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トレース画像に対応可能
な
電子透かしの提案
木下研究室
工藤敬文
200703020
研究に至った背景
 現在、無断転載やトレース等が問題になっ
ており、漫画等も電子書籍化が進む中、こ
れらに対する著作権保護が必要
電子透かしによる著作権保護
研究目的
他人の描いたイラストをトレースし、自分の
イラストとして発表する、盗作行為による
著作権侵害を防ぐ手段を考える。
トレース画像からも透かし情報が取り出せる
ような電子透かしの手法を考え、それによ
りトレースされた画像の著作権の保護
トレース画像について
 トレース画像とは、トレーシングペーパー
等を使い、上からなぞることで正確に線を
写しとったものである。
 似たようなもので模写があるが、模写は手
本となるものを見ながら描いたもので、な
ぞったものではない。
 トレース画像において、色彩までトレース
することは、まずない。
漫画・イラストの現状
 現在ではイラスト、漫画もデジタル作
業で行なわれることが増え、プロの漫
画家であってもPCで作業をする人も
増えている。
 現在では彩色はほとんどドローソフト
により行なわれている。
 ドローソフトの発達により、画像のト
レースが非常に容易に出来るように
なっている。
電子透かしの現状
 写真などの多値静止画像に対する電子透か
しは多く提案されている
 画像投稿サイトなどが増え、インターネッ
ト上で多く公開されている漫画やイラスト
等の二値の線画像に対する埋め込み手法は
あまり検討されていない
 多値画像に比べ静止画像は冗長性が少ない
ため、埋め込みが難しい
電子透かしの現状
 電子透かしの基本的な手法として、人の目
には感知できないレベルで色彩を弄り、そ
れにより透かし情報を生成する。
 トレースすることにより透かし情報を埋め
込んだ色彩は全て消えてしまうため、情報
を取り出すことは出来ない。
提案方式
 色彩による透かし情報の埋込みが不可能で
あるため、色によらない電子透かしの手法
を考える必要がある。
 トレースする場合に写しとるのは基本的に
線画像部分のみである。
 これらを踏まえた上で、線画像の形に対し
て透かし情報を埋め込む手法を提案する。
提案方式の処理フロー
自由曲線による原画像の近似、補正
自由曲線の数式データへ透かし情報の
埋込み、補正
トレース画像に対し自由曲線で近似
透かし情報の抽出
自由曲線
方向や曲がり具合を自由に調整出
来る曲線
代表的なものにベジエ曲線、スプ
ライン曲線などが挙げられる。
スプライン曲線
 与えられた複数の点を滑らかに接続する曲
線
 区分方程式で表現されているため、一部を
変更しても曲線全体に影響を及ぼさない等
の性質がある。
ベジェ曲線
 PostScriptフォントなどで採用されている曲線。
 特に3次のベジェ曲線が多く使われている。
PHOTOSHOP等のドローソフトにも使われて
いる。
 一般的には両端以外の制御点を通らない。
 スプライン曲線を使用した場合、近似する際に
手ぶれを敏感に捉えてしまう恐れがあるので、
今回の提案方式では3次のベジェ曲線を採用す
る
ベジェ曲線
三次のベジェ曲線は図で示すように、4つの
制御点で構成されており、両端の制御点は
端点、外側の2点は方向点と呼ばれている。
この方向点の位置により、曲線の形が決定
される。
ベジェ曲線
数式で3次のベジェ曲線を表現すると
t=0の時、x=x1、y=y1になり、
t=1の時、x=x4、y=y4になる。
遺伝的アルゴリズム
遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA)は自然界に
いる生物の進化過程を真似て、プログラムを「進化」さ
せるシステムである。
 つまりプログラムが遺伝情報によって淘汰されつつ進化
する。
~アルゴリズム概略~
1.たくさんのエージェント(プログラム)をランダムに生
成
2.どのエージェントが優れているか劣っているかを評価す
る
3.残ったエージェントをランダムに組み合わせたり(交
叉)一部を変えたり(突然変異)して次の世代を作る
4.これを何度も繰り返す

 今回の研究では手始めに単純な一本の曲線を対
象とし、処理フローの初め部分、自由曲線によ
る原画像の近似、補正を目的とする。
 端点は今回は固定のものとする。二つの方向点
を操作することで、ベジェ曲線の適切な近似を
求める
具体的な近似の方式として、原画像の線をまずN等分する。
そして制御点の位置を決め、作成されたベジェ曲線もN
等分する。
原画像のX番目の点をA点、作成されたベジェ曲線のX番目
の点をB点とする。
A点とB点の評価
1番目からN番目までを比べていき、距離間の絶対値の合
計が最も0に近いものを近似するベジェ曲線として採用
する。
この処理をクリアするために、制御点の位置を決める必要
性があるのだが、今回はGAを用いてベジェ曲線の最適
解を模索させる。
結論
今後の課題として
 実際に線を何人かになぞってもらい、トレース画
像をベジェ曲線で近似した際に、制御点の位置の
ズレがどの程度発生するか、そのデータ集計
 その結果により電子透かしの埋込み方式の決定
 今回の場合は端点の位置を固定のものとしたが、
最終的には線の近似をする際に端点を決める方法
を考える必要がある。