ポスター(power point file) - 玉川高エネルギー宇宙物理研究室

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P52 全天X線監視装置(MAXI)の特徴
Monitor of All-sky X-ray Image
上野 史郎、冨田 洋、片山 晴善、磯部 直樹、森井 幹雄、横田 孝夫、倉又 尚之、川崎 一義、松岡 勝 (JAXA)、
三原 建弘、小浜 光洋 (理化学研究所)、常深 博、宮田 恵美 (大阪大)、河合 誠之、片岡淳 (東工大)、
吉田篤正、山岡 和貴 (青学大)、根来 均 (日大)
MAXIのホームページ: http://www-maxi.tksc.jaxa.jp/
Eメールアドレス:[email protected]
2008年8月に、種子島宇宙センターから国際宇宙ステーションISS(International Space Station)へむけて、H-IIAロケット(液体エンジンを2基クラスタ化した輸
送能力向上型)の軌道間輸送機HTV(H-II Transfer Vehicle)に載って全天X線監視装置MAXI(Monitor of All-sky X-ray Image)が打ち上がります。
LHPの動作原理と利点
このポスターではMAXIの装置としての特徴を、良く聞かれる質問(FAQ:Frequently Asked Question)への回答として焦点をしぼり紹介します。
また、ミッション開発に関するFAQ(MAXI打ち上げまでの道のりに対する質問)の回答も付録として収録しました。
※ MAXIは現在、JAXA、理科学研究所、大阪大学、東京工業大学、青山学院大学、日本大学が協力して開発をすすめています。
MAXIの開発状況全般については、 P51「国際宇宙ステーション搭載全天X線監視装置(MAXI)の開発」 冨田洋
MAXIのサイエンスについては、 P16「MAXI&Astro-E2時代のbinaryの研究」 三原建弘、 P17「MAXI&Astro-E2時代のAGN研究」 根来均
基本性能
ロボットアームのTarget兼つかみどころ。
項目
仕様
Gas Slit Camera (GSC)
空のカバー率
160度(長さ)×1.5度(半値幅)の視野を2方向に持つ。
瞬時、瞬時に監視する空の領域は、全天の2%。
90分(ISSの軌道・自転周期)ごとに全天の90~98%を走査。
撮像能力
点源像の広がりは1.5度(半値幅)。
天体位置決定精度(accuracy) 6分角以内。
検出エネルギー・分解能
Solid-state Slit Camera (SSC)
この白い布はβクロスと言って、
普通のMLI外表面より原子状
酸素耐性が高いといわれている。
原子状酸素の多い低軌道を
飛ぶシャトルのカーゴベイ内にも
貼ってある。可視光の吸収率
は低く、赤外線の放射率は高い。
2~30 keV のX線光子を検出。分解能 18% @5.9 keV。
時間分解能
GPS時刻系に対する精度 120マイクロ秒。
検出感度(5σレベル)
10 mCrab(1周回)、 1 mCrab(1週間)。
空のカバー率
90度(長さ)×1.5度(半値幅)の視野を2方向にもつ。
瞬時、瞬時に監視する空の領域は、全天の1.3%。
90分(ISSの軌道・自転周期)ごとに、全天の最大70%を走査。
X線CCDカメラ
(SSC)を冷やす
ための放射板。
ハニカムパネルで
中をヒートパイプ
が走っている。
表面は、Z93という
White Paint。
点源像の広がりは1.5度(半値幅)。
天体位置決定精度(accuracy) 6分角以内。
撮像能力
検出エネルギー・分解能
0.5~10 keVのX線光子を検出。分解能 <[email protected]。
時間分解能
3秒~16秒 (CCD撮像器の電荷読出し方法による)。
検出感度(5σレベル)
20mCrab(1周回)、 2 mCrab(1週間)。
リアルタイムデータ
速
報
能
力
MAXIの姿勢を知るためのスターセンサ
のバッフルの開口部。
機上蓄積データ
H-II Transfer Vehicle搭載時に
MAXIを固定する足
全観測時間の50%以上の間、データを即座に地上に転送。
X線天体が視野を横切ってから、地上でのデータ解析を経て
インターネットで速報するまでに要する時間は30秒以下。
MAXIの熱機械モデル
残りのデータはいったん機上に蓄積される。X線天体が視野を
見た目は、実際打上げる物とほとんど同じです。
横切ってから速報までに要する時間は20分~3時間。
ユ
ー
ザ
ー
利
用
速報受取り
突発的な光度変化をおこした天体の情報を
一般ユーザーにインターネットを通じて速報。
MAXIの大きさ:
185cm×80cm(幅)×100cm(高さ)
重量:
500 kg
一般ユーザは、Webブラウザを通しインターネット経由で、任意のX
線天体や空領域の「画像・エネルギースペクル・光度曲線」を取得。
データ利用
この2つの視野がSSC(X線CCDカメラ)の視野。
残りは全てGSC(X線ガスカメラ)の視野。
広視野をカバーするために、X線ミラーを使わずスリットカメラを採用した。コリメータ板群で
天球上に細長いストリップ状の視野を確保し、それにスリットと1次元位置検出器を組み合
わせることによって、ストリップに沿った1次元撮像を実現する。
1次元位置検出器として、GSC(Gas Slit Camera)ではPosition Sensitive Proportional
Countersを、SSC(Solid-state Slit Camera)ではX-ray CCD chipsを使う。
スリット&コリメータと1次元位置検出器でつくられる、1次元空間分解された扇状視野
が、宇宙ステーションの地球周回同期自転(周期90分)で空をはいて、全天の2次元イメー
ジを撮像する。
MAXI scans almost the whole sky
once every orbit (= every 90 mins)
Simulation: 5-month observation
可視化したX線カメラ視野
(水色で示したものが視野)
コリメータ
1次元位置検出器
スリット&コリメータと1次元位置検出器と宇宙機自転スキャンの組み合わせは、Ariel V衛
星(1974-1980)のAll-sky Monitorでも採用された古典的なものである。全天X線モニタ装置
として史上最大のMAXIに採用することにより、空間分解能をあげてもなお圧倒的な
Photon統計におかげで、位置決定精度やフラックス決定精度が向上した。
しかし同時に、短い観測時間においてもシステマチックエラーと競合し始めるようになり、
スリット&コリメータの機械製作技術と地上・機上キャリブレーションの重要性が増した。
このタイプの全天X線モニタにおいてPhoton統計を犠牲にせず空間分解能を良くすると
装置重量が非現実的に増大する。
マイクロチャンネルプレート鏡を使った高空間分解能かつ高感度の”Soft” X-ray 全天モ
ニタ (Lobster計画)や、X線ミラー搭載の全天サーベイ(ABRIXASの復活装置計画)など魅
力的な計画がMAXIの後に控えているが、硬X線バンド(2-30KeV)で、全天を短いサイクル
(90分に1回)で直接高感度撮像する装置は、MAXIが最初で最後になる可能性が高い。
全天カバー率と感度
MAXIの全天カバー率は1周回(90分)あたりGSCが90~98%、SSCが最大70%である。
瞬時、瞬時に監視する空の領域はずっと狭く、GSCが全天の2%、SSCが1.3%である。
MAXI視野がソースを横切るのに要する時間はもっとも短い視野中心部で40秒程度である。
よって、MAXIはガンマ線バースト観測に最適な装置ではない。MAXIの視野内でガンマ
線バーストが起こる頻度は5個/年, 350秒以内のアフターグローを検出できる確率は25個
/年と見積もられる(Yoshida et al. 1999 A&A Suppl. 138, 439)。
MAXIでモニタするのに最適なのは、タイムスケール数十分以上の現象である。
GSC(ガスカメラ)のコリメータ板が
並ぶ場所。板は図示していない。
このピンク色で
図示してあるのが
ガスカウンタの
ベリリウム膜。
膜の下がガス
封入空間。
カウンター内部の
構造(芯線等)は
図示していない。
SSC(CCDカメラ)の
コリメータ板群
(カメラボディに内蔵)
この空間に実際は
DP(データプロセッサ)、電源、
リングレーザージャイロ、GPSレシーバ、
スターセンサのDP、単相ヒートパイプ配管がある。
MAXI断面
ミッション部DPの箱
CCDチップが
16+16=計32枚
160 deg
Systematic error level
orbit
day
week
SSC
CXB
Ridge
0.16
0.062
0.015
0.0062
Internal
0.17
0.017
Crab
65.3
10.5
1スキャンのカウント数を出す
には、これに40秒を掛ける。
Data Comparison
Cross Calibration
Collimator:
124 sheets;
100 m thick;
Phosphorus Bronze
Slit
Cross Calibration between
Red Path and Blue Path.
Similarity
Ground Calibration of Slit Collimator
Preliminary Results (Collimator Quality)
Measurements
The Center Line of Field of View
Deviation < 5 %
Deviation ~ 0.03 deg (3)
within FOV of each GSC unit
within FOV of each GSC unit
Design
A Great Circle on the Sky
Relative
Size
of
Effective
Area
Distortion
of
Field of View
MAXIは検出器バックグラウンドのモ
ニタとして、ガスカウンタ窓の桟で陰と
MAXI FOV
なる部分のカウント数等が使用できる
が、それと受光面(受X線面)のバック
Zenithal View
Horizontal View
グラウンドの相関を検証することがで
できないのが難点である。MAXIの視野は地球を見ることがないので、夜地球で検出
器バックグランドを確かめることはできない。よってMAXIの研究では点源が本道であ
る。ただしSSCではCCDのエネルギー分解能を生かし銀河高温ガスの元素マッピング
を行う。
宇宙X線背景放射の直接揺らぎ測定は、先に述べた有効面積クロスキャリブレー
ションからくる限界と、検出器バックグラウンド決定の不確定性からMAXIの研究対象
にするのは困難と(主著者は)考えているが、「MAXIの全天X線表面輝度の自己相関
関数から新たな知見が得られるかどうか」はスタディしておくべきだという提案がMAXI
メンバーからあがっている。
宇宙ステーション(ISS)は低軌道(高度約400km)
The Whole System of MAXI
だが、データ中継静止衛星(高度36000km)を利
Link
用して地上と通信するので、リアルタイムコネク NASA
Real-Time Connection
> 50 % (max. 17 hr/day)
ション時間が長い。
NASA
MSFC
アンテナ切り替えや、低仰角時は通信できな
Red: Low-bit-rate data
いため、100%のリアルタイムコネクションを達
(25kpbs)
Green: Medium-bit-rate data
成するには、データ中継衛星3機が必要である。
(200-600 kbps)
最新の情報では、アメリカのデータ中継衛星群
のうち2機をISSで使用する予定で、1日あたり
JAXA
Tuskuba
Space Center,
JAXA Link
約17時間のリアルタイムコネクションが見込め MAXI
Japan
Real-Time Connection
る。一方、日本は1機のみデータ中継衛星を所
~20 % (5 hr/day)
有しており、NASAとは独立(非同期)に1日約5
時間のリアルタイムコネクションをISSに提供す
MAXI Ground System
る予定である。
No on-board
MAXIはデータレコーダを内蔵しておらず、非 Nova Search
Internet
Tsukuba Space Center, Japan
可視(非リアルタイム)時データは、宇宙ステー
DAQ,
Database,
ション側のデータレコーダに蓄えられ、可視中に
& QL
NASA Real
ダウンリンクされる。
科学観測データの主データ経路(NASA
JAXA Real
Public
Users
Link)でのリアルタイムコネクション時に、MAXI
NASA Stored
1-sec data/sec
から筑波宇宙センターまでデータが届くのに要
JAXA Stored
する時間は数秒のオーダーである。MAXI速報
のスピードアップの鍵は、地上データ解析システ
ム設計(現在設計中)が握る。
ocke
Database
for
Public
User
t
et
ck
So
Fil
e
P/
TC
Process
20 min
~
2 hours
GSC(ガスカメラ)の
カウンタとコリメータは
かなり密に配置してある。
1977-79
NASA
Same source,
Different Occasions.
TCP/S
Estimated Mean Count Rates (Cts/sec/pixel)
GSC
One of six GSC units
Japan
Operation
System
MAXIの検出感度をしめしたグラフを左下にしめした。RXTEの全天モニタに比べ感度を
1桁あげることにより、系外天体(AGN)もモニタ対象になった。ソース(例としてCrab)、
内部バックグラウンド(Internal)、宇宙X線背景放射(CXB)、銀河リッジ成分(Ridge)の
MAXIカウントレートに対する寄与を知りたい方のために、予測カウントレートを表に示した。
MAXIを用いれば、HEAO A-1 が1年かけて作ったAll Sky X-ray Catalogを、1か月に
1枚のペースで作成できる。MAXIの現在公式なミッション期間は2年であるが、その後も
宇宙ステーションに搭載したままにして、例えば5年にわたって全天モニタしたいと考えている。
Source
試作したスリット&コリメータがど
れだけ設計図通りの指向性と有効
面積をもっているかを実験室で測
定した結果が右図である。
指向性のずれは実験治具の軸ぶ
れ込みでも0.03度角(3σ)、有効面
積のずれは5%以内であった。
コリメータ板は100µmの燐青銅
製のため、打ち上げに伴う変化が
気になるところであるが、地上で振
動試験して計測したところ、有効面
積のずれは5%以内に収まった。
指向ずれも問題ない見込みである。
MAXI Slit Collimator
速報とデータ公開
宇宙ステーションへ取り付けるためのポート。
電力、通信、単相ヒートパイプの冷媒もこのポートを通して供給される。
1.5 deg (FWHM)
Photon統計の良いMAXIで高い
天体位置決定精度やフラックス決
定精度を実現するためにはスリッ
ト&コリメータの指向方向や有効
面積をどこまで正確に較正できる
かどうかが鍵となる。
MAXIで、1つの天体を異なる時
期にスキャンした場合、2つの時
期でコリメータ板に沿ったX線入射
経路は異なる(検出器が異なるこ
ともある)。よって高い精度での時
間変動検出には、異なる入射経
路や検出器間での有効面積較正
が必須である。
上記コラムに書いたとおり打ち上げ振
In-orbit Calibration of Slit Collimator
動が加わってもスリット&コリメータの
指向性と有効面積は、一定値内に収
まる見込みである。
+74deg
7 times
その検証とより詳細な各視野内較
per
1 deg-wide bin
正および複数のカメラ間(スターセン
Crab
per
Nebula
2 months
サー含む)の相対方向だしに、軌道上
-29 deg
較正が必須である。
MAXIはX線新星速報と、すみやか
なデータの公開という目標達成のた
Declination(J2000) of X-ray sources in the sky (deg)
めに、打ち上げ後の早い時期に軌道
上較正を完了する必要がある。一方
姿勢が宇宙ステーションまかせMAXI For quick completion of in-orbit calibration,
the selection of caribration sources is important.
は単独衛星と異なり、好みの較正用
天体を任意の視野位置に入れること
Sky View from MAXI
ができない。よって入念な軌道上較正
プランが重要である。
MAXI撮像原理
スリット
位置&フラックス精度
軌道上較正&バックグラウンド
注) 検出感度の、「mCrab」とは、Crab Nebula(かに星雲)のX線フラックス強度の1000分の1の単位。
Point Spread Function (GSC)
を御覧ください。
MAXI断面
Nova Serach
Nova
Alert
Emitter
付録:MAXI打ち上げまでの道のり
ミッションチーム作業としては、フライトモデルの製作、試験、地上運用システム・解析シス
テムの設計・製作・試験、サイエンス&ユーザー開拓を打ち上げまでに完了する。
ミッションチーム外の道のりとしては、今年5月のシャトル復帰を第0号機とした場合、1
2号シャトルでの日本実験棟倉庫打上げ、13号シャトルでの日本実験棟本体打上げ、16
号シャトルでの(MAXIを直接とりつける)日本実験棟船外プラットフォーム打ち上げがある。
またMAXIを運ぶ、能力向上型H-IIAロケットとHII Transfer Vehicleの完成も必要である。
Contact: [email protected]