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教養の化学
第5週:2013年10月21日
担当
杉本昭子
先週のまとめ
1. 原子は原子核(陽子と中性子)と電子で構成されている。
2. 原子には陽子数が同じで中性子数が異なる同位体が多数存
在する。一部、放射能を持つ放射性同位体が存在する。
3. 放射能は原子核反応(放射性崩壊)で生成する。
4. 原子核同士の反応(核分裂、核融合)では非常に大きなエネル
ギーが放出される。
5. 元素を原子番号順に配列すると元素の物理的、化学的性質が
一定の周期性で変化する(周期律)。
6. 元素を原子番号順に配列し共通した性質を持つ元素が縦の列
に来るように並べた表を周期表という。
先週のまとめ(続き)
7. 原子の化学的な性質は、電子の数と配置で決まる。
イオンになりやすい原子、分子を作りやすい原子、
金属結合を作る原子などが周期表からわかる。
8. イオン化エネルギーが小さい原子は陽イオンになり易い。
9. 電子親和力が大きい原子は陰イオンになり易い。
10. 周期律が生じるのは原子の価電子数が周期的に変化するた
めである。では価電子とは何か?ということで電子の配置を考
える必要が出てきた。
11. 電子は量子化された電子殻のどこかに必ず存在する。電子殻
の番号は、周期表の周期(横の番号)に相当する。価電子とは
最外殻の電子のことである。(価電子数=最外殻電子数)
物質の構成(2)補足
 覚えるべき元素の種類と元素記号
教科書p27に記載
 化学式 (教科書p25)
イオン式・組成式
分子式
構造式
示性式
物質の構成(2)補足
イオン式
原子がイオンになる時、受け渡した電子の数をイオンの価
数と言い、価数が1、2、3・・・・のことを1価、2価、3価…と
呼ぶ。イオンは元素記号の右上に書き添えたイオン式で表
される。
アルミニウムイオン
塩化物イオン
1価(1は省略)
3価
Al3+
陽イオン
Cl-
陰イオン
物質の構成(2)補足
組成式
物質を構成する原子(原子団)の数を最も簡単な整数比
で示した化学式
Na+
Cl-
Ba2+
OH-
陽イオンを先に書く
NaCl
Ba(OH)2
水酸化バリウ
ム
名称は陰イオンから読む
塩化ナトリウム
多原子イオンが複数になる時は( )でくくり右下に数字を添える
物質の構成(2)補足
分子式
分子や分子でできた物質は、分子を構成する原子
の種類と個数を示した分子式で表される
構成原子の種類を元素記号で
原子の数を右下に
H2O
1は省略
有機化合物の場合は、先ずC,次にH,その後はアルファベット順と
いうルールで書く
グルコース= C H O
6 12 6
物質の構成(2)補足
示性式
分子式の中から化合物の特性を占める原子
団、特に官能基を選び出して、分けて明記し
たCH3OHのような化学式を示性式という。
分子式の場合はCH4O
物質の構成(2)補足
少し問題を解いてみよう!
陽イオンとしてカルシウムイオン、陰イオンとして
(a)~(d)のそれぞれ1種類を含むイオン結晶の組
成式と化合物名をこたえよ。
a.
b.
c.
d.
ClOHCO32PO43-
CaCl2
塩化カルシウム
Ca(OH)2 水酸化カルシウム
CaCO3
炭酸カルシウム
Ca3(PO4)2 リン酸カルシウム
教科書p29参照!
物質の構成(2)補足
次の表の空欄を埋めよ
元素名
ホウ素
マグネシウム
硫黄
コバルト
原子番号
5
12
16
27
元素記号
10
5B
陽子数
5
中性子数
電子数
5
5
質量数
10
24
12M
g
32
16S
60
27C
o
12
12
16
16
27
33
12
16
32
27
60
24
教科書p31参照!
教科書p30例題2の解答にミスプリントあり。
37
17
Cl
電子配置と元素の
周期的性質(1)
第5週講義
電子殻、電子の軌道、電子の収容方法
原子の電子配置
電子は、原子核の周りを猛烈なスピードで動き回
っている。但し、電子殻とよばれる量子化された
空間のどこかに必ず属している。その空間とは?
電子と電子殻と周期律の関係
電子
電子殻
K、L,M・・殻を n=1, 2, 3・・n とする。
n は周期表の周期に該当する。
最外殻に存在する電子を価電子と言う周
期表の族は、価電子数が共通している。
電子と電子殻と周期律の関係
n=1
2
3
・
・
最外殻に存在する電子を価電子と言う周
期表の族は、価電子数が共通している。
n は周期表の周期に該当する。
電子と電子殻と周期律の関係
量子数
n=4
n=3
各電子殻(K, L, M…)をn=1, 2, 3…nと
正の整数に置き換える。この整数nを
量子数という。
n=2
 各電子殻の距離半径は an2 とな
る。
 各電子殻に存在する電子のエネル
ギーは-b/n2
 各電子殻の最大収容電子数は2n2
a, b は正の定数
原子の電子配置
原子モデルの変遷
Niels Bohr
J. J. Thomson 1903年
1913年
Plum-pudding model
長岡半太郎
1904年
Ernest Rutherford
Saturnian model
1911年
電子はある一定の軌道だけに存在する
=電子はある一定のエネルギーだけ持ち得る
電子殻と原子軌道
現代の概
Werner
念 Hisenberg : Bohrの考えを基本に確率論的な見方を加える
光速に近い速さで動き回る電子の位置を正確には表せない。
そこで確立論を導入→不確定性原理へと発展
電子の空間での位置と運動量(質量X速さ)とは同時には決定で
きない!
軌道とは
軌道の概念が誕
生!
一定のエネルギーを持つ1つないし2つの電子が占める空間領域
電子の存在確率が高い空間領域
電子殻と原子軌道
軌道の概念
Erwin Schrodinger(1926年)の波動関数
・・
負電荷を持つ電子が正電荷を持つ原子核の近くにある状態を波
動方程式で表現した。電子が粒子と波動の性質を併せ持つこと
を示し、方程式の解は波動関数(wave function)と呼ばれΨ(プ
サイ)で表わされる。
原子が結合して分子が生成すること、それらの分子がおこす
様々な化学反応も、基本的には軌道にある電子の相互作用に基
づいている。
原子では原子軌道(atomic orbital)
分子では分子軌道(molecular orbital)
原子軌道と量子数
粒子と波動の二重性(Wave–particle duality)
二重性の考え方は、すべての物質やエネルギーは、粒子的な性質
と波動的な性質の両方を持つというもの。
二重性の性質は、素粒子だけではなく、原子や分子といった複合粒
子でもみられる。
シュレディンガー(Schrodinger) 波動関数
シュレディンガーは波動性と粒子性とを合わせて表現する方程式を
生み出し、電子などのミクロな粒子を記述する式を提案した。
波動関数(Ψ)で、
1、粒子(電子)の存在する確率
2、粒子(電子)のエネルギー状態
を知ることができる。
電子殻と原子軌道
波動関数の根拠は・・・
原子は粒子であると同時に波動(波)の性質を持
つ
光子(Photon)は光を含むすべての電磁波の量
子状態を表し、粒子と波動の二重性を示す。
電子殻と原子軌道
外部からエネルギーを受けると水素原子は励起状態になる。
電子殻と原子軌道
励起状態にある原子は、光子(フォトン=Photon)を出してエネルギー
を解き放ち安定な原子に戻る。
電子殻と原子軌道
励起状態にある水素原子が安定な水素原子に戻る様子をエネルギー変化で表
す
電子殻と原子軌道
原子の発光(線)スペクトル
水素原子の光:光子(Photon)の色と波長
 元素を加熱すると発光し、それをプリズムで分光すると各元
素に特有の数本の色の線となって表れる。
 つまり原子は加熱(励起状態に)すると各原子に特有の波長
をもつ光を放射することがわかる。
Photonは光と同じ波動の性質を持つ素粒子
電子殻と原子軌道
つまり、原子は、粒子と波動の性質を併せ持つ。
原子核の周りを動き回る電子の状態は、波動関
数で表すことができる。
波動関数を用いると、電子の存在確率の高い空
間領域を軌道と呼ばれる特定の形で表せる。各軌
道には量子化学的に決められたエネルギー状態
と、形が存在する。
難しい話はこの辺にして…原子の構造をもう少し
細かくみてみましょう!
電子殻と原子軌道
軌道
電子殻を詳しく見ると、
幾種類かの軌道から構成
されているのが分かる。
K殻は1s軌道のみ
L殻は2s軌道と2p軌道
M殻は3s、3p、3d軌道
各軌道の前の数字は殻の
量子数を表わす。
各軌道は全て量子化されている。
電子殻と原子軌道
電子雲
電子殻から構成
•原子核からの距離(半径)は量子化されていて
(とびとびの値をとる)固有のエネルギーを持つ。
•名前がついている。
•各電子殻に入る電子の数は限られている。
電子殻
亜殻(軌道)から構成
K殻は1s軌道、
L殻は2s軌道と2p軌道
M殻は3s、3p、3d軌道
各軌道の前の数字は殻の量子数を表わす。
同じ電子殻に属する軌道でも軌道ごとにエネルギーが
異なり、s<p<dの順に高くなる。
各軌道には最大で2個の電子が入る。
電子殻と原子軌道
電子殻と軌道の関係(エネルギーと電子数)
各軌道には2個づつ電
子が向きを変えて入る
電子殻と原子軌道
軌道の概念が電子殻に入る電子の数を規定している。
軌道の数、形、エネルギー順位を決めているの
は?
各軌道は量子化されている空間で、軌道に属する1つ1つの電
子は、その軌道のエネルギーを持つ。電子の量子数が同一のも
のはない! 軌道は4種の量子数で規定される。
原子核からの距離
形をもつ
方向
電子の自転のむき
主量子数
方位量子数
磁気量子数
スピン量子数
原子軌道と量子数
シュレディンガー方程式を解く
シュレディンガー方程式を解くと、波動関数の中に整数が
入ってくる。
これらの整数は、量子数と呼ばれる。
量子数を決めると、波動関数ΨとエネルギーEが決まる。
原子の電子配置:原子軌道
1.
主量子数nは原子核からの距離に関係。
整数値1, 2, 3,・・n をとりうる。 nは電子殻(k殻、L殻・・)に相当
2.
方位量子数 l(エル) は軌道の形に関する。
主量子数nの値に依存する。 0からn-1までの整数値をとりうる。
0=s軌道、 1=p軌道、 2=d軌道、 etc.
3.
磁気量子数 ml は空間での軌道の向きに関係。
方位量子数 lの値に依存する。整数値 0,±1, ± 2, ・・・ ± l(エル)
をとりうる。 同じエネルギーを持つ軌道の数に相当する。
s軌道=1個、p軌道=3個、d軌道=5個
4. スピン量子数s は電子の自転する向きに関係。
±1/2のいづれかの値をとる。 ↑↓
原子軌道と量子数
軌道の概念
1)主量子数nは整数値n=1,2,3,・・・をとりうる。
主に電子の原子核からの距離に(電子のエネルギー)に関係する。
nが大きくなるにつれ電子の原子核からの平均距離は大きくなり、したがって
そのエネルギーも大きくなる。原子中で最大のエネルギーを持つ電子の主量
子数により、その原子が周期表で占める行(周期)で決まる。
最高エネルギー電子の主量子数(n)
n
H
He
1
Li
Be
B
C
N
O
F
Ne
2
Na
Mg
Al
Si
P
S
Cl
Ar
3
原子軌道と量子数
球形、8字形など
2)方位量子数l は軌道の形に関するものでn(主量子数)の値
に依存する。
0,1,2,3,・・・(n-1)のように0からn-1までの整数値をとりうる。
nとlの関係
n=1では、l は 0のみ(s)
n=2では、l は 0 と1(sとp)
n=3では、l は 0 と1 と 2
(sとpとd)
原子軌道と量子数
3)磁気量子数ml は空間での軌道の向きに関係し、l(方位量子数)
の値に依存する。
整数値 0,±1, ± 2, ± 3,・・・ ± l をとることができる。
n,l, mlの関係
s軌道は1個
p軌道は3個
d軌道は5個
原子軌道と量子数
4)スピン量子数s は電子の自転する向きに関係。
±1/2のいづれかの値をとる。
スピンの向き
以上をまとめてみると、それ程複雑ではない!
n=1,2,3における量子数の可能な組み合わせ
電子殻と原子軌道
電子殻
軌道
軌道:4種
n=4(N殻)
軌道:3種
n=3(M殻)
軌道:2種
軌道:1種
n=2(L殻)
n=1(K殻)
電子殻と原子軌道
軌道の種
類
軌道:s、p、d、f
軌道:s、p、d
軌道:s、p
軌道:s
s軌道
p軌道
d軌道
f軌道
n=4(N殻)
n=3(M殻)
n=2(L殻)
n=1(K殻)
電子殻と原子軌道
軌道の種類と数
s軌道=1個
p軌道=3個
d軌道=5個
f軌道=7個
電子殻と原子軌道
まとめてみると・・・
主量子数nは電子殻を決めている。
主量子数n(電子殻)がきまると
電子軌道の形(s, p, d, f・・・)と
組合せが(s: s,p: s,p,d・・・)がきまる。
軌道の形(s, p, d, f・・・)がきまると
同じエネルギー準位の軌道の数がきまる。
s=1個 p=3個 d=5個 (*縮退)
各軌道には最大2個の電子が収容される。
原子の電子配置:軌道のかたち
1s軌道
1s軌道の断面図
2s軌道
動径確率密度とrのプロット
2s軌道の断面図
原子の電子配置:軌道のかたち
2p軌道
1つずつ示したもの
3つを組み合わせたもの
化学反応時に重要
な意味を持つ!
原子の電子配置:軌道のかたち
3d軌道
4f軌道
原子軌道と電子配置
電子殻、軌道、エネルギー
原子軌道と電子配置
水素原子(1電子)の軌道エネルギー
原子軌道と電子配置
再び水素原子のスペクトル
水素原子が励起されてn=2の状
態に遷移する時に放出される
光のスペクトル(バルマー系列
の線スペクトル)
n=1の基底状態に戻る時のスペク
トル(紫外領域なので見えない)
原子軌道と電子配置
多電子原子の軌道エネルギー
主量子数が同じならエネルギー準位は同じだが、多電子の
場合は電子同士の反発のため、差が生じる。
原子の電子配置:軌道のかたち
いろいろな原子の模型図と電子配置
(HとHe以外では1s電子
は点で示していない)
電子の収容方法
ルールに従い、電子を軌道に入れて行くと、簡
単にどのような原子でも、その電子配置を表す
ことができる。
原子軌道と電子配置
電子が軌道へ入るルール
i. エネルギーの低い軌道から順に入る。
ii. 1つの軌道には最大2個まで入る
iii. 1つの軌道に2個電子が入るときには、スピンの向きは反対で
なければならない。(パウリの理論:Pauli principle)
iv. エネルギーが同じ複数の軌道に電子が入るときには、スピン
の方向を同じにした方が安定である。(フントの規則:Hund’s
rule)
ルールに従い原子の電子配置を書くことができる!
構成原理(Aufbau principle)
原子軌道と電子配置
パウリの原理:Pauli principle
1つの軌道に2個電子が入るときには、スピンの向きは反対で
なければならない。すなわち、どの2つの電子も4種の量子数
の全てが同じになることはない。
2px
2s
1s
2py
2pz
原子の電子配置:原子軌道
電子配置を書いてみよう!
第1の電子
n=1, l=0,ml=0,s=+1/2
第2の電子
n=1, l=0,ml=0,s=-1/2
フントの法則
6Cは?
原子軌道と電子配置
フントの規則:Hund’s rule
ある一つの電子配置に対しては、平行スピン数が最も多い
電子状態が最もエネルギーが低い。
(2個の電子が同一スピン(平行)であれば、同じ軌道を占め
ることができないから、互いに離れるため)
原子の電子配置:原子軌道
電子配置を書いてみよう!
第2周期の残りの原子の電子表示の例
p軌道をまとめて書く例
1s22s22p2
1s22s22p6
電子の数が表示されていることになる。
原子軌道と電子配置
遷移元素の誕生理由
エネルギー順位と軌道の関係
3dと4sから遷移が始まる
演習
1. 次の原子のうちから、(第1)イオン化エネルギーの最も小さいも
のと、最も大きいものを選び、それぞれ元素記号で書きなさい。
Si, Cl, Al, Na, P, Mg, Ar, S
2. 周期表で第3周期にあたる12Mgから18Arまでの電子配置を書き
なさい。
書き方: 11Na1s22s22p63s