教育機会格差の是正のために - 中部経済学学生コンソーシアム

Download Report

Transcript 教育機会格差の是正のために - 中部経済学学生コンソーシアム

教育機会格差の是正のために
(仮題)
経済学的な視点からのアプローチ
スライドの流れ
•
•
•
•
•
•
プレゼンテーションの要旨
教育機会の格差とは何か
教育機会の格差はどうして問題なのか
現状の分析と原因の検討
解決策としての教育バウチャー
終わりに
要旨
• 生まれながらの環境によって、私立学校に通
学できるかどうか、あるいは塾や家庭内学習
費にかけられる金額がことなっていることで、
教育機会に格差をもたらしている
• 格差の解消のために、教育にのみ用いること
のできる商品券であるバウチャーを、学校教
育費と学校外教育費のそれぞれに導入する
ことを提言する
教育機会の格差とは
生まれながらの環境によって、教育機会が変
わってくること
今回の議論では、義務教育(小中学校)におけ
る教育機会の格差について検討する
具体的にどういうもの?
高所得者家庭
の児童
公立学校
私立学校
塾
低所得者家庭
の児童
公立学校
そもそも、これって問題なの?
ウサギとカメの話で考えてみよう
ウサギとカメがかけっこをし、ウサギが昼寝を
している間にカメが先にゴールする
という話
怠け者が、結果的に苦しい思いをするのは しょう
がない
そもそも、これって問題なの?
しかし
ウサギは生まれながらにして足が速い
カメは生まれながらにして足が遅い
これは、スタートの段階で差がある!
そもそも、これって問題なの?
親の所得によって、受けれる教育機会に
差がある
こどもは、生まれながらにスタートラインが
異なる(本人にはどうにもできない)
そもそも、これって問題なの?
具体的には、学力の差をもたらしている
よくできている
グループ
あまり出来がよくな
い
グループ
学習塾に通っている
73%
27%
通っていない
42%
58%
(参考:ベネッセ教育研究所)
どれくらい差があるのか
幼児教育から高等学校まで、公立 500万円
幼児教育から高等学校まで、私立 1700万円
学習塾費の年間平均額 20万円
(万円)
原因は、何だろう
所得格差
家庭
教育費の推移
所得と教育費の相関関係
回帰式 : 𝒴 = 19.070𝒳 + 437.203
相関係数 : 0.892755
決定係数 : 0.797011
残差平方和 : 2603770958
仮説:ある一定の所得以上で所得と教育費との関係に構造変化が存在する
チャウ・テストにより検定
データに構造変化があったかどうかをF値を用いて確かめる方法
棄却域
0
𝐹0.05 = 4.0343
原因①
家庭の所得と教育機会の格差
相対的貧困率と子供の貧困率
• 教育機会の格差の原因を探るために、子供
のいる家庭の相対的貧困率と、子供の貧困
率についてそれぞれ考察していく。
日本の相対的貧困率
相対的貧困率とは
国民の可処分所得の平均値の半分未満の人
口が全人口に占める割合
この値が大きいと、格差が広がっていることが
わかる。
ここでは、子供のいる家庭に注目して相対的貧
困率を考える。
子供の貧困率
• 相対的貧困率の基準未満で暮らしている18
歳以下の子供の割合(厚生労働省による定
義)
• この割合が高くなると、金銭面が原因で生じ
る学習機会の格差も増加する可能性が高い
子供の貧困率
子供がいる現役世代の相対的貧困率
18.0
16.0
14.0
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
1985
1988
1991
1994
1997
2000
2003
2006
2009
子供の貧困率
10.9
12.9
12.8
12.1
13.4
14.5
13.7
14.2
15.7
子供がいる現役世代
10.3
11.9
11.7
11.2
12.2
13.1
12.5
12.2
14.6
子供がいる現役世代の相対的貧困率
家庭の大人の人数の違いごとの考察
70.0
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
1985
1988
1991
1994
1997
2000
2003
2006
2009
大人が一人
54.5
51.4
50.1
53.2
63.1
58.2
58.7
54.3
50.8
大人が二人以上
9.6
11.1
10.8
10.2
10.8
11.5
10.5
10.2
12.7
子供の貧困率と相対的貧困率 まとめ
• 子供の貧困率・相対的貧困率とともに、もとも
と高い値を示しており、更に漸増する傾向に
ある。
• →教育費をかけることができる家庭とできな
い家庭との間で学習機会の格差が広がって
いる可能性
原因②
教育費の推移と教育機会の格差
教育費とのかかわり
• まず、家庭教師等、学習塾、そして家庭学習
利用者の平均費用がどのように変化していっ
たかを、週休二日制が確立される等ゆとり教
育が本格的に始まった1998年以降のデータ
より考察する。
家庭教師等利用者の費用平均
家庭教師費等の推移
160
140
120
金
額
(
千
円
)
100
80
60
40
20
0
家庭教師・公立小
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
42
39
32
41
43
40
42
106
104
109
家庭教師・私立小
家庭教師・公立中
89
96
99
84
89
86
74
家庭教師・私立中
139
134
130
118
120
104
110
年度
学習塾利用者の費用平均
学習塾費の推移
350
300
250
金
額
(
千
円
)
200
150
100
50
0
学習塾・公立小
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
129
119
130
140
142
132
132
287
310
295
学習塾・私立小
学習塾・公立中
205
214
215
235
246
257
257
学習塾・私立中
198
198
193
222
221
237
217
年度
家庭内教育費・利用者の費用平均
平均家庭内教育費の推移
60
50
40
金
額
(
千
円
)
30
20
10
0
家庭内教育費・公立小
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
33
32
28
30
30
27
23
53
47
45
家庭内教育費・私立小
家庭内教育費・公立中
26
25
21
27
27
21
20
家庭内教育費・私立中
34
41
33
39
38
34
28
年度
教育費の推移を見てきたけれど…
• 一部で増加傾向や減少傾向にある部分がみ
られるものの、全体でみた教育費の利用者
平均額は極端に大きな変化はない。
• 今まで見てきた金額はあくまで「利用者の平
均額」だった。次のスライドからは、以上の教
育費を利用していない家庭を含む支出額別
の割合が、どのように推移しているかをみる。
年度別学習塾費の割合①
公立小学校
100%
95%
90%
85%
40万円以上
80%
~40万円未満
75%
~30万円未満
~20万円未満
70%
~10万円未満
0円
65%
60%
55%
50%
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
年度別学習塾費の割合②
私立小学校
100%
90%
80%
70%
40万円以上
60%
~40万円未満
50%
~30万円未満
~20万円未満
40%
~10万円未満
0円
30%
20%
10%
0%
2006
2008
2010
年度別学習塾費の割合③
公立中学校
100%
90%
80%
70%
40万円以上
60%
~40万円未満
50%
~30万円未満
~20万円未満
40%
~10万円未満
0 円
30%
20%
10%
0%
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
年度別学習塾費の割合④
私立中学校
100%
90%
40万円以上
80%
~40万円未満
~30万円未満
70%
~20万円未満
~10万円未満
60%
0円
50%
40%
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
学習塾費のまとめ
• 学習塾費の支出額別にみた割合は年度に
よって若干の変化がみられるものの、基本的
には大体同じ割合で推移している。
年度別家庭内教育費の割合
• 次に、年度別で見た家庭内教育費をみてい
く。
年度別家庭内学習費の割合①
公立小学校
~90万円未満
~85万円未満
100%
~80万円未満
~75万円未満
90%
~70万円未満
80%
~65万円未満
~60万円未満
70%
~55万円未満
~50万円未満
Axis Title
60%
~45万円未満
50%
~40万円未満
~35万円未満
40%
~30万円未満
~25万円未満
30%
~20万円未満
20%
~15万円未満
~10万円未満
10%
~ 5 万円未満
~ 1 万円未満
0%
1998
2000
2002
2004
Axis Title
2006
2008
2010
0 円
年度別家庭内学習費の割合②
90万円以上
私立小学校
~90万円未満
100%
~85万円未満
~80万円未満
90%
~75万円未満
~70万円未満
80%
~65万円未満
70%
~60万円未満
~55万円未満
Axis Title
60%
~50万円未満
~45万円未満
50%
~40万円未満
~35万円未満
40%
~30万円未満
30%
~25万円未満
~20万円未満
20%
~15万円未満
~10万円未満
10%
~ 5 万円未満
0%
~ 1 万円未満
2006
2008
Axis Title
2010
0 円
年度別家庭内学習費の割合③
90万円以上
公立中学校
~90万円未満
100%
~85万円未満
~80万円未満
90%
~75万円未満
~70万円未満
80%
~65万円未満
70%
~60万円未満
~55万円未満
Axis Title
60%
~50万円未満
~45万円未満
50%
~40万円未満
~35万円未満
40%
~30万円未満
30%
~25万円未満
~20万円未満
20%
~15万円未満
~10万円未満
10%
~ 5 万円未満
0%
~ 1 万円未満
1998
2000
2002
2004
Axis Title
2006
2008
2010
0 円
年度別家庭内学習費の割合④
90万円以上
私立中学校
~90万円未満
~85万円未満
100%
~80万円未満
90%
~75万円未満
~70万円未満
80%
~65万円未満
~60万円未満
70%
~55万円未満
Axis Title
60%
~50万円未満
~45万円未満
50%
~40万円未満
~35万円未満
40%
~30万円未満
30%
~25万円未満
~20万円未満
20%
~15万円未満
~10万円未満
10%
~ 5 万円未満
0%
~ 1 万円未満
1998
2000
2002
2004
Axis Title
2006
2008
2010
0 円
家庭内教育費のまとめ
• 私立学校通学者における支出額別割合の変
化は顕著ではない。公立学校通学者のうち、
家庭内教育費が0円の家庭は徐々に増加す
る傾向がある。
• 支出額0円の割合が増加している。何らかの
原因で教育機会の格差は広がっている。
では、どのように解決するかⅠ
• ここまで、教育機会の格差について、
• ①相対的貧困率の上昇
• ②学校外教育費の変化による学習機会の格
差の増長
• という2つの原因から、保護者の所得格差が
教育機会の格差に繋がっているということを
確認した。
では、どのように解決するかⅡ
• 教育機会の格差是正のために、
• ①塾に通う機会の均等化
• ②私立・公立を問わず自分の行きたい学校
に行けること
• の2点を目指していく
解決策
教育バウチャー
教育バウチャーとは
• バウチャー(voucher)とは、
• 「商品券、引換券、割引券」のこと(ウィズダム
英和辞典第2版より)
• ここで配布する「教育バウチャー」とは、教育
に関してのみ使用することができる商品券の
ことを指す
教育バウチャーの特徴
助成金
• 多くの場合、金銭を配布す
ることによって教育費を補
助しようとする
• →保護者は教育以外にも
助成金を使うことができる
ため、必ずしも子供のため
にならない可能性あり
教育バウチャー
• 教育に関してのみ使うこと
のできる補助金
• 保護者は教育のためだけ
にバウチャーを使用
• →子供の教育機会を増加さ
せる効果あり
• 制度設計次第では、教育に
関係する様々な事業向け
に応用可能
どのようなバウチャーを導入すべきか
• ①塾に通う機会増大と、
• ②私立・公立含め学校を自由に選べるように
することは、
• 解決のために異なったアプローチが必要
• そこで、塾に対する教育バウチャー(塾用商
品券)と、学校に対する教育バウチャーの2
種類を提言する。
学校に関する教育バウチャー
公立、私立間について行う低所得者層の学生
を対象にした教育バウチャー制度を導入する
↓
どのようなバウチャーが効果的か、簡単なモデ
ルを使い説明する。
前提
考えられるバウチャーのパターン
① 私立への入学に際し、選抜試験がある
② 選抜ではなく、定員を超える場合はくじ引き
③ 一部の私立のみ選抜試験(バウチャーに参加
しない学校)
前提(生徒)
生徒のパターン
A
B
C
D
高額所得者・成績上位者(高・上)
低額所得者・成績下位者(低・下)
高額所得者・成績下位者(高・下)
低額所得者・成績上位者(低・上)
前提
• 国の一人当たりの年間教育費を100万とす
る
• 私立は授業料がある
• 公立は授業料無料
• A(高・優)は私立、それ以外は公立
• よって国の予算300万、一人当たりの費用は
75万
① 私立への入学に際し、選抜試験がある
A(高・上)
50
B(低・下)
C(高・下)
D(低・上)
100
0
100
0
50
②選抜ではなく、定員を超える場合はくじ引き
A(高・上)
B(低・下)
C(高・下)
D(低・上)
この場合、金額の配分についていろんなパターンが考えられる
③一部の私立のみ選抜試験
A(高・上)
B(低・下)
C(高・下)
D(低・上)
私立に支給する最大値が75万(4人とも私立)
最小値が50万(私立2人公立2人)
まとめ
①の場合
学力の差により2種類の人が行けない
②の場合
基本的に、全員が行きたいところに行ける
③の場合
一部、いけない学校もある人もいるが機会
は提供されている
学校間バウチャー結論
以上から
②か③が有力
ただし
②は、バウチャー(お金)より学力を重視する
学校にインセンティブがない
よって
私立に関しては、各学校に対しバウチャーに
参加するかを 選択させる
塾に対する教育バウチャー
• 塾に行くためだけに用いることのできるバウ
チャーを支給する。
(どのくらいの世帯収入から塾に対する教育バ
ウチャーを給付するかに関しては、回帰データ
の分析結果などにより決定する予定)
塾に対する教育バウチャー
• 塾に行くためだけに用いることのできるバウ
チャーを支給する。
考えられるやり方 ①全家庭に支給する場合
②所得に比例して支給する
結論
塾や家庭内教育府費に関するバウチャーと学
校間におけるバウチャーの導入
少なくとも教育機会に関する格差は是正するこ
とが可能
課題
• 教育機会の格差は家庭の所得に依存する部
分が多いのだから、家庭の所得を増大させ
る、あるいは所得の高い仕事をできるように
支援を行う必要性がある。
• 周りに選択するほど学校が無いなど地理的
要因によって、発生する教育機会の格差をど
のように解決するか。