Transcript カロリメータ
ILC実験におけるストリップ型カロリメータの
クラスタリングアルゴリズムの開発
044S116N
永曽 有亮
目次
ILC実験
カロリメータ
PFA
クラスタリング
結論と展望
ILC計画
次世代の電子陽電子衝突型線形加速器実験
ヒッグス粒子の性質の精密測定
新しい物理の探索
衝突エネルギー0.2~1TeVまで
ILCの測定器
ビーム軸に近い方向から
以下のような測定器が提案されている
バーテックス検出器
中央飛跡検出器
カロリメータ
ミューオン測定器
巨大な測定器
14m x 14m x 13m
13k tons
信号のチャンネル数
~3億チャンネル
カロリメータ
カスケードシャワーを利用し、入射粒子
のエネルギーを測定する検出器
カスケードシャワー
物質に入射した粒子が生成する二次粒子群は、
さらに二次粒子を生成する。
この過程は新たな粒子を生成できるエネルギーを
下回るまで続き、粒子数が指数関数的に増大する
吸収層
全吸収型カロリメータ
サンプリング型カロリメータ
・吸収体=検出体
・吸収体と検出体を交互に組み合わせた積層型
・カロリメータ内で失う全エネルギーを測定できるので分解能に優れる
・輻射長の小さい物質を用いてサイズを小さく出来、コストも低い
・コストが高く、大量生産が困難
・エネルギー分解能は全吸収型に劣る
タイル型カロリメータと
ストリップ型カロリメータ
Y層
タイル型
ストリップ型
空気層
空気層
y
y
吸収層
検出体
x
断面図
タイルを極端に小さくできない
y
吸収層
z
検出体
1スーパーレイヤーの構造
ゴーストが発生する
断面図
x
X層
ストリップ型カロリメータにおけるゴーストの存在
例えば右のように(赤・青いずれかもしくは両方)荷電粒子が入射
↓
青のように入射したか赤のように入射したかそれとも
両方のパターンが入射したか分からない
存在しない入射粒子の組をゴーストという
y
?
?
z
x
?
?
カロリメータとエネルギー分解能
マルチジェットイベントのそれぞれのジェットからペアを作る
ジェットを精度良く測定できないと、質量の再構成において
精密にもとの粒子を特定できない
だからジェットのエネルギー分解能がよくなる必要がある
W+
e-
H
Z*
W-
Z
e+
6Jets
ILCで求められる
ジェットのエネルギー分解能
ee WWνν、ZZνν
60% / √E
30% / √E
30 % / √EjetならW,Zの区別がつく
目標値:30% / √Ejet
どうすればエネルギー分解能がよくなるか?
PFA ( Particle Flow Algorithm )
ジェットのエネルギー分解能をよくするための
解析手段と期待されている
実際にどうやってPFAを用いるのか?
1.クラスタリング
2.トラッカーによる飛跡とクラスターとの対応付け
3.カロリメータ内の荷電粒子起源のクラスターを取り除く
4.荷電粒子のエネルギー分解能はトラッカー、中性粒子の
エネルギー分解能はカロリメータによるものになる
なぜそうしたほうがいいの?
Ejet = E charged + E γ+ En.h.
charged
γ
neutral hadron
dp / p =10-4~10-5 x p
dE / E = 15% / √E
dE / E = 60% / √E
最も精度良く測定するには
荷電粒子・・・トラッカー
中性粒子・・・カロリメータ
究極の検出器 17% / √E jet
PFAの概念図
電磁カロリメータ
ハドロンカロリメータ
中性粒子
(neutral hadron)
荷電粒子
(electron)
中性粒子
(gamma)
荷電粒子
(charged hadron)
現実の問題
σjetを構成しているもの
荷電粒子
トラッカーの運動量分解能 dp / p =10-4~10-5 x p
光子
電磁カロリメータの分解能 dE / E = 15% / √E
中性ハドロン
ハドロンカロリメータの分解能 dE / E = 60% / √E
σconfusion
カロリメータ内でのジェット内のシャワーの混合
σconfusionをよくすることが課題
σconfusionの改善
・カロリメータを細分化する
・カロリメータと衝突点との距離を大きくする
・磁場をかける
・電磁シャワーの横方向の広がりをおさえる
本研究の目的
PFAの初段階であるクラスタリングを行うための
ストリップ型のカロリメータ用にアルゴリズムを開発し、
そのアルゴリズムの評価を行う。
セットアップ
2m
衝突点
2m
2.1m
EMCAL
シミュレータ
geant4を使用
π0を入射させた
HCAL
EMCAL・・・
W(3mm)+Sci(2mm)+Air(1mm)
30Layers(15 super layer)
HCAL・・・
Pb(20mm)+Sci(5mm)+Air(1mm)
50Layers(25 super layer)
クラスタリングとは?
X層
Y層
X層
Y層
本研究における
クラスタリングアルゴリズム
ヒットストリップの定義
隣接したヒットストリップの結合
X,Yクラスターの対応付け
クラスターの分離
ストリップ型カロリメータはX、Yの構造が異なるので、
X、Y層別々の処理をしていく方法を取った。
ヒットストリップの定義
荷電粒子が通過したと考えられるストリップの事
10GeVのμを入射させた
gamma1GeV,10GeV
0.1MIP
1MIP
拡大
0.1MIP
1MIP
MIP
横軸:1つのシンチレータに落ちたエネルギー(MeV)
1MIP 0.25MeV
横軸:エネルギースレッショルド(MeV)
縦軸:メインクラスターがカロリメータに落ちた
全エネルギーに占める割合
検出器の性能により
エネルギースレッショルドは 0.1MIP( 0.025MeV )に決まる
隣接したヒットストリップの結合
手順
a 全ヒットストリップの中で1番エネルギーが
落ちたヒットストリップを見つける
b そのまわり(注目する範囲)を見て同じクラスターに
属するヒットストリップがあるか確認する
c まわりにヒットストリップがあった場合には、
そのまわりにも再帰的に調べる
d a~cをヒットストリップがなくなるまで続ける
仮想的なイベント
a) 1番エネルギーが落ちたストリップ
を見つける
注目している範囲
注目している範囲
c) 再帰的に処理をする
クラスターができた
残りの中で1番エネルギーが
落ちているストリップ
b) 注目しているストリップ
の周りを調べる
クラスター1
クラスター2
実際にはこれらを3次元で行っていて、
X、Y層別々に処理している
x、yストリップの対応付け
これまでの手順で、x、yにクラスターが複数存在する場合、
どれとどれをペアにするかの基準が必要になる
1.クラスターの重心
2.クラスターのエネルギー
Χ2={(Ex-Ey)/(σEx-Ey)}2
+{(Xx-Xy)/(σXx-Xy)}2+{(Yx-Yy)/(σYx-Yy)}2+{(Zx-Zy)/(σZx-Zy)}2
Χ2が最小になる組み合わせをペアにする
(注) ○x:xストリップでの値
σ
カロリメータにγを
1発入射させて
これらの値を求めた
値
σEx-Ey
0.031×√(Ex+Ey)
σXx-Xy
15.16 / √Ex
σYx-Yy
16.42 / √Ex
σZx-Zy
46.42 / √Ex
クラスターの分離
クラスターの分離が必要なのは?
・・・右のような特殊なイベントに対処するため
方法1
手順
1.ピークストリップを奥行き方向につなげて
クラスターの軸(串)を作る
2.串と各層との交点を算出する
3.分離したいクラスターに属するヒットストリップ
それぞれに対し、串との距離を計算する。
4.交点とヒットストリップとの距離の近い方を
その串に振り分けていく
串1
Y
仮想的なイ
ベント
串2
手順2
交点の算出
Z
X 手順1
串の作成
注目しているヒットストリップ
距離2
手順3
距離の比較
距離1
分離できた
この分離を全層について行う
手順4
振り分け完了
xストリップ
yストリップ
串1との交点
y
串2との交点
z
x
距離1
仮想的なイベント
串1
距離2
串2
注目しているヒットストリップ
xストリップの情報から串を作る
串2に属するクラスター
サイズの大きいストリップでは方法1では問題がある!!
このようなときに対処する方法を考えた
方法2
手順
1.ピークストリップを奥行き方向につなげて
クラスターの軸(串)を作る
2.串と各層との交点を算出する
(1.2は方法1と同様)
3.交点をヒットストリップに射影する
4.射影したところにエネルギーを集中させる
xストリップ
y
yストリップ
串1との交点
串2との交点
z
x
仮想的なイベント
串1
串2
クラスター1
xストリップの情報から串を作る
対処した
クラスター2
0
π
を用いての検証
1cm×1cm、1cm×5cm、1cm×10cm、1cm×20cm
のストリップ型カロリメータに対して、再構成できたイベント数と
不変質量を比較した。
mπ0 = ( E1 + E2 )2 - ( P1 + P2)2
手順
1.2つのクラスターからγを再構成する
2.それらに対して不変質量を組む
クラスタリングアルゴリズムを検証する。
パターン1.もともとX、Yともに分離しているクラスターのみの場合
パターン2.パターン1+分離の方法1
パターン3.パターン2+分離の方法2
以上の3つの結果を比較することで、クラスタリングのアルゴリズム
を検証する
分離前 1cm×1cm
135MeV
135MeV
1GeV
2GeV
5GeV
7GeV
10GeV
15GeV
分離前 1cm×10cm
135MeV
135MeV
1GeV
2GeV
5GeV
7GeV
10GeV
15GeV
分離方法1 1cm×1cm
135MeV
135MeV
1GeV
2GeV
5GeV
7GeV
10GeV
15GeV
分離方法1 1cm×10cm
135MeV
135MeV
1GeV
2GeV
5GeV
7GeV
10GeV
15GeV
パターン1とパターン2との比較
再構成に成功したイベント数
1000イベントのうち、再構成に成功したイベント数
パターン1
パターン2
分離することで、拾えるイベントが大幅に増えた
ストリップのサイズが1cm×20cmのときのみ、
パターン1とパターン2との比較
再構成した不変質量
135MeV
135MeV
パターン1
パターン2
分離することでストリップ間の違いが少なくなった
分離方法2 1cm×10cm
135MeV
135MeV
1GeV
2GeV
5GeV
7GeV
10GeV
15GeV
分離方法2 1cm×10cm
135MeV
135MeV
1GeV
2GeV
5GeV
7GeV
10GeV
15GeV
パターン2とパターン3との比較
成功したイベント数
分離前
分離後
ほとんど変わらない結果になった
パターン2とパターン3との比較
再構成した不変質量
135MeV
パターン2
135MeV
パターン3
結論
1.PFAの初段階であるクラスタリングアルゴリ
ズムを開発した。
2.π0の再構成に関しては、ストリップ型カロリ
メータでもタイル型カロリメータと同等の性能
が出る。
今後の展望
ジェットを扱う
フルシミュレータに組み込む
Event Display
Z → qq-bar
ee+
Red : pion
Yellow : gamma
Blue : neutron
Event Display
- Gamma Finding
gamma
Red : pion
Yellow : gamma
Blue : neutron
Event Display
- Track Matching
Red : pion
Yellow : gamma
Blue : neutron
Event Display
Remaining hits are assumed
to be neutral hadrons.
Red : pion
Yellow : gamma
Blue : neutron
ヒッグスの生成と崩壊
質量の大きな粒子と強く結合
ヒッグスの生成
できたヒッグスの崩壊分岐比
バーテックス測定器(VTX)
衝突点の極近傍で荷電粒子の飛跡を
精密に測定する為に用いられる。
b/c taggingの性能を上げるために重要
要求される性能
崩壊点の
位置分解能
が数ミクロン
4ないしは5層の
CCDを用いて
精密なトラッキング
を行う
中間飛跡検出器
バーテックス測定器と
中央飛跡検出器の間に配置
中央飛跡検出器と
バーテックス飛跡検出器の
トラックの対応付け
両面シリコン
マイクロストリップの
レイヤーが5層
~80cm
中央飛跡検出器
荷電粒子の飛跡を正確に測定し
その曲率から荷電粒子の運動量を測定する
必要な位置分解能
150μm(rΦ方向)
~2m
~5m
カロリメータ
粒子のエネルギー、位置の測定
エネルギー分解能
デザインとしては
以下のようなものを検討中
EM: W-Sciのサンドイッチ型
HD: Pb-Sciのサンドイッチ型
ミューオン測定器(MUON)
一番外側で物質内を最後まで突き抜けてくる
ミュー粒子を測定