動詞の学習2

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Transcript 動詞の学習2

第8回 動詞の学習2
動詞学習におけるインプット言語の影響:
日,米、中の比較 (Imai et al.,2008.)
• インプット言語の特性が新奇な語意の推論に
影響を与えるか否か
• 与えるとしたらどのような形でなのか
日本語、中国語、英語の比較
• 英語→動詞の項の省略をしない
• 日本語、中国語→動詞の項は頻繁に省略さ
れる
• インプットの中の動詞の割合
→日本語、中国語>英語
• 動詞の屈折→日本語、英語にはあるが、中
国語にはない
• 中国語→語の形態としては動詞、名詞の区
別がない
英語母語児の場合
• 名詞条件と3種類の動詞条件
– Verb No agent
“Watch blicking”
– Verb agent
“She’s blicking it”
– Verb bare
“Blicking”
英語母語児の結果
100
90
% AS response
80
70
60
50
3-yr-olds
5-yr-olds
40
30
20
10
Verb No agent
“Watch blicking”
Verb agent
“She’s blicking it”
Verb bare
“Blicking”
0
Noun
V-full
watch X-ing
X-ing
• 名詞条件は3歳も5歳もOK
• 動詞条件→5歳で項を主語も目的語も入れたときの
みASを選べる
中国語母語児の場合
• 中国語は動詞の学習に優位であると言われ
ている
– Argument droppingのためインプット中の動詞の
頻度が高い
– 屈折などの形態素がつかないので、シンプル
中国語母語児の結果
100
90
80
% AS response
• 非常に強い事物バイア
ス→完全な動詞フレー
ムで新奇語を導入した
場合でもOSイベントを
選んだ
• 大人はBare条件で、
1/3 が事物、2/3がアク
ションに新奇語をマッピ
ング
70
60
3-yr-olds
50
5-yr-olds
40
30
20
10
0
Noun
Bare
V-Ag-only
V-full
Are Chinese children truly noun
biased even in learning verbs?
Proportion of AS response
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
3yr
5yr
6yr
8yr
adult
• Adults mapped the verb to the action 100%
• 7 year-olds: at chance
• 9 year-olds: finally above chance
Do extra linguistic cues help?
• All kinds of linguistic cues were provided.
– One syllable vs. Two syllables
(Chinese two syllable verbs often incorporate
a noun: e.g., 上校:go to school; 開扉:open
a/the door)
– Emphasis on the aspectual adverb “zai”
– Present the target verb in three different
sentential frames
• Some effect, but not strong enough to
overcome the object bias
% AS response
Manipulation of Linguistic cues
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
3-year-olds
5-year-olds
two-syllable one-syllable one syllable 3
frames
We then realized…
• In the stimuli, just for a second, the actor
holds the novel object to show it clearly
before starting the motion. This may
indicate that the object is important.
• This did not affect Japanese or English
children, but Chinese children may have
been much more sensitive to extralinguistic, pragmatic cues because
linguistic cues are not obvious.
original
First part clipped
% AS response
We removed the object-showing
part from the video…
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
3-year-olds
5-year-olds
yes
no
Object-Showing First
* Verbs were presented as one syllable words in
three different sentence frames in both cases.
• 3-year-olds: Still could not map the verb to the action
• 5-year-olds: Dramatic improvement!
言語普遍的バイアス
• 名詞のほうが学習が容易
→新奇な語は事物の名前と考えるバイアス
• 動詞の語意は当初変数である事物を含む。
般用は非常に保守的
言語特性の影響
• 項構造の明示化
– 英語では重要だが日本語は頻繁に項が省略され
る
→英語母語児は項の明示化が必要、日本語母
語児は影響をあまり受けない
• 動詞を表す形態素の有無
– 動詞を指標する形態素を持たない中国語を学習
する幼児
→名詞バイアスが極端に強く現れる?
なぜ動詞の語意学習は
むずかしいのか
• イベントのどの部分に動詞を対応づけるのか
を決めること自体難しい
– イベントのはじめと終わり
– イベントのどこが動詞の意味に関わるのか
• 動詞の意味を理解するためにはイベントを分
解し、ある特定の部分(つまり行為)のみの類
似性に注目し、変数(事物)の類似性は無視
しなければならないから
動詞学習には手助けが必要
• 養育者がしていること
– 擬態語の多用
擬態語(gitaigo /mimetic word)
擬音語・擬声語(onomatopoeia)
人・動物の声や音を真似た言語
例)わんわん ざあざあ びゅうびゅう
擬態語(mimetic word)
視覚・触覚など聴覚以外の感覚印象を言葉で表現した語
例) ふわふわ ふらふら ひりひり にこにこ
Gitaigo≠onomatopeia
擬態語は動きや状態、そのほかの感覚を表現することができ
る。
擬態語は実際の音に依存しない
実際には音のしない感覚や動きを擬した言語音を使用する。
従来の言語発達研究における
オノマトペ・擬態語の位置づけ
• なん語から一語発話への過程で発話されるようにな
る
• 1歳・2歳の言語のInput outputともに発話率が高い
• オノマトペ(特に擬音語)はIconicityが強く、恣意性
が一般言語に比べて高いためなん語から一語文へ
の橋渡し的存在であるとされてきた。
擬音語だけでなく擬態語は?
→例)縄跳びをしている場面を描写の擬態語表現率
親⇒子 約35%(19/55word)
親⇒大人 約10% (2/21word)
• 動作への擬態語表現も多く使用されている。
Picture book reading study
(Okada et al. in prep)
• 18-20ヶ月児の母親に様々なアクションの絵を見
せ、子どもに絵について話してもらう。その後、大人
にも絵の記述をしてもらう
• Mother to child: Mimetic words were used
for 58.1% of action references (tokens)
e.g.
“pyon(mim)-shiteru (do-ing)”
• Mother to adult: Mimetic words were used
only 11.8% when they referred to actions.
e.g. “tobi(jump)-oriru(decend)”
仮説
・動きを表現した擬態語は動詞の使用の移行を助ける
橋渡し的役割を担っているのではないか?
・擬態語のもつ音表象が動きの特徴を表現していて語
意味推論を助けているのでは?
⇒ 動詞般用課題を用いて擬態語と動詞を比較
動詞学習における擬態語の役割を考察する。
音象徴性ブートストラッピング仮説
• 意味と指示対称の間の恣意的でない、感覚
的な連結が抽象的なシンボルである語と感
覚経験をつなげ、言語学習を助ける
• それは特に動詞学習において顕著である
子どもや外国語話者にも音象徴
性が理解できるのか
• 新奇な擬態語動詞をつくる
• のすのすしているのはどっち?
(Where is (it) doing nosu-nosu?)
刺激作成
• 予備調査結果(24語)
→コントラストの大きい12語を抽出
その語にあわせて動画作成
↓
動画から連想される擬態語表出 (成人15名)
最頻出擬態語を既存マッチ擬態語とする
↓
変換を加えてマッチ擬態語を作成
↓
マッチ擬態語と作成した動画のマッチ度評定(成人8名)
↓
マッチ度高:マッチ擬態語動詞
マッチ度低;ノンマッチ擬態語動詞 とする
予備調査
• 被験者:大学生24名
• 質問紙を実施
• 24単語(事前調査の結果から抽出)
それぞれの単語ペアについて、とても似てい
る(6)からまったく似ていない(0)までの7段
階でそれぞれのオノマトペから連想される動
きが似ているか似ていないかを判断してもら
う。
結果
最 終 座標
次元
1
すたすた
てけ てけ
たった
きび きび
ひょいひょい
ち ょこち ょこ
とことこ
てく てく
こそこそ
しずしず
そろそろ
ひたひた
ずんずん
ぐ んぐ ん
ど しど し
ど たど た
ばたばた
ずしずし
のそのそ
たらたら
よ たよ た
ぐ だぐ だ
のっしのっし
だらだら
.201
.084
-.196
.004
.407
.615
.381
-.102
.750
.697
.534
.494
-.439
-.448
-.471
-.744
-.672
-.676
-.096
.171
.348
-.335
-.446
-.061
2
-.544
.006
-.631
-.756
-.634
-.398
-.181
-.253
-.088
.246
.456
.086
-.237
-.575
.099
-.010
-.341
.328
.376
.669
.559
.663
.437
.722
• SPSSの多次元尺度
(Proxscal)を使用して分析
• 使用したデータは平均値
• 次元数2
• 次元1:重量
• 次元2:速度 と解釈
多次元尺度構成法結果
オブジェクト ポイント
共通空間
ぐだぐだ
だらだら
f
e
0.5
のっしのっし
ずしずし
たらたら
よたよた
そろそろ
のそのそ
しずしず
c
次
元
どしどし
0.0
ひたひた
てけてけ
どたどた
2
d
ずんずん
てくてく
b
ばたばた
ちょこちょこ
-0.5
ぐんぐん
こそこそ
とことこ
たった
a
すたすた
ひょいひょい
きびきび
-0.5
0.0
次元 1
0.5
クラスター分析 樹形図
ぐだ のっし のそ
ずん ぐん どし ずし どた ばた
こそ そろ しず ひた
とこ てく てけ ひょい ちょこ
たら だら よた
すた たった きび
新規オノマトペの作成方法
新規オノマトペの作成方法
既存オノマトペの子音組み合わせ表を参考に、既存オノマトペの子音の組
み合わせを固定し、母音を変化させた音を作成する。
例) SUTASUTA (S_T_)→SETOSETO V1V2とも変化
SETASETA V1のみ変化
SUTOSUTO V2のみ変化
同じく表を参考に、既存オノマトペでは存在しない、子音の組み合わせを用
いたオノマトペワードを作成。
例) K W → KUWA
擬態語の「意味」を子どもや外国人が
わかるか
• 別の日本人成人がそれぞれのビデオと新奇
擬態語のマッチ度を評定
• ビデオについて最も評定値が高い擬態語:
マッチング擬態語
• 最も評定値が低い擬態語:ノンマッチング擬
態語
実験1: 新奇擬態語マッチング課題
• のしのししているのはどっち?
(Where is noshi-noshi?)
マッチング課題結果
% matching action selected
(Imai et al., Cognition, in press)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
J adults
E adults
J 25m-olds
J 42m-olds
25ヶ月児、日本語を知らない英語話者も「正しい」アクションに
新奇擬態語をマッピングできる
音象徴性は新奇動詞学習を
助ける?
新奇動詞学習課題
• 被験者: 日本人3歳児(各条件16人ずつ)
• 条件:
– 音マッチ新奇擬態語条件
– 音象徴性なし新奇動詞条件
– コントロール:音ノンマッチ新奇擬態語条件
動詞学習での音象徴性の効果
(Imai, Kita et al., Cognition, in press)
*
100
90
*
3-yr-olds
**
ns
80
70
ns
ns
60
50
40
30
20
10
0
match mimetics
non-match verb
nonmatch mimetics
英語児にも同じ効果(Kita, Imai et al.,
in prep)
*
音象徴性はプロトランゲージ?
• 伝統的な言語学の考え方
⇒「言語と対称の関係は恣意的である」
(ソシュール)
• 言語と対称の関係はすべて恣意的でない
• 言語は音象徴性から始まり進化した可能性
(ラマチャンドラン)
脳イメージング研究からの音象徴性
プロトランゲージ仮説への示唆(Imai et
al., 2008, In prep.)
• 擬態語は他の音象徴性の低い語と異なる脳
内処理をされる
– 右半球の活動(c.f., Sign Language)
– 運動知覚、運動制御や自然音の処理などの部位
の活動
⇒普通の動詞や副詞より、感覚経験に直結した
処理がなされる
ちょこちょこ
(choko-choko)
Participants rated how well the word matched the action in the video by
pressing a bottom (1-5)
STS/STG
MT
視覚野と聴覚野の統合野
右STS:自然音(環境音)の処理
動作、運動に関連
(Hashimoto et al, 2006 ; Thierry et al, 2003)
• ビデオとの一致度判断を伴わず、単語を見る
だけの自動的な課題でも擬態語では右半球
の活動がみられるのか
mimetics
mimetics
verb
verb
adverb
adverb
R
L
One sample t-test,
uncorrected: p < 0.001
mimetics
mimetics
(mimetics-verbadverb)
verb
verb
(verb-mimeticsadverb)
adverbadverb
(adverb-mimeticsverb)
R
L
One sample t-test,
uncorrected: p < 0.001
今までの研究から見えてきたもの
• 子どもの言語の学習は非常に柔軟で適応的
である
– 対象とするレキシコンの構造によって学習方略を
柔軟に変える
– 名詞の場合はトップダウンで即時に意味を推論し、
汎用を行うが、動詞や助数詞のように意味が複
雑で即時の推論が難しいものは保守的に事例を
溜め込む