REFERπ0生成実験 - クォーク物理学研究室

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Transcript REFERπ0生成実験 - クォーク物理学研究室

鉄核媒質中の閾値近傍における
中性π中間子生成実験
クォーク物理学研究室
坂田博和
研究目的
 中性π中間子の閾値近傍(≒135MeV)にお
ける生成断面積測定
 π0の生成閾値近傍における生成過程は完全に
理解されていない。
• 核媒質中で生成されたπ0の質量測定
• 核媒質中のように周囲の密度が高い環境下で
π0を生成し,カイラル対称性の部分的回復に
よる質量変化の観測。
中性π中間子(略して π0)
電荷: 0
質量 : 135 MeV/c2
寿命 : 8.7×10-17秒
測定原理
γ
e-
A
π0
π0
γ
150MeV電
子線を入射
π0 が生成
π0 が2γに崩壊
 150MeV電子線を標的に入射しπ0を生成
+ A → e- + A + π0
 崩壊光子のエネルギーを測定し、π0イベント
を検出
 e-
 π0
は寿命8.7×10-17秒で約99%で2γへ崩壊
 π0 はほぼ静止しているため、正反対方向へ約
67.5MeVの2γを放出
背景
標的(黒鉛)
電磁カロリーメーター
電子ビーム



1アーム
3×3配置 9本組み
電磁カロリーメーター
昨年度、広島大学VBL内にある超高速電子周回装置の
150MeV電子引出しラインに於いてπ0生成実験を行った。
結果、150MeV電子線と核子の間において
σ(e-, N)=0.07±0.04μb
が得られた。
課題


統計量不足
バックグラウンドイベントをシミュレーションより見積もり
本実験の改良点

標的(黒鉛)
3×3
9本組み4アーム
統計量 2倍
 バックグラウンド測定

変更

標的に 1×1×2cm の鉄

統計量
6倍
標的(鉄)
バックグラウンドの見積
もり
約12倍の統計量
実験方法
鉛ブロック
シンチ2,3
8mmコリメーター
ビーム出射口
暗箱
シンチ1
シンチ4
電子ビーム
800mm
 コリメーターで8mmにビームを絞る
 電子ビームがシンチ1,2,3を通過したことを要求
鉄標的へ約1.3kHzの頻度で1.3×105秒間照射した
データ検証
 欲しいイベント
 π0
生成イベント
 π0 バックグラウンドイベント
 π0
が生成したイベントは2アームのみヒット
上
右
 二つのアームにだけヒット
したイベントが解析対象
左
下
 上と下、右と左
 上と右、右と下、下と左、左と上
計6通り
上と下アームにだけヒットしたイベント
 上アームと下アームのエネルギー分布とその
相関図。
 赤枠が、π0イベントと考えられるエネルギー範囲
上アーム
下アーム
[MeV]
[MeV]
各組み合わせにおける、2アームの
エネルギー相関 (フルスケール150MeV)
上(縦軸):下(横軸)
右:左
上:右
下:左
右:下
左:上
イベント選択
シンチ 2, 3
ビーム出射口
シンチ 1
シンチ 4
飛行時間分布(シンチ3を基準)
横軸:粒子の飛行時間
縦軸:イベント数
シンチ1
シンチ2
シンチ3
シンチ4
シンチ1
シンチ2
シンチ3
シンチ4
イベント選択 –2アームの反応時間差カット
 π0 イベントでは、
2γが同時に2つのアームへ入射
⇒ 2アームは同時に反応
上と下アームにだけヒットしたイベント
における、上と下アームの反応時間差
カット後の、各組み合わせにおける2アームの
エネルギー相関 (フルスケール150MeV)
上(縦軸):下(横軸)
右:左
上:右
下:左
右:下
左:上
π0 イベント数
組み合わせ
イベント数
π0(like)イベント
上 と 下
522
1
右 と 左
1171
2
上 と 右
1197
0
右 と 下
2177
3
下 と 左
1473
13
左 と 上
811
0

以上より
16 

3   1693 
0
5658 

となりπ0は検出されなかったと考えられる
1693イベント中
3イベント
5658イベント中
16イベント
π0 生成断面積の上限値
入射電子線のフラックス
標的中の核子数
F = (1.329±0.139) ×103 cm-2s-1
N = 9.44×1024 cm-2
検出効率
全測定時間
eff = 3.55 % (シミュレーションより)
t = 1.304 ×105 s
検出された事象数が 0 の時、
期待される事象数の真値は90%の信頼性で2.44以下


 (e , N ) 
2 . 44
 0.043  0.004  b
t  N  eff  F
(信頼性90%)
結論

4アーム電磁カロリーメーターにより、π0に対す
るバックグラウンドの見積もりが可能となった。

150MeV電子線と鉄標的の反応において、電子と
核子の間におけるπ0の生成断面積の上限値
0.043±0.004μb(信頼性90%)を得た。
終
わ
り
π0 イベント数
組み合わせ イベント数 π0(like)イベント
上
と
下
522
1
右
と
左
1171
2
上
と
右
1197
0
右
と
下
2177
3
下
と
左
1473
13
左 と 上
811
0

以上より
0 

2   1171 
2
2008 

より、π0生成断面積 0.034±0.025μb
1171イベント中
2イベント
2008イベント中
0イベント

GEANT4シミュレーションにおいて、本実験セットアッ
プで同じ測定条件(4.0MeVのトリガー閾値) を課した場合
の、向かい合ったアーム全体に落とすエネルギー分布の
相関
PWO

組成式 : PbWO4
PWO
短い放射長と Moliere半径
高細分化可能な
電磁カロリーメータ !!
20cm
崩壊時間
光量
[cm]
Moliere 半径
[cm]
[ns]
[NaI比]
8.28
0.89
2.2
5~15
0.01
BGO
7.13
1.12
2.4
300
0.15
NaI(Tl)
3.67
2.59
4.5
250
1.00
CsI(Tl)
4.53
1.85
3.8
565
0.40
結晶
密度
[g/cm3]
放射長
PWO
各アーム全体のエネルギー分布
縦軸:イベント数
 横軸:エネルギー(フルスケール200MeV)

上アーム
右アーム
下アーム
左アーム
本研究の目的



核媒質中のように周囲の密度が高い環境下で中性π中間子
を生成し,カイラル対称性の部分的回復を議論
核媒質中で生成された中性π中間子の質量測定
150MeV電子線を黒鉛標的に入射
 核媒質中で静止した中性π中間子を生成
γ
e-
A
A + π0
π0
γ
150MeV電子線
を入射


中性π中間子
が生成される
中性π中間子
が2γに崩壊
崩壊光子のエネルギーを測り不変質量を得る.
150MeV電子線ではどの程度の中間子が生成されるか測定
セットアップ構成を決める
 標的を決める

~8/5
π0からの2γの生成過程(予測)
① 電子(150MeV)の制動放射より145MeV以上のγ生成
② p + γ(>145MeV) → Δ+
③ Δ+ → p + π0
④π0 → 2γ

上記の過程の断面積を予測できる範囲で物質ごとに調べる
• 制動放射をする断面積
• 制動放射によって145MeV以上のγを出す確率
• 145MeV以上のγが標的中で反応する確率
• π0からの2γが標的より飛び出せる確率
次ページより、これらを順に調べていく
セットアップ構成を決める

~標的を決める~
制動放射をする断面積

炭素において0.1~149.9MeVの制動放射をする断面積
7.1×10-20cm2 より、入射してすぐ(1.3×10-4cm)で反応。
※1~149MeVの制動放射をする全断面積でも4.9×10-20cm2
⇒軽い炭素でも即座に制動放射するため、標的選びには考
慮しない。

制動放射で145MeV以上のγが出る確率

物質によらずほぼ0.34%の確率で生成する。
• 条件
0.1~149.9MeVの制動放射を対象とする
標的に入射して一回目の制動放射だけを対象とする。
⇒物質の種類には殆どよらないため、標的選びには考慮し
ない
※ここでは、完全にスクリーニングされた場合の制動放射を考えている
セットアップ構成を決める

~標的を決める~
145MeV以上のγが標的中で反応する確率

標的中を2cm飛んで反応するγ(約150MeV)の割合を調べる
• 光の物質中を通過した後の強度は
λ: absorption length(g/cm2)
t : thickness (in mass/unit area)
I  I 0 exp(  t /  )
を使うことにより求めた
物質
密度
[g/cm3]
thickness
[g/cm2]
absorption length
for 150MeV [cm]※
強度
[I / I0]
反応率
[1 - I / I0]
C
2.27
4.54
65
0.93
0.07
Si
2.33
4.66
32
0.86
0.14
Fe
7.87
15.74
21
0.47
0.53
Sn
9.31
18.62
12
0.30
0.70
Pb
11.35
22.7
10
0.10
0.90
2cm
x
※ここでの Absorption length は Particle data book
に記載されているものを用いている
x
ビーム
標的
セットアップ構成を決める
~標的を決める~
 π0からの2γが標的より飛び出せる確率

標的の中心で反応が起こり、最短経路を通過した場合に2γ
が飛び出せる確率を、標的の大きさ x に対して調べる。こ
こでも同様に
I  I 0 exp(  t /  より計算した。
)
2γが同時に飛び出せる確率は I  I 0 exp(  2 t /  )となる。
2γが同時に標的を飛び出せる確率
2cm
x
x
x[cm]
ビーム
標的
セットアップ構成を決める ~標的を決める~
よって、Particle Data Book に Absorption length が載っていた
「C, Si, Fe, Sn, Pb」
の5つの物質に対して、
145MeV以上のγが標的中で反応する確率
× π0からの2γが標的より飛び出せる確率
を調べた。(下図)
2cm
x
ス
コ
ア
x
ビーム
x
よって、REFERのビームの状態にもよるが、おそらく
最適な標的はSn
or Feと考えられる!
標的
各条件に対しての予想されるπ0イベント数
電子線のフラックス:1.5×103 cm-2 sec-1
平下実験より
物質
ビーム軸方向
の長さ[cm]
反応領域
[cm2]
スコア
スコア×反応 π0検出数
領域
[個/28h]
C
2
2×1
0.068
0.14
6
これをもとに、ビームはエリアによらず均一として、同じセットアップで標的を
変えた場合に予想されるπ0検出数を調べると
スコア×
反応領域
π0生成数
[個/28h]
0.068
0.068
3
2×2
0.066
0.26
11
2
0.5×0.5
0.54
0.14
6
Sn
2
1×1
0.41
0.41
18
Sn
2
2×2
0.25
1.0
43
Pb
2
0.5×0.5
0.54
0.14
6
Pb
2
1×1
0.32
0.32
14
Pb
2
2×2
0.11
0.44
19
物
質
ビーム軸方向
の長さ[cm]
反応領域 スコア
[cm2]
C
2
1×1
C
2
Sn
予想される一週間(28h)でのπ0検出数
[個]
x[cm]
各条件に対しての予想されるπ0イベント数
予想される一週間(28h)でのπ0検出数
予想される一週間(28h)でのπ0検出数
(2arms detector)
[個]
[個] (4arms detector)
x[cm]
x[cm]
 4アーム、特に中心のPMTのゲインを揃え
る!或いは、4アームのディスクリの閾値
をゲインに比例させる。実際の実験では、
π0のシグナルの大きさは、大きいと考えら
れるので、ディスクリの閾値は、ダック
レートと同じくらいになるように高めに
設定する。
 標的の長さを2cmにお願いしに行く。
 TDCのシグナルが変!