練歴,検査設備・・・・) 患者の持っている疾病 患者と医療者の相互作用から生まれる感情・ 行動
診断リスクの高い疾患の条件 • • プロセス面でのリスク:誤診しやすい – 表現型が軽症疾患と類似 – 気軽に検査に走りやすい アウトカム面でのリスク:結果が重篤 – 急速に進行する – 予後が重篤 – 迅速な介入で予後が改善する
誤診を惹起しやすい具体例 • • 意識障害の時の脳梗塞 – 有病率が高い – 手軽に検査ができる( CT) 表現型が同じで原因が異なる – 頭痛:くも膜下出血と髄膜炎 – 貧血:鉄欠乏性貧血と結腸癌
主訴・症候と診断の“距離” • • • 心窩部痛 – 近い:消化性潰瘍 – 遠い:糖尿病性ケトアシドーシス,急性心筋梗塞 頭痛 – 近い:くも膜下出血,髄膜炎 – 遠い:高炭酸ガス血症 トランスアミナーゼ上昇 – 近い:肝機能障害 – 遠い:甲状腺機能低下症
距離を意識した診断リスク低減 • • • 遠近の意識 遠いものからまず片付ける(除外) 遠いものを引き出しの目立つところに 行き過ぎるとシマウマ探しになる
診断リスクの多様性 • • • 医療者側要因 – 生物学的要因(睡眠,疲労,視力,記銘力・・) – 社会的要因(教育・訓練歴,検査設備・・・・) 患者の持っている疾病 患者と医療者の相互作用から生まれる感情・ 行動
診断リスクの高い患者 • • • • • • • • • • 高齢者 痴呆 精神疾患 薬物依存 酔っ払い 不定愁訴 おなじみさん アウトロー 他科・他院 一見軽症例