2.3回目 - 奈良工業高等専門学校

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各種磁気センサの動作原理と応用
~講義内容~
ホール素子、MRセンサ、GMRセンサ、MIセンサ、FGセンサ等
①動作原理・理論 ②特性/特徴 ③用途 ④製造方法
■スケジュール
第1回 7月26日 磁気の基礎・各センサの概要・センサー各論I
第2回 8月11日 センサー各論II
第3回 8月25日 応用商品と用途,製造方法の基礎
奈良工業高等専門学校
電気工学科 藤田直幸
磁気センサの各論III
ホールセンサ
半導体の基礎① シリコンの結晶構造
Si
Si
Si
Si
Si
Si
Si
Si
Si
価電子
温度上昇
伝導電子
正孔
(ホール)
半導体の基礎② ホールの特性
伝導電子
ホールは,電子が抜けた孔で
本当は電子のような荷電粒子ではない
正孔
(ホール)
電界 E
ホールがあると,近くの価電子が,
ホールの場所に移動しようとする.
ホールの移動
電界を加えると,
電子:電界の逆向きに移動
ホール:電界と同じ向きに移動
→正の電荷を持った粒子と考える
電子,ホールは,電流の担い手となるので,キャリアという.
半導体の基礎③ 不純物半導体
Siだけでできている半導体(真性半導体)では,
伝導電子の数=ホールの数
Si
Si
Si
Si
Si
Si
Si
P
Si
Si
B
Si
Si
Si
Si
Si
Si
Si
Siに僅かに(例えば,1億分の1個の割合)で,リン(P)やホウ素(B)を
入れると図のように不純物半導体ができる.
Pを入れると,電子が増える.Bを入れるとホールが増える.
人為的にキャリアの濃度(抵抗値)をコントロールできる.
半導体の基礎④ ドリフト電流
平均速度 v
n:単位体積あたりの電子の密度
電子は,Eによって力を受けて,
加速する.その平均速度をVとすると
v=μE (μ:移動度)という
比例関係にある.
電界 E
断面積S
電流とは,ある面を1秒間に通過する電荷量である.
t=0の時に左図の断面Sのすぐ左
v[m]
にある電子は,1秒後にはv[m]進ん
S
だ位置にある.
だから,1秒間にSを通過した
電子の数は,S×vの空間の
中にある,全電子でnSv個となる
t=0
t=1s
1つの電子はe[C]の電荷を持つので,
I=neSv=neμSE[A]となる.
ホール効果
L
VH
W
d
B
半導体や金属に電流Iを流し,
磁束密度Bを加えると,
両者に垂直な方向に
電圧VHが現れる現象.
I
半導体
ホール効果の関係式①
- - - - - - - - - - - ー
ー F
1
ー
EH
I
ー
ー
ー
A面
ー
F2
B
+ + + + + + + + + + + + B面
・図の上から下の方向にローレンツ力F1が働く.
・電子は,A面の方に集まる.
・A面にーがあつまり,B面は,電子が抜けたので
等価的に+となる.
・A→Bの方向に電圧(電界)EHが発生する.
・定常状態では,この電界による力F2と,ローレンツ力がつりあう.
ホール効果の関係式②
1)ローレンツ力F1:ev×B
(e:電子の電荷量,v:電子の速度,B:磁束密度)
2)電界による力F2:eEH (EH:ホール電界)
3)両者がつりあうので, vB =EH
4)試料の両端で観測されるホール電圧VHは,
VH=wEH = wvB
5)一方電流Iは,I=nev×(wd) であるので,wv=I/(ned)
6) VH= wvB= RH IB/dとなる.ここで, RH =1/(ne)
7)一定の電流Iを流しておけば, VHを測定すれば,Bが分かる.
ホール素子用材料
IB
VH  R H
d
w
 BVin
l
定電流駆動
定電圧駆動
移動度μが高い材料,dが薄い形状
InSb(化合物半導体) 電子の移動度μe=78000cm2/(VS)
厚さの薄い薄膜形状
ホールセンサ
フェライト:集磁機能→センサに集める磁界を3~5倍強める
Vin=1V, B=50mT 300mV程度の出力
磁気センサの各論IV
MIセンサ
磁気インピーダンス効果
表皮効果:導体に高周波の電流を流すと,導体の表面に電流が
集中して流れる現象
i1:表面の電流の最大値
Ioz:電流分布関数
a:導体の半径
r:中心からの距離r
表皮効果厚さ(skin depth):電流密度,磁束密度が表面からの
強さの1/eになる点の厚さ:δ=(2ρ/ωμ)1/2
ρ:抵抗率,ω:周波数,μ:透磁率
このδまでに電流や磁束が集中していると考えられる.
磁界の印加→μの変化→δの変化→
インピーダンス(交流の抵抗)の変化
MIセンサの種類
名古屋大学 毛利研究室(愛知製鋼)
・アモルファスワイヤー型が主
・ICを使って集積回路化
・電子コンパスとして商品化
東北大学 荒井研究室(NECトーキン)
・薄膜センサーの開発
・マイクロ磁気デバイスへの展開
MIセンサを応用した磁気コンパス①
円周方向に磁化容易軸を
誘導したワイヤーを使用
MIセンサを応用した磁気コンパス②
インピーダンス変化:
極性が分からない
インダクタンス(コイル)成分を取り出す
コイルピックアップ方式
MIセンサを応用した磁気コンパス③
(A) 印加磁界なし スピンは円周方向に並んでいる
(B) 外部磁場を長さ方向に印加すると,スピンは傾く
(C) パルス電流を流すと,電流が作る磁界(円周方向)により
スピンの方向がそろう.
→ この際にインピーダンスの変化が生じ
ワイヤーのそばに置いたピックアップコイルに誘導電圧が生じる
MIセンサを応用した磁気コンパス④
Sensor type
要求
仕様
MI sensor
Hall
Fluxgate MR sensor
sensor
sensor
サイズ
height ≦ 1.5 mm
(mm)
as small as possible H 0.8
H 1
× H 1.4 (回路含まず
≦ 10 mW
6mW
25mW
30mW
9mW
≦5
1
─
1
─
≦ ±1
±1
±4
±1
±8
消費電力
(mW)
応答速度
(ms)
角度分解能
(degree)
3.1×3.4× 6.3×5.9× 8.5×8.5 3×4.9×H 1
薄膜型MIセンサ
SmCo磁石薄膜であらかじめ
バイアス磁界を加えておき,
感度の良い点が零磁界付近にくるようにする.
ブリッジ構成にして感度を上げる
薄膜型MIセンサの開発現状
東北大学 荒井研究室の実績
CoNbZr薄膜を使ったマイクロパタン-ニングされたセンサ
磁気センサの各論V
フラックスゲートセンサ
FGセンサの原理
ひずみ交流の分解
1:基本波
2:第2高調波
4:合成波
FGセンサの構造
トロイダルコア型
・コイルを右と左の半分に分けて
差動信号を取る→奇数高調波が消える
→ コアサイズ 数cm
薄膜型
寸法:厚さ4μm,幅4.9mm,長さ1mm(縦長型)
磁性体:Fe-Ni-In薄膜 Al薄膜を微細加工してコイルに使用
→3MHzで, 3.5mV/(A/m) 分解能3.2×10-2A/m
薄膜化により感度が2から3桁減少
2次元薄膜FGセンサ
FGセンサは
磁界の向きの検出が容易
微細加工プロセス
フォトリソグラフィ
(a)単結晶シリコン基板
(e)現像して,紫外線の当たった部分だけ残す
(b)基板表面を酸化処理 (SiO2 膜の形成)
(f)フォトレジストの無い部分の酸化膜をフッ酸(HF)でエッチング
(c)フォトレジストの塗布
(g)フォトレジストをレジスト剥離液で剥がす
不純物を注入
(SiO2のある部分は不純物は入らない)
(d)フォトマスクを通じてフォトレジストを紫外線で露光
(h)SiO2 の無い部分に不純物をドー ピングする.
(半導体の形を部分的に変える事ができる.
)
フォトリソグラフィ工程