臍帯動脈血ガス分析値の信頼性

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Transcript 臍帯動脈血ガス分析値の信頼性

臍帯動脈血ガス分析値の信頼性、信憑性について
(多施設間の比較・検証)
河村卓弥1)村林奈緒1) 池田智明1) 三輪貴彦2) 大脇正哉3)
堀部暢人4) 紀平正道5) 二井栄6) 宮崎和加奈7) 川出芳彦8)
南宏次郎9) 廣渡恒治10) 照井克生11) 石川薫12)
三重大学1) みわレデイースクリニック2) おおわきレデイスクリニック3)
ほりべレデイースクリニック4) セントローズクリニック5) 白子クリニック6)
広川レデイスクリニック7) 森永産婦人科8) ミナミクリニック9) 広渡レディスクリニック10)
埼玉医科大学総合医療センター産科麻酔科11)鈴鹿医療科学大学12)
産科医療補償制度 補償対象個別審査基準
産科医療補償制度ホームページより
産婦人科診療ガイドラインー産科編2014(案)
CQ801 出生直後の新生児呼吸循環管理・蘇生については?
Answer 7. 臍帯動脈血ガス分析を行い記録する。(C)
解説:分娩直後の臍帯動脈血ガス分析結果は分娩前・分娩中胎児の血液
酸素化程度を反映する。この評価は「分娩中胎児血酸素化が障害されてい
なかったことの証明」に極めて重要であり、可能な限り採取・評価・記録が
望ましい。
研究の契機
FHRモニタリング研究の為に、A、Bレデイースにて正常産婦の
データを集計していて、Aレデイースの臍帯動脈血 pH 値が恒常
的に低値を示す傾向に気付き、Aレデイースに測定機器の点検を
助言した。
測定機器のメーカー・チェックをかけたが「問題なし」との回答。しか
し、その後もAレデイースの臍帯動脈血 pH 値は低値傾向が持続。
臍帯動脈血ガス分析値に理論的に大きな差異が生じないと推測
される予定帝切分娩の臍帯動脈血ガス分析値のデータを集計し
施設間で比較・検証。
研究の1st stage
正期産単胎予定帝切分娩の臍帯動脈血 pH 値
Median (Range)
+
マン・ホイットニーのU検定, ボンフェロニー補正
P<0.05
+
+
7.318
7.300
7.243
N=53
テクノメデイカ社 GASTAT
N=67
扶桑 i-STAT
N=50
シスメック社 OPTI
①予定帝切分娩の麻酔に問題があるのでは?
A レデイース
臍帯動脈血 pH 中央値
7.243
絶飲時間
8
麻酔前輸液量
乳酸加リンゲル500-1000ml
局所麻酔薬
等比重マーカイン
局所麻酔薬投与量
3ml
子宮左方転位
ルーチン
昇圧薬
エフェドリン
投与量
8-16mg,半数強
*
17 (12~25)
麻酔開始-児娩出時間
*
7 (4~11)
手術開始-児娩出時間
ヘパリン種類
液体
娩出から採血まで
直後
C レデイース
7.3
14
酢酸加リンゲル液1000ml
高比重マーカイン
平均2.15ml
ルーチンではない
エフェドリン
使用例なし
25 (17~30)
7.5 (3~13)
液体
ー
*Median
Aレデイースの麻酔に原因は
なさそうである(照井先生コメント)
(Range)
研究の2nd stage
②測定機種に問題があるのでは?
テクノメデイカ社 GASTAT を採用している施設から、予定帝切分娩の
臍帯動脈血ガス分析値のデータを情報提供していただき比較・検証
+
+
7.324
7.301
+
7.310
+
7.315
+
7.331
7.243
N=53
N=51
+マン・ホイットニーのU検定,
ボンフェロニー補正 P<0.05
N=45
N=11
N=42
N=30
測定機種は原因でなさそうである
結論:A レデイースの機器メーカー担当者
による精度管理が原因
Aレデイースでは、メーカー点検後も臍帯動脈血 pH 値が低値傾向のた
め、測定機器を買い替えて対応。
+
マン・ホイットニーのU検定 P<0.05
+
7.360
7.243
N=53
テクノメデイカ社 GASTAT
N=31
シスメック社 OPTI
研究のまとめ
正期産単胎予定帝切分娩の臍帯動脈血 pH 値
Median (Range)
+マン・ホイットニーのU検定,
+
+
+
ボンフェロニー補正 P<0.05
+
+
+
+
+
精度管理の問題
N=53
N=31
N=67
静脈採血?
N=50
N=51
N=45
N=42
N=11
N=30
N=29
今回の研究からの提言
理論的に一定で良好な結果が得られるはず
の予定帝切分娩での臍帯動脈血 pH 値を各
施設は検証し、測定自体の信憑性、信頼性
を担保しておくべきでは?(測定機器の精度
管理は?静脈血の混入は?測定までの手
順に問題は?等々)
参考:正期産単胎予定帝王切開分娩の臍帯動脈血ガス Median
pH 7.320, PCO2 48.8, PO2 19.0, BE -2
N=327