地域保健法第6条 保健所は

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Transcript 地域保健法第6条 保健所は

改正基本指針の理解、活用を
島根県健康福祉部
中川昭生
地域保健法以前の思い出話
• 昭和50年代までは、脳卒中予防目的の循環器健診を
実施。集落を市町村(国保)保健師が巡回して一次検診
(血圧、検尿)を行い、高血圧の人等への二次健診(貧
血、心電図、眼底、診察等)を保健所が一緒に実施
• 昭和53年に第一次国民健康づくり運動がスタート。昭
和58年には老人保健法が施行。市町村保健センター
が設置.国保保健師は市町村保健師へ。健診、相談、
訪問、健康づくり等での市町村の役割が大きくなった。
• 母子保健では、市町村実施の1歳半健診が開始、3歳児
健診も都道府県から市町村へ委譲、など市町村主体へ
• こうした中、県(保健所)と市町村の役割分担が、強く指
摘されるようになった。
• お互いが住民のために一生懸命やる中で、自然に協働、
重層的な活動ができていた時代は終わった。
平成6年:地域保健法制定時の状況
• 財政難、小さな政府、地方分権の流れ
• 国と地方ではなく、都道府県(保健所)から市町村へ
の業務委譲と役割分担が焦点(保健所法を変更)
• 公衆衛生活動ではなく、保健サービスの提供におけ
る保健所と市町村保健センターの役割分担を意識
生活者の視点でのサービス提供が強調され、社会
の組織された努力、住民・地域主体の活動展開の
視点が弱かった
H20年代;状況の変化
地域主権、住民自治、住民との協働の時代
地域コミュニティ、新しい公共等が注目
提基
言本
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①健康なまちづくり
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) ョ 人材確保・育成
住民、施設・団体・事業者、行政の三位一体
保健所と市町村の協働、重層的取組、多分野連携
⑤
地区
市町村
圏域
都道府県
国
H24年;画期的な基本指針の改正
サービス提供から公衆衛生活動へ
• 個へのサービス提供から、地域保健がめざすべき方向
性と地域を基盤とした活動の重要性が明記された
• めざすのは「健康なまちづくり」。その推進力となる地域
力の重要な要素がソーシャルキャピタル
• 健康なまちづくりを推進するために、地域を基盤として
① 住民との協働、
② 市町村と保健所の重層的な取り組み、
③ 地域にある学校や企業等の幅広い主体との連携を
• ソーシャルキャピタルが存在する場(コミュニティ)であ
る「地域の地縁」、「志に基づく縁」、「企業・保険者」、
「学校」、「営業者による連帯」等へのアプローチを
公衆衛生とは、・・地域社会の組織された努力を通じて
地域力とソーシャルキャピタル
椎川忍;「緑の分権改革」より
地域資源(もの)の力
狭義の資源力
(天然自然の資源の力)
文化力(人間力の蓄積)
地
域
力
人間(ひと)の力
やる気
能力
つながり力
人間力=Σ(やる気×能力)+つながり力
今後の地域保健対策のあり方
~ 地域のソーシャル・キャピタルの活用を通じた健康なまちづくりの推進 ~
企業・保険者
地縁
労働者やその家族の健康管理を担う
と共に、地域社会への社会的責任を
果たすことが求められる場
自治会
子供会
青年会
商店街
老人クラブ
志に基づく縁
価値観や経験を共有し、健康課題の解決
に強い動機をもつネットワーク
(例:保健活動推進員、食生活改善推進員、
患者会、NPO等)
営業者による連帯
学校
業を通じて住民の健康課題を
共有する営業者のネットワーク
(例:生活衛生・食品安全同業組合等)
住民個人
児童生徒やPTAのほか、
地域住民の活動・交流の場
地域協働推進のための具体的施策
●ソーシャル・キャピタルの核となる人材(例えば、健康意識を持ち、実践する
「健人(仮称)」など)の計画的な発掘・育成を通じた住民主体の保健活動の推進
○学校保健委員会等の学校を取り巻く協議の場への積極参画
●企業や同業組合等による取組みを促進させる環境整備
○リスク・コミュニケーションを含めた地域への分かりやすい情報提供の推進
●各種保健施策のほか医療・介護福祉施策との連携による効果的な施策展開 など
今後の地域保健対策を見据えた具体的体制整備
●ソーシャル・キャピタルの活用に向けた地域保健担当部門の体制整備
○地域の健康課題等の共有のため、標準化された指標による評価・分析を通じたPDCAサイクルの確立
●各種保健施策や医療・介護福祉施策との効果的連携のための自治体内における体制整備
○情報共有体制の強化や担当職員の資質向上のほか、平時からの自治体間連携の枠組み構築等による
健康危機管理体制の強化
●国、都道府県・保健所、市町村による分野横断的・重層的な連携体制の構築
など
基本指針の活用
市町村や都道府県の活動の目標・ス
ローガンに健康なまちづくりを掲げよう
<例示:当県の次期健康増進計画案>
「健康長寿のまちづくり」推進の4つの柱
1. 住民主体の地区ごとの健康づくり活動の促進
2. 生涯を通じた健康づくりの推進
– 将来を担う子どもや若者の健康づくりの推進
– 働き盛りの青壮年の健康づくりの推進
– 高齢者の健康づくり、生きがい活動の支援
3. 疾病の早期発見、合併症予防や重症化防止
4. 多様な実施主体による連携のとれた効果的な運
動の推進
地域における健康危機管理の確
保
• 「ソーシャルキャピタルは、危機管理が生じた場合に、
地域住民の心の支え合い等に有効に機能する」
(H24.7.31;健康局長通達)
• リスク・コミュニケーションの必要性が追加記載された。
「住民が健康危機発生時にも状況を的確に認識した
上で行動できるよう」(同局長通達)
健康危機管理においても、平時からの地域活動や住民
との協働の視点と、このことを通してソーシャルキャピタ
ルを醸成することが重要であることが強調されている
基本指針の活用
健康なまちづくりの取組の根拠に!
健康危機管理、災害対応においても重要である
保健所の役割と機能について
• 保健所と市町村が悪しき分担に陥っていたことについ
て、報告書は「地域保健法第6条及び第7条に定めら
れた事項については、保健所が、必ずしも市町村の求
めに応じて実施するものではなく、広域的、専門的か
つ技術的拠点として、分野横断的かつ重層的な支援を
市町村に対し行うことが求められている」と記載
• これを受ける形で、基本指針では、保健所の広域的、
専門的かつ技術的拠点としての機能強化の第一に
「健康なまちづくり」が掲げられた。また、市町村や関係
機関等との重層的な連携体制の構築を求めている。
• さらに随所に、保健所の「積極的な役割」、「市町村へ
の積極的な支援」を行うことが強調されている。
保健所への大きな期待がこめられている!
基本指針の活用
今こそ、がんばろう、保健所! 役割を果たそう!
• 地域保健法第6条 保健所は、次に掲げる事項につ
き、企画、調整、指導及びこれらに必要な事業を行う。
– 1.地域保健に関する思想の普及向上、2.人口動
態統計、3.栄養の改善及び食品衛生、4.環境の
衛生、5.医事及び薬事、6.保健師、7.公共医療
事業の向上増進、8.母性、乳幼児、老人の保健、
9.歯科保健、10.精神保健、11.治療方法が確立
していない疾病その他の・・・長期療養必要者の保
健、12.エイズ、結核、性病、伝染病の予防、13.
衛生上の試験及び検査、14.その他地域住民の
健康の保持及び増進 に関する事項
健康なまちづくりに向けた保健所の役割、取組を計画に記
載。事業化や業務としての取組の根拠にできるか否か!
改正基本指針を理解・活用する
に当たっての留意点を3つ
1:ソーシャルキャピタルを大切に
• ソーシャルキャピタルという言葉が利用主義
的に使われ、地域依存、行政責任の放棄に
つながらないように。
• ソーシャルキャピタルが醸成されるような健
康づくり活動を行うことが大切。
• 地区組織やサークルなどの自主組織育成、
地域力の発揮を支援する取組を意識しよう
2:本当は地域保健計画が必要!
• 個別法に基づく健康増進計画等の各種計画の策定、業
務分担の徹底等で、地域活動全体が見えにくい。
• 地域保健施策全体を包摂し、地域保健活動の基本的な
方針や目標等を示した「地域保健計画」が必要である。
• 個別法に基づく各種計画を包摂した計画の必要性につ
いて、厚労省告示である基本指針では言及できない。
• そのため、改正基本指針では「健康づくりに関する計画、
がん対策に関する計画、母子保健に関する計画、健康
危機管理に関する計画等の地域保健対策に関する計
画について、地域において共通する課題や目標を共有
し推進することが望ましい」と表現。
• 地域を基盤とした活動展開のために、基本指針を踏ま
えた「地域保健計画」を共有した業務分担を。
① 公衆衛生(地域保健を含む)を基本に、国民の視点で将来ビジョンを検討提示する
学校保健法 労働安全 食品衛生法 その他
衛生法
個別法令
母子保健法
健康
増進法
感染症 医療法
予防法
地域保健対策の推進に関する基本的な指針(根拠:地域保健法第4条)
第一 地域保健対策の推進の基本的な方向
第二 保健所及び市町村保健センターの整備及び運営に関する基本的事項
第三 地域保健対策に係る人材の確保及び資質の向上並びに人材確保
支援計画の策定に関する基本的事項
第四 地域保健に関する調査及び研究に関する基本的な事項
第五 社会福祉等の関連施策との連携に関する基本的事項
第六 その他地域保健対策の推進に関する重要事項
地域保健法
市町村と保健所の役割分担と基盤整備に主眼
健康なまちづくり
母子保健法
学校保健
安全法
健康
増進法
労働安全 食品衛生法
その他
衛生法
個別法令
感染症 医療法
予防法
公衆衛生を基本とする「健康なまちづ
くり」を上位概念に、下記のような個
別法令を横断する包括的な将来ビジョ
ンを国民の視点で検討する
○医療や食品等の安全・安心の確保
(健康危機管理を含む)
○保健医療福祉の地域包括システム
(仮称)公衆衛生基本法
その上で、基盤となる公衆衛生基本
法的なものの検討が必要ではないか
健康長寿しまね
の推進
食品の安全確保
医療提供体制の
整備・充実
健康危機管理
体制の構築
県 民
圏域
市町村
3:社会環境づくりへの認識を大きく
• 基本指針:個人の健康を支え、守る環境づくりの取組が大切。
そのため、学校や企業等との幅広い連携、住民との協働によ
る健康なまちづくりを推進(局長通知)。
• 国民の健康づくりの基本方針:健やかな暮らしを支える良好な
社会環境を構築することにより、健康格差の縮小を実現。
• 健康格差には、経済格差、教育格差、職業等が大きく関係。
• だが、具体的な今後の対策としては、地域格差の是正が中心。
• 社会環境は、政治、経済、教育、文化、歴史、労働、都市計画、
治安、平和など、幅広い分野に及ぶ。
• ソーシャルキャピタルは社会環境の内の一つと考えられる。
• 社会環境づくりを大きく見ておくことが大切。
• 社会保障、国の政策の重要性等を認識しておくことは大切。
社会を見る目を養おう!
今日的な健康関連要因の関係
病 因
主体要因
病原体
ストレッサー
生活習慣
有害物質
心理・感情
生きる意味、生き方
生体の内部環境
免疫、神経、内分泌、代謝
生育歴
環境要因
主体の特性
性、年齢、人種、
遺伝素因、性格
地域社会
人と人の関係性、収入、
家庭・生活環境、労働環境
自然環境、地球環境
生態系
社会環境
政治、経済、教育・文化・歴史、
治安、平和、公正、社会正義
健
康
状
態
社会的要因に迫る地域保健活動
地方自治体の健康なまちづくり政策
生活困窮
過重労働
不規則生活
ストレス増大
格
差
の
拡
大
精神疾患、
自殺、殺人、
犯罪、いじめ、
ゆとりの減少
虐待、不登校、
利己主義
引きこもり、
人間疎外
孤立、絶望
偏見・差別
等々
関
係
性
の
喪
失
健康支援環境づくり
多分野連携
ソーシャルキャピタ
ル,社会的支援
生活習慣病、
要介護
等々の増加
地区組織活動、住民
自治を推進する力
コミュニティ・アプローチ
2010;中川