最低限確認 - 地球惑星科学科

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Transcript 最低限確認 - 地球惑星科学科

なぜ計算情報科学・技術を学ぶか?
その2
最低限知識の確認と
さらなる飛躍にむけて
小高正嗣
北海道大学 大学院理学研究院・理学院宇宙理学専攻
[email protected]
2013年07月19日
石渡正樹・倉本圭
北海道大学 大学院理学研究院・理学院宇宙理学専攻
林 祥介・高橋 芳幸
神戸大学大学院理学研究科
惑星科学研究センター・地球惑星科学専攻
地球流体電脳倶楽部
目次
• 情報実験の目的の確認
– 学びの道「先生(先輩)はえらい」
• 最低限確認: 技術知識編
– Internet の基本, セキュリティーの基本(パスワード)
• 最低限確認: 利用者知識編
– 日本のインターネットの歴史:日本の大学の環境
– 管理運営構造と自力更正
• さらなる飛躍に向けて
– 知の爆発, V. Bush 1945
– あれこれ
• 近傍における情報地球惑星科学的な展開
• 今後の活動
情報実験の目的の確認
情報実験の目的の確認
• 計算機・Internet の文化的背景と技術の最低限を
理解する
• 少なくとも,置かれている状況を慮ることを知る:
– 他人に迷惑をかけてはならない
– 自分のことは自分でやらなくてはならない
• 願わくば
– 相互扶助による運営へ協力ならびに貢献
– 地球惑星科学の情報化を進められる人材が育つことを
期待
情報実験の目的の確認
大人になる
情報実験の目的の確認
先生(先輩)
はえらい
(と勝手に思えるような体験ができたら幸い)
最低限確認
利用者的技術編
最低技術知識の確認
これくらい知っとけよ, こんなこと周囲・管理者に聞くなよ
• 計算機あれこれ
– 基本
Unix(Linux), カーネル, シェル,
TCP/IP, X,
– 計算機ハードウェアの名前とイメージ
メモリ, CPU, マザーボード、ハードディスク, バス, …
– 計算機を動かしている基本ソフトウェア
(OS: オペレーティングシステム)と
それにまつわる基本単語
BIOS/UEFI, ブート, シャットダウン
最低技術知識の確認
これくらい知っとけよ, こんなこと周囲・管理者に聞くなよ
• ネットワーク基本単語
– イーサネット
• MAC アドレス
– TCP/IP
•
•
•
•
•
•
IP アドレス
ネットマスク(netmask)
ネットワーク(network)アドレス
ゲートウェイ(gateway)アドレス
ブロードキャスト(broadcast)アドレス
100.
IPv4 から IPv6 へ
– ドメイン
=
1 octet = 8 bit
78.
54.
15
01100100. 01001110. 00110110. 00001111
• ホストネーム(host name), ドメインネーム(domain name)
• DNS
最低技術知識の確認
これくらい知っとけよ, こんなこと周囲・管理者に聞くなよ
• ネットワーク基本概念あれこれ
– プロトコル
– デーモン, ポート
• 使わないのに空いてるポートは危険
• ウイルス/ワームの侵入口
– 分散計算・分散ソフトウェア
• サーバ・クライアントモデル
– X Window System
– www
• HTTP, HTTPS
• HTML
データ
21
port (FTP)
22 port (SSH)
25 port (SMTP)
80 port (HTTP)
最低限確認
利用者知識編
最低利用知識の確認
セキュリティに対する高い意識
• まずは自分を守る
– 自分のアカウントに侵入されない
– ウィルス防御・駆除ソフトの導入は必須
– 意図しないプライバシーの全世界への公開に注意
• それは, 仲間(大学・職場)を守ること
– アカウントをとられると, 計算機内の他人/プロジェクトの
資源が危険にさらされる
• それは, 世界(ネットワーク全体)を守ること
– 踏台にされ, 知らない間に他の重要資源攻撃に荷担させ
られる
最低利用知識の確認
セキュリティに対する高い意識
• ネットワーク常時接続:
計算機は『危険物』
– 車と同じ
• 運用操作技術の習得, 適切な日常
点検, 適切な管理
• 整備不良, 管理不備により深刻な
被害をもたらした場合は刑事責任
• 計算機をかわいがることが重要
– でも車とは違う:発展途上技術
→ 知識の更新が必要
http://www.jpcert.or.jp/pr/2013/IR_Report20130711.pdf
• ネットワークの機器のログの確保 JPCERTに報告されたセキュリティ
インシデントのタイプ別内訳
提供義務
2013年4月~6月のデータに基づく。
• 当局への提供においては個人情 (4月:1606件、5月:3163件、6月:4617件)
報の扱いに注意必要
マルウエアサイトとは悪質なソフトウエアを
ダウンロードさせる偽サイトのこと。
最低利用知識の確認
セキュリティに対する高い意識
• パスワードと暗号化
– パスワード
• 自分と仲間と世界を守る盾
• 良いパスワードをつける:
『辞書』(あらゆる辞典)にのってそうな単語はダメ
– 暗号化
•
•
•
•
ネットワーク上では暗号化を施さなければまる見え
SSH (secure shell)):計算機アカウントアクセス時
SSL (secure socket layer):WEB アクセス時
公開鍵暗号化方式
最低利用知識の確認
セキュリティに対する高い意識
• 不必要なネットワーク
サービスを止める
– 不要なデーモンを停止
して, ポートを閉める
• セキュリティホールを
なくす
– セキュリティ情報の確認
• JPCERT:http://www.jp
cert.or.jp
– 最新資源へアップデート
JPCERTのトップページ
最低限利用知識の確認
• 日本のインターネット文化
• 自分のことは自分でやる
最低限利用知識の確認
日本における Internet 文化
• 日本におけるインターネットの歴史
– 日本のInternetは大学から
• 研究室から学科, 学部, 大学, 研究所, そしてそ
れら相互のnetwork 同士を接続し, 自分のネッ
トワーク上を他人のパケットが通過することを許
容することにより総体として Internet を作ってい
っていった
http://biography.sophiait.com/imgb/bimu001.png
• Internet の黎明: 研究実験接続の時代
– WIDE 1988 年-現在 (村井純)
– TISN 1989 年 ~ 1996 年(釜江常好)
http://www.slac.stanford.edu/
slac/faculty/hepfaculty/kama
e.html
最低限利用知識の確認
• プロバイダ時代
– SINET (1991 年末):大学・研究機関向けプロバイダ
– ISP (商用プロバイダ):IIJ が1992 年末に開業
(%)
(万人)
8000
80
2001
2012
平成24年通信利用動向調査(概要)図表1-1(http://www.soumu.go.jp/main_content/000230981.pdf)
最低限利用知識の確認
日本における Internet 文化
• 日本における Internet の発展の歴史
– Unixワークステーション普及と同時期に開始
(むしろネットワーク接続のためにUnixを導入)
– 大学や研究者個々人の活動が触媒として有効に機能
• 情報科学発展に対してはいまいち(各業界との交流があまり生ま
れなかった)
• 大型計算機・スーパーコンピュータの発展には大きく寄与
• このことが逆に大学におけるネットワークの運用を
現在困難にしている
– 予算がないこともあり昔と同じままの体制
(使う人が作る人=利用者は高いモラルと技術知識を持
っていることが前提)
最低限利用知識の確認
日本における Internet 文化
• 日本におけるインターネット文化
– Unixの文化の継承(古きよき大学の精神)
– 貧弱な管理運用体制
• 大学の精神に根ざす歴史的事情と貧乏とにより現在も昔(自力
更生時代)とあまりかわらない運用体制になっている
– 利用者は
• 自由な活動:自分で自分の環境を構築できる, 自分の責任にお
いて何をやっても良い
• 高いモラル
• ボランティア精神
– 対応して個々人に要請されることは
• 自分のことは自分でやる(自力更生)
• 無保証であることの認識と覚悟
最低限利用知識の確認
日本における Internet 文化
• インターネットの世界でも法律による規制がある
• 大原則:現実世界でやっていけないことは
インターネット空間でもやってはいけない
– 規制されていることはいろいろある
– 注意を怠れば罪に問われることも
• ネットに関連の深い法律と犯罪
– 著作権法, 不正アクセス禁止法, 個人情報保護法, …
– 名誉毀損, 詐欺, …
• 法律も進化中
– 何が罰せられるかは日々変わる
– 国によっても違う
更なる飛躍に向けて
背景となる思想
• Vannevar Bush(1945)
MITの副学長, 第二次大戦中は国防研究委員会議長, レーダーから対
潜水艦作戦, マンハッタン計画にいたるまでの兵器開発計画の監督.
• 人類の課題は知の爆発への対応
人類にとっての真の挑戦は
原子をさらに細かく調べたり
生命の複雑さを探求すること
ではなく
科学技術が氾濫させる情報の
よりよい管理方法を発見すること.
http://en.wikipedia.org/wiki/Vannevar_Bush
Bushの夢
• Memex
– 関連がある異種の情報を結び付ける装置
– 誰もが自分専用の情報を整理蓄積できる
• 弁護士は、自分自身・友人・関係当局の関連意見や決定を呼び
出せる.
• 弁理士は, 数百万件もの特許を即座に調べることができる.
• 医師は、類似した症例を手早く調べたうえ, 解剖学や組織学など
の書物まで引くことができる.
– 膨大な記録を整理して
誰もが活用できるように
する先駆的な職業も
生まれるだろう.
Memexの概念図
http://journal.systemone.at/spaces/
journal/members/Michael+Schuster
情報化時代の科学とは
• 情報化時代の科学(V.Bush1945)
– 科学者とは新たな知見を見出す人、情報を作る人
– 近年は著しい細分化専門化,情報の爆発
– 情報の流通,加工,掌握が科学においても大きな役割
• 観測や解析や数値計算に計算機やネットワークは必須
• 観測や計算機の吐き出すデータは膨大
• ちなみに情報化時代の「先進国」の要件とは
–
–
–
–
–
情報の掌握が行えること
情報利用者だけの国は先進国から脱落
グローバリゼーションの意味(恐怖?)を理解すること
日本では大幅な出遅れ
日本語の危機・日本の危機(?)=あたりまえがあたりまえでなくなる
V. Bush (1945)の実践
地球惑星科学の情報化
• 計算機に地球惑星科学の知識を教えていく
– 我々の知識の形を明らかにすること
• われわれが何を知っているかを知ること
– コンピュータが相互にやり取りできる知識データの構造
• 知識の標準化
– それぞれの分野の人々が情報科学の発見発明をそれぞ
れの分野の知識の集積に対して実際に活用して行うこと
が必要
世の中における展開
• 知見の集積
– Wikipedia
• 幅広い分野の知見を網羅
– ゴシップからサイエンスまで,ハイパーリンクによる相互参照
– Google
• 「ネットワーク越しに計算機に聞くと答えてくれる」の一つの形
– Youtube / ニコニコ動画
• 「やってみた」から自然現象まで種々の動画
これらは知見の生産者にとって都合のよい集積の形か?
• 米国産数値モデル・可視化ツールの流通
– 誰かが作ってくれたソフトウェア(理解の枠組み)を使う
だけの方が、短期的な業績効率は向上する
• 数値流体モデル:MM5, RAMS, ARPS, MOM, ZEUS, …
• 可視化:Grads, VIS5D, …
近傍における
情報地球惑星科学的な展開
近傍における展開
• 遠隔計算・遠隔観測のためのネットワーク環境の
構築
– 苫小牧電波望遠鏡
– 名寄天文台
• 各種サーバの運営
– 情報発信環境の維持と情報提供の
試み
• 地球流体電脳倶楽部, 惑星科学研究
苫小牧電波望遠鏡
センター
http://astro3.sci.hokudai.ac.jp/~sorai/
• 知の情報化に向けた情報教育研究活動
• KS(東大), 情報実習 / EPnetFaN(北大), ITPASS(神戸),
地球情報処理論(岡山), etc.
沿革
• 1988:地球流体電脳倶楽部
• 1989:TISN 東大国際理学ネットワークにまつわる東京大学
理学部地球物理学科ネットワーク支援グループ
• 1994:北海道大学地球環境科学研究科 大気海洋圏環境科
学専攻ネットワーク友の会
• 1995:東京大学数理科学研究科・理学部数学科
計算数学カリキュラム化
• 1998:北海道大学理学研究科 地球惑星科学専攻
epnetfan, mosir(動画配信)
• 2007:神戸大学理学研究科・理学部地球惑星科学科 itpass
• 2008:惑星科学研究センター(CPS)人材育成プログラム
近傍における展開
• 知の情報化に向けた情報教育研究活動
– EPサーバ群
– 情報実習
– EPnetFaN
近傍における展開
• 知の情報化に向けた情報教育研究活動
– 計算数学 I / II (東京大学理学部数学科)
• http://ks.ms.u-tokyo.ac.jp/
– itpass 実習(神戸大学理学部地球惑星科学科)
• http://itpass.scitec.kobe-u.ac.jp/exp/
計算数学I/II
itpass実習
近傍における展開のために
資源とその管理体制に対する理解
• 何が何処の管理に属するか
– 重層的なハードウェア, ソフトウェア環境
– 対応した重層的な管理組織
– 技術管理者・政策管理者・危機管理者
• 障害発生レベルと対応した管理組織の掌握
– 例: メールの配送
•
•
•
•
ネットワークの管理運用者
計算機資源のハードウェアと OS レベルの環境の管理運用者
メールサーバーソフトウェアの管理運用者
メールリストの管理運用者
近傍における展開のために
資源とその管理体制に対する理解
• 重層的なネットワーク環境
– SINET(国立情報学研究所)
• 文部科学省の大学間接続を担うプロバイダ
– 大学キャンパスネットワーク
• HINES, UTnet, Kuins,
ODnet, KHAN
– 各部局、研究室
SINET4の構成
http://www.sinet.ad.jp/about_sinet/kousei_syousai.jpg
情報実習関係のネットワーク運用体制
• EPネットワーク委員会 (netcom)
– http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~netcom/
• EPネットワーク技術支援グループ (epcore)
– http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~epcore/
– 学生ボランティアグループ, EPnetFaN の運営
• EPnetFaN
– http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~epnetfan/
– 相互扶助的勉強会, epcore メンバー養成, 情報実験運営
• 情報実習(INEX)
–
–
–
–
http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~inex/
支援グループ等々に迷惑かけないための啓蒙
ボランティア養成
情報科学的アプローチのできる地球惑星分野の科学者・技術者へ
のきっかけ
地球惑星科学における展開
計算機に地球惑星科学の知識を教えていくこと
• ネットワーク上での知識提供実験 /
ネットワーク上での教育実験
– 参考:School of Internet(WIDE)
(http://www.soi.wide.ad.jp/)
– 地球惑星業界の試み
• WIDE SOI にならった我々の
活動 = mosir プロジェクト
• CPSセミナー・GFDセミナー・
FDEPS・森羅万象学校・
惑星科学フロンティアセミナー・
Planetary School
http://www.cps-jp.org/~mosir
地球惑星科学における展開
計算機に地球惑星科学の知識を教えていくこと
• データの構造化, 知見プラットフォームの試み
– 地球流体電脳倶楽部
(http://www.gfd-dennou.org)
• 地球惑星(流体現象)にかかわる
諸々の知見をネットワーク上に
ためる
• そのための道具作りをおこなう
• 地球流体計算ソフトウェア群の
構築(簡単GFDから気候モデル
まで)
• 情報交換に便利な数値データ
構造の考察
• 地球惑星科学における知見
データの構造自体を考える
地球惑星科学における展開
計算機に地球惑星科学の知識を教えていくこと
• データの構造化, 知見プラットフォームの試み
– 惑星科学研究センター
(http://www.cps-jp.org)
• ネットワークを用いた研究
基盤の構築
• 研究グループ情報共有公開
のための環境の提供
• 知見情報の開発公開のため
の環境の提供
おわりに
(勝手に)期待すること
• 情報化時代における「先進国」の担い手となって
欲しい
– 年寄りは役に立たない(手が動かない)
– 地球惑星科学の情報化を(勝手に)進めてくれると嬉しい
• まずは身近なところから
• 情報の「消費者」から「生産者」へ
– 消費するだけでは生産者の思考の枠から出られない
– 生産した情報を発信するためのしくみを知る
• そのための自由な活動の場:EPnetFaN
おわりに
• 情報実験機を利用するためには
– EPnetFaN に登録
– 連絡先 [email protected]
– 詳細説明はEPnetFaNマネージャより
おしまい
おつかれさまでした
参考書・参考文献
• 新井紀子,2010: コンピュータが仕事を奪う
日本経済新聞出版社
• 山岸俊男,2000: 社会的ジレンマー「環境破壊」か
ら「いじめ」までー,PHP新書117,PHP研究所
• 内田樹, 2005: 先生は偉い,ちくまプリマー新書,
筑摩書房
• 内田樹, 2008: 街場の教育論, ミンマ社
参考書, 参考文献(初回掲載分)
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Bush, V., 1945: As we may think. Atlantic Monthly, 1945 July, 101-108.
http://www.theatlantic.com/magazine/archive/1945/07/as-we-maythink/3881/
朝日ジャーナル編1989:世界経済三国志:覇権の150年, 42節, 朝日新聞社
村井純, 1997: インターネット, 岩波新書 新赤 416, 岩波書店.
村井純, 1998: インターネットII, 岩波新書 新赤 571, 岩波書店.
歌田明弘, 2000: 本の未来はどうなるか 新しい記憶技術の時代へ, 中公新書
1562, 中央公論新社
D. Libes & S. Ressler 著, 坂本 文 訳, 1990: Life with UNIX, アスキー.
坂村健, 2002: 痛快! コンピュータ学, 集英社文庫.
ITホワイトボックス http://www.nhk.or.jp/itwb/
総務省,2012: 平成23年通信利用動向調査
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html
総務省,2012: 平成24年版情報通信白書
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/pdf/index.ht
ml
情報処理学会編 2010: 日本のコンピュータ史, オーム社