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シーロメーターによる
海洋上低層雲、混合層の観測
交通電子機械工学課程
2002815 川原 洋志
発表内容
•
•
•
•
•
•
研究背景及び目的
大気境界層構造と雲
観測装置及び観測場所
ライダー方程式
データ解析と考察
まとめ
研究背景及び目的
• 船舶を用いたライダー観測を行い、我々にとって
最も身近な大気である大気境界層及び低層雲の
観測的研究に取りくんでいる。
• 大気境界層の構造および雲底分布等を観測して
海洋上での気象との関係を明らかにする。
• 本研究では太平洋上を航海する白鳳丸(KH05
-2)に雲底観測装置であるレーザーシーロメー
ターを搭載し海洋上低層雲、混合層の観測、解
析を行った。
大気境界層と雲
• 大気境界層とは地上からの高度約2 kmまでの
地表との摩擦や熱対流の影響の及ぶ低層大気
の総称。
• 混合層とは、日射の加熱で不安定化した、上下
の対流混合が盛んな層のことである。
• 昼間では、一般に大気境界層高度と混合層高度
が一致している。
• しばしば混合層の上端に積雲が現われ混合層
雲が発生することがある。
観測装置
• シーロメーターは、主に空
シーロメーター
港に設置され航行の安全
のため使用されている雲
底観測装置である小型の
ライダーのことである。
ライダー
• 地上からレーザー光を利
用して上空7.5 kmまでにあ
る雲底の高さを測定できる。
白鳳丸に取り付けられたシーロメーターの概観
観測装置仕様
使用装置
計測方式
Vaisala社製CT-25K
ライダー
レーザー
波長
光検出器
パルスダイオード InGaAs MOCVDレーザー
905±20nm (25℃)
シリコンアバランシュフォトダイオード
7.5kmまで (高さ3層まで測定できる)
測定範囲
光学方式
1レンズ (球型) 直径15cm
サンプリングタイム 15秒 (可変)
雲底に対して15m
距離分解能
後方散乱プロファイルに対して30m
観測領域及び期間
• 観測領域 : 中部北太平洋上を航海する白鳳丸
• 観測期間 : 2005年8月8日~2005年9月21日(45日間)
• 航海図及び日時・位置関係
白鳳丸(KH05-2)
ライダー方程式
C (r)Y (r)T (r)
P(r) 
 PB
2
r
2
C : 装置定数
 (r) : エアロゾル濃度に関係した体積後方散乱
Y (r) : 幾何学的効率
T (r) : 大気の透過率
R
PB : 背景光強度
T (R)  exp{  ( z)dz}
0
データ解析と考察
• 雲底高度及び混合層高度の変化
• 気温・水温・気圧との雲底の相関関係
• 南北方向の緯度差による変化
• 相対温度と雲底の相関関係
雲底高度及び混合層高度の判定アルゴリズム
1) 1分毎の30 m分解能の後方散乱係数Bsプロファイルを10分区切りで平均化
する(船の揺れ角度の相殺、ノイズ低減化)。
2) 水平方向測定から得たY(R)による近距離プロファイルの補正を行なう
(R<0.3675 km)。
3) 1 km以上のBsについて3点(90 m)で移動平均をとり平滑化する。
4) 高度2.5 km以下についてBsとdBs/drの値に基づいて雲底高度及び混合
層高度を判別する。
最低雲底高度:下層から上層に向かってdBs/drを計算し、2点以上にわたっ
て+0.05 km-2sr-1超える場合の高度を雲底高度(ここではCB)とする。また、
比較のため、1分毎にシーロメーターが判定した雲底高度の平均値をここでは、
CB1とした。
混合層高度: 下層から上層に向かってdBs/drを計算し、2点以上にわたって
-0.004 km-2sr-1以下のとき、その最小のdBs/drを与える高度を混合層高
度(ここではTAL)とする。
5) さらに不良データ部分の除去、海上の雨強度及びプロファイル自身による降
水のあるデータの除去、混合層高度より上層の雲底データの除去を行
なった。 残るのは雨の降っていないときの海上混合層高度とそれに比
較的よく一致する海上混合層雲底高度のみ。
雲底高度の判定例
シーロメーターの判
定高度はKlettの方
法に基づく、高高度
からの消散係数の
変化率に基づいて
おり、通常、ライダー
で雲底の判定に用
いられる雲底下部で
の信号変化率とは
探索の方向が逆で
あるため、各々の雲
底高度に系統的な
差が生ずる。即ち、
CB1>CB
雲底高度・混合層高度、時系列データ
2.5
8月8日~8月31日
Altitude (km)
2
low est_C B
TAL1
averaged C B1
1.5
1
0.5
エピソード1
0
8
13
cb1:シーロメーターレポート値
cb:解析による雲底
18
23
Date (JST)
28
エピソード
2
2.5
tal:混合層高度
9月1日~9月21日
Altitude (km)
2
1.5
1
エピソード
3
0.5
0
1
6
11
Date (JST)
16
エピソード
4
21
気温と水温の温度差との雲底の変化
low est_C B
TAL1
averaged C B1
2.5
エピソード1
Altitude (hPa)
Altitude (km)
2.5
(1)・(4)より急激
な雲底高度の変化
2
のとき気温と水温
の差が大きい。
1.5
1
0.5
1.5
1
0.5
0
-3
cb1:シーロメーターレポート値
-2
cb:解析による雲底
-1
AT-SST (℃)
0
0
1
-3
2.5
Altitude (km)
tal:混合層高度
エピソード2
2
-2
-1
0
AT-SST (℃)
1
2.5
エピソード3
2
エピソード4
Altitude (km)
(2)・(3)より、ゆっ
くりとした雲底変化
1.5
のとき気温・水温
1
の差からは雲の変
化はみられない。
0.5
2
1.5
1
0.5
0
0
-3
-2
-1
AT-SST (℃)
0
1
-6
-5
-4
-3
-2
-1
AT-SST (℃)
0
1
気圧による雲底の変化
エピソード1
1.5
1
Altitude (km)
2
2.5
0.5
cb1:シーロメーターレポート値
0
1005
cb:解析による雲底
tal:混合層高度
1010
気圧 (hPa)
1015
Altitude (km)
エピソード3
1.5
1
1.5
1
0
1005
1010
気圧 (hPa)
1015
2
エピソード4
1.5
1
0.5
0.5
0
1015
エピソード2
2.5
2.5
2
2
0.5
Altitude (km)
low est_C B
TAL1
averaged C B1
Altitude (km)
2.5
1020
1025
気圧 (hPa)
1030
0
1020
1025
気圧 (hPa)
1030
気温・水温・気圧の雲底高度への影響
(1
(4
• エピソード(1)・(4)より気温と水温の差が
)
)
大きくなると雲底の高度は急激に変化する。
(気圧が上がると雲は下降、気圧が下がる
と雲は上昇する)
(2)
(3)
• エピソード(2)・(4)からゆるやかな雲底高
度及び混合層高度の変化は水温・気温か
らは見られないが、気圧の変化には雲底
の動きがあらわれていた。
緯度差による雲底高度及び混合層高度
8月8~31日
8月8日出発
9月1~21日
1.2
1.2
1
0.8
Altitude [km]
Altitude [km]
1
0.6
0.4
0.2
ave(cb)
ave(tal)
ave(cb1)
0
-15 -10 -5
0
0.8
0.6
ave(cb)
ave(tal)
ave(cb1)
0.4
0.2
5 10 15 20 25 30 35
Latitude
0
20
25
30
35
40
Latitude
45
50
55
緯度との気温・水温・気圧のグラフ
緯度と気温・水温の変化
1
AT-SST (℃)
0
-1
-2
-3
-4
-5
-15
-10
-5
0
5
10
15
20
25
30
35
40
25
30
35
40
Latitude
緯度と気圧の変化
1020
気圧 (hPa)
1015
1010
1005
1000
-15
-10
-5
0
5
10
15
Lat
i
t
ude
20
緯度による雲底への影響
• 雲底高度が低いとみられる緯度10~0度
では、前後の緯度間の値より気温と水温
の差が大きく、気圧が高くなっている。
• エピソード1の雲底高度の急な下降との話
と一致している。
相対湿度と解析による雲底高度の変化
9月1日~9月21日
2.5
2.5
2
2
Cloud base [km]
Cloud base [km]
8月8日~8月31日
1.5
1
1
0.5
0.5
0
0.6
1.5
0.7
0.8
0.9
Relative humidity
1
0
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
Relative humidity
1
まとめ
• 気温より水温の方が高い場合に雲底高度・混合
層高度に急激な変化が見られる。
→大気が不安定なため雲底の変化が早くなる。
• 雲底高度・混合層高度と気圧の変化との関係が
みられた。
• 緯度の違いからみられる雲底高度・混合層高度
の変化は緯度の違いによる気温・水温・気圧の
変化がみられる。
• 相対湿度から雲底高度・混合層高度は、下が乾
いていると雲底は高く、湿ってると低い。