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自己愛と万能感
ウィニコット理論を通して
自己愛
ナルキッソス、若さと美
しさを兼ね備えていた彼は、
ある時アプロディーテーの
贈り物を侮辱する。アプロ
ディーテーは怒り、ナルキ
ッソスを愛される相手に所
有させることを拒むように
する。
彼は女性からだけでなく
男性からも愛されており、
彼に恋していた者の一人で
あるアメイニアスは、彼を
手に入れられないことに絶
望し、自殺する。
カラヴァッショ
エコラリア=反響言語=木霊
森の妖精(ニュンペー)のひとりエーコーが彼に恋
をしたが、エーコーはゼウスがヘーラーの監視
から逃れるのを歌とおしゃべり(別説ではおせじ
と噂)で助けたためにヘーラーの怒りをかい、自
分では口がきけず、他人の言葉を繰り返すこと
のみを許されていた。エーコーはナルキッソスの
言葉を繰り返す以外、何もできなかったので、ナ
ルキッソスは「退屈だ」としてエーコーを見捨てた
。エーコーは悲しみのあまり姿を失い、ただ声だ
けが残って木霊になった。
ナルキッソス=水仙
これを見た神に対する侮辱を罰する神ネメシスは
、他人を愛せないナルキッソスが、ただ自分だけ
を愛するようにする。ある日ナルキッソスが水面
を見ると、中に美しい少年がいた。もちろんそれ
はナルキッソス本人だった。ナルキッソスはひと
目で恋に落ちた。そしてそのまま水の中の美少
年から離れることができなくなり、やせ細って死
んだ。ナルキッソスが死んだあとそこには水仙の
花が咲いていた。この伝承から、スイセンのこと
を欧米ではナルシスと呼ぶ。
ナルシシズムの段階論
フロイトの研究
一次性のナルシシズムは人格形成期の6ヶ月
から6歳でしばしばみられ、発達において避け
られない痛みや恐怖から自己を守るための働
きである。
 二次性のナルシシズムは病的な状態であって
自己への陶酔と執着が他者の排除に至るパタ
ーンである。

Freudにおける万能感Allmacht
1905年「性欲三論文」で登場する
 1909年「ラットマン」で「思考(観念)の全
能(万能)」として概念化される。
→迷信、魔術的思考、幻想分析
 1913年「トーテムとタブー」第三章でアニ
ミズム、魔術、呪術、そして思考の全能とし
て描かれる。

アニミズム論:トーテムとタブー
進化論的文化人類学(スペンサー、フレイザーなど)
類感魔術、模倣呪術:類似
感染呪術:近接
思考の全能によって、統合する
アニミズム段階:思考の全能
宗教段階:神の全能
科学段階:全能の放棄と因果律
シュレーバー
Paul Schreber
(1842-1911)
法律家として成
功した後発病。
彼の手記はシュ
ールリアリズム
などに多大な影
響を残した。
シュレーバー事例
1861
1869
1877
1884
19歳 父親がイレウス(腸閉塞)で死去(53歳).
27歳 法学博士となる.
35歳 結婚.兄がピストル自殺(38歳).
42歳 秋,帝国議会に立候補して落選
(ケムニッツの州裁判所所長時代).これを契機に
重症心気症になる.ライプチヒ大学病院に入院し,
約6ヶ月間,フレヒジッヒ博士の治療を受ける
1885 43歳 年末に退院.
1893 51歳 6月ザクセン州ドレスデン控訴院院長就任の通
告.神経症が再発した夢を何度も見る 10月1日,控訴院院
長に就任.10月末,不眠症を伴って再び入院.入院当初は脳
軟化症にかかったという心気妄想や追跡妄想であったが,次
第に幻視、幻聴が頻発.フレヒジッヒ博士に性的な迫害妄想を
抱く
1894 52歳 6月,ピルナのゾンネンシュタイン精神病院に
転院.主治医はウェーバー博士.
1895 53歳 11月,性的な迫害妄想が宗教的な誇大妄想
へと変化.症状は次第に平穏化.自分がまだ生活力を持っ
ていると主張し退院を要求.ウェーバー博士は退院は不適
当と判断.シュレーバーは裁判所に繰り返し陳述書を提出
.
1902 60歳 7月,禁治産の宣告が解除.12月,妄想体系
は存続したまま退院.その後は定職につかずにいる
1903 61歳 1900年から執筆していた『ある神経病患者
の回想録』を出版.
1907 65歳 5月,母親が死去.11月,妻が脳卒中発作で
倒れる.
1908 66歳 症状が増悪し再び入院.その後,症状は次第
に悪化
1911 68歳 4月,重篤な肺疾患にもとづく心不全のため死
去.
シュレーバーの問題点
悲惨な人生
シャッツマン『魂の殺害者』
→虐待の問題
 精神病的な要素を理解するための生育歴
としての父親の問題
→なぜ父親なのか、父と母ではないか。

自分の世界に耽溺する
妄想や自分が神だと思うプロセス
1. 彼は私を愛する/私は彼を愛する
2. 私は彼を愛さない⇒彼を憎む:彼が私を迫害
するからだ(被害妄想)
3. 私は彼を愛する⇒私は女だからだ(女性化)
4. 私は私ではない⇒彼は私を、私は彼を愛さな
い⇒そもそも私は誰も愛さない(卑小化)
5. 私は私だけを愛する(誇大化)

シュレーバー、パラノイアの言語論
thesis:同性愛=私は彼(男)を愛する
a)迫害妄想:
私は彼を愛さない→彼を憎む→彼が私を迫害するからだ
b)被愛妄想:
私は彼を愛しているのではない→私は彼女を愛している→彼女が私
を愛している
c)嫉妬妄想
α)アルコール中毒など、男性:
あの男を愛しているのは私ではない→彼女こそあの男を愛している
のだ→女性は疑わしい
β)女性の嫉妬妄想(男性に女性)
d)自我の肥大化=誇大妄想
そもそも私は愛するということをしないし、何人も愛さない
→私は私だけを愛する
対象 vs. 内向(Jung)から内在化
internalization,introjection,identification,incorporation
対象の発見の歴史
退行の理由(フェレンチィ→タラソへの内向化)
思考の万能 →現実への譲り渡し
自体愛→自己愛→対象愛
転移神経症=対象の発生
内向と自己愛神経症(精神病)

精神病状態
対象愛→自己愛→自体愛
対象関係の幻想がナルシシズムへの退行 =思考の万能
転移
退行=
子宮内状態
でもなぜ退行(病気)が起こるんだろうか?

進化と退行
進化:進歩:進展
退化:病理化:退行:崩壊
regression:degeneration
喪とメランコリー

躁鬱病とは何か「対象喪失」
自己愛の喪失
ナルシシズムの導入(1914)
自我リビドーと対象リビドー
2. 対象関係という発想の導入
3. 自我理想と取り入れという概念の導入
1.
→検閲者と自我理想
(大衆心理の論文では区別されていない)
他者(親)の命令→良心
自己愛
自己愛と精神病理
病前性格
発症
メランコリー(躁 自己愛的対
うつ病)
象選択
自己愛的同
一化
統合失調症
自己愛への
(パラフレニー) 退行素因
対象喪失=自我喪失→見捨てた
対象への怒り→自己批判→躁状
態(対象との一体)とうつ(自我へ
の自責)の繰り返し
心気症
特定の器官にリビドーの関心を
向けることで、エネルギーの調整
を行う
自己の身体
への関心
リビドーの外界からの関心の離
反(陰性症状)→自我に向かう(
誇大妄想)、→修復による幻覚妄
想(陽性症状)
防衛としての万能感(クライン)

ポジションの達成に対して退行が起きるの
は、分離、あるいは対象への依存や羨望
が痛みを伴うからである。
否認、分裂、投影同一化、万能的自己愛
→ローゼンフェルドの病的自己愛論、
スタイナーの心的退避論
妄想分裂ポジション:迫害的不安と羨望
投影同一化
万能的自己愛
悪い乳房
迫害的不安
羨望
分割
否認
精神病における対象関係
スコットやローゼンフェルドの仕事から
 悪い乳房
 自我の分裂 スプリッティング
 投影同一視
 (万能的)自己愛
 否認(排除)
→妄想-分裂ポジションへ
部分対象の世界

地理的な混乱がある
すごく敏感で混乱しやすい領域がある
 すごく硬くて、引きこもり、接触がない領域
がある
だから
1.
精神病的な不安を感じない
2.
混乱するような人間関係を避ける

自己愛=万能感である
マーラー:分離個体化の練習をし始めると
き、世界が自分と一致してくれる体験:錯
覚→万能の体験
 コフート:自己愛に転移はないとフロイトは
述べたが、自己愛を病理とする人の中に
は転移がある人がいる=自己愛転移があ
るのではないだろうか。

自己愛の発達
欠損がない場合、
それは出たり入ったりするような空想の部
屋、身体化の領域、外と内側の出口の内側、
閉ざされた交流しない孤独を作り出す
 自己愛パーソナリティの形成過程
欠損を埋めるようにして、二つの極端な軸を
作る。過敏な領域(激怒と混乱)と閉所的領
域(誇大、万能感)の二つが共存する。

自己愛の理解と治療
自己愛の病理論
治療
治療目標
Kohut
共感的な治療 健全な自己・
共感不全による自
者による自己 自己対象の内
己の形成不全
愛転移
在化
Kernberg
境界例の亜型
原始的防衛の 全体対象の統
解釈と洞察
合
陰性治療反応 対象関係の統
Rosenfeld 人格の病的組織化
他の取り扱い 合
Winnicottの臨床的な意義
その仕事の今日的意義:
「赤ちゃんというものはない」
 初期の対象とのかかわりと万能感
 錯覚の瞬間と主観的対象の登場
 治療的な退行が未分化な状態で起きる
(Milnerの創造性の議論)
 早期の外傷に到達して、表現できること
 マネージメント論の治療論
発達
絶対的依存
 相対的依存
 自立に向けて

抑うつポジション→思いやりの段階
攻撃性はない。あるのは運動性である。
母親的な没頭
maternal preoccuaption
母親的機能
 Holding
 Handling
 Object-presenting
→精神病的なものに対する治療技法
⇒マネージメント論へ
原初的発達の段階理論
1945年「原初の情緒発達」
1) integration
2) personalization
3) realization
無統合unintegration
↓
運動性motility
無慈悲な段階(思いやり以前)
思いやり→現実適応
Winnicottの
gradual failure of disillusionment
転移関係のなかでの治療者の失敗の意義
(ウィニコットの知恵)
 抱える環境とその失敗によって生まれるズレの
意識が生まれるということではなく、むしろ「徐々
に」という点が重要であると思う。
 これをめんどくさいと感じたり、焦ったりしない態
度を維持する治療者(母親)
 Durable therapist(mother)
間の体験とパラドックス
錯覚の瞬間 illusionment
二つの線が出会うことで空想と創造が
行われる中間領域が出来る。
↑
↓
 脱錯覚の領域 disillusionment
徐々に失敗することで間が作られる。

錯覚と脱錯覚
母親ははじめ100パーセント、母性的没頭によ
って、適応して、幻想を生み出す機会を幼児に
与える
 一次的創造性と現実検討に基づく客観的知識の
間に領域が存在し、程よい母親はそれをかかえ
る。自分の創造能力に対応する外的現実がある
のだという錯覚を与える。ここで対象が内的か外
的か問わない。共有体験。
 次第に外的現実が母親の徐々に失敗することを
通して、体験される。

ウィニコットの移行対象(1951)
4ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、12ヶ月までにあら
われ始める、私でない所有物。
 乳房、内的対象との関係がある。
 現実検討の確立に先行する。
 全能的、魔術的操作から巧みな操作統制
へ
 フェテシズムに発展することがある。

交流することと交流しないこと
一人でいられる能力 capacity to be
alone
無慈悲から思いやりの段階への発達
 偽りの自己の形成
環境からの侵襲に対して組織される自己
 交流する領域と一人の領域
交流と内省

母親と家族の鏡としての役割(1968)
主観的対象の段階では、二人は融合しているので
赤ん坊は母親の顔に自分の顔を見ることになる。
 移行対象の段階では、ほど良い母親によって養育
されていれば、母親の顔は自分の顔であると同時
に母親の顔である。
 ほど良くないと、早期の脱錯覚が起き、母親の顔
は母親の顔にしか見えない。まなざしは自分の見
てくれないので自分の姿を見いだせない。想像力
でそれを補う。

想像力による練り上げが自己愛として環
境から閉じこもって、自分の世界に孤立す
る。ウィニコットにとっては、これが二次的
な自己愛である。
 客観的対象の段階では、普通に発達した
子ども赤ん坊にとっては、母親の顔は母親
の顔であり、自分の顔は自分の顔として鏡
に映ったものと見ることができる。
⇒一次的自己愛は、万能感との関連で融合
している状態のことである。

イド欲求に対応する自我ニード
自我で関係することを通して、イド欲求を
自我のニードに組み込んでいくことで自己
が形成されていく。
1. realization
2. personalization
3. integration
これらは適切なマネージメントによって起
きる。

偽りの自己と本当の自己
偽りの自己(患者によっては世話役の自己)
はうその患者の分析作業開始の最初の二
三年は取り扱わなければならない。
 それは健康から病理まであるが、本当の
自己を防衛するために存在する構造であ
る。
 偽りの自己が知性を利用すると、簡単に
人を欺くことができる。迎合と妥協の場に
なる。
Overlapping circle
(Milner→Winncott)
転移関係の中の二つの弁証法的関係
錯覚
創造と一致
 交流すること
情緒応答性
 依存と信頼
自己愛対象

脱錯覚
抑うつポジション
 交流しないこと
一人でいられる能力
 自立に向けて
現実との出会い

一次的ナルシシズムの発達
ウィニコット:錯覚の世界で乳児は母子一体
秘められた内な
と万能感に満ちた世界にいる。十分な錯
る生活
覚体験があって、移行対象が生まれ、そ
の後に徐々に脱錯覚していく。
環境への迎合
的な基盤の上
に築き上げられ
た偽りの自己
交流すること→迎合:偽りの自己
個体
交流しないこと→孤立:本当の自己
治療相談therapeutic
consultation
の発想から
精神療法面接とは異なる技法: 二三回あえば治
る症例に対するもので転移と抵抗を扱うよりも
間の体験のなかでクライアントのニードに合わ
せたもの
・スクィグル技法
・オンディマンド法
・在宅などの環境の活用
内的な準拠枠=精神分析家であること
⇒主観的対象であること
抱えることと解釈
 Doing
と Being (Slochower)
 対象の使用
生き残ることの失敗
 否定的、攻撃的要素を見直すこと
存在と行為のインターフェイス
→時間的要素
対象の使用
1.
2.
3.
4.
5.
主体は対象に関係する
対象は主体によって世の中に位置づけ
られるのではなく、発見されるプロセスに
ある
主体は対象を破壊する
対象は破壊を生き残る
主体は対象を使うことができる
大人の分析におけるウィニコット
IPAの最近の特集「大人の分析におけるウィニコッ
トの創意」
Michel Eigen, Jan Abram, Vincenzo
Bonaminio
‘‘On Winnicott’s clinical innovations in the
analysis of adults’’(introduction by Blass)
 アイゲン「破壊性が創造的、孤立が発達の重要な
要素、早期の外傷的な状況への回帰が臨床的転
機である」
 エイブラム「分析の三段階から、非分析的関係の
必要な場合について」
 ボナミノ「非分析的な関係の中の現実的な要素」
