ヒューマンエラーによる事故防止対策について

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Transcript ヒューマンエラーによる事故防止対策について

ヒューマンエラーに起因する
事故の防止
LPG
関東液化石油ガス協議会
保安委員会
ヒューマンエラーに対する古い考え
①腐ったリンゴ理論・・腐ったリンゴは周りを腐らす
事故発生者=腐ったリンゴ
②ヒューマンエラーが事故を引き起こす
③一人前のプロはエラーをしない
④また同じミスだ、考えられない
⑤初歩的なミスだ
⑥注意力が足りない
⑦気持ちがたるんでいるから起こる
ヒューマンエラー(human error)とは…
• 人為的過誤や失敗(ミス)のこと
• 「意図しない結果を生じる人間の行為」
(JISZ8115:2000)
• 効率や安全性やシステムパフォーマンス
を阻害する、あるいは阻害する可能性が
ある、不適切または好ましからざる人間の
決定や行動(Sanders&McCormick)
• 達成しようとした目標から意図とは異なっ
て、逸脱することになった、期待に反した
人間の行動(日本ヒューマンファクター研究所)
ヒューマンエラーとは、
人間の生れながらに持つ諸特性と人間
を取り巻く広義の環境等により決定さ
れた行動のうち、ある期待された範囲
から逸脱したもの。
記憶容量
年齢
体調
エラー
ヒューマンエラーは、人間の本来持って
いる特性と、人間を取り巻く広義の環境
等がうまく合致しないために引き起こさ
れるものである
つまり、
ヒューマンエラーは
原因ではなく結果である
(むしろヒューマンエラーは、より深いところにある
問題の産物であり、すなわち問題の徴候である。
ヒューマンエラーをもって結論とするのではなく、問
題調査の開始点である。
LPガス一般消費者事故件数推移(平成15年~24年)
高止まりが継続中!ーーー>
平成24年原因者別事故件数
(件)
一般消費者
77 その他
自然災害(雪害)
64 不明
販売事業者
38
他工事事業者
23
一般消費者及び販売事業者
9 (合計)
器具メーカー
6
充てん事業者
3
設備工事事業者
2
(件)
8
25
255
平成24年原因別事故件数
(件)
(件)
腐食・損傷
76 給排気設備不良
自然災害(雪害)
64 その他
15
接続不良
26 不明
18
点火ミス
20
未使用末端閉止弁
15 (合計)
弁・栓等不完全閉止、
閉め忘れ
故障・不具合
6
燃焼不良及び換気不良
5
燃焼器具未接続
2
6
2
255
(錯視1)
(錯視2)
「チェッカーシャドウ錯視」
(錯視2)
「チェッカーシャドウ錯視」
人間の情報処理モデル
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ケイダルのモデルを日本
ヒューマンファクターの
黒田勲氏が修正
入力情報量は多いが中枢の処理能力はすくない(単一情報処理)
情報処理のスピードは遅い(パソコンの1000倍時間がかかる)
故に前処理により必要な情報を選択しなければならない
莫大な長期記憶がある(通常パソコンの10億倍)
この為、なるべく省エネルギーの方向に情報処理を変化
意識レベルで支えられている(意識喪失で全停止)
知覚における2つの処理
データ駆動型の処理
情報が豊富であれば、誰が見てもこ
れがキュウリであることはわかります
概念駆動型の処理
情報が不足していると、それを記憶情報
などの助けも借りて概念上のダルメシア
ン犬をつくりあげて認識する
薄暗い場所の幽霊もこの働きによる
ヒューマンエラー
(3つの基本エラー)
誰でも起こる
D.A.Norman
・ミステイク(間違い)(間違える)
計画の
失敗
・行為のスリップ(注意の欠落)(うっかりする)
・記憶のラプス(記憶の欠落) (忘れる)
実行の
失敗
ミステイク
・・・・見間違い、聞き違い、勘違い
人間の認知システムはコンピューターと同じように働くが、
大きな違いは情報が不完全でもあいまいでも、前例や記
憶、状況等を手掛かりにアウトプットをだすこと。
人間の素晴らしい
認知能力の副作用
この ぶんょしう は にげんん は もじ を にしんき する
とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば
じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる。
行為のスリップ
・・・・行為の目標は適切だが、意図しな
い動作のミスをおかしてしまうこと
慣れた動作は体が記憶しており、いつもの動作のきっ
かけで、意図しないのに動作を行ってしまうことがある。
行為の熟練に
伴う副作用
慣れた動作の実行プロセス
意図の形成
スキーマの活性化
トリガー
(外部条件など)
無意識的
プロセス
スキーマの実行
あらゆる動作の熟練作業は意図だけを意識すれば後は勝手に体が動く
記憶のラプス
・・・・思い出すことを忘れる
実行の途中で計画自体を忘れてしまうことであり、行うべ
き行為の予定をいったん記憶し、それを忘れたわけではな
いのに、適切なタイミングで思い出さないことである。(失
念)
記憶の三段階
記憶(覚えること)
保持(記憶を保つこと)
想起(思い出すこと)
これらのエラーは何故起こる?
• うっかりしない
• 忘れない
• 間違わない
オーバーヒート
(脳の疲労を防御)
• うっかりしないように注意する
• 忘れないように繰り返す
• 間違えないように確認する
脳の疲労を防御する機
能から逃れることはで
きない
・注意の賞味期限30分
・確認で意識集中 3秒
ヒューマンエラーに対して、「しっかりしろ!」と精神性に
訴えたり、「処罰」してもエラーの再発は防止できない。
人間の脳にはエラーというモードはない、
ただ、最良の出力を発揮するようにデザインされている。
最善を尽くした結果がエラーとなった
人間の情報処理モデル
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入力情報量は多いが中枢の処理能力はすくない(単一情報処理)
情報処理のスピードは遅い(パソコンの1000倍)
故に前処理により必要な情報を選択しなければならない
莫大な長期記憶がある(通常パソコンの10億倍)
この為、なるべく省エネルギーの方向に情報処理を変化
意識レベルで支えられている(意識喪失で全停止)
ではどうしたらヒューマンエラーを
防げるか(発生率を下げられるか)?
意識レベルを上げる
フェーズ理論
意識レベル
フェーズ
意識のモード
注意の作用
生理的状態
信頼性
フェーズ0
無意識、失神
ゼロ
睡眠、脳発作
ゼロ
フェーズⅠ
Subnormal
意識ボケ
inactive
疲労、単調、
いねむり
≦0.9
フェーズⅡ
Normal relaxed
心の内方に向う
休息時、定例作
業時
0.99~0.99999
フェーズⅢ
Normal Clear
前向き、注意野も
広い
積極活動時
0.9999999≦
フェーズⅣ
Hyper-normal
excited
一点に凝集、
判断停止
緊急防衛反応
慌て、パニック
≦0.9
ヒューマンエラー防止対策①
意識レベルをフェーズⅢにするために考案された方法
一呼吸、間をおいて
指差し呼称
一呼吸置かないと、
脳はギヤチェンジを
行わず、無意識に動
作を終了さ
せる
ヒューマンエラー防止対策②
危険予知訓練(KYT)
人間本来の、感覚的な行為を防止し、危険への感受性を持ち、自分の内外にあ
る危険因子を予知し、正しい方法で対処することが必要である。
KYTの進め方(4ラウンドKYT)
ラウンド
KYTの4ラウンド
KYTの進め方
1R
どんな危険がひそんで
いるか(現状把握)
みんなの話し合いで、イラストシートの状況の中にひそむ危険要
因を発見し、その要因のひきおこす現象を想定する。
2R
これが危険のポイントだ
(本質追及)
発見した危険要因のうち、これが重要だと思われる危険を把握し
て、○印、さらにしぼりこんで◎印をつけ、指差呼称する。
3R
あなたならどうする
(対策樹立)
◎印をつけた重要危機を解決するにはどうしたらよいかを考え具
体的な対策をたてる。
4R
私たちはこうする
(目標達成)
対策のうち重点実施項目をしぼりこんで*印をつけ、それを実践
するためのチーム行動目標とワンポイント指差呼称項目を設定し、
指差唱和し、タッチ・アンド・コールでしめくくる。
ヒューマンエラー防止対策③
ハインリッヒの法則
ヒヤリ・ハット運動
1件・・・死亡・重傷
29件・・・軽傷
300件・・・障害なし
ヒヤリ・ハット運動
潜在危険
危険予知訓練(KYT)
ヒューマンエラー防止対策④
5S活動・・・「周りを整える」
直接の効果は職場環境の美化、従業員のモラル向上
問題点の顕在化
間接的な効果として、業務の効率化、ヒューマンエラー防止等
整理:いるものといらないものをハッキリ分けていらないものを捨てること
整頓:いるものを使いやすいようにきちんと置き、誰でもわかるように明示すること
清掃:常に掃除をし、きれいにすること
清潔:整理・整頓・清掃の3Sを維持すること
躾 :決められたことを、いつも正しく守る習慣づけのこと
ヒューマンエラー防止対策⑤
チェックリスト、相互確認(ダブルチェック)
復唱、確認会話、…etc.
発生率は下げることはできるが、ケース
によっては下がらないこともある。
システムの改善が必要!
(ハード+ソフト)
M-SHELモデル(当事者と周りの関係)
S・・・規則やルール
H・・・機械や機材
E・・・作業環境(温度、騒音等)
L青・作業者(自分)
L紫・同僚、上司、顧客等
m・・・経営方針、安全対策の理念
人的ミスはL(自分)とその他の要素が
うまくかみ合ってない時に発生する。
一定でない各要素をうまく調整すること
がヒューマンエラーの防止につながり、
調整をおこなうのがマネージメントであ
る。
作業者によるヒューマンエラーを
防ぐために、周りが対策を考る。
まとめ
ヒューマンエラーは、人間の本来持っている特性と、人間を
取り巻く広義の環境等がうまく合致しないために引き起こさ
れる。⇒原因ではなく結果である
ヒューマンエラー(3つの基本エラー)
 ミステイク(間違える)
 行為のスリップ(うっかりする)
 記憶のラプス(忘れる)
脳を守るため
(人間の特性)
対策(ヒューマンエラーの発生率を下げる)
① 指差し呼称(意識レベルを上げるⅡ→Ⅲ)
② KYT(危険予知訓練:危険を認識する感性を養う)
③ ヒヤリハット(隠れた問題を取り除く)
④ 5S運動(周り=環境を整える)
⑤ システムの改善(M-SHELモデル)
ご清聴ありがとうございました。