馬鼻肺炎

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馬鼻肺炎
届出伝染病: 馬。
(Equine rhinopneumonitis)
動物衛生研究所 「家畜の監視伝染病」
病原体: 馬ヘルペスウイルス1型(EHV-1)ま
たは4型(EHV-4)。ヘルペスウイルスに特有の
潜伏感染を起こし(EHV-1は神経とリンパ節、
EHV-4はリンパ節)、体力消耗時に活動して症
状を表すとともに他への感染源となる。
感染様式: 感染したウイルスは最初に鼻の
奥の部分にある上部気道で増殖し、発熱す
るまでの約24-48時間の潜伏期に調教を受
けた際の荒い呼吸に伴ってウイルスを多量
に含んだ鼻汁が飛沫となって散乱する。
ウイルスは流産胎仔の臓器内および羊水
に大量に含まれており、周囲の妊娠馬への
感染源となる。羊水で汚染した場所および器
物の消毒が重要。
JRA競走馬総合研究所
Equine herpesvirus type 1
症状: 若齢馬および競走馬では、39.0
~40.5℃の発熱と水様性、後に膿様性
に変わる鼻漏。その後、顎下リンパ節の
腫大などを呈する呼吸器疾患。妊娠馬で
は、妊娠中期に感染すると死産や流産、
子馬の生後直死を起こし、神経麻痺に起
因する歩様異常、起立不能、尿失禁など
を呈する。
日本生物科学研究所
潜伏感染
キャリアー
競走馬の抗体保有率が高い割には
発症例が少ないことから、不顕性感
染が多いとされている。
鼻汁
流産が最大の
損害を与える!
子馬の膿性鼻汁
感染馬の鼻に接触した
人の衣服や手指、ある
いは鼻捻子などにもウイ
ルスは付着するので、鼻
捻子を消毒せずに用い
たり、衣服や手指を消毒
せずに不用意に他の馬
の鼻に触れたりすると接
触感染の原因になる。
発熱前の潜伏期感染
を防ぐために、普段から
鼻捻子の使い回しを避
ける。
罹患した妊娠馬にみられた流産胎子
EHV-1感染した満期産の新
生子馬で呼吸困難に陥って
いる。先天的感染した子馬の
臨床的悪化は急速であり、
常に致死的となる。
起立不能に陥った
妊娠馬のビデオ
胸水の増量
流産胎子の剖検像
肝臓の壊死巣
肺水腫
軽種馬における馬鼻肺炎による年度別流産発生件数
戸数 頭数
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2
9
8
9
9
12
14
18
14
14
5
2
12
26
23
10
25
49
36
38
33
5
日本では1957年にEHV-4が流産胎子から初めて分離され、1959年に呼吸器病の
仔馬から分離された。1967年に米国から輸入した妊娠馬の流産に端を発して、北海
道と千葉県で計96頭が続々と流産し、これまで経験したことがない、いわゆる「流産
の嵐」が発生した。この流行が日本における最初のEHV-1感染例であり、これ以降、
EHV-1とEHV-4の両ウイルスが,わが国の馬群内に広く伝播することになった。
近年の発生状況: 259頭の内247頭(95.4%)が北海道で、青
計
森(6)、栃木(1)、千葉(1)、広島(3)、熊本(1)であった。北海道
では1農場で10頭以上の感染が起きることも珍しくない。
季節性: 発生時期は3月をピークとしている。
50
40
発
生
頭
数
30
20
10
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
1998~2008年における馬鼻肺炎罹患馬の月別発生状況
12
「ペア血清の得られた発熱馬
の月別累積頭数と馬鼻肺炎
ウイルスに対する抗体価上昇
馬の月別累積頭数」
1980~1990年における抗体陽性頭数
JRA栗東および美浦トレーニングセンター
冬季(1~2月)に発熱馬が多く、
抗体価が上昇しており、馬鼻
肺炎ウイルス感染が冬季の
発熱馬の原因となっている。
発熱馬の鼻汁または血液
からウイルスを分離し、型
別したところ、冬季(1~2
月)は全てEHV-1であり、
その他の時期ではEHV-4
であった。罹患馬のほとん
どが、トレセンで初めての
冬を経験する3歳になりた
ての競走馬だった。
2008
2005
20081-6
7-12
7-12
2005
2006
2006
2007
1-6
:未報告
:これまで発生なし
:この期間の発生なし
:感染/侵入
:臨床例あり
:発生が数地区に限定
:現在流行中
馬鼻肺炎は熱帯地域を除いて世界各国に広
く分布しており、国際レースへの登録要件や
帰国要件に取上げられている。
国際レースに参加後帰国する
競走馬の家畜衛生条件について
馬の用途別輸入頭数
年度
繁殖用
乗用
競走用
肥育用
その他
合 計
1999
248
234
352
3,535
0
4,369
2000
179
201
338
4,130
24
4,872
2001
166
205
353
4,224
13
4,961
2002
117
187
327
4,036
9
4,676
2003
136
129
269
3,658
8
4,200
最近の輸入馬の監視伝染病の摘発状況
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
馬伝染性貧血
0
0
0
0
1
馬パラチフス
2
2
2
0
4
馬ウイルス性動脈炎
2
0
0
0
0
馬鼻肺炎
1
2
0
0
1
2007年にもオーストラリアから乗用馬として輸入したものの、馬鼻肺
炎で摘発されている。隔離・係留延長の措置が採られ、回復後の再
検査で陰性を確認して引き渡された。
「家畜防疫対策要綱」
● 早期妊娠診断を励行し、妊娠馬については、常に健康の保持と体力の増強を
図り、諸種の感作に対する抵抗力をつけるとともに、妊娠後期は他の馬との接触
を極力避ける等の措置の徹底により本病ウイルスの感染の予防に努めるよう家
畜飼養者を指導する。また、必要な場合は予防接種を実施するよう併せて指導す
る必要がある。
● 未発生場所の種牝馬を発生場所内の種牡馬と交配した場合は、当該地域の
分娩季節が終了するまでの間は極力隔離飼養するよう家畜飼養者を指導する必
要がある。
● 原因不明の流産が起こった場合は、本病を想定して速やかに病性鑑定を行い、
家畜飼養者に対し、流産馬の隔離と消毒の徹底を指導する。なお、病性鑑定用材
料採取後の流産胎子・胎盤等については、適切に処分する必要がある。
● 感染しているか又はその疑いがある馬については、極力当該地域の分娩季節
が終了するまで隔離し、これらの馬との同居馬については、当該地域の分娩季節
が終了するまでは、場外への移動を控え、見学者等本病ウイルスを伝播する可能
性のある者の発生場所への立入りを禁止するよう家畜飼養者を指導する必要が
ある。
(1)疫学調査
① 妊娠後期(特に胎齢9~11カ月)に流産
が好発
② 秋から早春にかけ集団飼育されている
育成馬に呼吸器病が流行
③ 冬季に競走馬群内に呼吸器病が流行
④ 最近の馬の移動,導入
(2)臨床検査
① 突発的な流産
② 正常分娩で生まれた子馬も2~3日以内
に死亡
③発熱
④ 漿液性から粘液性鼻汁の漏出
⑤ 鼻粘膜の充血
⑥ 一般症状の悪化
⑦ 下顎リンパ節の腫脹
⑧ 神経症状
(3)血液検査
一過性の白血球の減少
(4)剖 検(流産胎子)
① 全身臓器(特に肺,胸腺,皮下織等)の
充出血,水腫
② 胸水,腹水,心嚢水の増量
③ 肝,胎盤,胎膜の微小白斑
病性鑑定指針
(5)病理組織学的検査(流産胎子)
① 肺の充出血,水腫,斑状壊死。
肺胞腔内への線維素の析出と気管支及び
肺胞上皮細胞の壊死。気管支及び肺胞上
皮細胞における好酸性核内封入体形成。
② 肝の巣状壊死,壊死巣周辺の肝細胞
の好酸性核内封入体形成
③ 脾,リンパ節の小壊死巣と細網細胞にお
ける好酸性核内封入体形成
(6)抗原検査
蛍光抗体法又は補体結合反応法による抗
原検出
(7)血清学的検査
補体結合試験,中和試験又はELISA法
ペア血清について実施
(8)ウイルス学的検査
・・・・・・・
(9)分離ウイルスの型別
・・・・・・・
(10)PCR検査
・・・・・・・
家畜保健衛生所の分担
vaccination