Transcript 講義資料4
複製する分子組織体 自己複製する分子 Rebekの自己複製分子 Ghadiriの自己複製ペプチド 硤合の不斉自己触媒反応 自己触媒反応 A B B 生成物がその反応の触媒となる反応 生成物がその反応を加速する 自分と同じものを作る選択性が高い DNAにおける自己触媒 反応: 1本鎖に解けたDNA鎖 が、DNAポリメラーゼに よるヌクレオチドの重合 反応を開始、制御する。 1次の自己触媒反応 従って変化する。 B の速度式は 。AとBの濃度はそれぞれ次式に 自己触媒反応の生成物濃 度は反応時間に対してS字 カーブを描く。 反応初期は触媒となるBの 濃度が低いため反応速度 は低いが、反応の進行とと もに触媒の濃度が高まり、 反応は加速され、最後は反 応原料Aが消費され反応は 減速する。 Julius Rebekの分子認識 Julius Rebek Science, Vol 263, Issue 5151, 1267-1268 水素結合 水素結合とは、 窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどの電気陰性度が大きな原子(陰性原子)に 共有結合で結びついた水素原子が、近傍に位置した他の原子の孤立電子 対とつくる非共有結合性の引力的相互作用である。分子間力のひとつ。 ペプチド α H N H O N N N H N H N H N H N N β O H N H DNAの塩基対における水素結合 Julius Rebekの自己複製分子 イミドの窒素をメチル基で置換した2bの反応性は1/10 2,6-diacylaminopyridineは1と2aの反応を阻害する。 3がない時には1と2aが水素結合した6を経由して反応が進行 7が生成するとアミド部がシ ス体からより安定なトランス 体3に変化し、鋳型となる 鋳型分子3が存在すると1, 2, 3の複合体として8が形成され効率よく、3の2量体である4が 生成する。 1と2aの会合定数から見積もった8の濃度は2%。しかし、反応速度は40%増大した。8から の反応の効率が高いことがわかる。 ・自己複製分子系で自己触媒作用を実現した。 ・これは初歩的ではあるが、生命のサインとい える。 ・また、生命発生の初期過程で起こったはずの、 核酸の情報とペプチドの化学結合であるアミド 形成をつなぐ例でもある。 Ghadiriのペプチド組織体 M. Reza Ghadiri 自己複製ペプチドのコンセプト 灰色:テンプレートペプチド 青: 求電子性ペプチド(フリーのカルボン酸) 赤: 求核性ペプチド(フリーのアミノ基) 複合体ではペプチドはαへリックスを形成 ロイシンジッパーを介する複合体を形成するペプチド ロイシンジッパー(Leucine zipper)はタンパク質の二次構造のモチーフの1つで、平行に 並んだαヘリックスによる接着力を持つ。7 アミノ酸残基ごとにロイシンが現れるペプチド鎖 同士の分子間相互作用による。遺伝子発現の調整に関わるタンパク質などの二量化した ドメインに共通して見られる。 ロイシン バリン S. B. Kentのチオエステル活性化ペプチド形成法 ・pH7の水中でN末端にシステインを有するペプチドとC末端をチオエステルで活性化 したペプチドの間で選択的にペプチド鎖形成が起こる。 Science, Vol 266, Issue 5186, 776-779 逆相HPLCによる反応の追跡 E BnSH N N: フリーのアミノ基を有するペプチド E: フリーのカルボン酸を有するペプチド T:鋳型ペプチド(生成物) BnSH: ベンジルメルカプタン(チオエステルを形成する活性化剤) 鋳型ペプチドの形成反応 40μM 20μM 10μM 5μM 鋳型ペプチドの初期濃度0μM ・反応速度は鋳型ペプチドの初期濃度の増加とともに増加する ・鋳型ペプチドの初期濃度0 μMの反応では若干S字型の変化を示す。 自己触媒反応が起こっている Nature 382, 525 - 528 (1996) 本当に3つのペプチドが複合化した aから反応が起こっているのか? △ Tを鋳型ペプチドとして使用 ● 鋳型ペプチドなし ▲ E部のロイシンの一つをグルタミン酸に変えたTを鋳型ペプチドとして使用 □ N部のロイシンの一つをグルタミン酸に変えたTを鋳型ペプチドとして使用 ・ロイシンジッパーの機構による特定のアミノ酸配列を有するペプチド間相 互作用を利用して合成ペプチドで自己触媒反応系を実現した。 ・ペプチドや蛋白質は現在でも最も重要な生体分子の一つであるが、簡単 な合成ペプチドで自己複製が実現された結果は、ペプチドが生命のオリジ ンであった可能性を示唆する。 ・ただし、Rebekの例でも同じであるが、鋳型分子が存在しない場合でも、 反応速度は低下するものの同じ反応が進行する点がDNAの自己複製と は異なる。 不斉自己触媒反応 n 触媒量の n + n 触媒量の 硤合 憲三 n 硤合の不斉自己触媒反応 H O OH i-Pr2Zn OZni-Pr N R + N 不斉自己 触媒反応 N R = N N N OH i-Pr2Zn R H+ N キラル触媒存在下でのアルデヒドのジアルキル亜鉛による不斉 アルキル化反応は知られていたが、ピリミジンアルデヒドのアル キル化では生成物の立体構造が触媒反応の不斉を同じ構造に に導いた。 N R キラリティーが増幅される ・A1は5%e.e.(鏡像異性体過剰率)の触媒を使って行った反応。生成物のe.e.は触媒のe.e. よりも増大している。 ・A2は、A1の反応で得られた39%e.e.の生成物を触媒として利用。生成物のe.e.は76%と さらに上昇している。これを5回繰り返すと最初5%だったe.e.が89%まで上昇している。 ・自分と同じ構造とキラリティーを持った分子を生産する。(キラリ ティーまで含む自己複製) ・わずかな鏡像異性体過剰率さえ存在すれば、触媒反応の過程 でその差を増幅することができる。(キラル増殖) アミノ酸や糖に代表される生体分子のホモキラリティー(一方の鏡 像異性体に占められていること)の成り立ちに関するメカニズムと して、不斉自己触媒反応を含むキラル増殖を考えることができる。