PPTX - ISAS/JAXA

Download Report

Transcript PPTX - ISAS/JAXA

第8回
小惑星探査と探査機・天文衛星
「はやぶさ」と「あかり」
東京大学教養学部前期課程
2012年冬学期 宇宙科学II
松原英雄(JAXA宇宙研)
太陽系の天体のいろいろ
準惑星と呼
ばれるよう
になりまし
た
© JAXA
太陽
:
:
中心星
太陽系小天体
水星 金星 地球 火星 (小惑星帯)
地球型惑星
コア:
大気:
岩石・鉄
薄い
木星 土星
彗星
天王星 海王星 冥王星など
巨大ガス惑星
巨大氷惑星
水素・ヘリウム
分厚い
氷・
水素・
2
彗星(すいせい)も
太陽系の仲間の一人です
ルーリン彗星の
「あかり」による観測結果
近赤外線
疑似カラー写真
水蒸気
-1 4
Flux Density
Wm
[ 10
あかるさ
-2
-1
m ]
5
4
3
二酸化炭素
2
1
0
2 .5
3
3 .5
4
W av elen g th [ m ]
4 .5
5
波長 (m)
• 水蒸気や二酸化炭素が彗星から大量に放出されてい
ること、ルーリン彗星は他の彗星に比べ 二酸化炭素
が少ないことが分かりました
小惑星も大事な仲間
• 彗星のように、「ぼやっ」としたものがない小天体
は、小惑星と呼ばれます(月よりも小さい)。
• 大きさは数百mから数百kmまで色々です。
• 「あかり」は、全天のサーベイ観測で、約5000個
の小惑星を検出しました。
• これらの小惑星の赤外線のデータから、小惑星の
大きさや、光の反射率(アルベド)を調べました。
• 「はやぶさ」が探査した小惑星イトカワは、近地球
型小惑星です。
近地球型小惑星
(アポロ・アモール・アテン群)
メインベルト小惑星
太陽
地球軌道
火星軌道
木星軌道
木星トロヤ群小惑星
F. Usui, 2010 in prep.
小天体の性質はいろいろ
直径数百mの
天体の素顔は?
50km
6
小惑星は惑星の材料の化石
(つまり、銀河系のチリと同じ成
分)
(c)Kagaya
7
「はやぶさ」の挑戦
9
「はやぶさ」の体
(c) JAXA
10
11
「はやぶさ」を支えたイオンエ
ンジン
特徴
原理
超高燃費
低推力
12
自律航行
13
「はやぶさ」の旅路
14
「はやぶさ」がたどった道
年月日
イベント
年月日
イベント
2003年05月09日
M-V-5号機で打ち上げ
2007年01月18日
試料カプセルふた閉め
2003年05月27日
イオンエンジン(IES)点
火
2007年02月
IES再点火
2007年04月25日
地球帰還の本格巡航開始
2004年05月19日
地球によるスイングバ
イ
2007年10月18日
2005年08月15日
リアクションホイール1
基故障
第1期軌道変換完了
IES停止
2009年02月04日
2005年09月12日
イトカワに到着
第2期軌道変換開始
IES再点火
IESに異常発生
2005年10月04日
リアクションホイール2
基目故障
2009年11月04日
2009年11月19日
2005年11月12日
ミネルバ分離
IES2台を組み合わせて
推進力確保
2005年11月20日
イトカワに着陸
ターゲットマーカー放
出
2010年03月27日
第2期軌道変換完了
IES連続運転終了
2010年04月-6月
再突入に向けた軌道修正
2005年11月26日
イトカワに着陸(2回目)
2010年06月13日
地球帰還
2005年12月08日
燃料漏れで姿勢が乱れ、
地上との通信が途絶
2010年06月14日
試料カプセル回収
15
満身創痍の「はやぶさ」
技術項目
姿勢制御
対
応
リアクションホイール1
リアクションホ
イール3基中2基故 基と イオンエンジン、
障
光子圧を 利用して3軸
姿勢制御を 維持
通信途絶時にはイオンエ
ンジンのキセノンガスを
生ガス噴射
軌道制御
化学推進スラス
ター故障
バッテリー故障
イオン源A、中和
器B、中和器D故
障
電源
イオン
エンジン
状
況
イオンエンジンにより代
替
太陽電池電力のみを使用
中和器Aとイオン源Bを
組み合わせてクロス運転
16
「はやぶさ」がみた小惑星イト
カワ
(c) JAXA
17
表面地形―イトカワラッコ
18
19
不死鳥「はやぶさ」の最期
20
そして卵が残った...
2010年6月13日
21
2010年6月14日
22
2010年6月18日
23
キュレーション設備での試料解
析
24
25
「イトカワ」のかけらを、もちかえりました!
平成22年11月16日発表
はやぶさの持ちかえったイトカワの微粒子
• 「サイエンス」誌「はやぶさ」特
別編集号
– イトカワの母天体の大きさは現
在の10倍以上と考えられ、中心
部分の温度は約800℃まで上昇
、その後、ゆっくりと冷えた。そ
の後、大きな衝突現象が起き、
再集積したのが現在のイトカワ
になった(中村智樹(東北大)他)
– 地球とは異なる同位体比を持
つことがわかり、地球外物質で
ある(圦本尚義(北海道大)他)
– 重要な元素の含有量が求めら
れ、太陽系最初期に起きた元
素の分別過程を保存している(
土山 明(大阪大)他) などなど
はやぶさ2 計画
• 探査機
– はやぶさとほぼ同型(580kg)。サイエンス機器は、
倍増。衝突実験装置を搭載。
– 2014年7、12月打ち上げを目指している。
– 2018年6月にターゲットに到達。地球帰還は2020
年。
• 狙うサイエンス:太陽系・生命の起源と進化
– より始原的なC型小惑星(1999 JU3、直径900m
)へ、ランデブー・サンプルリターン。
– 衝突で舞い上がった、宇宙風化作用を受けていない
、内部のサンプルによる科学!
– ランダー (着陸ロボット) 、ローバーも搭載
赤外線天文衛星「あかり」
世間の誰も知らない?
苦労話
2000年代に入って実現した赤外線天文衛星
あかり(2006)
スピッツァー(2003)
ハーシェル(2009)
衛星名
スピッツァー
あかり
ハーシェル
望遠鏡口径
望遠鏡温度
85 cm
(<5.5K)
69 cm
(<6K)
3.5m
(80K)
観測波長
3-180 m
2-180m
角分解能
回折限界(>6.5 m)
3” @10 m
30” @100 m
回折限界(実績 >7 m)
5" @10 m
50" @100 m
回折限界
5’角撮像(256×256画素)
@3.6-8 m
5’角撮像(128×128画素)
@24 m
5’角撮像(32×32画素)@70m
0.5’×5’角撮像(2×20画素)
@160 m
10’角撮像(412×412画素)
@2-5 m
10’角撮像(256×256画素)
@5-26 m スキャン型撮像
@9、18 m(2×64画素)
@50-100 m(5×20画素)
@100-180 m(5×15画素)
1.75’×3.5’角撮像(32×64画
素)@ 60-210m
60-600 @5-40 m
20 @53-100 m
20-40 @2-26 m
160 @2.5-5 m
200 @50-200 m
1000-5000 @60-210 m
40-1000 @ 250m (194-
672m同時分光)
107 ヘテロダイン分光(157-
212m、240-625m )
撮像・
測光性能
分光性能
(/)
タイプ
軌道
打ち上げ年
観測期間
質量
天文台型
人工惑星軌道
(地球より1500-9000万km)
2003年8月23日
6年(その後も近赤外は継続)
0.95トン
サーベイ型 (一部天文台型)
高度 700 km
太陽同期軌道
2006年2月22日
1.5年(近赤外はその後も継続)
0.96トン
60-672m
7" @100 m
4’×8’角撮像
(149, 88, 43画素
@250、350、500m)
天文台型
太陽-地球L2点
リサジュー軌道
2009年5月14日
観測継続中(2012年まで)
3.3トン
赤外線天文衛星「あかり」
• 赤外線(波長2-160ミ
クロン)で全天の様々
な天体を観測しました。
あかりちゃん
作成:櫨香奈恵・櫨まどか
「あかり」は2006
ノーズフェアリング
搭載カメラからの
第2段モーター
第3段モーター
第2段モーター
年2月22日
3・2・1・ゼロ!
燃焼終了、分離
映像です。
点火!
開頭!
午前6時28分に打
2006年2月22日にち上げられました。
打ち上げられました
「あかり」の観測方法
• 地球を回る人工
衛星
– 高度 700 km
– 昼夜の境界上を
飛行
– 一周約100 分間
• 軌道 を一周する毎
に、観測する方向も
一回転する。
• 10分間ほど静止し
て特定方向を集中
的に観測することも
できます。
スキャンパスは周回毎に4分ずつずれていきます。
この方法で全天を半年で観測できます。
「あかり」衛星が中間赤外線でみた全天画像
• 波長9mの赤外線で、私たちの銀河系を見ると、生ま
れたばかりの星に暖められたチリが見えるのです。そ
れで、先ほどの絵と全く違う様子になります。
銀河はいつどのようにしてできたのか?
ビッグ
バン
137億光年
宇宙誕生(ビッグバン)は137億年前。遠くの宇宙は、
その分過去の宇宙を見ていることになる
(いわばタイムマシン!)
現在
銀河系の星々はいつ誕生したか?
銀河系には2000億個もの星がある
しかし、平均では年間1個の星しか、現在
は誕生していません
(平均星形成率=1個/年)
この星形成率では、2000億年かかること
になる!(これは宇宙の年齢の15倍の時
間)
だからかっては「スターバースト」銀河
巨大な星形成率:30-1000個/年
しばしば塵の雲に隠されていて 高光度
赤外線銀河とよばれる。
高光度赤外線銀河 II Zw096
ハッブル宇宙望遠鏡の画像
青: 紫外線
Green: 可視光
Red: 近赤外線
エネルギー放射の80%
はここから!
Inami et al. (2010)
星形成が活発な銀河は
「高光度赤外線銀河」
チリがなかったと
したらこのくらい
明るい(星の光)
あたたかい
チリからの
赤外線
銀
河
の
明
る
さ
星の光は、チリ
に吸収されて、
くらくなってしま
う
0.1
1
10
波長〔ミクロン〕
100
あかり
北黄極
ディープフィールド
0.6度直径の円内に、約5000個
の赤外線で明るい銀河が見つ
かった。
これらの半数は70億光年以上
の遠方にある。
「銀河誕生のドラマ」について、
「あかり」でわかったこと Goto et al. 2010
1型AGN
~70億ー100億年前の宇宙の平均星形成率は、
現在よりも30倍も大きかった!
中でも、特に活発(300個/年以上の星形成銀
河)なスターバースト銀河が、過去に向かって激し
く増加している。
2型
AGN
しかし、新たな謎が・・・
ダストトーラス
どうして、こんなことが起こったのか?銀河
同士の衝突合体?
 超巨大ブラックホールを持つ天体(活動銀河
超巨大ブラックホール
核)との関係は?
への質量降着
•
<1パーセク
画像提供:今西氏(国立天文台)
R1-p42
極低温冷却系
– ハイブリッドタイプLiq. He
(170 ℓ)
+2段スターリング・サイクル
冷凍機
– ヘリウムによる冷却寿命:
約550日
2007年8月末に液体ヘリウムを使い
尽くして、その後冷凍機のみによる
近赤外線観測を2010年まで継続。
43
Liq. He
Tank
望遠鏡
H.Kaneda (ISAS),
T.Onaka (Univ. of Tokyo)
•有効径 685 mm, F/6.3
•Ritchey-Chretienタイプ
•重量 42 kg, 冷却温度 5.8 K
•鏡材:Silicon Carbide
sandwich-type (porous SiC+CVD SiC)
主鏡のみの重量: 11 kg(径71cm)
flexure
44
Rear surface of primary mirror
FM telescope in vibration test
まとめ
• なぜ、研究対象として、小惑星を詳しく調べるのだろうか?
– 小惑星は太陽系の起源を解くカギだから。
• 「はやぶさ」で小惑星の何がわかったのか?
– 「イトカワ」の生成の歴史がわかった:大規模衝突で破壊、再集
積。
• 「あかり」で小惑星の何がわかったのか?
– たくさんの小惑星の大きさ・アルベドを系統的に調べることがで
きた
• 「はやぶさ」や「あかり」は成功だったのか?
– 大成功!しかし、苦難の連続だった。
• 成功は、単にラッキーだっただけか?
– そうではない。衛星システムが冗長に設計されていたからリカベ
リが可能だった。
– そして、「決してあきらめない心」が大事だった。