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心理学基礎 第

5

回 記憶と学習

福田玄明

宣伝

 錯覚美術館  来てくださいね。

最初に

 記憶テスト  これから一つの物語を読みます。  メモなどは取らずに記憶してください。  後程テストします。

記憶と学習

 我々はどのように新しい知識や行動 様式を習得するのだろうか  学習・・・行動変容  行動の生起する確率の変化  記憶・・・知識  蓄積された過去の情報

学習

 意図的なものに限らない.  我々の行動様式は日々変化している  知らず知らずに多くの影響を環境から受けて いる  経験からの影響  他者からの影響  環境からの影響

条件付け

 古典的条件付け  パヴロフの実験( 1903 )  オペラント条件付け  スキナーの実験( 1938 )

パヴロフの条件付け

 条件付け以前  メトロノームの音 ⇒ なし (中性刺激)  えさ (無条件刺激) ⇒ 唾液に関連する反射 唾液の分泌 (無条件反射)

パヴロフの条件付け

 条件付け  メトロノームの音を聞かせ,その後えさを 与える.

パヴロフの条件付け

 条件付けの後  メトロノームの音 (条件刺激) ⇒ 唾液分泌 (条件反射)

パヴロフの条件付け

 条件付け以前  メトロノームの音 ⇒ なし 唾液に関連する反射 連合 (中性刺激)  えさ (無条件刺激) ⇒ 唾液の分泌 (無条件反射)

パヴロフの条件付け

 刺激と生理反応を対呈示することを繰 り返すことで,刺激と生理反応の新し い関係を作る.  条件反射となる反応は受動的な反応

色々な古典的条件付け

無条件刺激 無条件反射 条件刺激 条件反射 ハエの電気 刺激 電気刺激 まばたき 風 逃げる ウズラの性 行動 交尾可能な メス 近づく まばたき におい 光 音 逃げる 近づく 瞬き

情動の条件付け

 恐怖条件付け  情動的に中性な刺激が嫌悪刺激とともに 提示されることでネガティブな情動が引き 起こされる.  ネズミなどに,音を聞かせた後に電気刺 激を与えるとうずくまったりする恐怖行動 を起こす.

条件付けの特徴

 消去  条件刺激のみを提示して無条件刺激を提示しないと 徐々に条件反射は低減する    自発的回復  時間をおくと反応が回復 般化  類似した刺激に対する反応 分化  2つの刺激の片方には無条件刺激を伴わせ,もう片方 には提示しないと刺激を区別するようになる.

分化と実験神経症

 Pavlov, 1927  イヌに明るい円を提示して,えさを与える.        条件反射が成立後,円と楕円を提示するとどちらに対 しても唾液が分泌される. 円にのみえさ. 楕円には唾液を生じない. 楕円の長軸と短軸の比を徐々に 1 に近づける 9対8になったとき分化が生じなくなった. そのまま実験を 3 週間継続 まったく分化が起こらなくなる  おとなしかったイヌが暴れ,鳴き声をあげ,装置を壊し たりした.

スキナーの条件付け

 オペラント条件付け

オペラント条件付け

 報酬,または嫌悪刺激を与えることで 適当な行動をとるように条件づけるこ とができる.  様々な行動を獲得させることが可能  サーカスの動物など

生物学的制約

 アライグマのコイン  アライグマにコインを拾って瓶に入れる行 動を習得させる  コインが 1 枚のときは可能,しかし 2 枚にな ると両手にもってこすり合わせて、手から 離さなくなり学習できない.

生物学的制約

 ガルシア  ネズミにサッカリン溶液を飲ませる  X 線の照射.胃に不調.もしくは電撃  X 線を受けたネズミはサッカリンを避ける.  電撃ではそのような傾向は見られない.  ネズミが食物を味覚嗅覚により選択する ことを反映.  人でも同様に不調と関連したたべものを 避ける.知識は無関係

まとめ

 学習は原始的な生物においても認め られる現象  我々の生存において非常に重要  行動の獲得,制御,予測に書かせな いものである.

記憶

 様々な生物が学習をする.  学習が可能ということは記憶ができる ということ  記憶は,自分が何者かという自己認 識を支えている.

記憶の基礎

 記銘,保持,想起の要素からなる.  短期記憶   ワーキングメモリー チャンク,7±2  長期記憶

短期記憶

 短い時間は憶えていられるがすぐに 忘れる.  電話番号  講義の内容  容量  7±2 チャンク  チャンク 意味の塊

何個おぼえられる?

FHRISMGLEOWQS

何個おぼえられる?

JPNUNIVKAITINFO

何個おぼえられる?

JPN / UNIV / KAIT / INFO

ワーキングメモリ

 短期記憶の概念を発展  会話,読書,計算などの認知課題にお いては情報の操作,変換が必要であ る.  この情報操作が行われる場として, ワーキングメモリーがある.

長期記憶

 宣言的記憶  エピソード記憶  意味記憶  手続き的記憶  技能  条件付けなど

症例 HM

 てんかんの治療のため脳外科手術を 受ける.  以降,記憶障害になる.  研究に協力的  切除部位は海馬周辺の側頭葉

症例 HM

 知能,言語,運動ともに問題なし.  知覚運動課題には全く問題がない.  技能の習得も可能.  チェス,ハノイの塔など  記憶でも,直後に再生させる課題では 正常 ⇒ 短期記憶から長期記憶に情報を送る 経路の障害

症例 HM

 どこに住んでいるか,朝何をたべたか を全く答えられない.  今何年かと聞かれると古い年を答える.  自分の年齢も若く答える.  手術の 2 年前から手術までのことは全 く憶えていないが,それ以前のことは よく憶えている.

症例 KF

 バイクの事故で左頭頂後頭部に損傷  復唱に大きな障害  数字,単語やアルファベットの復唱は 1 項目  長期記憶には何の障害もない.  単語系列の学習は健常人の平均より も優秀 ⇒ 短期記憶の選択的障害

健忘症

 いくつかある記憶のうちのいくつかが 選択的に失われる.  順行性健忘  新しいことが記憶できない.  逆行性健忘  障害が生じた時点より古いことが思い出 せない.古いことはよく憶えている.

記憶テスト

 最初の物語を思い出して、紙に書きま しょう。  制限時間は 10 分です。

 ある夜のこと、エグラックから来た2人 の若者が、アザラシ狩りのために河を くだってきた。そこにいるとき、霧も立 ちこめ静かになってきた。すると、鬨 (とき)の声が聞こえてきたので、「軍 団だろう」と考えた。  彼らは岸辺に逃げ丸太のかげに隠れ た。すると、カヌーがやってきて、カイ をこぐあわただしい音が聞こえてきた。  1 艘のカヌーが、彼らの所にやってくる のが見えた。そのカヌーには 5 人の男 が乗っていて、次のように言った。

 「何を考えているんだい。われわれは君たちをつ れて行きたいんだ。われわれは、あいつらと戦う ために河をのぼっているんだ」  「矢は持っていないよ」と 1 人の若者が言った。  「矢はカヌーの中にあるさ」と彼らは言った。  「おれは一緒に行かない。殺されるかもしれない。 おれの身内の者たちは、おれがどこにいるのか、 わかりゃしないしね。だが君は」と、他の男に向 かって彼は言った。「彼らと一緒に行っていい」  こうして、若者の 1 人は行ったが、ほかの 1 人は家 に帰った。

 そこで、戦士たちは河をさかのぼり、カ マラの対岸の町に向かった。そうして、 彼らは戦い始め、多くの者が殺された。 しかし、ほどなく若者は、戦士の 1 人が 次のように言うのを聞いた。  「急いで、家に帰ろう。あのインディア ンは撃たれた」そこで彼は考えた。 「あっ、彼らは幽霊なのだ」彼は痛みを 感じなかったけれども、他の戦士たち は、かれが撃たれているといった。

 こうして、カヌーはエグラックに戻ってきて、この若 者は岸にあがって家に行き、火を起こした。そし て彼はみんなに話して聞かせて言った。「いいか い、おれは幽霊について、戦いに行ったんだ。仲 間も大勢殺され、おれたちを襲った者も大勢殺さ れた。彼らは、おれが撃たれていると言ったが、 おれは痛みを感じなかったんだ」  彼は、すべてを話し終えると、静かになった。太 陽が昇ったとき、彼は倒れた。何か黒いものが口 から出てきた。顔はひきつっていた。人々は跳び あがって叫んだ。  彼は死んでいた。

Bartlet, 1932

 幽霊の戦いを読んで一週間後に記憶 テストを行う.  意味の通るように,内容が改変されて いた.  どうしてこのようなことが起こるのか?

Wanner(1968 の実験 )

 我々は正確に憶えている訳ではない.  Wanner の実験  文体の異なる二つの文章  意味の異なる二つの文章  実験参加者は意味の違いに敏感である

Wanner の結果

Mandler & Ritchey (1977)

 視覚の記憶も意味による記憶  意味を変えない変化には鈍感

Droodles

Droodles

Bower, Karlin & Dueck

 キャプションありとなしで実験参加者 に見せ,書かせる.  キャプションありの場合,71%が正確 に書けた.  キャプションなしだと、51%しか書け ない.  記憶は意味に影響される

記憶の変容

 記憶は後から書き換えられることもあ る.  E. ロフタス,「目撃者の証言」

事後情報による記憶変容 (Loftus,1975)        「学園闘争の記録」と言う 3 分間のフィルムを見る. 大学の講義に8人のデモ隊が乱入して起こる乱 闘を移している. フィルムを見た後に質問紙に答える 半分の参加者は「4人のデモ隊のリーダーは男 だったか?」という質問項目がある.残りは「12 人の〜」 後日デモ隊の人数について質問する 「4人の〜」 ・・・平均6.4人 「12人の〜」・・・平均8.9人

Loftus, 1974

 交通事故の映像を見て質問に答える  半分「 2 台の車がぶつかったときスピードはどれく らいだったか」  残りの半分「 2 台の車が激突ときスピードはどれ くらいだったか」  その後ガラスの破片を見たか尋ねられる.  実際にはガラスは割れていない.

Loftus,1974

 結果  「激突」・・・見た:16人,見ていない:3 4人  「ぶつかる」・・・見た:7人,見ていな い:43 人

無意識的転移( Wall, 1965 )

 銃を突きつけられて脅された駅員が、 事件の後の面通しで一人の水兵を犯 人と認めた.しかしこの水兵にはアリ バイがあり、釈放された.  たまたま,基地が知覚にあり,この駅 員から3度切符を買ったことがあった.  水兵の顔を見たことがあった駅員が 誤って強盗と水兵の顔を結びつけてし まった.

Brown, 1977

 実験参加者は5人の犯人の顔写真を 憶える.  1 時間後,犯人じゃない人を含む15人 の顔写真の中から犯人を選ぶ.  1 週間後,面通しを行い,犯人を選ぶ.

Brown, 1977

 結果,写真で見られている人物は,犯 人と認められる確率が高かった.  写真で見られた人物20%  一度も見られていない人物8%  写真で一度見られただけで,犯人と誤認 された.

まとめ

 記憶は曖昧  記憶は静的な記録ではなく,変化するも のである.  記憶は事実のコピーではなく,その意味 が記憶される.  記憶は思い出されるのではなく,再経験 される.