CPRAを創った音事協 ー著作隣接権の生成と芸能組織ー

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CPRAを創った音事協
ー著作隣接権の生成と芸能組織ー
棚 野 正 士
音事協特別顧問
(IT企業法務研究所代表主任研究員)
実演の定義(著作権法2-1-3)

著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、
口演し、朗詠し、又はその他の方法により演
ずること(これらに類する行為で、著作物を演
じないが芸能的な性質を有するものを含む)
をいう。
実演家の定義(著作権法2-1-4)

俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行
う者及び実演を指揮し、又は演出する者をい
う。
“実演家”という概念の私的イメージ

実演家=実演者(自然人)+事業者(法人)
著作権法制の枠組についての私見
著作権
著作隣接権
著作者
実演家
レコード製作者
放送事業者
有線放送事業者
著作者の権利(原則自然人)
実演家の権利(自然人)
企業者の権利(法人)
著作者
実演家
レコード製作者
放送事業者
有線放送事業者
新たな事業者(出版者、プロダク
ションなど)
ドイツ著作権法(1965年9月5日著作権及び著作隣接権に関する法律。
1993年6月9日改正、同年9月27日改正。)
(斉藤博訳・CRIC外国著作権法令集(16))
「第79条 労働ないし雇用関係にある実演家:
実演家が、労働ないし雇用関係から生ずる義務の履行として実演を提供し
たときは、特約のない限り、使用者ないし雇主が、その実演をいかなる範
囲において、いかなる条件の下で利用し、その利用を他人に許諾できるか
は、労働ないし雇用関係の本質によって定まる。」
「第80条 合唱、オーケストラ演奏及び舞台の上演:
1 合唱、オーケストラ演奏及び舞台上演において、第74条(注:映写機及
び拡声機による伝達)、第75条(注:複製)及び第76条第1項(放送)の場
合には、独唱・独奏者、指揮者及び演出者の同意とともに、合唱団、オーケ
ストラ、バレー団及び劇団のごとき共演者集団の選出された代表者(理事
会)の同意をもつて足りる。集団に理事会がないときは、集団に属する実演
家の同意は、集団の長の同意をもって代える。
ドイツ著作権法(1965年9月5日著作権及び著作隣接権に関する法律。19
93年6月9日改正、同年9月27日改正。)
(斉藤博訳・CRIC外国著作権法令集(16)) (続き)
2 第74条(注:映写機及び拡声器による伝達)から第77条(注:
公の再生)までの規定から生ずる権利の行使については、同意権
を除き、合唱、オーケストラ演奏及び舞台上演においては、それ
ぞれ共演者集団のためにその理事会が、集団に理事会がないと
きは、この集団の長がひとり権限を有する。この権限は管理団体
に譲渡することができる。」
「第81条 開催者の保護:
実演家の実演が企業によって催される場合で、第74条、第75条
及び第76条第1項に該当するときは、実演家の同意とともに、企
業主の同意をも要する。」
著作権法第15条(職務上作成する著作物
の著作者)
第1項:法人その他使用者の発意
に基づきその法人等の業務に従事
する者が職務上作成する著作物で、
その法人等が自己の名義の下に
公表するものの著作者は、その作
成の時における契約、勤務規則そ
の他に別段の定めがない限り、そ
の法人等とする。
法施行時の芸団協契約例
NHK「実演の再利用に関する契約」
NHK「リピート放送料に関する覚書」
民放連「テレビ放送(ラジオ放送)に関する
基本協定書」
NHK「商業用レコード二次使用料に関する
契約書」
民放連「商業用レコードの放送使用に関する
協定書」
1970年代と1990年代にみる
実演家の権利の生成と発展
1970年代
1990年代
権利の性格
基調にある社会法的性格
(例)レコード二次使用におけ
る機械的失業という考え方
私権の原則への回帰と現代法的
発展(権利者の財産権の管理)
包括処理する主な
権利
レコード二次使用料請求権
レコード二次使用料請求権
レコード録音権
放送番組の利用に伴う権利
貸レコード許諾権
貸レコード報酬請求権
私的録音補償金請求権
私的録画補償金請求権
放送番組の利用に伴う権利
送信可能化権
視聴覚固定物(放送番組以外)の
利用に伴う権利
1970年代と1990年代にみる
実演家の権利の生成と発展
1970年代
1990年代
対価の性格
補償金(全体への補償)
使用料(他人である権利者のお
金)
使用料の算出
ブランケット方式
使用実績方式
年間使用料
3,000万円(1972年)
60億円(1998年)
分配
(レコード二次使用
料の例)
包括的使用
(個別分配はしない)
個別分配
団体への拠出
共通目的使用
分配データ
(レコード二次使用
料の例)
データなし
データ整備可能
技術環境
アナログ
デジタル
権利者
内国人
内国人
外国人
実演家著作隣接権センター(CPRA)
規約から
第3条 隣接権センターは、業務を執行するため、
顧問会議、運営委員会及び事務局を設ける。
第4条 顧問会議は次の者によって構成する。
(1)芸団協会長の職にある者
(2)社団法人日本音楽事業者協会会長の職
にある者
(3)社団法人音楽制作者連盟理事長の職にある者
2 顧問会議の議長は、芸団協会長とする。
芸団協定款第32条
(実演家著作隣接権センター)
この法人内に実演家著作隣接権センターを置く。
2 実演家著作隣接権センターの業務執行のため、
実演家著作隣接権センター運営委員会を設ける。
実演家著作隣接権センター運営委員会の規程は別
に定める。
3.実演家著作隣接権センターの業務執行に必要
な専門的事項は、実演家著作隣接権センター運営
委員会において別に定める。
CPRAの基本理念
1.独立性
2.専門性
3.透明性
団体主義から私的財産権管理の
基本思想への回帰
各人の物は各人の元へ
権利者の物は権利者の元へ
法解釈の怪しさとその背景
1.ワンチャンス主義というユウレイ
2.iPod私的録音問題でのすり替え
3.有線放送における目くらまし
著作物の利用の許諾(実演に準用)
第63条(著作物の利用の許諾):著作権者は、他人に対し、
その著作物の利用を許諾することができる。
2 前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及
び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を
利用することができる。
(読み替え)実演家は、他人に対し、その実演の利用を許
諾することができる。
2 前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及
び条件の範囲内において、その許諾に係る実演を利
用することができる。
著作権法に見る「契約」
第93条(放送のための固定)
“契約に別段の定めがある場合は、この限りで
ない。”
第94条(放送のための固定物等による放送)
“契約に別段の定めがない限り、次に掲げる放
送において放送することができる。”
1961年ローマ条約以来の課題の
解決のために(「映画問題」)



1.国際条約(WIPO視聴覚実演
条約)の作成
2.国内法改正(映画に関する規
定の見直し)
3.実務基盤整備(CPRA等の基盤整
備)
実演家の権利のための運動力学
(ひとつの個人的メモ)
問題の発見と整理
誰かがやってくれる
わけではない。
問題の提起と発信
何もしなければ何も
起きない。
運
動
大きい声を出さない
と聞こえない。大きく
動かないと見えない。
団体の役割
行政府/立法府
/学会/マスコミ
/社会一般への
働きかけ
国内的、国際的連
携の必要性
実演家の権利のための運動力学
(ひとつの個人的メモ)
自分でやらなけれ
ばひとはやってくれ
ない。
製作者/利用者と
の話し合い、契約
法制度の見直し
法律は一日ではで
きない。
団体の機能の拡大
法を生かすための
契約
権利を絵に画いた
餅にしないために。
団体的契約の確立
実態づくり
時代の風は緩やかなフォロー
1.文化芸術振興基本法(2001)
2.知的財産基本法(2002)
3.コンテンツの創造、保護及び活用の促進に
関する法律(2004)
4.知的財産戦略本部(2005)
6.知的財産推進計画(2004,2005,2006)
知的財産推進計画に見る事業例
1.地域における知的財産計画の推進
2.地方公共団体との連携
3.観光との連携
4.人材育成
5.新しいコンテンツ造りの促進
6.ライブエンターテインメントの振興
7.ファンドによる資金調達に対する投資の促進
8.流通市場の形成
9.海外展開の拡大
10.アジアとの連携
11.企業との連携
など