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(3)従来の金融危機との比較
○Shadow Banking Systemの
拡大と流動性危機
• 銀行と同じ信用仲介機能をシャドーバンキン
グ・システム(ヘッジファンド、SIV、投資銀行、
証券化等)が果たすようになり、その部分が拡
大(市場型の金融システムの拡大)
• シャドーバンキング・システムは銀行に比べて
規制が緩く、安全網Safety Net(中央銀行の最
後の貸し手機能、預金保険、国による資本注
入 )もない
• →構造的に不安定
1
・Shadow Banking Systemの内部構造
:資金の流れ
投資銀行・
ヘッジファンド
レポ市場
資金
余剰
主体
MMF・
証券貸借
証券借入
担保現金
証券化
商品市場
CP市場
ABCP
証券化の
アレンジ
証券化
SPC
資金
不足
主体
オリジ
ネーター
格付
格付
会社
銀行・
投資銀行
SIV・ABCP
コンデュイット
銀行
設立運営
流動性供給
2
・シャドーバンクは90年代後半から金融危機まで急拡大
シャドーバンクと銀行の資産規模推移
兆ドル
16
14
12
10
銀行
シャドーバンク
8
6
4
2
2010
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
1980
0
・シャドーバンク:MMF、証券会社、民間証券化、証券貸借担保現金
の資産の合計
FRB, Flow of Funds Accounts of the U.S.
3
・満期変換と流動性リスク
• 満期変換
– 金融仲介機関が貸手からは短期の資金を受け入れ、借手には長期
資金を提供すること
• 流動性リスク
– 企業・金融機関が急激な資金流出や資金調達難から、資金不足によ
るトラブルや経営破綻に陥るリスク
• 短期債務への依存度が大きい(短期債務の頻繁な借換えが必要:ロール
オーバー・リスク)ほど、流動性リスクは大きい
• 流動性危機
– 流動性リスクが現実化し、資金面から経営危機に陥ること
• 満期変換(長短ミスマッチ)の問題点
– 流動性危機に陥りやすい
4
・シャドーバンクと満期変換
負債
資産
満期変換の大きさ
SIV
平均残存期間:5.5 ヶ月 平均残存期間:3.65 年
3.2 年、8 回
ABCP Conduits
平均償還期間:31 日 満期平均:3~5 年
2 年弱、24 回
MMF
1 日単位で解約可
41 回
証券貸借
ほとんどが 1 日単位で 平均償還期間:194.09 日 194 回
平均償還期間:41.3 日
解約可
投資銀行、
レポ資金:多くは 1 日
ヘッジファンド
単位で解約可
・満期変換の大きさ:資産の満期-負債の満期、資産の満期/負債の満期
北原徹「シャドーバンキングと満期変換」『立教経済学研究』65巻3号、2012年1月
5
・投資銀行ベアー・スターンズの流動性危機
2008.3.16.経営破綻
・ベアー社に対する信用不安の高まり→取引先(銀行・ヘッ
ジファンド)・レポ市場による資金引き上げ(一種の取り付
け)
Bank of England, Financial Stability Report, April 2008
6
・レポ取引:債券の売買という形をとった債券担保の短期資金
の貸借取引(レポrepoとは、repurchaseの略)
・レポ取引の多くの部分は1日単位で解約可能
M.Kohn, Financial Institutions and Markets, Oxford U.P. p.359
7
20
00
Q
20 1
00
Q
20 4
01
Q
20 3
02
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20 2
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20 1
09
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20 4
10
Q
20 3
11
Q
2
・
億ドル
証券会社のレポ資金調達額の推移
14000
12000
10000
8000
6000
4000
2000
0
FRB, Flow of Funds Accounts of the U.S.
8
・証券化商品に投資していたヘッジファンドは、レバレッジを
大きく効かせ、
ヘッジファンド:少数の裕福な個人・法人・年金等から私募で資金を集め、
投信等の法的規制を免れて柔軟な投資戦略を採ることのできる
証券投資を中心とするファンド
IMF GFSR Oct 08 p.42
9
・投資ファンドによるABCPの発行と
金融危機による急収縮
• Commercial Paper
– 短期の資金(満期:2~270日)を金融市場から調達するた
めに発行される証券(企業や金融機関が発行)
• Asset Backed Commercial Paper(資産担保CP)
– 元々は売掛金や短期の貸付金等を裏付に金融市場向けに
発行されるCP(短期の証券化商品)
– 1990年代辺りから投資ファンドの資金調達手段として発行
されるようになる(平均満期:30日、満期1~4日のABCPも
大量に発行)
• ABCPコンデュイット
– ABCPを発行する証券化SPC
– 金融危機以前は、ABCPを発行して証券化商品へ投資
10
・SIVのABCP発行残高推移:SIVのスポンサー銀行の
本拠地国籍別(単位:10億ドル)
ヨーロッパがアメリカよりかなり大きい
EU
US
Structured Investment Vehicle:銀行等によって設立・運営され、オフバランスで
証券化商品等に投資するファンド
Arteta C., M. Carey & R. Correa [2007], “Why Are Almost All ABCP Vehicles Sponsored by Non-U.S. Banks? “
December 2007
11
・投資ファンド型のABCPコンデュイットによるABCP発行残高推移:
スポンサー銀行の本拠地国籍別(単位:10億ドル)
ヨーロッパが圧倒的な割合、アメリカはわずか
EU
US
Arteta C., M. Carey & R. Correa [2007], “Why Are Almost All ABCP Vehicles Sponsored by Non-U.S. Banks? “
December 2007
12
・
→ABCP発行に資金調達を依存していた投資ファンドは、流動性危機に
陥り、証券の投売りやスポンサー銀行による支援に追い込まれる
13
MMFへの取付けとシステミック・リスク
• Money Market Fund:短期の金融商品に運用する投資信託
• 2008年9月15日:リーマン・ブラザーズ破綻
• リーマン・ブラザーズ発行の証券に投資していたReserve社
のMMFが元本割れ(9月16日)
– 預金同様に元本割れはないという信頼が崩壊
• MMFへの取付け発生
– MMFの解約率(民間証券を中心に投資するPrime Funds、2日間):
• 機関投資家向けのInstitutional Funds: 16%
• 個人投資家向けの Retail Funds: 3%
• システミック・リスクの危険性
– MMFからの資金流出→MMFの保有資産強制売却→MMFの元本割
れの広がり→短期金融市場からの資金引揚げ→市場資金調達に依
存している金融機関(特に投資銀行)の流動性危機→金融システム危
機の激化
• 当局の緊急危機対策
– 財務省によるMMFの元本保証プログラム(銀行の預金保険と同様の
仕組み)
14
・MMFに対する取付けの発生
FRB, Monetary Policy Report to the Congress, Feb. 2009 p.7
15
・なぜ、シャドーバンキング・システム
は拡大したのか?
• 信用膨張・住宅バブルの発生要因とほぼ重
なる
• 安定的な金融・経済環境
16
・短期の浮動資金が1990年代後半から累増
短期浮動資金の累積:米国
億ドル
18000
16000
14000
12000
10000
8000
6000
4000
2000
個人・NPO
非金融企業
地方自治体
海外部門
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
0
証券貸出担保現金
短期浮動資金:MMF、レポ市場、CP市場で運用されている資金
FRB, Flow of Funds Accounts of the U.S.
17
・
GDPの変動性は1980年代半ば以降急低下
Bank of England Financial Stability Report October 2008 p.7
18
・2000年代の金融市場:金利、為替、株価は安定
funding and market liquidity:金融市場での取引や資金の調達運用のやり易さ
IMF, Global Financial Stability Report, Oct. 2009 p.4
19
・用語の説明
•
•
•
•
MBS:Mortgage Backed Security:住宅ローン担保証券
ABSCDO:再証券化商品
プライム:信用度の高い個人向けのローン
CMBS:Commercial Mortgage Backed Security:商業不動産担保ロー
ン証券
• CLO:企業向ローン担保証券
• MMF: Money Market Fund:短期の金融商品に運用する投資信託
• 証券貸借
– 空売りや証券会社のトレーディングのための証券の貸借
– 証券の貸手は担保として現金を受け取り、その現金を短期の金融商品に運
用する。
• ヘッジファンド
– 少数の裕福な個人・法人・年金等から私募で資金を集め、投資信託等の法
的規制を免れて柔軟な投資戦略を採ることのできる証券投資を中心とする
ファンド
• SIV: Structured Investment Vehicle
– 銀行等によって設立・運営され、オフバランスで証券化商品等に投資する
ファンド
• オリジネーター:証券化の元となるローンを提供する金融機関
• 証券化SPC:Special Purpose Company
– 証券化の元となるローンを受け入れ、証券化商品を発行する組織
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第3章:参考文献
• みずほ総合研究所『サブプライム金融危機:21世紀型経済
ショックの深層』日本経済新聞社2007
• 竹森俊平『資本主義は嫌いですか:それでもマネーは世界を
動かす』日本経済新聞社2007
• 小林正宏・大類雄司『世界金融危機はなぜ起こったのか』東
洋経済新報社2008
• 岩田規久男『金融危機の経済学』東洋経済新報社2009
• 藤井眞理子『金融革新と市場危機』日本経済新聞社2009
• 池尾和人・池田信夫『なぜ世界は不況に陥ったのか』日経
BP2009
• 北原徹「欧州銀行とシャドーバンキング」『SFJ金融・資本市
場研究』No.2、2010年10月
• 北原徹「シャドーバンキングと満期変換」『立教経済学研究』
65巻3号、2012年1月
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