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第1回
スペースからの
赤外線天文学の歴史
(兼 自己紹介)
平成24年度新潟大学理学部物理学科
集中講義
松原英雄(JAXA宇宙研)
講師の自己紹介
私は、宇宙の色々な天体を観測をする人工衛星(天文衛星とい
います)で使って、宇宙の様々なことを調べています。
主に、可視光・赤外線・サブミリ波です(が、X線も電波にも手を染
めています)。
博士論文は(昔だったので)気球搭載の赤外線望遠鏡で重い星
の誕生の現場を観測して取りました。
その後、名古屋大学助手時代は、観測ロケット実験もやりました。
赤外線・サブミリ波とは?
目でみえる光(可視光)よりも波長の長い光のこと。
赤外線: 波長1ミクロン~300ミクロン
サブミリ波: 波長300ミクロン~1mm
可視光で見るよりも低温のものが良く見える。
ミクロン= mm = 0.001 mm
2本の缶コーヒー…..実は?
赤外線
可視光
ホット
コールド
宇宙科学専攻の基盤機関:
JAXA宇宙科学研究所
宇宙科学研究所はJAXAの
「本部」の一つです。
宇宙物理学研究系
太陽系科学研究系
学際科学研究系
宇宙飛翔工学研究系
宇宙機応用工学研究系
の5研究系と、衛星プロジェ
クトチーム・観測ロケット実験
室・大気球実験室などから
成ります。
JAXA宇宙科学研究所とは
宇宙科学研究所=
旧 宇宙科学研究所
旧 宇宙開発事業団
旧 航空宇宙技術研究所
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
東京大学 生産技術研究所(1949-) ⇒
東京大学 航空研究所(1958-1964) ⇒
東京大学 宇宙航空研究所(1964-1981) ⇒
宇宙科学研究所(1981-2003) ⇒
独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
宇宙科学研究本部(2003-)
5
JAXA相模原キャンパス
敷地面積:
73001m2
風洞実験棟
構造機能
試験棟
特殊実験棟
研究・管理棟
飛翔体環境試験棟
相模原市立博物館
門衛所
東京国立近代美術館
フィルムセンター相模原分室
6
JAXA宇宙研の3つの顔
国の宇宙政策の実施
• 独立行政法人(JAXA)の1部門
巨大科学の推進
• 大学共同利用機関に準じる機関
最先端研究
• 大学系の研究所
– 総合研究大学院大学の基盤機関
– 東京大学大学院(学際講座)
– 連携大学院など多数
7
総研大とは
• 「総合研究大学院大学」の略
• 学部を持たず、大学院教育のみ
• 大学専用のキャンパスを持たず、既存の大学
共同利用機関を大学院教育に活用
• 文化科学、物理科学、高エネルギー加速器科
学、複合科学、生命科学、先導科学の6つの研
究科
• 物理科学研究科は、構造分子科学、 機能
分子科学、天文科学、核融合科学、宇宙科学
の5専攻で構成 (23年度からの専攻長は私です)8
宇宙科学専攻
の講座 (教員数:85名 2012年3月)
9
宇宙科学専攻の特徴
• 平成18年度から、五年一貫博士課程に改組して
います(博士後期課程のみもあります)。
• 学生数は、各学年に4~6名です。
– つまり、教員数の方が圧倒的に多い!
• 最先端の専門的な教育が受けられると同時に、
(理学・工学にまたがる)様々な分野から学ぶこ
とができます。
• RA制度、授業料免除、(学生支援機構の奨学
金)、日本学術振興会特別研究員制度・・
• 「コース別大学院教育プログラム」がはじまりまし
た。
• 願書受付期間: 2012年7月20-26日
JAXA相模原キャンパス特別公開
2010年度は2日間で
約3万4千名が来場
平成24年は7月27-28日です!
11
スペースからの
赤外線天文学の歴史
天体観測とは?
• 目で見える波長は、天体からの電磁波のごく
ごく一部です。
– いろんな電磁波を観測するには、その電磁波を
感じる「検出器」(電磁波を受けて、電気信号を生
じるもの)が必要です。
• また天体からの電磁波は微弱なため、光を集
める「望遠鏡」(やアンテナ)が必要です。
望遠鏡
(ナスミス式の例)
検出器
スペースからの観測
• 大気の吸収・放
射がない。
– 波長1-1000ミク
ロン全域で観測
可能
– 「赤外で暗い夜
空」が得られる
赤外~サブミリ波波長帯における地球大
気の透過スペクトル(上段)と、放射ス
ペクトル(下段)を色々な高度から天空
を観測した場合について比較したもの。
高度250km以上の衛星軌道ではじめて、
惑星間塵の放射など宇宙起源の拡散放射
しか存在しない「暗い夜空」が得られる。
R1-p14
赤外線観測では望遠鏡自身が
明るい「邪魔者」
次世代赤外線天文衛星SPICAの資料より
観測性能を決めるパラメータ
• 「性能」と言っても色々あります。これから紹
介する天文衛星の性能に、どんな特徴や違
いがあるか注意して下さい。
–
–
–
–
–
波長帯
波長分解能
視野
空間分解能
検出限界
波長帯と波長分解能
• 波長帯(波長域)
– 観測可能な波長の範囲
• 波長分解能
– 波長分解能( R = λ / Δλ )
• 隣り合うスペクトル線がどこまで
近くの波長まで分解できるか?
スリット
温度計
プリズム
赤外線
天体
目で見える
光
紫外線
スクリーン
視野と空間分解能
• 視野
– どれだけ広い天空の領域を
同時に見られるか?
(カメラの画角のこと)
• 空間分解能
– 隣り合う空間の2点をどれだ
け別の点と認識できるか?
– 回折限界(レーリーの基準)
• θ = 1.22λ / D
– λは光の波長
– Dは光を集める(カメラなら対物レ
ンズの直径。
検出限界とは
• どれだけ暗い天体まで、天体として検出でき
るか、の限界能力
– 天体からの信号と雑音の比
• 信号は?
– 集光力に比例します。
– 観測(露光)時間に比例します。
– 集光力:光を集める面積。望遠鏡の口径の二乗
• 雑音は?
– 検出器自身の持っている雑音
– 大気や望遠鏡からの光子数のゆらぎによる雑音
天文衛星には、大別して二種類ある
• サーベイ型
– 掃天観測(スカイサーベイや天体サーベイとも呼
ぶ)を主に行う天文衛星のこと。サーベイとは望
遠鏡を用いて一定範囲の夜空を観測することで
す。
– 観測計画は、打ち上げ前から決まっています。
• 天文台型
– 特定の天体・天空の領域を、様々な天文学上の
目的のために観測する天文衛星。
– 観測公募とその選定を受けて、観測計画を打ち
上げ後に決めることが多い。
スペース赤外線天文学
の歴史(1)
~まず1990年代~
IRAS (アイラス)
• 1983年に米・蘭・英の三国共同
で打ち上げ
• 口径60cm、 2Kに冷却
(K:絶対温度)
• 12、25、60、100mmの4バンドで、
初めて全天をサーベイ。
R1-p22
COBE(コービィ)
• COBE(Cosmic Background Explorer)
– 1989年11月打ち上げ(NASA)の天文衛星
– 赤外~マイクロ波領域にわたり、全天の拡散放射
を極めて精度良く測定
搭載装置
DIRBE
(Diffuse Infrared Background Experiment)
ビーム0.7角、
波長1.25 -- 240 ミクロンにわたる
10バンド測光器
FIRAS
(Far-infrared Absolute Spectrometer)
R1-p23
ビーム7
波長100~1000ミクロンの分光器
IR Sky observed with COBE/DIRBE
黄道光
(太陽系内
の塵から
の赤外線
放射)
Kelsall et al.
(1998) ApJ
508, 44
銀河系内
の星間塵
からの赤外
線放射
Arendt et al. (1998) R3ApJp24
508, 74
ISO(Infrared Space Observatory)
(アイソ)
• ESA が1995年11月打
ち上げた宇宙天文台(~
1998 April)
• 初めて2次元アレイセ
ンサーが搭載 (32x32
画素@3-17mm)
• 3-200mmの分光器も
搭載
• 日本も観測プログラム
に参加
R1-p25
星のうまれるところを
赤外線で見たら?
赤外線ではチリがかがやいて見える!
衝突中の銀河の赤外線画像
NGC 4038
NGC 4039
衝突によって星がうまれたとこ
ろのチリがあたためられて、
赤外線で明るく見える。
ISOによる遠方宇宙の
赤外線で明るい銀河サーベイ
川良・谷口・松原・奥田・大薮他、1998年記者発表
90 Micron
170 Micron
予想よりもはるかに多い赤外線銀河を発見!
ISO
IRTS (アーツ)
(Infrared Telescope in Space)
ミッション: 1995年 3-4月 (26日).
HIIで打ち上げられたSFU (Space Flyer Unit)に搭載、シャ
トルで回収。
望遠鏡は15cm、全天の7%をサーベイ。
R1-p29
IRTSの成果ー我々の銀河系から
「拡散した有機物からの放射」
の発見
星(波長3ミクロン連続波)の分布
3.3ミクロンの有機物からの放射
の分布
http://www.ir.isas.ac.jp/irts/nirs/uir_intro.html
R2-p30
20世紀の赤外線天文衛星
性能のまとめ
2000年代に活躍(中)の赤外線天文衛星
あかり(2006)
スピッツァー(2003)
ハーシェル(2009)
スピッツァー (Spitzer)
• 2003年8月に打ち上げ。天文台型。
• ミッション期間: 2.5年(5年目標)
• Solar Orbit
R1-p33
Spitzerの撮像バンドと視野・画素数
R1-p34
SWIRE (50平方度のサーベイ)
赤外線天文衛星「あかり」
• 赤外線(波長2-160ミ
クロン)で全天の様々
な天体を観測しました。
あかりちゃん
作成:櫨香奈恵・櫨まどか
「あかり」はどんな方法で天体観測を
したのか?
• 人工衛星
– 高度 700 km
– 昼夜の境界上を
飛行
– 一周約100 分間
• 軌道 を一周する毎
に、観測する方向も
一回転する。
• 10分間ほど静止し
て特定方向を集中
的に観測することも
できます。
スキャンパスは周回毎に4分ずつずれていきます。
この方法で全天を半年で観測できます。
AKARI All-Sky Survey
AKARI
asteroid
catalog
(AcuA)
Animation:
2006/02/22 –
2007/08/31
- Obs. start:
2006/04/23
(05/08)
- LHe boiled off:
2007/08/26
Bright asteroids
(albedo > 0.1)
Dark asteroids
(albedo < 0.1)
Sun,
Earth, Mars, Jupiter
Herschel launched
14 May 2009
Credit: ESA
衛星名
スピッツァー
あかり
ハーシェル
望遠鏡口径
望遠鏡温度
85 cm
(<5.5K)
69 cm
(<6K)
3.5m
(80K)
観測波長
3-180 mm
2-180mm
角分解能
回折限界(>6.5 mm)
3” @10 mm
30” @100 mm
回折限界(実績 >7 mm)
5" @10 mm
50" @100 mm
回折限界
5’角撮像(256×256画素)
@3.6-8 mm
5’角撮像(128×128画素)
@24 mm
5’角撮像(32×32画素)@70mm
0.5’×5’角撮像(2×20画素)
@160 mm
10’角撮像(412×412画素)
@2-5 mm
10’角撮像(256×256画素)
@5-26 mm スキャン型撮像
@9、18 mm(2×64画素)
@50-100 mm(5×20画素)
@100-180 mm(5×15画素)
1.75’×3.5’角撮像(32×64画
素)@ 60-210mm
60-600 @5-40 mm
20 @53-100 mm
20-40 @2-26 mm
160 @2.5-5 mm
200 @50-200 mm
1000-5000 @60-210 mm
40-1000 @ 250mm (194-
672mm同時分光)
107 ヘテロダイン分光(157-
212mm、240-625mm )
撮像・
測光性能
分光性能
(/)
タイプ
軌道
打ち上げ年
観測期間
質量
天文台型
人工惑星軌道
(地球より1500-9000万km)
2003年8月23日
6年(その後も近赤外は継続)
0.95トン
サーベイ型 (一部天文台型)
高度 700 km
太陽同期軌道
2006年2月22日
1.5年(近赤外はその後も継続)
0.96トン
60-672mm
7" @100 mm
4’×8’角撮像
(149, 88, 43画素
@250、350、500mm)
天文台型
太陽-地球L2点
リサジュー軌道
2009年5月14日
観測継続中(2012年まで)
3.3トン
将来のスペース
赤外天文ミッション
JWST (2018?)
– 6.5m、30K
– 0.6~27mm
SPiCA
(2022)
– 3.2m、<6K
– 5~210mmメイン
R1-p43
検出限界比較(撮像、点源)
Flux (放射流束)
– 単位時間・単
位振動数・単
位面積当たり
の天体からの
電磁波のエネ
ルギー
暗い天体
(下ほど性能がよい)
R1-p44
(スピカはおとめ座の1等星の名前です)
次世代赤外線衛星
スピカを紹介します
SPICAの仕様
– ミッション:
中間・遠赤外線領域の高感度・高空
間分解能観測により、「銀河誕生の
ドラマ」と「惑星系のレシピ」を探る
– 望遠鏡口径: 3.2m
– 望遠鏡温度: 6 K (-267°C)
• 「あかり」のように液体ヘリウムは使いま
せん!
– 総質量: 約3.7t
– ミッション期間:最低3年、5年目標
Weight: 3.7 t
– 打ち上げ: H-IIAロケットにより2022
年度の打ち上げを目指している)
SPICAは150万km彼方のL2点に置
かれる、日本が主導して開発・運用する
宇宙天文台です。
どうやって望遠鏡を冷やすの?
• あかり
– 観測装置: 42 kg
– 冷却装置: 460 kg
• 200 kg はクライオスタット
の外壁
• 液体ヘリウム170リットル
で寿命が制限(1.5年)
新たな宇宙史を拓く、圧倒的な性能
• これまでになく大口径の
極低温(-267°C)宇宙
赤外線望遠鏡
• 最先端の赤外線観測装
置を搭載
「あかり」の
約100倍の高性能!
SPICAはこんなにすごい!
「あかり」
深宇宙探査
SPICAだと
(シミュレーション)
Courtesy to Ko Arimatsu @U. Tokyo