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円盤分裂によって形成した
クランプの性質
Tsukamoto Machida & Inutsuka 2013
arxiv1307.6910
塚本裕介
学術振興会特別研究員(PD)
名古屋大学
概要
円盤分裂で形成する「クランプ」の進
化は未解明
 十分な空間分解能を確保しつつクラン
プへの質量降着や輻射冷却を同時に解
いたシミュレーションが必要
→本研究
 結果

 クランプは形成後主に円盤からの質量降着
によって進化
 質量が0.03M_solar(30Mjupiter)に達すると
セカンドコラプスする
 セカンドコラプスまでの時間スケールは
1000-2000年程度
 遠方惑星を円盤分裂で説明するには質量降
着を弱めるメカニズムが必要と思われる
クランプ
自己重力不安定による円盤の分裂

自己重力的に不安定な円盤は
エンベロープからの円盤への十分強い質量降着がある場
合 (Stamatellos+ 2011)
 輻射冷却が十分強い場合 (Gammie 2001, Boley+ 2009)

Boley+ 2009
分裂し10木星質量程度の「クランプ」が形成
 分裂の条件(Gammie 2000)
Q=
cs κ
πGΣ
≲1
t cool = 𝛽Ω−1 , 𝛽 ∼ 1

ただし、大局的な面密度変化が起こらない
準定常状態についての条件

クランプの形成当初の性質






軌道半径: ~10- 100AU
半径: ~ 1 AU
中心温度 : ~100 K
質量: 10Mj
「ファーストコア」とほぼ同様の構造
遠方惑星形成の有力なメカニズム
1000AU
30AU
Kuzuhara+2013
クランプ形成後の進化

円盤分裂後システムはどのよう
に進化する?
1.
2.
3.
4.

Kratter+ 2010
原始星に進化し連星系になる
(Kratter+ 2010)
褐色矮星になる(Stamatellos+
2009)
中心星に落下して生き残らない
(Baruteau+ 2010)
惑星(特に遠方惑星)に進化
(Vorobyov+ 2011,Naykshin 2010)
クランプの軌道進化、内部進化、
セカンドコラプスまでの寿命な
どを明らかにすることが重要
本研究では内部進化に主に着目
Vorobyov+ 2011
クランプの進化を理解するための予備知識
ファーストコアとセカンドコラプス
中心の温度進化
Larson 1969
10−5
水素分子の 𝛾 ∼ 1.1
乖離反応
ファースト
コア段階
輻射冷却<圧縮加熱
𝛾 ∼ 7/5
断熱
等温収縮
段階
輻射冷却>圧縮加熱
10
−19
断熱
等温
𝛾 ∼ 5/3
𝑇 ∝ 𝜌𝛾−1
𝛾 ∼ 5/3
r∼ 1 − 10 AU
𝑀 ∼ 0.01𝑀⊙
𝜌 = 10−13 − 10−7 g/cc
T= 10 − 2000 K
クランプの内部進化と寿命

輻射冷却によってクランプが進化する場合
(Nayakshin 2010, Galvagni+ 2012)


クランプの寿命(セカンドコラプスに至る時間
スケール)は数千-数万年程度?
円盤からの質量降着の影響はよくわかってい
ない
1000K
1000K
温度
温度
M=30Mj
M=10Mj
M=5Mj
10^2
Nayakshin 2010
10^3
10^4
時間 (年)
10^5
時間進化
~数千年
Galvagni+2012
0.1
1
半径 (AU)
10
クランプの内部進化を理解するために

クランプの進化を決定づけるメカニ
ズム
 円盤からの質量降着
 輻射冷却

どちらが効くかを明らかにするため
には
 円盤のダイナミクスとクランプへの質量
降着
 輻射輸送
 0.01AU程度の構造を分解
 現実的な状態方程式
さらに本研究では分子雲コアが初期
条件
→円盤の形成進化も同時に計算

クランプ
基礎方程式(FLD近似輻射流体力学方程式)
輻射圧
輻射輸送
物質場との相互作用
輻射圧による仕事
輻射場との相互作用
Smoothed Particle Hydrodynamics 用に離散化した方程式を用いる
(Whitehouse & Bate 2005,6)
初期条件とモデル
分子雲コアから計算開始
→円盤の形成、分裂、クランプ
への質量降着が考慮可能
 全質量: 1M◎
 半径:~4000AU,初期温度:10 K
 剛体回転
 粒子数: 520 000体




中心密度が10^-7 g/cm^3に達したら シ
ンク粒子を挿入 (r_acc=2AU).
オパシティモデル:Semenov
2003
状態方程式: Tomida+ 2013
5Rcs2
𝜔2 𝑅 3
α=
= 0.38 𝛽 =
= 0.01
2GM
3GM
~8000AU
Semenov 2003
Opacity Models
オパシティモデル
面密度進化
クランプ形成
クランプ落下
100AU
新たなクランプ
セカンドコラプス
温度進化
100AU
クランプの軌道と中心温度の進化
実線:クランプ形成後(密度>10^-11 g/cm^3)
 破線:中心流体素片の分裂前の進化
 7個のクランプが形成、2個がセカンドコラプス

円盤内で
複雑な温度進化
100
Clump1 (青)
クランプの軌道
典型的な温度進化 10
密度 (g/cm^3)
温度(K)
100AU
ρ>1e-11
で断熱進化
Clump2 (シアン)
1000
中心の温度進化
クランプの構造の進化
各進化段階のクランプの構造(R<10 AU)
 n~3 (Tc<100K), n>~4 (Tc>100K)のポリトロープ
球でよく近似できる

温度(K)
Clump2 (シアン)
中心の温度進化
クランプの温度構造
クランプ質量の時間進化
Clump2 (シアン)
セカンドコラプスは質量が
~0.03 Msolarで起きている
Clump1 (青)
クランプ形成後も質量増加
1000-2000年で
セカンドコラプス
考察:クランプの最大質量

セカンドコラプスを起こす直前(ρ~10^-7,T~1000 K)
のポリトロープ球の質量
M~0.03M_solarがクランプの最大質量
 これ以上重いクランプは存在しえない
(セカンドコアになる)

考察2:セカンドコラプス時の輻射強度

クランプがセカンドコラプスを起こした後セカ
ンドコアへの質量降着によって増光する
まとめと今後の課題
クランプは重い円盤中では質量降着によって非
常に速く進化する
→褐色矮星や連星に進化しやすい
 中心星落下問題も(通常の惑星形成同様)存在
する

遠方惑星を説明するには円盤との相互作用を弱
めるメカニズムが必要と思われる
→例えば円盤とクランプに傾斜角があると落下時
間は急激に長くなる(e.g., Xiang-Gruess+ 2012)

今後の研究の方向性

円盤形成、進化(そして分裂)における磁場の影
響を磁気散逸効果を取り入れながら調べる
Tsukamoto+ 2013
理想MHD
MHD w Ohm
分子雲コアから円盤の形成、初期進化における
化学進化、ダスト進化を明らかにする
→惑星形成の初期条件の解明
