第 7 回:企画作りについて
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Transcript 第 7 回:企画作りについて
プロジェクト演習
(インタラクティブ・ゲーム制作)
2010年11月10日
東京工科大学 メディア学部 三上浩司
ゲームの勉強は楽しいですか?
これから
•これまで学んできたプログラミングスキルを生かしてオリジ
ナルのゲームを企画,開発します
•最も大事なのは「いかにして人を引き付けるか?」
そして「いかにして人を楽しませるか?」を「具現化すること」
そのまえに・・・
なんでみんなでプログラミングするの?
• 国際的にもゲーム産業がそれを求めている
– Siggraph,GDC,CEDECなどなどの各種講演
– 大手パブリッシャーも同様
• どんな役割になっても他の役割を理解することは大事
– それこそが「コミュニケーション能力」
– ゲームは必ず「プログラム」に集約される
•
http://www.inside-games.jp/article/2010/09/02/44101.html
大体のスケジュール
•11月16日
–企画の説明とディスカッション
•12月7日ごろ
–プレゼンテーション
•1月の授業最終回
–中間発表
•4月
–最終発表
ところで・・・つくれるの?
前期を思い出してください
•トランプを使った新しい遊びの提案
•レトロな遊びをアレンジした新しい遊びの提案
•4コマ漫画の制作
自分たちで制作するものを事前に設計すること
設計そのものの難しさ
予測することの難しさ
遊びのルールを作ること
アイデアや楽しさを人に伝える難しさ
バランスの難しさ
企画どおりに作ること
完成形を考える難しさ
面白いと思うことを真剣に作ることの難しさ
企画づくり
そのまえに...
ゲームって なに?
ゲームとは何か?
•
明確な答えを端的に示すことは難しい
•
「ゲーム = 遊び」と考える
•
遊びとは何か
– 人間は、ホモ・サピエンス、「知識をもつ類」という言い方とともに、ホモ・
ルーデンス、「遊びをする類」という言い方も成り立ち、知識と遊びの両
者を身につけていくことは、人間の本質である。
第2回「子どもの心の診療医研修会」(08/09/21)で
の須藤俊昭教授(大東文化大学文学部教育学科)
の講演
ヨハン・ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』における
遊びの定義
• 「遊びとは、あるはっきり定められた時間、空間の範囲内
で行われる自発的な行為もしくは活動
– 自発的に受け入れた規則に従っている
– その規則はいったん受け入れられた以上は絶対的拘束力をもっ
ている
– 遊びの目的は行為そのもののなかにある
– それは緊張と歓びの感情を伴い、またこれは『日常生活』とは『
別のもの』をという意識に裏づけられている
ロジェ・カイヨワ『遊びと人間』
•
①自由な活動
– 遊戯者が強制されないこと。もし強制されれば、遊びはたちまち魅力的な愉快な
楽しみという性質を失ってしまう
•
②隔離された活動
– あらかじめ決められた明確な空間と時間の範囲内に制限されていること
•
③未確定の活動
– ゲーム展開が決定されていたり、先に結果がわかっていたりしてはならない。創
意の必要があるのだから、ある種の自由が必ず遊戯者側に残されていなくては
ならない
•
④非生産的活動
– 財産も富も、いかなる種類の新要素も作り出さないこと。遊戯者間での所有権の
移動をのぞいて、勝負開始時と同じ状態に帰着する
•
⑤規則のある活動
– 約束事に従う活動。この約束事は通常法規を停止し、一時的に新しい法を確立
する。そしてこの法だけが通用する
•
⑥虚構の活動
– 日常生活と対比した場合、二次的な現実、または明白に非現実であるという特殊
な意識を伴っていること
遊びの種類・分類
•
•
遊びは、遊戯者数、遊び空間、性・年齢などにより、分類できる
①遊戯者数による分類
– 一人遊び、平行遊び、役割遊び、集団遊び
•
②遊び空間による分類
– 外遊び、室内遊び、辻遊び
•
③性や年齢による分類
– 女の子が好きな遊び:おはじき、お手玉/男の子が好きな遊び:こま回し
•
④カイヨワによる分類
– ロジェ・カイヨワは、遊びの構造や、質から大きく分けて、4種類の遊びに分類
•
•
•
•
1)アゴン(競争)
2)アレア(運)
3)ミミクリ(模擬)
4)イリンクス(めまい))
遊戯性から競技性
•
単なる「遊戯」として、騒ぎ、はしゃぎから、規則・様式・複雑さ・洗
練などが整い「競技」性の度合いが強まるまでの幅で、分類
遊戯性 • 1)アゴン(競争)
– 取っ組み合い→かけっこ・おにごっこ→剣玉・こま回し・お手玉・腕相撲→サ
ッカー、野球、バスケなど→将棋、チェス、囲碁など
•
2)アレア(運)
– じゃんけん→すごろく→パチンコ・宝くじなど
•
3)ミミクリ(模擬)
– まねっこ→ままごと・学校ごっこ、人形遊び→仮面・仮装→演劇
•
4)イリンクス(めまい)
– ぐるぐるまい→ブランコ、シーソー→メリーゴーランド→ダンス→スキー、スケ
ート、バイクなど
競技制
•
実際の遊びでは、少なからず要素の複合がありうる。トランプ、
麻雀などでは特に。
企画とは
•プロジェクトをはじめるための企てであり出発点
•企画職(プランナー)
–本当の意味では才能職・能力職(プロデューサは経験職)
• 経験を積むことで能力向上はありえる
–ゲーム業界では能力職(プログラマ,アーティストなど)以外は「プ
ランナー」と位置付けて事実上の雑用とすることもある
–業界では良い企画を立てるためにはいろいろ言われています
①制作を良く理解し,経験していること
②細かい事情抜きに斬新なアイデアを作れる
–そのため経験や実践もなく「企画をやりたい」と言うと「こいつわ
かってねーな」と思われることもしばしばあります
企画(プランニング)と制作(プロデュース)
• 企画は数多く打って,一つを当てる
–毎日考えても良いです(特に企画の元になるアイデア
は常に考えること)
–何度も作り直しても良いです
• 制作は取り組んだものは全て万難を排して完成
させる
–企画を実現する
–問題を回避(解決)する
企画書とは
• 作品(サービス)のアイデアを具現化し,商品(ビジネス)
にするために,必要な要素を取りまとめたドキュメント
– 業界によって求められるものが若干異なる
• ゲームの場合は関連ドキュメントとして「コンセプトシート」
も
• イメージとしては「アイデア<コンセプトシート<企画書」
– アイデア具現化してまとめるとコンセプトシート
– さらにビジネス要素が加わると企画書
コンセプトシートの参考:
「ペラ企画コンテスト」@CEDEC2011
http://evezoo.net/peracon/result.htm
企画書① -企画書を作る目的ー
企画書=ドキュメント(成果物)
・製作資金(制作費用)を集める!:
• 営業用の企画書
• 企画内容を容易に連想させる
• 予算や制作期間などのビジネス面の考慮
・制作内容を周知、徹底する!:
• スタッフを招集するための企画書
• イメージ、世界観の統一
決まった仕様があるわけではありません
企画書② -必要な訓練!-
•刺激を受ける!:
•コンテンツを見る、体験する、感じる
•いい表現を覚えこむ!:
•まねをして複製→自分の中で消化、自分のスタイルにする
•実際に書いてみる,作ってみる!:
•反復訓練
•ニーズを把握する!:
•人を説得させる、同意させるために状況を知る
(社会状況、トレンド)
•必要事項を網羅する!:
•見せる!
企画書③ -構成要素-
(1)
(S)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
(9)
タイトル
ゲームのアピールポイントやコンセプト
概要
企画意図
制作内容
制作スタッフ・キャスト
制作費用
制作計画
・決まった書式が存在するわけではありません
収支計画
・必ず全てが含まれるというわけではありません
・見せる人,時期,場所などに応じて
付帯資料
内容を調整すること
企画書③ ー構成要素ー
(1)タイトル
・コンテンツを一言で表す言葉
–企画書の表紙を飾る
• アイデアが集約されたもの
• 造語でもよい
• いいタイトルが浮かばないコンテンツは面白くな
い、特色がない
• タイトルは「商標登録」するのが基本です
–企画が具現化して「商標」をとるまでは「仮」にしてお
きます
(S)ゲームのアピールポイント,コンセプト
• 短い言葉で示せるそのゲームの「ウリ」
• 一部のメジャーシリーズの続編を除き,特徴がないゲー
ムは売れない
• コンセプトが「ぶれる」とゲームも「ぶれる」,そして「こける
」
企画書③ ー構成要素ー
(2)概要
コンテンツの基本情報の一覧
– タイトル
– 原作、脚色、脚本 <氏名,ペンネーム>
– 制作手段 <PS3,DS,テレビアニメ>
– 長さ(容量)
<XX分,DVDXX枚,プレイ時間>
– 内容の分類(形式、タイプ)<RPG,ACT>
– 対象者 <年齢,性別,属性など>
– 利用形態、目標 <放送予定局、会場、など>
– 制作主体者 <製作、原案、制作>
– そのほか企画内容を端的に示す具体的な情報
企画書③ ー構成要素ー
(3)企画意図
•コンテンツを制作する目的と意義
–なぜそのコンテンツを作りたいのか?
–コンテンツを制作することによる効果は
–なぜ、このコンテンツが必要なのか?
–なぜ,売れるとおもうのか?
重要なのは意気込みとロジック
(特にロジックがかけている・・・)
企画書③ ー構成要素ー
(4)企画内容
• コンテンツを構成する要素を紹介
–設定(キャラクタや環境、時代設定,相関関係)
–ストーリー
–デザイン(キャラクタ,舞台)
–フローチャート(ゲームの展開、システム)
• 途中段階のものでもサンプルを提示
• サンプルが作れなければ,他の作品から引用す
るなどして対応(ただし,著作権に注意)
企画書③ ー構成要素ー
(5)制作スタッフ、キャスト
コンテンツ制作におけるスタッフとキャストの役割
–プロデューサ
–ディレクタ
–演出
–撮影者(カメラマン、Cinematographer)
–脚本、脚色
–デザイン
–絵コンテ
–音楽・音響
–キャスト(声の出演なども)
作品に関わる人で収益や品質の向上につながる人は全員
これまでの実績や代表作も入れること!
企画書③ ー構成要素ー
(6)制作費用
•
•
•
•
•
•
場所(賃貸料、建設償却費、設備償却費、光熱費)
機材(購入費、リース費、償却費)
人件費(日当、月給、年棒、出来高、プロジェクトベース)
技術(開発費、メンテナンス費、ロイヤリティ)
運営費(通信費、交通費、資料費、打合せ費)
企画(譲渡費、ロイヤリティ)
• あくまで試算レベル。
–多すぎると企画は不採用、少なければ制作会社は赤字!
• どれぐらいの精度で試算できるか?
・学生時代の企画書では不要になることが多いです
・2年次前期の「表現工程論」で詳細解説します
企画書③ ー構成要素ー
(7)制作計画
制作内容の項目化とそれぞれの詳細を理解し作業のスケ
ジュールを作成する
–それぞれの制作期間と開始時期(スケジューリング)
–関わる人数(スタッフィング)
–使用する機材やスタジオなど
–費用
•スケジュールどおりに作らなければ基本的にダメです
•予備の日とサポートに回れるスタッフを用意する余裕を
企画書③ ー構成要素ー
(7)制作計画(サンプル)
単位:週
1
企画
脚本
デザイン
2
3
4
5
企画・営業
グラフィック
素材制作チーム
脚本
デザイン
(2人)
主要3D制作(6人)
主要モーション収録
(3人+アクター5名)
主要2D制作(3人)
プログラム
チーム
サウンド
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15
α版
β版
追加3D制作(3名)
追加モーション収録
(3人+随時アクタ)
追加2D制作(2名)
コアプログラム作成
(5人)
ビルド,デバッグ(5人)
テーマ音楽製作
(1人)
アテレコ
(2人+声優)
音響制作・MA・ポスプロ
(2人)
完成
企画書③ ー構成要素ー
(8)収支計画
制作全般にわたる支出とコンテンツの活用によって得られる
収益の計画
•支出
–制作費
–宣伝広告費
–運用経費
•収益
・学生時代の企画書では不要になることが多いです
・2年次前期の「表現工程論」で詳細解説します
–一次利用権料
–二次利用権料
–海外展開
–商品化権料
(映画化,テレビ化,攻略本,マーチャンダイジング)
企画書③ ー構成要素ー
体裁のサンプル①
タイトル
1
概要
タイトル: ○○××
原作、脚色、脚本: ○○××
制作手段: CGアニメーション
長さ:120分
内容の分類:SF
対象者:12歳以上
利用形態:劇場公開
制作主体者:
キャラクタ設定
キャラクタの設定(文字)やデ
ザイン(画像)を乗せ登場人物
を紹介する
多い場合は付帯資料に
文字ほか
文字ほか
ストーリ
文章で記述する.シノプシスと
呼ばれる作品のシナリオのあら
すじのような体裁.
いいです
絵
写真
12~13
14~15
回収計画
制作スケジュール
国内販売
テレビ放映
海外販売
海外放映
おもちゃ展開
月 月 月
項目
項目
17
18
様々なビジネス
モデルを想定
4~6
操作系やシステムなどの説明
文章に絵や写真,フローチャート
で記述する.
ゲームの場合はここに
フロー
きちんと枚数をあてる
写真
チャート
こと
ゲームによっては
シンプルでも全く
なくてもよい
制作予算
デザイン費
脚本費
システム開発費
グラフィック制作費
デバッグ費
プレス費
管理費
あくまでも想定で
16
写真
3
10-11
製作体制
原作、脚色、脚本: ○○××
監督:XXXX
音楽:>>△○
開発:XXInc
デザイン:○○
舞台設定
時代背景や世界情勢などコンテン
ツの舞台の設定を記述すること.
絵や写真などを混ぜること
必要があれば枚数は増やすが,
あまり多い場合は付帯資料とする
絵
2
デザイン
7-9
チーム編成の詳細は
企画のあとなので,
想定でいいです
企画意図
文章で記述するが,あまり長く
しすぎないこと.400文字程度
が妥当なところ.
句読点や段落わけをうまく使う
こと.
一文を短くすること
その他設定
メカや環境の設定(文字)やデ
ザイン(画像)を乗せ登場人物
を紹介する
多い場合は付帯資料に
デザイン
4~15は順番が前後しても
よい.それぞれの分量も
可変
19
こちらは厳密に
企画書 その他・・・
• 構成要素が欠けているケースもある
– 特に後半のスタッフや費用,制作計画,収支計画などはプ
レゼンする相手によっては見せないことも・・・
• 企画の採用が確定した段階で再検討する
• 受託制作などでは企画書作成を必要としないケースも
ある
– 制作依頼を受けて作るもの(すでに企画書がある)
• 形式だけにとらわれず目を引く構成にする
– 最終目的は採用されること!