(リスク管理)の理解を深めるために

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Transcript (リスク管理)の理解を深めるために

事故、ヒヤリ・ハット情報の収集・
活用法(リスク管理)の理解を深
めるために
国土交通省 大臣官房 運輸安全監理官室
VERSION
DATE
Ver1.1
01/10/2010
Ver2.1
26/03/2012
Ver2.2
24/04/2013
Ver2.3
03/07/2014
Ver2.4
04/07/2014
REMARKS
スライド12,16,38 修正
事故、ヒヤリ・ハット情報の収
集・活用法(リスク管理)の理
解を深めるために
国土交通省 大臣官房 運輸安全監理官室
引用・転用する場合は出典元を明記のこと
本講義の目的
本講義は、



「リスク管理」とは何かを理解する
「リスク管理」を実施する
輸送の安全に関する担当者の皆様が、
社内でリスク管理に関する説明・教育を行う
際の参考にしていただくことを
目的としています。
3
目 次
1.「リスク管理」とは何か
2.「リスク管理」の必要性
3.「リスク管理」の具体的な流れ
4
安全管理規程の進め方に関するガイドライン上の位置づけ
①経営トップの責務
安全管理体制の構築
②安全方針
③安全重点施策
P
④安全統括管理者の責務
⑤要員の責任・権限
⑥情報伝達及び
コミュニケーションの確保
⑫マネジメントレビュー
と継続的改善の実施
D
A
⑪内部監査
(社内相互チェック)
の実施
C
⑬文書の作成及び管理
⑦事故、ヒヤリ・ハット情報
等の収集・活用
(リスク管理)
⑧重大な事故等への対応
⑨関係令等の遵守の確保
⑩安全管理体制の構築・
改善に必要な教育・訓練等
⑭記録の作成及び維持
5
ガイドライン5.(7)リスク管理
(内容)
事故、ヒヤリ・ハットなどの情報を集
め、事故防止のための対策につな
げるよう活用する取組み
6
リスク管理とは?
 リスク を
管理
 リスクとは?
経済活動ではハイリスク・ハイリターン等
安全活動では危害を対象とした指標
 リスク管理
リスクという指標で管理
事故数管理
体重管理
7
リスクについてもう少し・・
ホームからの転落(視覚障害者)
リスク
優先順位の決定
ホームでの車両・旅客の接触

リスクは変化する
リスクは無くならない
リスクは変化する

リスクの管理が必要


対策の効果
8
運輸安全マネジメント制度制定の起因
ヒューマンエラーに起因する事故・トラブルが多発
(鉄道の例)
●平成17年4月
(航空の例)
列車脱線事故《死者107名、負傷者562名》
(自動車の例)
●平成17年4月
踏切衝突事故《飲酒運転》
●平成17年3月
客室乗務員の非常口扉の操作忘れ
(海運の例)
●平成17年5月
フェリー防波堤衝突 《負傷者23名》
9
危険が発生する原因
危険の発生
外的要因
内的要因
防災
人的要因
ヒューマンエラーの防止
(ヒューマンファクター)
技術要因
信頼性
10
運輸安全マネジメント制度の目的

ヒューマンエラーによる事故を撲滅する。

ヒューマンエラーとは?
ある仕事の中で、人が、与えられた役割を
果たすことに失敗すること
11
ヒューマンエラーの種類と事故防止
「ヒューマンエラー」には2種類ある
うっかりミスや錯覚等により
「意図せず」に行ってしまうもの
(うっかりミス、ぽかミス)
行為者がその行為に伴う「リスク」
を認識しながら「意図的に」行う
狭義のヒューマンエラー
不安全行動
ヒューマンエラーによる事故を防止するためには…
狭義の「ヒューマンエラー」を
極力減少させる人間工学等を
活かしたシステム作り
→システム(設備・手順)でカバー
行為者が「不安全行動」を行わな
いようにする全体の対策
→ 安全文化の確立
12
ヒューマンエラーによる事故の例


思いこみ
イースタン航空機墜落
見まちがい
三河島事故
1972年発生。死者103人
1962年発生。死者160人、負傷者296人
東海村JCO臨界事故

ルール違反
1999年発生。死者2名
東中野駅列車追突事故
1988年発生。死者2名
13
なぜリスク管理をする必要があるのか?(その1)
リスク管理をしないと・・・
★事故の再発
コメット機の連続墜落事故
1953年5月2日発生
乗客乗員43名死亡
1954年1月10日発生 35名死亡
4月 8日発生 21名死亡
コメット機製造会社は消滅
14
なぜリスク管理をする必要があるのか?その2
★大事故の発生
信楽高原鉄道事故
1991年5月14日
上り列車と下り列車が
単線上で正面衝突。
42人が死亡。
15
信楽高原鉄道事故はなぜ起きたのか?
1991年
5月14日(事故当日)
・信楽駅の信号トラブル
・A列車が赤信号で出発
5月3日
・信楽駅の信号トラブル
・A列車が赤信号で出発
4月12日
・行き違い所で信号トラブル
行き違い所
B
A
信楽駅
2002年12月26日 控訴棄却(大阪高裁)
2011年 4月27日 過失割合判決(大阪地裁)
16
リスク管理の効果

リスク管理をすると・・・
☆事故の減少・保険料額の低下
○保険料に対する割引の割合が増大する。
○保険料に対する事故の損害金の割合が減少する。
⇒しかし、効果が出てくるには時間がかかる。
17
事故費と任意保険割引率の経年変化
事
故
費
(
百
万
円
)
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
2005
100
80
60
40
事故費用
20
任意保険割引率
0
2006
2007
2008
2009
2010
任
意
保
険
割
引
率
(
%
)
年度
(バス事業者Aのデータ)
18
貨物自動車運送事業における安マネ対象事業者と非
対象事業者の支払保険金額(同車両台数当り)の変化
1.5
支
払
保 1
険
金
額
0.5
の
割
合
※
安マネ対象事業者
(300両以上)
非対象事業者
(300両未満)
0
※2003年度を
1とした割合
2003 (H15)
2006 (H18)
年度
2009 (H21)
(保険会社データより)
19
リスク管理の必要性:ポイント
事故の再発防止
 事故の予防

支出の減少
 企業の生き残り

※効果が現れるのには時間がかかる
20
リスク管理の流れ
①情報収集
② 情報の分類・整理
⑤ 効果
の把握
事例の
抽出
③ 根本原因の
分析
④対策の検討と実施
⑥リスク管理をするための環境の整備
21
①情報収集:対象
事故
インシデント
人の死傷、重大な物損が
発生
もう少しで事故に結びついた
かもしれない出来事
ヒヤリ・ハット
日常業務の中の
危険
(潜在的リスク)
事故が起きるかもしれないと
思ってヒヤッとした、
ハッとした出来事
(
))
日常業務の中で、事故に
つながるかもしれないと
思った事柄
22
なぜヒヤリ・ハットを集めるのか?
ハインリッヒの法則
1
29
300
事故の未然防止
大事故
中事故
ヒヤリ・ハット
対策
23
①情報収集:内容
資料編(自)p1~
資料編(海)p1~
(1)事故情報
(2)ヒヤリ・ハット情報(例)
自動車モード
・居眠りをしていて前の車に追突しそうになった
・バスが発車しようとしたら急に子供が前を横切った
鉄道モード
・線路に落ち葉がつもっていてブレーキの効きが悪く、
オーバーランしそうになった
海事モード
・海図作業に集中していて漁船が近づいているのに
気づかなかった
24
①情報収集:問題点(1)
資料編(自)p 9 ~
資料編(海)p14~
ヒヤリハットが出てこない
報告が面倒
査定が下がる
・匿名報告
チェックリスト
聴き取り
メールで報告
・査定に影響
しないことを
ルール化・周知
・マイナスイメージ
の名称を使わない
何が「ヒヤリハット」
かわからない
・ヒヤリハットの内容
を根気よく周知する
・ヒヤリハットの具体
例(事例集)を示す
「ヒヤリ」「ハッ」と
しない
プライドが傷つく
「優秀なドライバー
ほどヒヤリに気づく」
安全への感性を
高める教育
25
①情報収集:問題点(2)
報告が続かない
報告数が多くて
対応しきれない
・迅速なフィードバック
報告させるヒヤリハットを
限定する。
・報告者の表彰
(例)
・安全重点施策に関するもの
・報告期間
・報告対象者
・報告のメリハリ
対応する部署を分ける。
全体的な傾向をつかむため
の情報とする。
26
情報収集のポイント・その1
①集める情報にメリハリをつける
・再発防止
・事故情報から十分な情報が
得られる
事故情報が十分
ある場合は・・・
・未然防止
・事故情報だけでは情報不足
事故情報が十分
でない場合は・・・
27
情報収集のポイント・その2
②ヒヤリハットは、集める対象を絞り込む
異なる原因・内容
左折時
居眠り
対自転車
行為類型、原因など別に絞り込む
③ヒヤリハット収集には、工夫が必要
28
② 情報の分類・整理
資料編(自)p14~
資料編(海)p19~
どうやって分類する?
対象
車両(車、バイク、自転車) 人 構造物
道路構造
直線 十字路 T字路 カーブ ・・・
危険状況
走行中 停車中 発車 客扱い・・・
原因
飛出し 信号無視 一旦停止・・・
危険
衝突(正面 接触 追突) 死傷・・・
29
② 情報の分類・整理
(1)項目別に集計
(2)多発する項目に注目
(3)クロス集計
30
資料編(自)p14~
資料編(海)p19~
(1)項目別に集計
項目毎に集計、グラフ化
対象
対象
件数
車両
61
人
構造物
35
4
内訳
自動車
二輪車
自転車
危険状況
危険状況 左折時
走行中
右折時
すれ違い時
発車時
停車時
追い抜き時
その他
件数
18
14
29
構造物
4%
自動車
29%
人
35%
自転車
47%
車両
61%
件数
31
30
19
19
16
7
3
5
追い抜き時 その他
4%
停車時 2%
5%
発車時
12%
すれ違い
時
15%
右折時
15%
二輪車
23%
左折時
左折時
24%
23%
走行中
23%
31
(1)項目別に集計②
項目毎に集計、グラフ化
危険原因
危険原因
飛出し
確認不足
信号無視
道路構造
一旦停止
スピードの出し過ぎ
割込み
その他
計
件数
77
42
24
21
14
7
4
16
205
割込み
2%
スピードの
出し過ぎ
3%
その他
8%
飛出し
38%
一旦停止
7%
道路構造
10%
信号無視
12%
確認不足
確認不足
20%
20%
32
資料編(自)p17~
資料編(海)p22~
(2)多発する項目に注目
事故発生場所
交差点内の事故の相手
自動車
40%
交差点内
40%
カーブ
17%
自転車
30%
直線
17%
交差点内の自転車事故の事故類型
左折時衝突
40%
出会い頭衝突
20%
右折時衝突
25%
交差点での
左折時に
自転車との
衝突事故が多発
33
資料編(自)p18~
資料編(海)p23~
(3)クロス集計①
対象と危険状況の関係は?
自動車
二輪車
自転車
車両その他
歩行者
構造物等
16
14
12
10
8
6
4
2
0
左
折
時
す
れ
違
い
時
走
行
中
停
車
時
発
車
時
右
折
時
そ
の
他
34
(3)クロス集計②
対象と原因の関係は?
40
35
30
25
20
15
10
5
0
自動車
二輪車
自転車
車両・その他
歩行者
構造物等
飛
出
し
確
認
不
足
信
号
無
視
道
路
構
造
ス
ピ
ー
ド
出
過
ぎ
一
旦
停
止
そ
の
他
35
② 情報の分類・整理・ポイント(1)
(1)自社の事故・ヒヤリハットの傾向をつかむ
事故とヒヤリハットの傾向の比較
同じ
事故の再発防止に重点
違う
可能性1:今後事故につながるおそれ
→未然防止対策
可能性2:現場の危険意識に問題?
36
② 情報の分類・整理・ポイント(2)
(2)重要な分類の項目に注意
例)対象 原因 道路構造
危険状況 等
(3)必要な項目を見込んだ情報収集
37
リスク管理の流れ
①情報収集
②情報の分類・整理
⑤効果の
把握
必要な項目を見込んで
情報収集も見直し
事例の
抽出
③根本原因の
分析
④対策の検討と実施
⑥リスク管理をするための環境の整備
38
③ 根本的な原因の分析
資料編(自)p21~
資料編(海)p26~
必要性
・事故の再発防止
・事故は「事象の連鎖」で起きる
長い直線
寝不足
車を運転
深夜帰宅
眠気
ZZ
Z
事故
前方不注意
39
分析する事例の絞り込み
資料編(自)p21~
資料編(海)p26~
全事例の分析は時間・マンパワーの点で困難なことがある
分析する事例を選ぶ
(基準)・発生件数
・影響の大きさ(人身事故、損害額、
社会的影響)
・安全方針・安全重点施策との関係
・ドライバーの共感が得られる
・関係する要素が多い 等
「左折時に自転車と衝突」を選出
40
根本的な原因の分析

根本的な原因(ヒューマンファクター)
 事象の連鎖

HFACS
(The Human Factors Analysis and Classification System)
等
 背後要因分析
要因分析図
 なぜなぜ分析

4M4E
 多面的分析手法、鉄道総研式
等

41
他社事例
ヒヤリ・ハット事例
事故事例
リスク管理
再発防止策
分類・整理
未然予防策
背後要因分析
対策周知
分析
勤務 時刻表 遅延
メンタルヘルス
疾病
年齢
組合
職歴
職場
転勤履歴
処遇
勤続年数
事故経歴
給与
経験
免許・条件
資格
教育履歴
訓練履歴
技術継承(OJT)
技能
高速道路
IC
PA・SA
走路
一般道路
雨
雪
雷
台風
霧
視程距離
整備
交差点
踏切
工事
道路種別
住宅街
市街地
沿線状況
天候
消耗品
装置
バックカメラ
逆光
運転管理
朝日・夕日
夕暮れ
ドライブレコーダー
夜間
デジタルタコグラフ
カーブ
トンネル
路面
渋滞
道路条件
時間要因
環境
アルコールチェッカー
装置
車
人
種類
指示
周囲
判断
法令
規定
その他
違反
違反意識有
不明確
違反意識無
実施不可
失念
忘失
負担過大
無知
誤り
不
安
全
事
象
認識
自動車
稼働状況
不稼働
一部不稼働
稼働
使用不可
使用未熟
分類
対象
不正乗車
飛び出し
事
故
自動車
運転妨害
装着
全車装着
一部装着 通行者
無装備
脱落
未装備
装備予定無し
飛び出し
信号無視
一旦停止違反
急ブレーキ
無謀運転
乗客
走行時移動
装置装備
通行者
乗降客
乗客
対向車
後続車 先行車
動作種別
不備
アルコール
確認
錯誤
基本動作
対応動作
運転支援
追突防止装置
睡眠不足
他者過誤
点検
気象等環境
体調
不足
脱落
保守状況
道路環境
ストレス
疲労
過剰
操作
不整合
過剰
不足
注意力
過誤種別
マニュアル
運行
交替・配車
情報伝達
体調確認
超過勤務
アルコールチェック
勤務形態
点呼
当日勤務
事故発生時間
勤務開始後経過時間
直前休憩時間
休憩後経過時間
休日後経過日数
時間
休暇
勤務時間
職員管理
実行
背景を理解して実行
書いてあることのみ実行
不理解
事例活用
個人管理
本人
指示・マニュアル
管理・経営
被害
信号無視
相手・関係者
物損
人身
死亡
重症
軽症
二輪車
自転車
人
老人
子供
その他
大型
普通車
軽
42
事故分析手法(4M4E)
事故分析手法(4M4E)
Man
エラー1
Machine
(人)
(もの)
Education
(人)
Engineering (もの)
Enforcement (管理)
Media
(環境)
事象2
Management (管理)
Example
(模範)
Environment (環境)
エラー2
時系列分析
要因分析
対策策定
全体の事象の連鎖を把握し、
逸脱(エラー等)を捉える
逸脱を誘発する要因4M
の視点で同定し、なぜな
ぜの視点で掘り下げる
誘発要因への対策を
4Eの視点から策定する
43
資料編(自)p23~
資料編(海)p28~
なぜなぜ分析
事故につながる要因を、順序を追って「なぜ」
「なぜ」と考えることにより、もれなくつかむ分析方法
なぜ1
事故が起こった
のはなぜ?
なぜ2
対策
1-1
1
1-2
事故
2
「なぜ1」が
起こったのはなぜ?
44
事故(なぜなぜ)分析の目的
1.原因究明
・正確な事実関係の把握
・当事者から1対1で情報収集
インタビュープログラム
2.教育・情報共有
・意識付け、情報共有
・グループでの討論
3.分析(過程)の記録
・見直しの容易化
・技術伝承
45
なぜなぜ分析の例(1)
車が左折時に、自転車と衝突。
(事故当時の状況)
・午後9時に事故発生
天候は雨
・ドライバーは、上司に早く
営業所に戻るよう言われた。
・地図を見ながら運転していた。
・自転車がミラーで見えなかった。
・自転車乗りが傘をさしていた。
46
なぜなぜ分析の例(1)
発生した
事故
なぜ1
自転車の発
見が遅れた
なぜ2
なぜ3
地図を見た
新人で道に
不慣れ
あせって
いた
上司に早く帰る
よう言われた
なぜ4
ドライバーの
要因
車両繰りの
都合
夜間
雨
環境要因
ミラーの死角
に入った
ハード面
管理上の
要因
自転車が見
えにくかった
車が自転車
に衝突
車に気づか
なかった
傘を
さしていた
相手側の
要因
47
なぜなぜ分析をするときの留意点
なぜ1
※分析の出発点だが、出すのに苦労することが多い。
※事故に直接つながる出来事
・操作の遅れ・間違い→(ブレーキ、ハンドル)の問題
・気づきの問題
→「相手に気づかない」「気づくのが遅れた」
であることが多い。
なぜ2以降
・分析の視点
①ドライバー本人、②相手、③ハード、④周 囲の環境、⑤安全管理
・自社で対策をたてることがむずかしい事象
(相手の不注意、環境の問題等)
深追いしない
最後にチェック
後ろの「なぜ」と前の「なぜ」が、「~だから」でつながるか?
48
なぜなぜ分析の例(2)
Aはバス停留所に停車し、乗客が乗車した。車
内をミラーで見たところ、乗客が座席に座る動作
をしたので発車した。
そのとき、後ろから来た車がバスの前に割り込
んできたので、強めにブレーキをかけた。このた
め、座ろうとしていた乗客が転倒し負傷した。
(事故当時の状況)
・転倒した乗客(75歳)は、発車時に着席して
いなかった。
・乗客は小柄で、車内ミラーに全身がうつら
なかった。
・事故当時、道路が渋滞しており、ダイヤが
遅れていた。
・A社では、発進時に指差し呼称をするよう
決めていたが、Aは実施していなかった。
・発車直前、Aは乗客に道を聞かれた。
バ
ス
停
A
49
なぜなぜ分析の例(2)
発生した
結果
バス内で
乗客が転倒
した
ドライ
バー本人
の原因①
相手の
原因
②
なぜ1
なぜ2
なぜ3
すでに着席
したと思っ
た①
車内ミラー
で乗客が見
えにくかっ
た③
乗客が着席
していない
のに気づか
なかった①
車内ミラー
の確認が
不十分①
Aが強めに
ブレーキを
かけた①
後方から車が
来るのに気づ
かなかった①
後方ミラー
の確認が
不十分①
乗客が発車
までに着席
しなかった
②
高齢のため
着席に時間
がかかった
②
Aが、乗客
が着席する
前に発車し
た①
なぜ4
ハード面
の
原因③
指差し呼称
をしなかっ
た①
50
なぜなぜ分析の例(2)
発生した
結果
なぜ1
なぜ2
なぜ3
なぜ4
発車の時の
手順が中断
した①
発車する
とき乗客に
声をかけら
れた④
周囲の環
境の原因
④
乗客から
クレームが
でる④
接客マニュ
アルがない
⑤
後続車、交
替相手に迷
惑がかかる
④
運行調整の
手順が明確
でない
⑤
Aが指差し
呼称するの
を忘れた①
ダイヤが遅
れて焦って
いた①
指差し呼称
をしなかっ
た①
定時運行へ
のこだわり
がある①
管理上の
原因⑤
Aが指差し
呼称を省略
した①
51
③ 根本的な原因の分析:ポイント

原因を考える視点:
① ドライバー本人
② 相手
③ ハード面
④ 周囲の環境
⑤ 安全管理

「本人の不注意」は、なぜ起こったのか?
52
対策を取る原因の絞り込み(1)
ドライバー本人の原因
・知識不足
基準
安全管理上の原因
・
事
・
対・
対・
結故
策策果に
のをのつ
有取重な
効る大が
性容性る
可
易 能
等性
性
(
費
用
、
人
員
)
・配車の方法
の問題
ハード面の原因
・ミラーで確認できる範囲
が限定的
環境面の原因
・雨・夜で周囲が見えにく
い
相手の原因
傘をさしていたので、
自動車が見えなかった
・事故につながる可能性
が高い
・自社で有効な対策がた
てられる
補助ミラーの設置に関し
予算措置が可能?
自社での有効な対策が
難しい
53
対策を取る原因の絞り込み(2)
ドライバー本人の原因
員
)基準
・指差し呼称なし
安全管理上の原因
・接客マニュアル、運行調
整手順の整備
ハード面の原因
・車内ミラーの死角
・
対
策
の
有
効
性
等
環境面の原因
・乗客に関する環境
相手の原因
・高齢
・
対・
結・
事
策果故
をのに
取重つ
る大な
容性が
易 る
性 可
能
(
費 性
用
、
人
・事故につながる可能性
が高い
・自社で有効な対策がた
てられる
ミラーの改良に関し
予算措置が可能?
自社での有効な対策が
難しい
54
対策の立て方、留意点
資料編(自)p34~
資料編(海)p44~
①ドライバー本人の原因
※「エラー」の内容に応じた対策
うっかりミス
・「注意喚起」だけでは防げない
→ミスが起きる根本原因への対策
・何に「注意」するのかを具体的に
ルール違反
55
「注意喚起」だけでは防げない
(1)「不注意」の背後には・・・
①疲労
②慣れ
④あせり
③気のゆるみ
⑤注意の1点集中
(2)人の能力の限界
記憶力の限界
56
「ルール違反」への対策
ルール違反をする
理由
① ルールを知らない/
理解していない
② ルールに納得してない
・守らなくても危険・不利益はない
・守ったらデメリットが大きい
③ みんなも守ってない
対策
・ルールの周知
・ルールの教育
(内容、理由の理解)
・物理的に違反を
できなくする
・ルール違反をしないよ
うにする動機付け
(ルール遵守のメリット、違反
のデメリットを明確にする)
57
②相手の原因への対策
資料編(自)p47~
資料編(海)p56~
(1)相手がルール違反しても、
自分にできることは何か?
意識の喚起→例)裁判例の活用
(2)相手への働きかけ
例)相手となる周辺住民への働きかけ
(講習会の実施等)
バスの死角
はどこ?
58
③ハード面の原因への対策
資料編(自)p49~
資料編(海)p58~
○車両の構造や機能(故障含む)などのハード面に、
事故の原因
○カーナビ、センサーのようにドライバーの運転を助け
る装置があれば防げた事故もある。
・設備導入の目的を明確に
・現場の理解
59
④環境面の原因への対策
資料編(自)p50~
資料編(海)p59~
○周囲の環境が、事故等の原因
例)柱、看板などの構造物があり歩行者が見えにくい。
○危険個所の周知
例:ハザードマップ
○環境改善への働きかけ
例:場所の管理者に改善を求め協議する
60
⑤安全管理上の原因への対策
資料編(自)p51~
資料編(海)p60~
①本人 ②相手
③ハード ④環境
全ての原因に関係
管理の立場からできる
ことはないか?
よい状態を続けることは永遠の課題
61
リスク管理の流れ(①~④ができた事業者の方は)
① 情報収集
⑦ 輸送現場に
潜在する
危険の掘り起こし
② 情報の分類・整理
⑤ 効果
の把握
事例の
抽出
③ 根本原因の
分析
④ 対策の検討と実施
⑥ リスク管理をするための環境の整備
62
潜在する危険の掘り起こし:対象
資料編(自)p74~
資料編(海)p83~
人の死傷、重大な物損が
事故 発生
インシデント
もう少しで被害に結びついた
であろう出来事
ヒヤリハット
日常業務の中の
危険
被害が起きるかもしれないと
思ってヒヤッとした、
ハッとした出来事
日常業務の中で、被害に
つながるかもしれないと
思った事柄
63
潜在する危険の掘り起こし:イメージ
64
潜在する危険の掘り起こし

現場での掘り起こし
 運用段階
 実践的発掘
 現場知識(ヒヤリハット等リスク情報)の活用


ハザードマップ
等
机上での掘り起こし
 設計段階
 論理的発掘
 工学的手法(信頼性分析等)の活用
FMEA
 HAZOP

等
65
潜在する危険の掘り起こし:ルート、手順が決まっている場合
(1)ハザードマップ(資料編p78)
ヒヤリ・ハット発生場所
(病院前で高齢者の
通行が多い)
事故発生場所
(商店街で歩行者の
乱横断が多い)
掘りおこし
(事故発生場所と
同じ状況)
駅
卍
掘りおこし
(高齢者が多く集まる
施設(寺院))
掘りおこし
(ヒヤリ・ハット
発生場所と
同じ状況)
66
潜在する危険の掘りおこし:ルート、手順が決まっていない場合
資料編(自)p81~
資料編(海)p89~
 対策の水平展開(1)
個別の事故に対する対策
対策の水平展開
事故を起こしたドライバー
に対して、事故が起きた
場所の地理を教育する
新人ドライバー全員に対し
て、地理が複雑な箇所のルー
トを教育する
67
潜在する危険の掘りおこし:ルート、手順が決まっていない場合
 対策の水平展開(2)
個別の事故に対する対策
対策の水平展開
事故が起きた当該ルート
の配車(ダイヤ)を見直す
自社のルート全体について
到着やダイヤの遅延が起こっ
ているルートをチェックし、
配車等を見直す
68
潜在する危険の掘りおこし:ルート、手順が決まっていない場合

危険予知訓練
資料編(自)p82~
資料編(海)p90~
69
潜在する危険の掘りおこし:ルート、手順が決まっていない場合
 危険予知訓練(2)
70
潜在する危険の掘りおこし:ルート、手順が決まっている場合
資料編(自)p79~
資料編(海)p87~
(2)FMEA (Failure Mode and Effect Analysis)
手順1
作業の手順を整理
手順2 各手順で起きうるエラーの洗い出し
手順3
対策の必要性を評価
71
FMEAの例
エラーの結果
原因
発生
可能
性
影響
の
大き
さ
対策
の
必要
性
1
3
3
作業内容
言葉の組合せ
アルコール
チェック
①忘れる(アルコールチェックをし
忘れる)
②不確実な動作(アルコールチェッ
クの操作が不確実)
飲酒運転(によ
る事故)
・手順の無理解
・意図的なルール違
反
車両点検表
による始業
点検
①不正確な動作(必要な点
検項目をとばす)
②見落とし(点検中に問題
のある箇所を見落とす)
・車両トラブル
による遅延
・事故の発生
・うっかりミス
・点検手順の不具
合
・点検手順の教育
の問題
1
2
2
始
業 安全事項
点 の確認
呼
①忘れる(安全事項の確認
を忘れる)
②不正確な動作(確認すべ
き安全事項の内容の誤り)
・安全に関する
対策の不徹底
・事故の発生
・うっかりミス
・知識不足
・管理職の教育の
問題 等
3
2
6
出庫
①時間の間違い(出庫時間
を間違える)
②方向の間違い(ルートを
間違える)
早発・遅延によ
る旅客クレーム
の発生
・うっかりミス
・出庫に至る手順
の問題等
1
2
2
※発生可能性、影響の大きさ⇒大:3、中:2、小:1
72
潜在する危険の掘りおこし:ルート、手順が決まっている場合
(3)HAZOP(Hazard and Operability Analysis)
作業と、正しい状態からのずれを表す言葉(ガイドワード)を
組み合わせて、潜在的な危険を掘り起こす。
ガイドワードの例
強さ
強く
そっと
速さ
急いで
ゆっくり
程度
余分に
不十分に
方向
反対に
他に
前後
前に
後に
73
HAZOPの例
例:バス停車
本来の作業
ガイド
ワード
エラーの内容
想定される
事故等
左側方の
安全確認
+ 早い
=
飛び出し自転車
への注意不足
自転車との
接触
ウィンカー
を出す
+ 遅い
=
直前の
停止意思表示
バイク等の
後方側面接触
ブレーキを
かける
+ 強い
=
急激な減速
車内転倒
後方追突
74
リスク管理の流れ(①~④ができた事業者の方は)
① 情報収集
⑦ 輸送現場に
潜在する
危険の掘り起こし
② 情報の分類・整理
⑤ 効果
の把握
事例の
抽出
③ 根本原因の
分析
⑧ 対策を取る危険の
絞り込み
(リスクの評価)
④ 対策の検討と実施
⑥ リスク管理をするための環境の整備
75
対策を取る「潜在する危険」の絞りこみ
資料編(自)p84~
資料編(海)p92~
その危険が起きる
可能性の大きさ
事故が起きたときの
影響の大きさ
76
リスクとは
その危険が
発生する
可能性の大きさ
事故が起きた
ときの影響の
大きさ
リスク
交差点の出会いがしら衝突(自転車)
車内の転倒事故
77
組み合わせの例
可
能
性
ひんぱん
たまに
B
C
B
B
A
A
まれに
C
小
C
中
B
大
重大性
A:最優先
B:Aの次に対策を策定・実施
C:費用対効果がよければ対策を立てる
そのままリスクを保有することも
78
リスク評価:事故事例
①
左後方(死角)から自転車が道路を横断する

②
年間15件発生
後退時に周囲の車を見落とす
 年間2件発生
③
四輪車の割り込み
 年間1件発生
79
危険が発生する可能性の大きさ
定性的な表し方(例)
定量的な表し方(例)
ひんぱん
1ヶ月に1回以上発生
たまに
半年に1回以上発生
まれに
1年に1回以上発生
(例)1年あたりの平均発生件数
① 左後方(死角)から自転車が道路を横断する・・・15件
→ひんぱん
② 後退時に周囲の車を見落とす・・・2件
→たまに
③ 四輪車の割り込み・・・1件
→まれに
80
危険が起きる可能性の大きさ
(参考)ヒューマンエラーの発生確率
作業の内容
エラーの発生率
表示灯の警報を見逃す
1万回に1回
2つ以上の隣り合ったバルブから
誤ったバルブを選択する
アナログメーターを読み間違える
200回に1回
1000回に3回
出典:林喜男「人間信頼性工学ー人間エラーの防止技術ー」海文堂より
81
事象が起きたときの影響の大きさ
レベル
基準
特大
大
中
小
車体の大破、 車体の損傷 車体の軽微
火災発生
な損傷
死者発生
死者なし
軽傷者のみ
重傷者多数 重傷者少数
その他
・信用の低下
・逸失利益の大きさ
・安全方針・安全重点施策 との関係
82
事象が起きたときの影響の大きさ
先の例で・・・
① 左折時に後方からきた自転車を巻き込む事故
特大(死者発生の可能性)
② 後退時に四輪車に衝突
小(軽微な物損の可能性)
③ 四輪車の割り込みによる接触事故
中(車体の中破の可能性)
83
組み合わせの例
可
能
性
ひんぱん
たまに
B
C②
B
B
A
A
A①
A
まれに
C
小
C③
中
B
大
A
特大
重大性
A:最優先
B:Aの次に対策を策定・実施
C:費用対効果がよければ対策を立てる
そのままリスクを保有することも
84
リスク管理の流れ(①~④ができた事業者の方は)
① 情報収集
⑦ 輸送現場に
潜在する
危険の掘り起こし
② 情報の分類・整理
⑤ 効果
の把握
事例の
抽出
③ 根本原因の
分析
⑧ 対策を取る危険
の
絞り込み
(リスクの評価)
④ 対策の検討と実施
⑥ リスク管理をするための環境の整備
85
リスク管理のための環境整備
1.経営トップが必要性を理解
2.経営トップが積極的に取り組む
3.自社の現状を把握する
(資料編(自)p52、p59)
(資料編(海)p61、p68)
4.情報伝達の確保
5.従業員との目的意識の共有
(資料編(自)p67)
(資料編(海)p77)
6.見直しと改善
86

ご静聴ありがとうございました。
87