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2014年10月22日
【千葉大学講義】
「都市環境エネルギー概論」
水曜日(5限 4:10-5:40)
放射能と放射線の知識
Office T.Kibe
研究開発、品質保証コンサルタント
【講師】 岐部健生
理学修士
専門:環境生物学・放射線生物学・etc.
1
放射能とは?
放射線を放出する能力である。
○ 食べ物や生活環境にある物質は、様々な元素からなる。
○ 身の回りの物質を構成する元素は、全て放射線を放出し
ない安定な原子でできていると思われがちである。
○ 実は、原発などの特別な事故がなくても、自然界にもとも
と放射能を有する元素が存在。同じ元素でも放射能を持った
原子(核種)が存在する。
2
放射能量 = ベクレル (Bq)
1ベクレルは、放射性核種の原子が1秒間に1個崩壊して放
射線を放出する能力を示しているだけである。
※ 放射線そのものの種類やエネルギーは考慮されていない。
※ ベクレルは、単位時間(1秒間)当たりに壊変する原
子数を示す単位である。
1Kgの物質中で1秒間に何個の原子が壊変するかを
示す時、Bq/Kgのように表し、多くの場合には試料中
の濃度として示される。土壌に含まれる放射性物質の
濃度が100Bq/Kg、その土壌で育った植物の放射性
物質の濃度が20Bq/Kgであったという具合に報告さ
れる。
3
放射線とは?
粒子放射線:高い運動エネルギーを持つ物質粒子
アルファ線(α) ベータ線(β) 中性子線(n)
※ 陽子線は、水素の原子核である陽子(プロトン、Proton)の束の流れ
で、加速器(シンクロトロンなど)で加速し、物理学実験や医療目的に使
用
※ 大気中に入射する宇宙線を一次宇宙線(原子核:水素→陽子線、ヘ
リウム→アルファ線、リチウム、ベリリウムなどの原子核)そこから発生
した粒子を二次宇宙線(ミュー粒子)
電磁放射線:きわめて波長の短い電磁波
ガンマ線(γ)
X線
4
電磁波
γ線 X線 紫外線 可視光線 赤外線 電波
紫外線
UVC
UVB
UVA
~280nm
280~320nm
320~400nm
オゾンに吸収
地球上に降り注ぐ
オゾンで
低周波・超長波・長波・
中波・短波・超短波・マ
イクロ波
5
CTなどのX線撮影に使うX線発生装置
X線管(真空管の一種)に高い電圧をかける
陰極のフィラメント
陰極線(電子線:electron beam)
陽極のターゲット
制動放射によりX線が発生
X線
6
放射線の透過能力
アルファ線:紙1枚程度
ベータ線:厚さ数mmのアルミニウ
ム板や厚さ1cm程度のプラスティ
アルファ線
アルファ線は紙1枚程度
ック板
ガンマ線:コンクリートで50cm、鉛
でも厚さ10cm
中性子線:水やコンクリートの厚い
壁に含まれる水素原子で遮断可
7
能
放射線の測定
※ 放射線の測定については、参考資料を用意
8
主な放射線の透過力と人体への影響度
種類
粒子/電磁波
透過力と遮蔽
アルファ ヘリウムの原 透過力は弱いので紙などで
線(α)
子核と同じ(陽 も遮蔽可。
子2個、中性子
2個)
ベータ
線(β)
電子
制動放射でX
線を放射
中性子
線(n)
中性子
陽子と質量は
同じ電気的に
中性
ガンマ
線(γ)
電磁波
アルミ板などの軽金属で遮
蔽可。
制動X線の遮蔽も要考慮!
人体への影響度
外部から被曝した場合は皮膚
に影響。体内に取り込まれて被
曝すると局所に重大な影響(ホ
ットパーティクル)。
外部から被曝すれば組織内に
影響。体内に取り込まれた場
合、周りの臓器に影響。
制動X線による影響も。
透過力は強力、コンクリート 他の放射線より影響が大きく、
の建物内でも被曝。遮蔽に
他の原子に取り込まれて放射
は水などの極めて重い質量 化させ、放射性核種を生成。
の物質が必要。
厚い鉛板などや重コンクリ
ート。
外部被曝でも、生体内を貫いて
影響。
9
10
自然放射線の内訳(全世界平
自然放射線の内訳
均、2008
年国連科学委員会報
全世界平均
国連科学委員会2008年
告)
11
12
13
14
15
16
放射性核種の半減期
物理学的半減期:
放射性元素そのものが、放射線を放出しながら壊変
し、半減するまでの時間
生物学的半減期:
体内にとり込まれた放射性元素が、体の代謝により
体外に排出、半減するのに要す時間
有効半減期
あるいは
実効半減期:
体内に取り込まれた放射性元素は、物理的にも生物
学的にも減少していくのです。体内に取り込まれた放射
性元素の量が半分になるまでに要する時間
17
有効半減期の求め方
物理的半減期 × 生物学的半減期
有効半減期=
物理的半減期 + 生物学的半減期
物理的半減期
ストロンチウム90
生物学的半減期
有効半減期
28.9年
(骨)50年
18年
8日
120日
7.5日
セシウム134
2.06年
110日
96日
セシウム137
30.2年
110日
109日
プルトニウム239
24100年
(骨)100年
ヨウ素131
1生
18
比放射能
半減期8日のヨウ素131
4.6×1018 Bq/kg
4.6×1015 Bq/g
半減期30.1年のセシウム137
3.2×1015 Bq/kg
3.2×1012 Bq/g
※ 同じ質量(kg)のヨウ素131とセシウム137を比較した
場合、ヨウ素131の方が1秒間で約1,000倍多い放射線
を出す能力がある。
19
化学反応とは別次元
1ベクレルのセシウム 137の原子数は?
1.37x10 9 個
(13億7000万個)
化学的手法で検知することは不可能!
(化学的に検知できない程、微量でも放射線を測定す
ることで物質量が測れる)
1グラムのセシウム 137の放射能量は?
3兆2100億ベクレル( 3.2x10 12Bq )
20
セシウム137
30.1年の半減期を持ち、ベータ線(0.514Mev)を放
出してバリウム-137(137Ba)となるが、94.4%はバ
リウム-137m(137mBa、半減期2.6分)を経由、バ
リウム-137mからガンマ線(0.622Mev)が放出さ
れ、安定したバリウム-137になる。
1 gのセシウム137の放射能量は、 3.215 TBq。
※ 3.215TBq=3.215兆ベクレル
・ 1モルのセシウム137は、原子数6×10 23個で、
137g。 ※ 1ベクレル中に1.37×10 9 個の原子
21
放射性物質の違いによる被曝の特徴
核種
ヨウ素
年齢
物理学的
半減期
生物学的
半減期
体への影響
乳児
8日
約11日
呼吸による吸入、皮膚からの吸収、食べ物
や飲料と共に体内に入る。
体内に入って約30%が甲状腺ホルモンの
原材料として甲状腺に選択的に蓄積され
る。
5歳
約23日
成人
約80日
~1歳
~9歳
セシウム
134
約2年
セシウム137
約30年
セシウム
約9日
約38日
~30歳
約70日
~50歳
約90日
約50年
カリウムと性質が似ている。腸で吸収され
たセシウムは静脈を通り、心臓に。心臓を
経由して動脈を通り、全身に運ばれる。体
内では全身の筋肉組織、生殖器などの細
胞に取り込まれる。排泄は腎臓を通り、尿
に含まれ、膀胱に滞留した後、体外に排出
される。長期にわたる土壌汚染、食品汚
染。
放射性物質の体内での挙動は、元素の種類と化学的な性質によって異なる。
22
137
セシウム137( Cs)の生体へ影響
10,000ベクレルの137Csを経口摂取した時の実
効線量は0.13ミリシーベルトになり、1mの距
離に100万ベクレルの137Cs(点線源)があると、
ガンマ線によって1日に0.0019ミリシ-ベルト
の外部被曝を受けることに。
旧ソ連原発事故では、広い地域が1m2あたり
50万ベクレル(5.0×105Bq)以上の137Csで汚染
された。そこでは137Csだけで1年間に1mSv以
上の外部被曝を受けることになった。
23
内部被曝の測定
食品や呼吸で吸収される放射性物質による内
部被曝は、体内に入った放射性物質を簡単に
測定できないことが問題。
ホールボディカウンターもありますが、何百
人・何千人も測定できる装置はなく、実行す
るとなれば経済的負担も大きくなる。
セシウムやヨウ素だけなら、測定することも
可能ですが、ストロンチウム90やプルトニウ
ムなどの内部被曝の測定は不可能。
24
「管理区域」
自然環境や一般人への被ばくを許容値内に維持する為に特別に制限さ
れた区域で、外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実
効線量の合計が 3ヶ月間につき1.3mSvを超えるおそれのある区域。
(一般人と異なり、「管理区域」で働く放射線業務従事者の平常時の年間
許容量は20mSvです。)
3ヶ月で1.3mSVの放射線量とは、1時間あたりに換算すると、0.6μSvと
なる。 2011年3月の東電福島第一原発の事故による放射性物質の拡散
により、近隣の市町村では、1時間あたりの放射線量が10μSvに留まら
ず、20μSvを超える箇所が多くなった。
法律では、放射線量0.6μSv以上となるエリアは、管理区域に指定し、
管理されなければなりませんが、その基準の何10倍も多い放射線量に曝
される地域(市町村)が、事故後、短期間に拡がった。
25
生元素とは
人体内に多い元素である酸素、水素、炭素、窒素の4つを合
わせると約97%で必須多量元素と呼ばれ、さらにリン、イオ
ウ、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩素ま
での合計11元素が必須常量元素と呼ばれ、人体を構成す
る元素の99.3%になる。
残りは、全部合わせても0.7%以下での必須微量元素と呼ば
れ、これには鉄、亜鉛、銅、マンガン、セレン、モリブデン、コ
バルト、ヨウ素、クロムの9つがある。
必須常量元素と必須微量元素の20元素が人体に必須であ
ることは、学会でもコンセンサスが得られている。これに対
し、必須かどうか議論されている元素には、カドミウム、リチ
ウム、ゲルマニウム、臭素、鉛、アルミニウムがある。
26
生元素(約30種類)
必須元素であることの証明は、歴史的には鉄とヨウ素が古く、その後が
銅、マンガンなどだった。カドミウムなどが必須元素の可能性ありと台頭し
てきたのは1970年代以降で、これは測定器がよくなったことや、環境から
のコンタミネーション(汚染)が入らなくなったことなどがその理由に挙げら
れる。
●多量生元素(11種類)
必須常量元素とも呼ばれる(11種類合わせて99.3%)
水素(H) 酸素(O) 炭素(C) 窒素(N) 約97% 水分が70%と多い
リン(P) イオウ(S) カルシウム(Ca) ナトリウム(Na) カリウム(K)
マグネシウム(Mg) 塩素(Cl)
●微量生元素(約20種)
必須微量元素を全部合わせても0.7%以下
鉄(Fe) 亜鉛(Zn) 銅(Cu) マンガン(Mn) モリブデン(Mo) コバルト(Co) クロム
(Cr) セレン(Se) ヨウ素(I) ヒ素(As) ホウ素(B) ケイ素(Si) フッ素(F) バナ
ジウム(V) タングステン(W) ニッケル(Ni) カドミウム(Cd) スズ(Sn) 鉛(Pb)
27
☆生物種によれば、リチウム(Li)、ゲルマニウム(Ge)、臭素(Br)、アルミニウム
(Al)が議論さ
れている。
生物の持つ恒常性
生物は、体内に生元素が不足すると取り込みを
活性化
体内に生元素が過剰になると取り込みを抑制、
排泄させる遺伝子が発現
28
29
人間の体内に常在する放射性核種
人間は、体重の0.2%程度のKを含み、体重50Kg
の人で、100g程度のKを含む。
100gのK → 40Kは0.0117g(0.0117%)
※ Kのおよそ1万分の1が40K。
成人男子:130~150g程度、3900~4500Bq
成人女子: 90~120g程度、2700~3600Bq
1年間の40Kによる平均的な内部被曝量(体重
60kgの人で)は、0.17mSv程度。
※ 上記の成人男女の数値については、体格や年
齢により、ある程度変化する。
30
放射性物質の体内蓄積について(平衡値)
毎日、放射性物質を含む食品を食べ続けても、体内に放射性物質が蓄積
し続ける訳ではない。
体内に取り込まれて蓄積する放射性物質は、1日あたりに摂取量と排泄
量の均衡がとれるまで増加し続ける。
食事で、放射性セシウムを1日に1Bqずつ摂り続けると仮定して、国際放
射線防護委員会(ICRP)のモデルで計算した平衡値が下記の表である。平衡
値は、1日に摂取する放射性セシウムの量にほぼ比例して多くなる為、1日
に100Bqずつ摂取する場合、各年齢の平衡値を100倍するとおおよその平衡
値の目安となる。
31
32
33
元素と原子
• 地球をはじめ、宇宙空間に存在する全ての物
質は、さまざまな元素によって構成される。
• 原子とは、元素が元素としての性質を保ち続
けることができる最小単位。
• 同じ元素であれば陽子数は同じ、中性子数の
異なる原子もあり、これを同位体(核種)と呼
ぶ。
(同位体の例 → Cs134、Cs137)
34
35
炭素(Carbon)
炭素原子が12Cの原子だけならば、炭素原子の
原子量は12なのですが、実際の炭素の原子量は
12.011です。
炭素原子の場合、中性子数の異なる12C、13C、
14Cの3種類が存在している為に、原子量を求める
には天然の存在比を計算します。
安定核種
12C(98.9%) 13C(1.1%)
放射性核種 14C(1.2×10-8 %) 極々微量存在
36
地球に存在する元素
○ 自然界にもともと存在する元素 → 90種類
最も重い元素はウラン(原子番号92)
※ 周期律表にある43番目テクネチウムと61番目プロメチウムは、人工放射
性元素で自然界に存在しない。両元素とも地球創世記には存在したが、現
在までに放射線を放射して別の元素に壊変したと考えられる。
○ 93番目のネプツニウム以降の元素は人工放射性元素。
※ 現在では、ネプツニウム(原子番号93)とプルトニウム(原子番号94)は、
ウラン238の崩壊生成物として、自然界にごく微量存在することが判明。
○ 原子力利用で、ウランより原子番号の大きな元素ができた。
37
最も軽い元素: 水素(原始番号 1) hydrogen
・ 水素は、地球表面に酸素(O)、ケイ素(Si)に続き多く存在。
・ 反応性が高く、水や有機化合物を構成する元素として知られる。
・ 分子は、常温・常圧では無色無臭の気体。
・ 非常に軽く、燃焼・爆発しやすい特徴。
1H 99.985% (軽水素)
原子核に陽子1個
2H
原子核に陽子1個と中性子1個
0.015 % (重水素)
(デュウテリウム、略号D)
3H
trace
(三重水素) 原子核に陽子1個と中性子2個
(トリチウム、略号T)
放射性核種(半減期 :12.32年)
※ 弱いβ線 (18 keV) を放射(β崩壊)してヘリウム3 (3He) に、自然界で
宇宙線の中性子と大気中の窒素や酸素との核反応で0.2個/cm2・sec
(地表面積当たり)の割合で生成されるが、地表に存在する水素原子の
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10-18 と極めて微量存在するのみ。
2H
0.015 % (重水素) 原子核に陽子1個と中性子1個
(デュウテリウム、略号D)
・ 重水素は原子核反応の用途で、中性子の減速に使用。
・ 生物学や化学の分野で同位体効果の研究に利用。
・ 医療関係では診断薬の追跡等に利用。
3H
trace
(三重水素) 原子核に陽子1個と中性子2個
(トリチウム、略号T)
放射性核種(半減期 :12.32年)
・ トリチウム(三重水素)は、原子炉内で生成される。
・ 水素爆弾の反応物質や核融合燃料に利用。
・ 放射性を利用したバイオテクノロジー分野でのトレーサーに利用。
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最も重い元素 → ウラン(原子番号92) uranium (Uran独語)
ウランは、全て放射性核種。
原子量:238.02 (天然存在比の平均)
ウラン234(0.0054%)
ウラン235(0.72%)
ウラン238(99.284%)
※ ウラン(元素番号92)核種の中で、ウラン235
(0.72%)だけが、核分裂を容易に起こす核分裂性
物質であり、原子力発電の燃料となる。
※ ウラン235は、原子核の陽子が92個、中性子が
143個、陽子と中性子の数を足した質量数が235。
原子核の周り回っている電子の数は92個。
40
原子力利用で生まれた「超ウラン元素」
*原子番号93 ネプツニウム(元素記号:Np)
*原子番号94 プルトニウム(元素記号:Pu)
原子番号95 アメリシウム(元素記号:Am)
原子番号96 キュリウム(元素記号:Cm)
原子番号97 バークリウム(元素記号:Bk)
原子番号98 カリフォルニウム(元素記号:Cf)
41
放射性物質の壊変(崩壊)
○ 放射性物質(放射性核種)は、放射線を放出(壊変系
列)し、放射線を出さない安定核種に。
○ ウラン235とウラン238とは同じウラン元素だが、異な
る核種であり、自然壊変の過程も異なり、ウラン238は
核分裂を起さないが、ウラン235は核分裂を引き起こ
す。
○ ウラン238は、核分裂を引き起こすウラン235と同じ
元素であり、陽子や電子の数は92個と同じだが、中性
子の数が3個多く、天然ウランの99.284%と最も多く存
在する。
42
ウラン元素の中で自然界に最も多いウラン238の自然壊変を
→
ウラン238の自然壊変
(主な過程の例)
※ ↓α、 ↓β、アルファ線やベータ線を出
して壊変する事を示しています。
※ 括弧の中の数字は、半減期で、こ
の通りに100%壊変するわけではない。
※ ウラン238は半減期が45億年、地
球の誕生から現在まで50億年なので、
非常に長い時間をかけて壊変して、少
しずつ減少していくのです。
43
核分裂反応と原子力発電
・ 原子力発電は、核分裂を利用して、そのエネルギー
を発電に利用。
・ 核分裂は、1938年にドイツの化学者(ハーン&シュト
ラスマン)に発見された核反応の一種。ウランやプルト
ニウムのような大きな原子核が同等の質量を有する
二つ(希に三つ以上の場合も)の原子核に分裂。
・ 中性子、陽子、γ線を吸収して引き起こされる「誘起核
分裂」と、自然に起きる「自然核分裂」がある。
・ 大量のエネルギーと、中性子やγ線を放出。
・ 核分裂は、原子量(原子核)の大きい元素でなければ
起こらない。核分裂を起す物質を核分裂性物質(核物
44
質)と呼ぶ。
1グラムのウラン235の中には、2.56×1021個の
原子核を含み、1グラムのウラン235が全て核分
裂を起こすとおよそ8.2×1010Jのエネルギーが
生まれる。
このウラン235は、天然ウランに0.72%、原子
炉で使用するウラン燃料に3~5%、原子爆弾に
使用する高濃縮ウランには90%以上がそれぞれ
含まれている。
45
臨界(核分裂の続く状態)
ウラン235の1個の原子核で核分裂が起こり、飛び
出した中性子が、次のウラン235の原子を核分裂
させるというような連鎖反応として核分裂が継続
する状態になったことを臨界に到達したという。
核物質の原子核に中性子が捕獲されて分裂し、さ
らに中性子が飛び出し、分裂する数も中性子もど
んどん増えて行く状態になった時には、臨界超過
になったという。
46
【 ウラン235の核分裂の別の例 】
235U
+
n
→
95Y
+
139I
+
2n
47
ウラン235の核分裂による主な核分裂生成物
① セシウム133(133Cs)
収率
↓
半減期
↓
6.79%
安定
セシウム133の一部が中性子捕獲で、半減期約2年のセシウム134
② ヨウ素135(135I)
6.33%
6.57h
③ ジルコニウム93 (93Zr)
6.30%
④ セシウム137 (37Cs)
6.09%
30.17y
⑤ テクネチウム99 (99Tc)
6.05%
211ky
⑥ ストロンチウム90 (90Sr)
5.75%
28.9y
⑦ ヨウ素131 (131I)
1.53My
12.83%
8.02d
⑧ プロメチウム147 (147Pm)
2.27%
2.62y
⑨ サマリウム149(149Sm)
1.09%
安定
⑩ ヨウ素129 (129I)
0.66%
15.7My
48
核分裂生成物は、人類にとって大きなリスク
・ 原子炉で生み出される核分裂生成物の崩壊速度は、数
秒から数ヶ月でほぼ崩壊しつくしてしまう短寿命核種
もあれば、100年単位の中寿命の核種、20万年を超える
長寿命の半減期を有する核種もある。
・ 短・中寿命核種は比較的高い頻度で放射線を放出し、
崩壊していく為、少量でも放射能は大きい。
・ 長寿命核種は、放射能は小さいが、原子炉の使用済
み核燃料のように大量に存在すると、放射線を放ち続
ける廃棄物となり、長期間の保管に冷却が必要とな
る。
→現在の科学では、安全に保管する以外に方法はない
が、その保管場所や安全性にも問題がある。
(国内の一時保管場所は既にほぼ満杯に近い)
49
立教大学原子力研究所研究用原子炉
TRIGA Mark2 (横須賀市長坂)
最高出力100KW (40年程度の寿命)
50
小規模研究用原子炉の稼動から廃炉へ
● 1961年から稼動(臨界)
● 2001年に稼動停止
● 2003年に使用済み核燃料搬出(米国に引渡し)
● 現在は廃止措置中(解体・撤去等の準備ができるま
で保安管理)
※ 使用済み核燃料取り出しに稼動停止から2年
※ 2013年も保安管理
● 2013~2014年に、第 2段階の解体工事に係る工事
方法の明細を原子力規制庁に提出
51
※ 原子力発電所では稼動停止後、使用済み核
燃料を取り出して、それから10年~20年経過
しても、一定以上の残留放射能がある限り、容
易に施設の解体・処分工事はできない。
● 核分裂反応で生成された放射性核種による
汚染
● 原子炉そのものなど原子力発電所の施設を
構成する材料が施設の運転中に発生する中
性子などの放射線による放射化
52
炉心表示板
放射化用サンプル瓶
53
54
放射化されたサンプル
の保管
Ge(Li)半導体検出器と
γ線スペクトロメーター
55
56
核分裂生成物以外の放射性廃棄物
原子力発電所から出る放射性廃棄物には、原子炉の使用済
み燃料棒だけではない。
・作業員が使用した衣服
・除染に用いた水
・放射性物質漏出事故等で汚染された土壌やガレキ等
・耐用年数を超えて廃炉となった原子炉の原子炉そのもの(放射
化、あるいは汚染)や建屋、冷却水など
これら全てが、大量の放射性廃棄物となる。
57
参考図書
① 生元素とは何か 宇宙誕生から生物進化への137億年
NHKBooks(NHK出版)
【著者:広島大学名誉教授 道端斉(理学博士)】
② わかりやすい放射能と放射線の知識 ~汚染食品から、子どもを守
る方法~ (Kindle版)
Puboo電子ブック「エネルギー政策を考える千葉市民の会」発行
http://p.booklog.jp/book/80295
【著者:岐部健生(理学修士)】
※ amazonや楽天Koboでも、購読可能。
58
参考
放射線の測定について
○ ゲルマニウム(Ge)半導体検出器によるガンマ
線スペクトロメータ
○ NaIシンチレ-ション(スペクトロメ-タ付き)
59
参考
放射線検出装置について
放射線が荷電粒子の場合、物質中での電離作用
によって作られるイオン対を電離箱、比例計数
管、GM計数管、半導体検出器などによって検出す
ることができ、また、荷電粒子の通路に沿って作
られる多くのイオン対をもとにして粒子の飛跡の
検出をする放電箱、霧箱、泡箱、原子核乾板など
によって検出することもできます。
一方、放射線が電荷を持たない場合は、物質と
の相互作用を通して一度荷電粒子に変換した後に
上記の方法をとります。γ 線の場合はある確率で
発生した電子を検出することになりますが、電子
による電離作用に応答する性能が要求されます。
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参考
γ 線を検出するには?
一度物質との相互作用を通して電子を放出させるこ
とが必要。
γ 線が、物質と相互作用する主な相手は原子内電
子だが、一回の反応で自分が持つエネルギーの全
部、或は大部分を電子に与えることになる。
測定されるのは二次電子が物質中で失うエネルギ
ーであり、散乱された電子の振舞い(エネルギー分布
など)に注目しなければ精確な測定はできない。
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参考
シンチレータとは?
・ 荷電粒子が蛍光体を通過すると、少しずつエネルギーを失い
ながら経路周辺の原子を励起する。そのうちの多くは短時間の
うちにエネルギーを光の形で放出し、元のエネルギー状態に戻
る。この光をシンチレーション光とよび、この様な物質をシンチレ
ータという。
・ γ 線は荷電粒子ではないので、NaI シンチレータの中で電子
にエネルギーを渡したあと、電子からシンチレーション光が出て
くることになる。
・ NaI シンチレータの場合、シンチレーション光はおよそ3eV の
エネルギーをもち、入射荷電粒子が物質中で失うエネルギーが
高いほど、励起される原子の数に従って放出される光の量も増
える。この光子の数を数えることで、荷電粒子がシンチレータ中
で失ったエネルギーを測定することができる。
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参考
ゲルマニウム(Ge)半導体検出器による
ガンマ線スペクトロメータ
・ 空間放射線量を測定するのと違い、食品中の放射線
を測定する為には、環境中の放射線の影響を防ぐ為
に、厚みのある鉛などの遮蔽容器の中で測定すること
が必要。
・ 放射性核種からのガンマ線は、それぞれ固有のエネ
ルギーを持つので、そのエネルギー分布を測定するこ
とによって、放射性核種をつきとめることができる。
・ このエネルギー分布の測定により、放射性核種を分
析(核種分析)する一連の装置をガンマ線スペクトロメ
ータといい、 高い精度が要求される理化学分析に利
用される。
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参考
γ線スペクトルの例(土壌)
137Cs
40K
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( 測定時間: 3,600 秒、 0.5keV/チャ ネル)
参考
NaIシンチレーションスペクトロメータの
特徴と取り扱いについて
NaIシンチレーションは、Ge半導体ガンマ線スペクト
ロメータと比べて、波高分析の感度は高くないので、
測定条件(環境)によっては、精確さに欠ける測定結果
が得られることもある。
→ Ge半導体ガンマ線スペクトロメータとの併用を推奨。
スペクトロメータの場合、既知量の放射性物質(標準
線源)での校正や定期的なメンテナンスが日常的に必
要となります。
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参考
土壌のNal 検出器によるγ線スペクトル(a)と
Ge (Li)半導体検出器によるγ線スペクトル
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参考
検出器で発生した電気信号パルスの高さをチャンネルに対応させてγ線のエ
ネルギーに合せ、γ線を検出する度にカウントします。検出器に入射したγ
線は、検出器の一部と光電効果、コンプトン効果などの相互作用を起こし、
エネルギーが僅か変化するので、エネルギースペクトルは拡がったピークと
なります。検出したγ線のカウント数はピークの部分の面積であり、計数効
率が分かっていれば、放射能が定量できます。
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参考:放射性核種の半減期と比放射能、1グラムの原子数、1ベクレルあ
たりの原子数、1ベクレルあたりの質量
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参考:放射性核種の半減期と比放射能、1グラムの原子数、1ベクレルあたりの原子数、1ベクレル
あたりの質量、ウラン238比の比放射能
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