包括利益 - 株式会社Jストリーム
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Transcript 包括利益 - 株式会社Jストリーム
包括利益に密着!
~純利益と包括利益の有用性比較~
法政大学 川島ゼミナール
TEAM Income
1
大西健太
桑山翔太
駿河洋樹
笠松公貴
これは成績表です。
この成績表が今まったく別のものに・・・
企業の成績表=損益計算書
企業の成績=当期純利益(純損失)
~中略~
(出所)JAL有価証券報告書(2009)
その背景には
国際会計基準
(IAS/IFRS)
がある!!
4
引用
IFRS
EU
2005年から適用開始!!
アメリカ
早くて2016年から適用開始!!
その他の国
中国やインドなど100ヶ国以上が採用。
日本では…
2010年3月期に国際会計基準の任意適用を開始し、
2012年に強制適用を判断する目途をたて、その場合に
は、2015年または2016年に適用開始する。
早くて2015年には企業の成績表が
全く変わる!
企業の成績=当期純利益(純損失)
出所)ASBJ
出所)IASB
企業の成績=包括利益(損失)??
7
包括利益って?
評価・換算差額等
純資産の部
Ⅰ
株主資本
1
資本金
2
資本剰余金
3
利益剰余金
純利益 その他包括利益
包括利益=稼得利益+
(SFAC5号より)
4
自己株式
株主資本合計
Ⅱ
評価・換算差額等
1 その他の有価証券評価差
額金
2 繰延ヘッジ損益
3
土地再評価差額金
4
為替換算調整勘定
評価・換算差額等合計
Ⅲ
新株予約権
Ⅳ
少数株主持分
純資産合計
(貸借対照表の一部)
この2人を見てください
Aさん
Bさん
1ドル=100
1ドル=200
円
円
1株=100円
1株=50円
年収
外貨
株式
合計
100万円
3,000ドル
60万円(+30万
30万円
円)
2,000株
10万円(-10万
20万円
円)120万円
110万円
2,000ドル
40万円(+20万
20万円
円) 30万円
3,000株
15万円(-15万
円) 115万円
9
企業でも同じことが言えます。
企業A
Aさん
企業B
Bさん
1ドル=200
円
1株=50円
年収
100万円
110万円
純利益
40万円(+20万
外貨 60万円(+30万
3,000ドル
2,000ドル
30万円
20万円
ここが評価・換算差額等
円) 30万円
円)
株式 10万円(-10万
2,000株
3,000株
20万円
15万円(-15万
円) 115万円
合計 円)120万円
包括利益
10
プラスに大きい企業
当期純利益
包括利益
差額
三菱地所
454億円
4871億円
4416億円
三井不動産
835億円
3122億円
2287億円
マイナスに大きい企業
当期純利益
日本たばこ産業
1234億円
プラス
日産自動車
-2337億円
包括利益
-2916億円
差額
-4150億円
⇒ マイナス に!!
-1兆1519億円
-9182億円
11
Aさん
Bさん
年収と、合計どちらで
疑問点・・・
儲かっているのはどちら??
判断すべき?
純利益と包括利益どちらが
年収
外貨
株式
合計
100万円
110万円
本当の企業の成績なの?
60万円(+30万円) 40万円(+20万円)
10万円(-10万円) 15万円(-15万円) 12
120万円
115万円
そう思っている人々は他にもいた!
研究者
年
対象企業
観点
結果
Cheng et al.
1993
アメリカ
株価形成への
純利益のほうが有用
反映
Dhaliwal et al.
1999
アメリカ
株価形成への
純利益のほうが有用
反映
Biddle and
2002
Choi
Kanagaretam
2005
et al.
Biddle and
2006
ニュージー
株価形成への
ランド
反映
カナダ/アメ
株価形成への
リカ
反映
アメリカ
株価形成への
Choi
若林
包括利益のほうが有用
包括利益のほうが有用
包括利益のほうが有用
反映
2001
日本
株価形成への
純利益のほうが有用
反映
若林
2002
日本
株価形成への
純利益のほうが有用
反映
井手
若林、八重倉
2004
2008
日本
日本
株価形成への
サンプルを製造業に絞った場合、包
反映
括利益のほうが有用
企業評価への
純利益のほうが有用
インプット
(若林 2008、若林八重倉 2008、井手 2004 より作成)
13
検証方法
① 純利益に評価・換算差額等を加えて包括利益を算出する。
② 1株当たり純利益(Earnings Per Share:以下、EPS)と、EPSの
分子を包括利益に変えた項目を算出する。
③ 株主資本当期純利益率(Return On Equity:以下、ROE)と、
ROEの分子を包括利益に変えた項目を算出する。
④ ②,③とEBITDAによって算出した企業価値との相関係数を
年度ごとに計算する。
相関があるという結果が得られれば、企業価値と上記の指標の
動きがリンクしており、財務諸表利用者の企業価値予測に有
用性が高いということになる。
14
サンプル企業
① 2001年4月から2009年3月までに東京証券取引所第1部に上
場されている一般事業会社。
② 3月決算、かつ決算期の変更がない企業。
③ 2009年3月において、
a.純利益と包括利益の差額がプラスに大きい企業100社。
b.純利益と包括利益の差額がマイナスに大きい企業100社。
④ 会計情報は『日経Financial Quest』から抽出。
15
≪実証結果≫
赤文字:相関あり
■:純利益有用
■:包括利益有用
a.純利益と包括利益の差額がプラスに大きい企業100社
年度
観測数
2001
100
2002
100
2003
100
2004
100
2005
100
2006
100
2007
100
2008
100
企業価値との相関
EPS
ROE
EPS
ROE
EPS
ROE
EPS
ROE
EPS
ROE
EPS
ROE
EPS
ROE
EPS
ROE
純利益
包括利益
0.1789
0.1196
0.6696
0.6135
0.7961
0.8231
0.8022
0.7759
0.8169
0.8098
0.8615
0.7894
0.7962
0.8524
0.4158
0.5897
純利益の
ほうが相関
が高い‼‼
0.3725
0.2247
0.5503
0.6239
0.6601
0.7198
0.7358
0.7819
0.7459
0.7963
0.7899
0.7739
0.7743
0.796316
0.2299
-0.6698
≪実証結果≫
赤文字:相関あり
■:純利益有用
■:包括利益有用
b.純利益と包括利益の差額がマイナスに大きい企業100社
年度
観測数
2001
100
2002
100
2003
100
2004
100
2005
100
2006
100
2007
100
2008
100
企業価値との相関
EPS
ROE
EPS
ROE
EPS
ROE
EPS
ROE
EPS
ROE
EPS
ROE
EPS
ROE
EPS
ROE
純利益
包括利益
-0.5615
0.1342
0.6789
0.5627
0.8029
0.6982
0.8369
0.7233
0.8563
0.7369
0.8534
0.8366
0.8805
0.8006
0.5729
0.6995
純利益のほうが
相関が高い‼‼
-0.5402
-0.0588
0.5796
0.3382
0.7528
0.6822
0.7922
0.7011
0.7753
0.7413
0.7398
0.7825
0.8147
0.816217
0.3689
-0.2358
実証の結果、
企業の成績は純利益と考えるべき!!
新たな疑問点・・・
包括利益はなんのためにあるの?
アップル・コンピューター社
貸借対照表
資産
損益計算書
負債
売上高
売上原価
売上総利益
販売費及び一般管理費
営業利益
営業外損益
純資産
有価証券評価益
経常利益
売却可能有価証券
16億円
特別損益
税引前当期純利益
法人税,住民税及び事業税
法人税等調整額
その他包括利益
当期純利益
19
包括利益
利益を水増しし
てしまえ~
包括利益
20
つまり、包括利益の報告は
利益の信頼性の
経営者による利益操作
確保
21
まとめ
企業の成績=当期純利益(純損失)
包括利益(損失)は純利益を
信頼できるものにする
22
課題と展望
企業価値の計算には、
日本に包括利益がまだ導入されていない
他にも割引キャッシュ・フロー法(DCF法)
サンプル社数が200社
や残余利益(RIM)モデルがある
導入されたら結果が変わるかもしれない
そのモデルの企業価値との相関も
サンプル数を増やすことで
包括利益導入をしている海外のケースを
総合的にみる必要がある
実証の結果がより信頼できるものになる。
見る必要がある
参考文献
若林公美「包括利益情報に対する株式市場の評価―
有価証券の評価差額を手がかりとして―」『會計』第
162巻第1号 2002
若林公美 八重倉孝「企業評価モデルのインプットとし
ての利益の検討―包括利益と純利益の比較―」『會計
』第174巻第5号 2008
井出健二「包括利益の有用性に関する検討―わが国
証券市場を対象として―」『會計』第165巻第2号 2004
安部由佳里「包括利益に関する実証研究の動向」『関
西学院商学研究』第59号 2008
伊藤邦雄『ゼミナール企業価値評価』日本経済新聞出
版社 2007
Haward Schilit ,菊田良治[訳]『会計トリックはこう見抜
け』
24
IASC,IAS1,Presentation of Financial Statements,1997,
日本公認会計士協会国際委員会〔訳〕『国際会計基準
書2001』同文舘出版2001
FASB, Concepts Statement No. 6 , Elements of
Financial Statements—a replacement of FASB
Concepts Statement No. 3 (incorporating an
amendment of FASB Concepts Statement No. 2) ,平松
一夫,広瀬義州〔訳〕『FASB財務会計の諸概念 』中央経
済社 2002
金融庁 企業会計審議会『我が国における国際会計基
準の取扱いに関する意見書(中間報告)』2009.6
IASC,Exposure Draft E53,Presentation of Financial
Statements,1996
小川健志ほか「IFRS襲来!」『週刊ダイヤモンド』2009
年7月18日号 ダイヤモンド社
25
IASB ホームページ
https://www.asb.or.jp/asb/top.do
アクセス日09年09月20日
ASBJ ホームページ
http://www.iasb.org/Home.htm
アクセス日09年09月20日
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