Transcript 豚水泡病・豚水泡疹
豚水胞病 (swine vesicular disease ) 家畜伝染病: 豚、いのしし。 病原体: 動物衛生研究所 「家畜の監視伝染病」 ピコルナウイルス科エンテロウイルス属豚水胞病ウイルス。ヒトのコク サッキーウイルスB5と遺伝子構造が酷似し、抗原性が交差する(ヒト株から派生 したと考えられている)。1981年前に流行した血清型と異なる血清型が近年欧 州で流行している。 疫学: 1966年にイタリアで最初の発生が確認され、 1970年代に欧 州全域に広がり、アジアにも及んだ。日本では1973年と75年に発生 したが、感染豚の摘発・淘汰により間もなく清浄化された。現在、ヨー ロッパの一部の地域で継続的な発生がみられるほか、東アジア諸国 では常在化している。不顕性感染し、キャリアー動物は糞便中にウイ ルスを排出する。ウイルスは熱やpHに強い抵抗性を持ち、自然環境 で長く生残し媒介物感染する。蹄や口に形成された水疱中に大量の ウイルスが含まれ、経口、経鼻、創傷感染で伝播する。症状のみでは 口蹄疫との区別が困難であり、防疫体制を混乱させる恐れがある。 2~7日の潜伏期間の後、蹄 部・鼻・口唇部に水疱ができ、 口蹄疫に非常によく似ている。 水疱は急速に数と大きさを増 し、短期間のうちに破裂して上 皮が剥離し、潰瘍や糜爛とな る。幼獣および濡れたコンク リート床で飼育している場合 の症状が重い。死亡は稀で、 数週間以内に治癒する。 発症前48時間から、鼻汁、 唾液および糞便にウイルスを 排出する。ペン内の個体は 100%感染するが、全てのペ ンに広がることはない。 鼻 鏡 、 口 腔 粘 膜 の 水 疱 破 裂 蹄部の水疱 回復後数ヶ月以上ウイルス を保有しており、その間にと殺 された肉はウイルスを含む。 すなわち、残飯養豚に加熱不 十分の豚肉が含まれていると 感染源となる。 口蹄疫ウイルスは死後硬 直の際に低下したpHによって 不活化するが、豚水胞病ウイ ルスはpHや熱に抵抗性なの で生残している。実験的にpH 2.5~12、-20~12℃の条件で 4~11ヶ月生存した。サラミ ソーセージなど乾燥肉では2 年間生存した。 舌の糜爛は口蹄疫と区別できない 鼻 鏡 の 深 い 潰 瘍 蹄の病変部は多くの場合 細菌の二次感染を起こす。疼 痛により跛行を呈し、重症例 では起立困難となる。 予防法: 発生国からの家畜の輸入 禁止と検疫所における摘発。侵入 した場合は早期の摘発淘汰。 乳頭の融合した糜爛 爪と副蹄の蹄冠帯に潰瘍 かかとの破れた水泡は 口蹄疫と区別できない SVD in Humans • Incubation period: 1-2 weeks • Clinical signs – Mild influenza-like symptoms – Generalized abdominal and muscle pain – Aseptic meningitis (one case) – No vesicular lesions • Diagnosis: seroconversion • Treatment: supportive care 豚 水 胞 病 OIE 2007 1-6 2005 2006 2007 2008 ポルトガル イタリア イタリアでは常在化しており、ポルトガルでは 2007年に発生があった。アジアの多くの国が 未報告であり、常在化していると推定されてい る。 2007 1-6 日本を含めその他の先進諸国は清浄である。 豚水疱疹 届出伝染病: 豚、いのしし。 病原体: (vesicular exanthema of swine) 動物衛生研究所 「家畜の監視伝染病」 カリシウイルス科に属する豚水疱疹ウイルス。 疫学: 本来の宿主は海獣(アシカ等)である。豚への流行はアシカ 等海獣の肉を飼料として給与したことにより、豚から豚への感染は 汚染された豚肉を含む残飯の給与が主な経路と言われている。 1932年から1959年の間米国カリフォルニア州で流行したのと、1955 年にアイスランドの米軍キャンプで発生したのみで、現在では完全に 撲滅され世界のどこにも発生していない。豚水疱疹は臨床症状が家 畜の最重要疾病である口蹄疫に著しく類似していることにより、重要 伝染病に指定されている。 家畜の予防法: 本病が残飯給与により伝播したことから、残飯給与 の停止により、米国で撲滅に成功した。海獣(アシカ等)は現在も豚 水疱疹ウイルスを保有している可能性があるので、出来るだけ豚と 接触させないようにする。 家畜の病状: 1~2日間の発熱とともに、 水疱ができる。水疱は、鼻鏡部、口唇、舌、 口腔粘膜、蹄部、指趾間、蹄冠部に形成さ れる。水疱はすぐに破れて糜爛となるが痂 皮を形成し痕跡が長期間残る。 (右) 鼻端の水疱、(右下) 鼻鏡の破れた水泡は口 蹄疫と区別できない、(左下) 蹄冠帯の重度の壊死 は口蹄疫と区別できない FAO Graybook 診断: 発病豚の水疱上皮や水疱液を診断材料とし、豚由来細胞お よびVero細胞へ接種を行う。本ウイルスは形態学的に特徴がある ので、電子顕微鏡によりウイルス粒子を確認する。また既知の血清 型に対する抗血清を用いて蛍光抗体法により同定を行う。 対処: 本病は口蹄疫類似疾病なので、本病が発 生した場合「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫 指針」に準じて防疫措置が実施される。 Clinical Comparisons: Snouts 豚水泡病 Swine Vesicular Disease 水疱性口内炎 Vesicular Stomatitis 口蹄疫 Foot and Mouth Disease 豚水泡疹 Vesicular Exanthema They are clinically indistinguishable from each other. Clinical Comparisons: Feet 豚水泡病 Swine Vesicular Disease 口蹄疫 Foot-and-mouth 豚水泡疹 Vesicular Exanthema They are clinically indistinguishable from each other. 口蹄疫 水疱性口内炎 豚水泡病 豚水泡疹 全ての水疱性疾患は、発熱と、口腔、鼻孔、鼻鏡、乳頭および蹄に水泡 を形成し、潰瘍となる。 牛 口腔と蹄の病変、 流涎、流産、子牛 の死亡。本疾病 の指標動物 豚 高度の蹄部病変、 蹄の腐肉形成、 鼻鏡の水泡、口 腔病変は軽度。 増幅動物 牛と同様 コンクリート床 飼育豚が重度; 跛行、流涎、神 経兆候、子豚が より重度。 羊 山羊 軽微な兆候。 保有動物 症状を示すこと は稀 感染せず 感染せず 感染せず 口腔と蹄冠帯 が最も重度、流 涎、口を物に擦 る、跛行 感染せず 感染せず 馬 ロバ ラバ 口腔、乳腺、蹄 冠帯および趾 間の水泡 感染せず 感染せず 脚に肉芽組織 形成を伴う深い 病巣