遺伝子工学

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遺伝子工学
遺伝子操作の手法
配列特異的DNA鎖切断
制限酵素
DNA鎖連結
DNAリガーゼ
3'末端への塩基付加
ターミナルデオキシリボヌクレオチジル
トランスフェラーゼ(TdT)
DNA鎖複製
Taqポリメラーゼ(Thermus aquaticus)
逆転写
AMV (Avian Myeloblastosis Virus)-RT
MMLV (Moloney Murine Leukemia Virus)-RT
制限酵素
二本鎖DNAの特定の塩基配列を認識して切断する酵素
EcoRI
GAATTC
CTTAAG
Escherichia coli由来
BamHI
GGATCC
CCTAGG
Bacillus amyloliquefaciens由来
HindIII
AAGCTT
TTCGAA
Haemophilus influenzae由来
付着末端(cohesive end)が残る
XbaI
TCTAGA
AGATCT
Xanthomonas badrii由来
KpnI
GGTACC
CCATGG
Klebsiella pneumoniae由来
HhaI
GCGC
CGCG
Haemophilus haemolyticus由来
NotI
GCGGCCGC
CGCCGGCG
Nocardia otitidis-caviarum由来
付着末端(cohesive end)が残る
DraI
TTTAAA
AAATTT
Deinococcus radiophilus由来
SmaI
CCCGGG
GGGCCC
Serratia marcescens由来
HincII
GTCGAC
CAGCTG
Haemophilus influenzae由来
GTTAAC
CAATTG
平滑末端(blunt end)が残る
DNA分子の結合1
AATT
TTAA
AATT
TTAA
DNAリガーゼによる結合
DNAリガーゼによる結合
DNA分子の結合2
dGTP
ターミナルデオキシリボヌクレオチジル
トランスフェラーゼ(TdT)による付加
GGGG
CCCC
GGGG
CCCC
DNAリガーゼによる結合
dCTP
宿主ーベクター系
ベクター・・・目的遺伝子の運び手
・宿主細胞内で安定に複製する
・適当な制限酵素切断点を有する
・薬剤耐性などのマーカーを有する
シャトルベクター・・・細菌と真核生物双方で増殖できる
大腸菌
プラスミド(pUC系)
λファージ
コスミド
酵母
シャトルベクター(pUC−酵母ars1)
酵母人工染色体(YAC)
動物細胞
シャトルベクター(pUC−SV40)
レトロウイルス(MMLV由来)
昆虫細胞
バキュロウイルス
大腸菌系ベクタープラスミド
pBR322
(4,361 bp)
pUC18
(2,686 bp)
ブルーセレクション
X-gal
Br
OH
OH
Br
HO
Cl
Cl
O
HO
O
OH
N
H
NH
非酵素的
二量体化
β-ガラクトシダーゼ
O
H
N
Cl
N
H
Cl
Br
Br
O
青色色素
遺伝子クローニング
クローニング・・・ある生物から特定のDNAを取り出して増幅すること
制限酵素による切断 → ベクターDNAに結合 →
宿主細胞内で増幅 → 目的DNAを有する組換え体を選別
クローン・・・目的の遺伝子を含む組換え体
DNA供与体・・・クローニングのためDNAを取り出される生物
ファージベクターを利用したクローニング
ファージDNAに目的DNAを挿入 → パッケージング
パッケージング・・・組換えDNAをファージ粒子に挿入すること
遺伝子ライブラリー(ジーンバンク)
制限酵素などで断片化された全ゲノムDNAを含むクローン
クローニングできる遺伝子のサイズ
プラスミド(pUC系)
λファージベクター
コスミド
酵母人工染色体
~10 kb
~20 kb
~40 kb
~400 kb
塩基配列決定法
ジデオキシ法(サンガー法)
特定塩基のジデオキシリボヌクレオチドを取り込むとDNA合成が終結
↓
電気泳動でオリゴヌクレオチドの長さ(塩基数)を測定
↓
特定塩基までの塩基数から特定塩基の位置を決定
ATGCATGCATGCという配列のオリゴヌクレオチド
ddCTPを加えてDNA合成反応を行う
↓
ATGCATGCATGC 塩基数12
ATGCATGC
塩基数8
ATGC
塩基数4
↓
Cは4,8,12番目にある
ハイブリッド形成による遺伝子解析
ハイブリダイゼーション(交雑)
相補的な配列をもつ異種DNA同士で二本鎖を形成させること
目的配列を有するDNAを蛍光あるいは放射標識しておけば,
目的の遺伝子を含む
・プラスミドを保有するコロニー(コロニーハイブリダイゼーション)
・ファージにより形成されたプラーク(プラークハイブリダイゼーション)
・アガロースゲル上の切断DNA(サザンハイブリダイゼーション)
・アガロースゲル上のmRNA(ノーザンハイブリダイゼーション)
を検出することができる
ウエスタンブロット
ポリアクリルアミドゲル上のタンパク質 ← 標識抗体
コロニーハイブリダイゼーション
ライブラリー遺伝子を含む菌
のコロニー
プラークハイブリダイゼーション
ライブラリー遺伝子を含む
ファージのプラーク
ニトロセルロース膜にレプリカ
NaOHで変性(一本鎖DNA)
減圧加熱(DNA固定)
目的配列を持つ32P標識DNAと反応
標識されたコロニー(プラーク)から遺伝子を回収
遺伝子変異(改変)と機能解析
人為的に目的の遺伝子を変異させ,その遺伝子機能を解析する
部位指定変異導入
遺伝子内部の目的とする位置に正確に変異を導入し,改変遺伝子を作製する
変異部分を含む遺伝子配列を作製 → 相同組換え
トランスジェニック(遺伝子導入)生物
人為的に遺伝子を導入,置換,欠失させて作製した生物
(遺伝子)ノックアウト・・・正常遺伝子を欠失または不活性化させること
RNAi(RNA干渉)・・・特定にmRNAの働きを抑制 → 遺伝子機能解析
mRNAの相補鎖(アンチセンス)の導入
特定のmRNAを分解するリボザイム(酵素活性をもつRNA)の導入
siRNA・・・21~23塩基対の2本鎖RNA → 配列特異的にmRNAを切断
DNAマイクロアレイ
DNAマイクロアレイ(DNAチップ)
mRNAから作製したcDNAを蛍光ラベル
↓
基板に固定した1本鎖DNAとハイブリダイゼーション
↓
数千~数十万の遺伝子発現レベルを解析
遺伝子情報と利用
病原細菌の検出と同定
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)
鋳型DNAに対して,特定配列の1本鎖DNAと部分的2本鎖を形成させ,
相補的DNAを合成させる。相補的DNAは鋳型になりうるので,
この反応を繰り返すことにより,目的遺伝子を増幅することができる。
鋳型DNA
プライマー・・・合成した短鎖DNA
耐熱性DNAポリメラーゼ(DNA合成速度が速い)
病原細菌や毒素に特異的なDNAをPCR法により検出することができる
PCR (Polymerase Chain Reaction)
サイクル1
DNA鎖の分離
プライマーの結合
DNA複製
サイクル2
cDNAの調製(RT-PCR)
mRNA
AAAAAA
プライマーの結合
AAAAAA
TTTTTT
DNAへの逆転写
AAAAAA
TTTTTT
アルカリ処理(mRNAを分解)
TTTTTT
混成2本鎖
1本鎖 cDNAの3'末端は
ヘアピンループを形成
DNA複製
AAAAAA
TTTTTT
S1ヌクレアーゼ処理
AAAAAA
TTTTTT
(PCR)
2本鎖 cDNA
遺伝子解析法
リアルタイムPCR
蛍光色素が結合した短鎖DNAをプローブ(探査針)として用いたPCR
プローブまで相補鎖合成が進むと蛍光を発する → 定量可能
RAPD(Randomly Amplified Polymorphic PCR)
ランダムに合成した10塩基程度のプライマーを用いたPCR
種の比較などに利用する
AP-PCR(Arbitrarily Primed PCR)
反応初期の数サイクルの2本鎖形成条件を緩くし,
1つのプライマーを用いて染色体中の複数の領域を同時に増幅させるPCR
バンドのパターンから遺伝的多型性などを評価できる
パルスフィールドゲル電気泳動法
数百kb~数Mbの高分子DNAを分離できる
バイオテクノロジーの発展
ポリペプチドは遺伝子工学により作ることができる → バイオ医薬品
バイオ医薬品
遺伝子組換え技術あるいは細胞培養技術を用いて製造された
ポリペプチドまたはタンパク質を有効成分とする医薬品
微生物分野におけるバイオ医薬品
遺伝子組換えワクチン・・・B型肝炎,ヒトパピローマウイルス
抗体・・・抗RSウイルス抗体
遺伝子組換え作物
害虫抵抗性遺伝子・・・BTトキシン
除草剤耐性遺伝子
遺伝子工学によって生産される医薬の売上げ(2008年度,億円)
エポエチン ベータ
エポエチン アルファ
インフリキシマブ
エタネルセプト
トラスツズマブ
リツキシマブ
ベバシズマブ
インスリン
レノグラスチム
腎性貧血治療薬
腎性貧血治療薬
抗リウマチ薬
抗リウマチ薬
抗がん剤
抗がん剤
抗がん剤
糖尿病治療薬
好中球減少症治療薬
増殖因子
増殖因子
抗体
サイトカイン受容体
抗体
抗体
抗体
ペプチドホルモン
増殖因子
450
440
370
260
240
210
200
150
120
バイオ医薬品の国内市場規模
(富士経済,2009年以降は予測)
億円
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
2007
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
年
代表的なバイオ医薬
医薬
ペプチドホルモン
インスリン
成長ホルモン
心房性ナトリウム利尿ペプチド
グルカゴン
サイトカイン
インターフェロンα
インターフェロンγ
インターロイキン2
増殖因子
エポエチン(エリスロポエチン)
G-CSF
適用
製造法
糖尿病
小人症
急性心不全
低血糖症
大腸菌
大腸菌
大腸菌
酵母
C型肝炎,がん
がん
がん
大腸菌
大腸菌
大腸菌
貧血
白血球減少
動物細胞
大腸菌
代表的なバイオ医薬
医薬
酵素
t-PA
エプタコグアルファ(血液凝固第VII因子)
オクトコグアルファ(血液凝固第VIII因子)
受容体
エタネルセプト(TNF-α受容体)
ワクチン
B型肝炎ワクチン
抗体
トラスツズマブ(ハーセプチン:抗HER2抗体)
リツキシマブ(リツキサン:抗CD20抗体)
バシリキシマブ(抗CD25抗体)
インフリキシマブ(抗TNF-α抗体)
パリビズマブ(抗RSウイルス抗体)
適用
製造法
血栓溶解
血友病
血友病
動物細胞
動物細胞
動物細胞
関節リウマチ
動物細胞
B型肝炎
酵母
乳がん
悪性リンパ腫
腎移植
関節リウマチ
RSV気道感染症
動物細胞
動物細胞
動物細胞
動物細胞
動物細胞
遺伝子組換えと生物多様性
組換え生物
病原遺伝子,毒素遺伝子などの危険な遺伝子が拡散する可能性
在来生物が駆逐され,生物多様性が損なわれる可能性
物理的封じ込め
実験施設の設備,装置による封じ込め P1~P3
生物学的封じ込め
実験に用いる生物の環境における生存能力に関する規制
B1 Escherichia coli K12など
B2 Escherichia coli χ1776など(遺伝的欠陥により特殊培養条件必要)
カルタヘナ議定書
生物多様性に影響する可能性のある組換え生物の取り扱い法を制限