Transcript 第8回講義資料
法学部 1年生配当科目 民法入門 第8講 担保法 大阪大学大学院国際公共政策研究科 教 授 大久保 邦彦 1 民法典はパンデクテン体系を採っている 民法典の構造 第1編 第2編 第3編 第4編 第5編 総 物 債 親 相 則 権 権 族 続 財産法 家族法 2 物権と債権 A 物 権 債権 請求 B 民法は 興味なし 支 配 甲 乙 3 物 権 4 第2章~第10章は、物権の種類を規定している 「第2編 物権」の構造 第1章 第2章 第3章 第4章 第5章 総則 第6章 地役権 占有権 第7章 留置権 所有権 第8章 先取特権 地上権 第9章 質 権 永小作権第10章 抵当権 5 所有権(民206) 所有者は、 法令の制限内において、 自由にその所有物の使用、収益 及び処分をする権利を有する。 所有権=物の全面的支配権 6 所有権 A 物を全面的に 支配する権利 交 換 価 値 使 用 価 値 物 7 用益物権 A B 使用価値 を支配 交 換 価 値 使 用 価 値 8 担保物権 C A 交換 価値を支配 交 換 価 値 使 用 価 値 9 物 権 本 権 所有権 占有権 制限物権 用益物権 担保物権 法定担保物権 地 上 権 永 小 作 権 地 役 権 入 会 権 留 置 権 先 取 特 権 約定担保物権 質 権 抵 当 権 10 債 権 11 債 権 特定人(債権者)が、 特定の他人(債務者)に対して、 一定の行為(給付・給付行為)を請求し、 その行為(給付)のもたらす 結果ないし利益(給付結果)を、 当該債務者に対する相対的関係において、 適法に保持しうる権利 12 債権者の救済方法 ① 強制履行 債務不履行 の事実 ② 損害賠償 債務不履行 の事実 + 帰責事由 ③ 契約解除 13 債権の効力 (1)給付保持力 (2)請求力・訴求力 (3)執行力=強制力 ① 貫徹力 ② 摑取力-責任 14 摑取力(かくしゅりょく) 債権の有する金銭的価値を債務者の一 般財産(責任財産)から受けることのでき る権能を「摑取力」と呼び、債務者の一 般財産が摑取力の対象となっている状 態を「責任」と呼ぶ。 摑取力は財産の交換価値を把握するも のであって、有体物の有形的支配を目 的とするものではない。 15 金銭債権 金銭債権は、債務者の責任 財産の差押え・換価・満足と いう手続を経ることによって強 制的に実現されるが、 これは摑取力の実現と理解さ れている。 16 非金銭債権 非金銭債権は、損害賠償請求権 へと転化・拡張し、金銭債権として 強制的に実現されうるが、これも 摑取力の実現と理解されている。 非金銭債権は原則として貫徹力 と摑取力を併有する。 17 履行不能による解除 (民543) 帰 責 事 由 所 所有権移転債務 売 主 A 占 引 渡 債 務 金 損害賠償債務 代金支払債務 金 買 主 B 解 除 権 18 債務転形論 A B 本来的履行請求権 填補賠償請求権 【否定説】 同一性を肯定 本来的履行請求権 損害賠償請求権 19 金銭債務の直接強制 G 差 押 え 差 押 え S 換 価 満 足 金 所 D 20 債権者平等の原則 A B 100 責任財産 200 S C 300 300 21 物権的保護と債権的保護 A B 100 X 100 S Y 22 責任財産の保全 23 債権者代位権(民423) 24 民法423条 ① 債権者は、自己の債権を保全するため、債 務者に属する権利を行使することができる。 ただし、債務者の一身に専属する権利は、 この限りでない。 ② 債権者は、その債権の期限が到来しない間 は、裁判上の代位によらなければ、前項の 権利を行使することができない。 ただし、保存行為は、この限りでない。 25 債権者代位権(民423) G 300 無 資 力 S 100 消滅時効にかかりそうだ D 26 権利主体 権利の帰属 権利能力 誰が権利を持つことができるか? ー自然人・法人・権利能力なき社団 権利の行使 行為能力・代理 誰が権利を行使できるか? 27 権利の帰属と行使 財 産 権 財 産 管 理 権 財産 28 債権者代位権(民423) G 時効中断 300 無 資 力 S 管理権 100 消滅時効にかかりそうだ D 29 詐害行為取消権(民424) 30 詐害行為取消権(民424) ① 債権者は、債務者が債権者を害することを知って した法律行為の取消しを裁判所に請求することが できる。 ただし、その行為によって利益を受けた者又は転 得者がその行為又は転得の時において債権者を 害すべき事実を知らなかったときは、この限りでな い。 ② 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為 については、適用しない。 31 詐害行為取消権(民424) G 差押え 無 資 力 S 詐害行為取消権 取消し 贈 与 D 32 担保法 33 人的担保と物的担保 ①人的担保(保証・連帯債務) ある人の信用、すなわちその人に属す る責任財産によってされる債権の担保 ②物的担保(担保物権・非典型担保) 特定の財産(物又は権利)が債権の 担保となること 34 人的担保 35 連帯債務(民432以下) 36 履行の請求(民432) 数人が連帯債務を負担するときは、 債権者は、 その連帯債務者の1人に対し、 又は同時に若しくは順次に すべての連帯債務者に対し、 全部又は一部の履行を請求することができる。 37 連帯債務 G A 300 900 900 900 負 担 部 分 B C 300 300 38 連帯債務 G 900 A 300 900 求 償 権 900 900 300 300 B C 300 300 39 連帯債務 G 900 A 900 B 900 C 40 相互保証部分と負担部分 G 300 600 300 300 A 300 600 300 300 B 300 600 300 300 C 41 1人について生じた 事由の効力 1.相対的効力事由(民440) 2.絶対的効力事由 ①一体型絶対的効力事由 ⇒弁済・履行の請求(民434) ②負担部分型絶対的効力事由 ⇒免除(民437)・時効(民439) 42 弁 済⇒求 償 A 900 300 900 G 900 900 300 B C 43 償還をする資力のない者の 負担部分の分担(民444) 連帯債務者の中に償還をする資力のない者 があるときは、その償還をすることができない 部分は、求償者及び他の資力のある者の間 で、各自の負担部分に応じて分割して負担す る。 ただし、求償者に過失があるときは、他の連 帯債務者に対して分担を請求することができ ない。 44 債権を満足させる事由 弁済 更改(民435) 相殺(民436) 混同(民438) 代物弁済 供託 一体型 絶対的 効力事由 45 請 求(民434) 900 A 請 求 G 900 B B・Cにも請求したことになる 900 C 46 消滅時効(民439) G 300 300 300 A 300 300 300 B 300 300 300 C 47 免 除(民437) 300 300 300 A 免 除 G 300 300 300 B 300 300 300 C 48 保 証(民446以下) 49 保証契約(民446) ①保証人は、主たる債務者がその債務を履行 しないときに、その履行をする責任を負う。 ②保証契約は、書面でしなければ、その効力 を生じない。 ③保証契約がその内容を記録した電磁的記録 によってされたときは、その保証契約は、書 面によってされたものとみなして、前項の規 定を適用する。 50 保証の基本構造 債権者 G 主 た る 債 務 消 費 貸 借 主たる 債務者 S 保証契約 保証債務 「保証人になってください」 委任契約 保 証 人 B 51 主債務者による弁済 債権者 G 弁済 主たる 債務者 S 付従性 保 証 人 B 52 保証人による弁済 債権者 主たる 債務者 G S 弁済 求償権 保 証 人 B 53 保証債務の随伴性 債権者 主たる 債務者 G S 債権譲渡 対抗要件は、 主債務についてのみ 備えればよい D 保 証 人 B 54 保証債務の補充性 ①催告の抗弁権(民452) ②検索の抗弁権(民453) 55 共同保証(民456) G 100 C 200 S 100 B 56 連帯保証 ①補充性がない(民454) ②分別の利益(民456)がない ③絶対的効力(民458) 57 求 償(民465Ⅰ) G 弁済 200 C 200 S 200 100 200 B 58 物的担保 59 物的担保 ① ② ③ ④ 担保物権 非典型担保 留置権 先取特権 質権 抵当権 ① 譲渡担保 ② 仮登記担保 ③ 所有権留保 60 抵当権(民369以下) 61 抵当権の内容(民369Ⅰ) 抵当権者は、 債務者又は第三者が占有を移転 しないで債務の担保に供した不 動産について、 他の債権者に先立って自己の債 権の弁済を受ける権利を有する。 62 抵当権の設定 G 金銭消費貸借契約 S 抵当権設定契約 抵当権 63 契約の種類 抵当権設定契約=物権契約 契 約 債権契約 債権・債務 物権契約 物権変動 身分契約 身分の変動 64 債務者による弁済 弁済 G S 付従性 抵当権 65 抵当権の実行 G 差押え 抵当権 S 換価 満足 所有者Sに優先して、 Gがお金をもらえる。 D 66 物上保証人 G 抵当権 S 物 上 保 証 人 A 67 債務者による弁済 G 抵当権 弁済 S 付従性 物 上 保 証 人 A 68 抵当権の実行 G 差押え 抵当権 S 求償権 換価 満足 所有者Aに優先して、 Gがお金をもらえる。 A D 69 物上保証人による弁済 G 弁済 抵当権 付従性 S 求償権 物 上 保 証 人 A 70 第三取得者 G 第 三 取 得 者 抵当権 S 売 買 B 71 抵当権の随伴性 D 債権譲渡 G 抵当権 S 72 物上代位(民372→304) G 抵当権 S 保険金請求権 A 73 物上代位(民304) ① 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅 失又は損傷によって債務者が受けるべき金 銭その他の物に対しても、行使することが できる。 ただし、先取特権者は、その払渡し又は引 渡しの前に差押えをしなければならない。 ② 債務者が先取特権の目的物につき設定し た物権の対価についても、前項と同様とす る。 74 留置権等の規定の準用 (民372) 第296条、第304条及び 第351条の規定は、 抵当権について準用する。 75 質 権(民342以下) 76 質権の内容(民342) 質権者は、 その債権の担保として債務者又は第 三者から受け取った物を占有し、 かつ、その物について他の債権者に 先立って自己の債権の弁済を受ける 権利を有する。 77 質権の設定 G 金銭消費貸借契約 S 質権設定契約 質権 78 質物の留置(民347) 質権者は、前条に規定する債権の 弁済を受けるまでは、質物を留置す ることができる。 ただし、この権利は、自己に対して優 先権を有する債権者に対抗すること ができない。 79 流質契約の禁止 (民349) 質権設定者は、 設定行為又は債務の弁済期前の 契約において、 質権者に弁済として 質物の所有権を取得させ、 その他法律に定める方法によらないで 質物を処分させることを約することができない。 80 質屋営業法1Ⅰ この法律において「質屋営業」とは、 物品を質に取り、 流質期限までに当該質物で担保される債権の 弁済を受けないときは、 当該質物をもつてその弁済に充てる約款を附して、 金銭を貸し付ける営業をいう。 出典: http://www.zenshichi.gr.jp/ 81 譲渡担保 82 譲渡担保の設定 G 金銭消費貸借契約 S 譲渡担保設定契約 所有権 83 所有権留保 84 所有権留保 G 売買契約 代金債権(分割払い) S 所有権 85 留置権(民295以下) 86 留置権の内容(民295) ① 他人の物の占有者は、その物に関して生じ た債権を有するときは、その債権の弁済を 受けるまで、その物を留置することができる。 ただし、その債権が弁済期にないときは、こ の限りでない。 ② 前項の規定は、占有が不法行為によって始 まった場合には、適用しない。 87 具体例 G 請負人 修理契約 修理 修理代金 留置権 S 注文者 先取特権(民303以下) 89 先取特権の内容(民303) 先取特権者は、 この法律その他の法律の規定に従い、 その債務者の財産について、 他の債権者に先立って 自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 90 先取特権の種類 ①一般の先取特権(民306) ②動産の先取特権(民311) ③不動産の先取特権(民325) 91 優先弁済的効力 A B 100 責任財産 200 S C 300 300 92