Transcript 「腸内細菌」の
2011年 12月11日 京都難病連医療講演会 「腸内細菌」の重要性 京都大学消化器内科 内視鏡部 仲瀬裕志 炎症性腸疾患の病因 環境因子 遺伝的素因 食餌・感染 化学薬品等 腸内細菌 免疫異常 発症 再燃/増悪 腸内細菌の役割 免疫機能の 不活化? 腸炎発症 動物モデル 無菌状態で生育 (腸内細菌無し) 腸炎発症せず 通常状態で生育 (腸内細菌の存在) Mφ/Th1系 細胞の活性化 腸炎の発症 「腸内細菌」とは • 赤ちゃんは母親の胎内では無菌(全く菌のい ないこと)の状態ですが、産道を通って生まれ てくる時にまず母親から最初の感染を受けま す。 その後、産院の中でも感染し、家に入っ てからはそれぞれの生活環境(温度・湿度・ 通気・栄養等)によって、すぐにいろいろな種 類の細菌が腸管内に住むようになります。 このように腸管内を住みかとして存在してい る細菌を「腸内細菌」といいます 赤ちゃんのお腹の中には悪玉菌は 住んでいない! • 赤ちゃんの腸内細菌はビフィズス菌を主にし た善玉菌が沢山住み着いています。生後3,4 日程経過すると自然に腸内に善玉菌が出現 します。1週間ほど経つと、赤ちゃんの腸内細 菌の95%以上が善玉菌で占めるようになるそ うです。赤ちゃんのウンチが臭くないのは、腸 内に善玉菌が沢山住み着いているおかげ? 腸内細菌叢=腸内フローラ • 「腸内細菌」は、腸内で叢(そう=「 草むら」の意味。腸内細菌は草むら のようにまとまりを持って棲息してお り、そのまとまりのこと)を成して存 在し、腸管内に定着しています。 「腸内細菌」 一体どのくらいの種類があり、どのくらいの 数が存在しているの? 「腸内細菌の数と種類」 糞便1gあたりには、数にし て、10億個~1,000億 個もの「腸内細菌」が存在 し、その種類は、乳酸菌を はじめとして100種類以上 といわれています 「腸内細菌叢の量」 腸内細菌叢は、全てあわせると 約1kg(=肝臓にほぼ等しい)の重さがある 「シロアリにも腸内細菌あり!」 人間と「腸内細菌」との関係 (宿主・共生) 「共生」 というのはお互いに何らかの 形でいい影響を与え合っている関係 = 「ギブ&テイク の関係」をいいます。 •私達は、「腸内細菌」の「宿主」 森林には多くの小鳥や小動物が棲んでいます • 森林にあたるのが私達の体で、小動物にあ たるのが 「腸内細菌」です。 森林が自然の中でバランスよく存在している間は、その中で生活し ている動物達も健やかに生活できますが、森林が壊れると、動物 達も死んでしまう。 私達の体、つまり「宿主」と「腸内細菌」の関係もま さにその通りです。 共生はとっても大事 なかよくしなきゃ!!! 腸は、生体防御の最前線だから。 腸内細菌の種類 • 腸内細菌を大きく分けると、有用菌(善玉菌) 、有害菌(悪玉菌)、日和見(ひよりみ)菌の3 つになります。 日和見菌はひっそりと! 悪玉菌は本当に悪い? • 有害菌(悪玉菌)の代表といえば、大腸菌、ウェル シュ菌などで、有害物質を作り出して、腸内を腐敗さ せるなど、悪者の代表のようにいわれています。 • でも、有害菌(悪玉菌)の中にも摂取した食物を腐 敗させたり分解させたりする役立つ働きをしている 菌もあります。 • 有用菌(善玉菌)と有害菌(悪玉菌)のバランスが保 たれていてはじめて、人間(宿主)にとって有用な働 きをしてくれます。 有用菌(善玉菌)の代表といえば、や はり皆さんよくご存知の「乳酸菌」 乳酸菌とは乳糖やブドウ糖など の糖を分解して「有機酸」を多量 に作り出す細菌の総称です。 有機酸の種類 • 主な有機酸: 酢酸,プロピオン酸,酪酸,ギ酸 乳酸,コハク酸 • 量的に少ない有機酸:イソ酪酸,吉草酸,イソ 吉草酸,カプロン酸 これらの有機酸は糖分から主にできるが,ア ミノ酸からもできる. 有機酸はとても大事! • 酪酸という有機酸もかなりの量できる.ヒトの大腸では酢酸, プロピオン酸についで多い酸だ.この酸は今有望株として保 健,医療面で注目されている.酪酸が大腸粘膜のエネルギ ー源の80%を賄うといわれている.この酸は腸内細菌によっ て食物繊維やデンプンから生成される. • ご飯中心の食事が減ることで腸内に変化が生じ,有機酸の うち酪酸が減る.この酪酸は正常な細胞の増殖をエネルギ ーになるが,大腸癌の細胞を自然死させる.また,癌細胞を 正常な細胞に変身させる. • 腸内で細菌がつくるプロピオン酸は肝臓での脂質合成を抑 制する. • 腸内細菌のうち糖分を利用しない菌種がアミノ酸を利用して 生活するときにできるのだ.肉料理をたくさん食べた時に大 便やおならの匂いが悪くなる原因! 乳酸菌群について! • 糞便1g中の有用菌(乳酸菌群)の数 • 健康な人 数千万~数十億 • そうでない人 数千~数十万 有用菌の比率 健康なヒト/そうでないヒト 10000 /1 腸の状態によって腸内細菌のパターンが変わる。 加齢によっても腸内細菌叢は変わる 乳酸菌のおもな働き • 小腸での栄養分の消化吸収・大腸での水分吸収 • ビタミンを作り出す • 腸の蠕動(ぜんどう)運動を高めて、便秘を予防す る • 食中毒を起こす菌や病原菌の増殖を抑えたり、殺し たりする • 「発酵」という作用で、普通ならばほとんど吸収でき ない鉄やカルシウムなどの「ミネラル」を吸収しやす い形に変える • 腸内の腐敗を抑えたり、発ガン物質を分解する 「 腸内細菌」は、「消化酵素」をサポートする • 炭水化物、たんぱく質、脂肪 や健康食品、自然食 品などの有効成分は、分子が大きい構造なので、こ れらの成分がブドウ糖やアミノ酸などの最小単位に まで分解されていなければ、微絨毛から無駄なく吸 収することができません。今まで分解を行うのは「消 化酵素」のみと考えられていましたが、「 腸内細菌」 は、「消化酵素」協力した形で、栄養分、水分に対す る、分解、消化、吸収、そして排泄などの作業すべ てに大きく関わっている、ということが解ってきてい ます。 小腸の構造 • 小腸は体の中で最も長い臓 器で、ヒダが多い上に内部 の表面はイソギンチャクの ような絨毛突起におおわれ ています。 この絨毛の表面を加える と、小腸の表面積は約200 平方メートル(約60坪)、人 間の体表面積の百倍以上 にもなります。 小腸の絨毛 • また、 腸全体では、約3000万本もの絨毛があり、 1本の絨毛は約5000個の栄養吸収細胞で覆われ ています。 (約3000万本の絨毛 × 約5000個の栄養吸収 細胞 = 約1500億個の栄養吸収細胞) ※腸全体の栄養吸収細胞の数は、約1500億個 になります。 消化はとても大事 • どんなにおいしくて体に良い食べ物 や、有効成分の多い健康食品を摂 ったとしても、その成分が腸(微絨毛 ・栄養吸収細胞)で分解・消化・吸収 されなければ、せっかくの良い成分 も腸内を素通りするだけの「物質= 糞便」で終わってしまう。 まとめると • 口から摂った食べ物などの栄養素を100% 活かすためには、 • ◎ つねに「腸内環境」を整えて、 • ◎ 「腸内細菌叢」のバランスを保ち、 • ◎ きちんと微絨毛から栄養素や成分が吸収 されるようにすることが、基本なのです。 腸内細菌叢のバランスを悪くするもの • ストレス 少しでもストレス解消を! • 食生活 食事もバランスが大切です。 • くすり (抗生物質) 長期乱用することなく、 必要な分だけにしましょう。 • 疲労・睡眠不足 体力的・精神的にも負担が かかります。 • 加齢 誰にでも平等に訪れるものです。クヨ クヨせずに楽しく歳を重ねましょう。 Dr Pepperの飲みすぎに注意? 腸内細菌はすべての疾患につながる? 次のような疾病や障害に結びついていきます ① 臓器障害 脳卒中 ・ガン ・ 高血圧 ・ 心臓 病他 ② 皮膚障害 肌荒れ ・ じんましん ・ 吹き出物 ・ ニキビ ③ 感染症 腎盂炎 ・ 大腸炎 他 ④ 脳への影響 頭痛 ・ めまい ・ 肝性昏睡 他 ⑤ その他 下痢 ・ 便秘 ・ 体臭 心がけること! • 「腸内細菌叢」は、日々数パーセントずついれ 変わっています。 ストレスや食生活などにも 影響されやすい「腸内細菌叢」に有用菌である 乳酸菌群を増やし、定着させる試みが大切。 たまには写真でもながめて! アラスカのオーロラ 乳酸菌の好物を取り入れる! 乳酸菌の好物とは ・・? ① 糖質 ② 五穀(米・麦・粟・豆・きび又はひえ) 、 オリゴ糖など ③食物繊維(穀類 、 果物 、 野菜 、 ナッツ類 、 海藻類) 食物繊維は、 (a)水分を溜め込んで増やします。 (b)コレステロールを吸着してその吸収を抑えます。 (c)腸内で有用菌の増殖を促進します。 …などの働きがあって第6の栄養素とも言われています Hiroshi! Japanese food is best! 風土や気候が異なれば、食品を発酵させるときに 利用する微生物も異なる。 日本人として遺伝子的に合った食べ物を食べ、日本の土地に適した 腸内細菌を腸内で発達させ、それらの腸内細菌からの適切な刺激を 受けて日本の土地に適した免疫力を整える必要があるのでは? 炎症性腸疾患の治療 環境因子 遺伝的素因 薬物療法 食餌・感染 化学薬品等 腸内細菌 免疫異常 発症 再燃/増悪