自治体BCP庁内説明会用参考資料 (2313216)

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Transcript 自治体BCP庁内説明会用参考資料 (2313216)

自治体BCP庁内説明会用資料(例)
自治体の災害対応の課題と
業務継続計画(BCP)の必要性
本資料は、庁内の幹部職員や他部局職員を対象とした、自治体BCPの勉
強会、説明会(1時間程度)での利用を想定したパワーポイント資料です。
各自治体の特徴等に応じて、ご自由にアレンジしてご利用ください。
神戸大学 社会科学系教育研究府
特命准教授 紅谷昇平
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1.はじめに
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こう思っていませんか?
災害時でも、庁舎や設備、機器は使えるだろう。
災害時でも、職員はそれなりに集まるだろう。
災害対応は、防災・危機管理部局に任せておけばいい。
立派な地域防災計画やマニュアルがあるから大丈夫。
被災自治体の職員の方の声を聞くと・・・・
3
実際には・・・・
うちの部署が、こんなに忙しくなるとは思わなかった。
電気もパソコンも電話も、全く使えなくなるとは思えなかった。
何日も、食べるものもない状態で、家にも帰れなくなるとは思
わなかった。
誰も指示を出してくれず、自分で考えて動かなければならな
かった。
「普段から、もっときちんとマニュアル、計画を作ってお
けば良かった」
「訓練をきちんとすれば良かった」
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「住民対応」と「内部体制整備」の両方が必要
被災地の住民・企業など
防災部局の仕事
応急対応
(避難所運営、物資輸送、等)
災害対策本部
自治体内部
・庁舎、電気、電話が使えない(管財課?)
・職員の安否確認、配置転換が必要となる
(人事課?)
・職員用の食料、トイレがない(?課)
・負傷した職員の救護所が必要(?課)
・平常業務はいつ、何から再開する(全部局)
誰も考え
ていない
場合も多
い
【BCP】
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自治体の災害対応の課題
地域防災計画に「やるべきこと」は書かれている。
でも、「誰が、どのようにやるのか」が決まっておらず、災害時
に実行できない。
その理由として、「庁舎・設備・人員の準備不足」、「防災部局
任せ(当事者意識の不足)」、「災害時の業務の優先順位が
不明確」なことが挙げられる。
職員の安全確保、生活、安否確認などについて、ほとんど考
えられていない自治体も多い。
そこで、地域防災計画を補完するために、業務継続計画(
BCP、Business Continuity Plan)が必要となる。
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2.災害時、職員はどのようになる?
~過去の災害を振り返る~
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職員の安全確保対策は?
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職員の安全確保対策
• 庁舎の被災により負傷した職員、来庁者の救助、応
急手当等の体制について、十分に考えられていない
自治体がある。
• 被害調査の際、余震やそれによる津波からの避難対
策が考慮されていない場合がある。
• 職員の安否確認、あるいは職員が家族の安否を確
認する方法について、決められていない場合がある
。
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東日本大震災における庁舎・職員被害
陸前高田市
庁舎全壊。職員68名死亡・行方不明。
大槌町
庁舎全壊。町長・職員ら33名死亡・行方不明。
釜石市
庁舎1階浸水。職員4名死亡。
石巻市
庁舎6,7階大破。職員48名死亡・行方不明。
南三陸町
庁舎全壊。職員39名死亡・行方不明。
女川町
庁舎浸水、全壊。職員1名死亡
気仙沼市
一部庁舎の1階浸水。職員2名死亡
双葉町など福島 原発事故で役場移転
県9町村
(読売新聞2012年1月15日記事より)
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首長、職員は登庁できるのか?
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1995年・阪神淡路大震災
兵庫県知事
• 地震発生時は、公舎の2Fにて熟睡していた。
• 地震後は停電で真っ暗な状態だった。
• 警察や市の消防に連絡しようとするが、電話がつながらない
。
• 県庁まで徒歩30分以上かかるため、音信不通の状態ならな
いよう、公舎にて待機。
• 7時頃、電話がつながった副知事と協議し、災害対策本部の
設置を指示。
• その後、 8時頃に職員のマイカーで登庁。
貝原俊民「大震災100日の記録」より
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1995年・阪神・淡路大震災
芦屋市長
• 日高課長が到着し、まず、腰を強打した北村市長の夫の巌さ
んを病院に運ぶことになった。市立芦屋病院が市長宅から
歩いて一分ほどのところにあった。日高課長が病院へ走り、
キャスターのついた簡易ベッドを借りてきた。病室から手術室
に運ぶときに使うベッドである。
• 北村市長、次男の豊さん、日高課長、そして近所にいた人の
手で、巌さんを庭から路上の簡易ベッドに運んだ。玄関のひ
さしが崩れ落ち、道路に下りる石段には瓦や木材が散乱して
いて、苦労した覚えが北村市長にはある。
「芦屋女性市長震災日記」より
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庁舎は使えるのか?
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新潟県中越地震(2004年) 川口町の災害対策本部
・庁舎が地震で被害を受け危険で入れず庁舎前のテントに本
部を設置。無線が使えず、情報収集が困難であった。
DRI撮影
DRI撮影
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津波がこなくても、地震
の揺れ(震度6強)で、
古い庁舎は使えなくなる
場合がある。
東日本大震災における
亘理町役場
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東日本大震災での庁舎・設備の被害例
• 津波被害だけでなく、地震の揺れによっても、過去の
災害と同様の庁舎被害が発生していた。
• 地震、津波で庁舎が使えなくなり、プレハブ等の仮設
庁舎が必要となった。
(バックアップ拠点を決めていたことで、スムーズに対
応が進んだ事例もあった)
• 電話回線では、光電話がストップ。回線増設に時間
がかかり、電話機も不足した。
• 非常用発電装置、無線設備が1階、地下であり、津
波での浸水後は、連絡がとれない状況となった。
参考:「東日本大震災-宮城県の6か月間の災害対応とその検証-」(宮城県)
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職員の人員想定は十分か?
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例:避難所の運営
• 「大規模な地震時には、各避難所(予定施設)に、自治体職員2
名が駆けつけ、開錠し、避難所を設置する」と定めている自治体
が多い。
• しかし、大規模な避難所1カ所運営するには、5~10名の職員
が必要。交代要員も必要。
• 避難所が何十カ所となれば、50~100名の職員は、避難所運営
にとられることになる。
• 残った職員で、他の災害対応業務と、平常業務に対応すること
が出来るのか?
新潟県中越沖地震(2007年)では、新潟県が、地震当日に県職員
をバスで被災自治体に派遣。避難所運営要員として活動し、市職
員の負担は最小限におさえた。
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東日本大震災における人員不足の課題
• 過去の局所災害を想定した計画では、広域災害時のマンパワ
ーの絶対数が不足した。
• ローテーション体制や庁内での応援要員確保が十分に考えら
れていなかった。
• ガソリン不足でマイカーが使えず、通勤困難な職員が多数発
生し、自宅最寄りの事務所等で災害対応に当たることになっ
た。
• 外部応援の受援体制が不足し、応援職員を有効に活用でき
なかった。
• 技術職など専門的知識を有する人材が、一般的な応援業務
に回されるなど、全庁的に有効に配置する体制が不十分であ
った。
参考:「東日本大震災-宮城県の6か月間の災害対応とその検証-」(宮城県)
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職員の働く環境は?
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断水すると、トイレが使えなくなる。
(職員用の非常用トイレを用意している自治体は少ない)
福島市内の公衆トイレ
・職員用の食料備蓄がなく、食料調達方法も決まっておらず、
食べるものが不十分な状態で、業務を続けることとなった。
宮城県庁内コンビニ
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取引先や協定は、災害時に役立つか?
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取引先、協定の実効性
• 庁舎の被害検査や、非常用発電機の燃料供給に関す
る業者と連絡がとれなかったり、業者の到着が遅れるこ
とがあった。
• 食料を購入しようとしたが、自治体の買い出し部隊であ
っても、「一人2個」しか売ってもらえなかった。
• ガソリンがなく、被災地に入れなかった。
<実効性のある連携を考える対象(例)>
• 外部委託先の企業(IT関係)
• 防災関係機関(自衛隊、病院、NTT,電気事業者、等)
• 燃料、発電装置等の協定先企業
• 施設の復旧に必要な建設関係企業
• 市民、被災者、自主防災組織
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ガソリンスタンドに並ぶ車列
業務継続計画の第一歩は?
• 災害時、自分たちがどのようになるのか、その状況をイメ
ージしてみる。
• 庁舎の安全性、通信機器の確保、職員の執務環境、安
全確保などが必要だと気づく。
• 不足する資源は、外部からの応援活用を考える。
「できないこと」を知る
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3.自治体における業務継続計画
(BCP)の必要性とポイント
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地域防災計画とBCPの違い
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自治体の地域防災計画の課題
・ 自分たち(自治体の施設、組織、人員)が被災することを想定
していない。
・ 計画に抜け、漏れがたくさんある。
・ 関係機関が、きちんと機能しているという前提になっている。
・ 担当や調整の仕組みが、具体的に定められていない。
・ 「何をやるのか」というリストであり、「どのようにやるのか」と
いう方法について、十分に検討されていない。
・地域防災計画を補完する業務継続計画(BCP)やマ
ニュアルが必要
・平時の事前対策が最重要(災害後では手遅れ)
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地域防災計画と業務継続計画の違い
• BCPは、「災害対応業務を実施するための
共通の基礎部分」と考えると理解しやすい。
<災害・事故>
地域防災計画:
→主に被災者支援の
内容、方法を定める
<その他>
新型インフルエンザ,
口蹄疫、不祥事、等
BCP(業務継続計画)あるいはマニュアル
•組織を機能させるために必要な環境整備
•優先的に実施すべき平常業務の明確化
→主に行政内部の体制について定める
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地域防災計画と非常時優先業務
との関係
地域防災計画に抜け
がちな、優先度が高い
業務がある。
『地震発災時における地方公共団体の業務継続の手引きとその解説』(内閣府)
の図を加筆、修正
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地域防災計画で抜けがちな事項(例)
■職員・施設の被害への想定
・ 負傷した職員の救助、救命活動。
・ 庁舎倒壊などシビアな被害への対応。
・ 連絡要員への連絡手段(衛星携帯)の配備。
・ 電源の確保。
■職員も「被災者」という前提
・ 職員のトイレ、食料品、休憩場所の確保。
・ 出勤できない職員が一定数発生することを前提
にした、職員の動員計画。(ローテーション含む)
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■詳細な検討が不足しがちなテーマ
・ 緊急車両の認定基準
・ 臨時災害FM放送局の設置
・ 寄付の受付手続きの簡略化。
・ 子ども、女性、高齢者等の目線での対応。
・ 想定外の公共施設(庁舎等)が避難所となった場合
の対応方法 (特に都道府県)
・ 災害対策本部会議の議事録の作成
・ テーマ別(がれき処理、避難所、等)の部局横断的
な情報共有・調整会議の開催
・ 外部応援の受入方法
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BCP策定で重要な2つの視点
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自治体BCPの2つの視点
優先業務を絞
り込み、継続さ
せる
自治体BCPの必要性
■民間企業のBCP
・重要業務の絞り込み
・影響度評価の実施
・目標復旧時間の設定
・サプライチェーンの評価
・必要な対策の実施
資源制約を踏ま
え、実効性を持
たせる
■自治体の災害対応実態
・機能しない災害対策本部
・実行できない地域防災
計画
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企業と自治体のBCPの違い
・自治体は、業務の先送りは出来ても、中止は出来ない。
・自治体は、国、県、他自治体の外部応援を確保できる。
■企業
■自治体
(初動期)
制約条件
資源の制約
■自治体
やるべき業務
(応急期~)
対応
優先業務の絞り込み
必要な資源の確保
国、自衛隊、他自治体等からの支援
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制約を踏まえ、確保すべき資源例
■人
・稼働できる要員数の増加、代替要員の確保・育成、職
員の住宅の安全確保
■施設・設備
・耐震補強、代替施設の確保、設備・燃料等の代替調達
先の確保
■資金
・給料、決済、復旧資金の手当て
■情報
・データ、重要な文書等のバックアップ
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4.最後に
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■BCPは、地域防災計画を補完する重要なものである。
• 既存の地域防災計画に抜けている内容を補うものであり、災
害時に、自治体としての対応を担保するために必要なものであ
る。
■BCPは、全庁的に策定するものである
• 施設管理、人事など、関連する部局、幹部、首長の協力が不
可欠である。
• BCPの策定自体を一つの研修、防災教育として考え、職員の
防災力向上につなげる。
■「災害時、実際はどうなるか」を考える
• 災害が発生したら、自分、同僚、職場、庁舎、設備、地域はど
のようになるのか、各部局が考えるきっかけにする。
■初動対応、応急対応に備えて、平時に備えるべきことを考える
• 初動対応、応急対応をスムーズに進めるため、平時に、準備
すべきことを考え、今後の訓練・対策に生かす。
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■優先業務の絞り込みよりも、資源制約の解決を考える
• 災害時の優先業務は、地域防災計画に定められた業務を中心とし、
他自治体の事例等を参考として検討する。
• 絞り込みは、あまり細かくする必要はなく、大まかな優先順位がつけ
られれば良い
■外部の応援を上手く活用する
• 災害には、自力だけでは対応できない、という前提で考える。
• 県や自衛隊への応援要請、企業との協定、他の自治体からの応援、
ボランティア、地域の自主防災組織等との連携など、外部応援の受
け入れ方法(受援計画)を考えておく。
■完全な計画・マニュアルよりも、毎年、少しずつ改善していく
• あまりにも完全なものをつくると、次年度以降、計画を変更するところ
が減ってしまい、次の担当者が読まなくなる。
• 少しずつでも、毎年、改善することで、BCPを読み込み、身につけて
いくことが大切である。
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終わり
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