110805-inex_v3 - 地球惑星科学科

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なぜ計算情報科学・技術を学ぶか?
その2
最低限知識の確認と
さらなる飛躍にむけて
石渡正樹
北海道大学 大学院理学研究院・理学院宇宙理学専攻
[email protected]
2011年08月05日
小高正嗣・倉本圭
北海道大学 大学院理学研究院・理学院宇宙理学専攻
林 祥介・高橋 芳幸・西澤 誠也
神戸大学大学院理学研究科
惑星科学研究センター・地球惑星科学専攻
地球流体電脳倶楽部
目次
• 情報実験の目的の確認
– 学びの道「先生(先輩)はえらい」
• 最低限確認: 技術知識編
– Internet の基本, セキュリティーの基本(パスワード)
• 最低限確認: 利用者知識編
– 日本のインターネットの歴史:日本の大学の環境
– 管理運営構造と自力更正
• さらなる飛躍に向けて
– 知の爆発, V. Bush 1945
– あれこれ
• 今後の活動
情報実験の目的の確認
情報実験の目的の確認
• 計算機・Internet の文化的背景と技術の最低限を
理解する
• 少なくとも,置かれている状況を慮ることを知る:
– 他人に迷惑をかけてはならない
– 自分のことは自分でやらなくてはならない
• 願わくば
– 相互扶助による運営へ協力ならびに貢献
– 地球惑星科学の情報化を進められる人材が育つことを
期待
情報実験の目的の確認
大人になる
情報実験の目的の確認
• 自分の立ち位置に思いをはせる
– 自分の置かれている状況・環境がどのように作られ維持
されているのか
– そこで得られる知識がどのように作られ継承されてきた
のか
• 自律的に動けるようになる
– 自分で考え自分で行動する(自力更生)
– 受動から能動へ
– 相互扶助(重層的レベル)
情報実験の目的の確認
先生(先輩)
はえらい
(と勝手に思えるような体験ができたら幸)
最低限確認
利用者的技術編
最低技術知識の確認
これくらい知っとけよ, こんなこと周囲・管理者に聞くなよ
• 計算機あれこれ
– 基本
Unix (Linux), TCP/IP, X
– 計算機のハードウェアの名前とイメージ
メモリ,CPU,ハードディスク,バス,…
– 計算機を動かしている基本ソフトウェア
(OS=オペレーティングシステム)
とそれにまつわる基本単語
BIOS
ブートする, シャットダウンする,
電源は切っていいとは限らない
最低技術知識の確認
これくらい知っとけよ, こんなこと周囲・管理者に聞くなよ
• ネットワーク基本単語
– イーサネット
• MACアドレス
– TCP/IP
– IP アドレス (IP address)
•
•
•
•
•
ネットマスク(netmask)
ネットワーク(network)アドレス
ホスト(host)アドレス
ゲートウェイ(gateway)アドレス
ブロードキャスト(broadcast) アドレス
IPv4 枯渇
=
1 octet = 8 bit
100.
78.
54.
15
01100100. 01001110. 00110110. 00001111
– ドメイン (domain)
• ホストネーム(host name)・ドメインネーム (domain name)
• DNS
最低技術知識の確認
これくらい知っとけよ, こんなこと周囲・管理者に聞くなよ
• ネットワーク基本概念あれこれ
– プロトコル(protocol)
– デーモン(daemon)
– ポート(port)・ピア(peer)
• 空いてるポートは危険
• ウイルス/ワームの侵入口
– 分散計算・分散ソフトウェア
21(FTP)
• サーバ・クライアントモデル
– X Window System
– メール
• SMTP
• POP, IMAP
25(SMTP)
パケットの流れ
80(HTTP)
最低限確認
利用者知識編
最低利用知識の確認
セキュリティに対する高い意識
• まずは自分を守る
– 自分のアカウントに侵入されない
– ウィルス防御・駆除ソフトの導入は必須
– 意図しないプライバシーの全世界への公開に注意
• それは, 仲間(大学・職場)を守ること
– アカウントをとられると, 計算機内の他人/プロジェク
トの資源が危険にさらされる
• それは, 世界(ネットワーク全体)を守ること
– 踏台にされ, 知らない間に他の重要資源攻撃に荷
担させられる
最低利用知識の確認
セキュリティに対する高い意識
• ネットワーク常時接続
→計算機は『危険物』
– 車と同じ
• 運用操作技術の習得, 適切な日常
点検, 適切な管理
• 整備不良, 管理不備により深刻な
被害をもたらした場合は刑事責任
• 計算機をかわいがることが重要
– でも車と違う
発展途上技術(未成熟)
→ 知識の更新が必要
• ネットワークの機器のログの確保
提供義務
• 当局への提供においては個人情
報の扱いに注意必要
http://www.jpcert.or.jp/ir/report.html より転載
JPCERTに報告されたセキュリティ
インシデントのタイプ別内訳
2011年4月~6月のデータに基づく。
平均月発生件数は500件前後。
マルウエアサイトとは悪質なソフトウエアをダ
ウンロードさせる偽サイトのこと。
最低利用知識の確認
セキュリティに対する高い意識
• パスワードと暗号化
– パスワード
• 自分と仲間と世界を守る盾
• 正しいパスワード.
『辞書』(あらゆる辞典)にのってそうな単語はダメ
– 暗号化
• ネットワーク上では暗号化を施さなければまるみえ.
SSH (secure shell) 計算機アカウントアクセス時
SSL (secure socket layer) WEB アクセス時
最低利用知識の確認
セキュリティーに対する高い意識
• 不必要なネットワーク
サービスは危険
– 不要なデーモンを停止
– ポートを閉める
• セキュリティホールを
なくす
– セキュリティ情報の確認
• JPCERT:http://www.jpcert.
or.jp
– 最新資源へアップデート
JPCERTのトップページ
最低利用知識の確認
資源とその管理体制に対する理解
• 何が何処の管理に属するか
– 重層的なハードウェア, ソフトウェア環境
– 対応した重層的な管理組織
– 技術管理者・政策管理者・危機管理者
• 障害発生レベルと対応した管理組織の掌握
– 例: メールの配送
• ネットワークの管理運用者
• 計算機資源のハードウェアと OS レベルの環境の
管理運用者
• メールサーバーソフトウェアの管理運用者
• メールリストの管理運用者
最低利用知識の確認
資源とその管理体制に対する理解
• 重層的なネットワーク環境
– SINET(国立情報学研究所)
• 文部科学省の大学間接続を担うプロバイダ
– 大学キャンパスネットワーク
• ODnet, KHAN, HINES, UTnet, Kuins
– 各部局、研究室
SINET3の構成
http://www.sinet.ad.jp/topology
最低利用知識の確認
• 日本のインターネット文化
• 自分のことは自分でやる
最低利用知識の確認
日本におけるInternet 文化
• 日本におけるインターネットの歴史
– 日本のInternetは大学から
– 研究室から学科, 学部, 大学, 研究所,
そしてそれら相互のnetwork 同士を接
続し, 自分のネットワーク上を他人のパ
ケットが通過することを許容することに
より総体として Internet を作っていっ
ていった
• Internet の黎明: 研究実験接続の時代
– WIDE 1988 年-現在 (村井純)
– TISN 1989 年 ~ 1996 年(釜江常好)
http://biography.sophiait.com/imgb/bimu001.png
http://www.slac.stanford.edu/
slac/faculty/hepfaculty/kama
e.html
最低利用知識の確認
• プロバイダ時代
– SINET (1991 年末):大学・研究機関のための
プロバイダ
– ISP (商用プロバイダ):IIJ が1992 年末, 開業
http://www2.ttcn.ne.jp/
~honkawa/6200.html
最低利用知識の確認
日本におけるInternet 文化
• 日本における Internet の発展の歴史
– Unixワークステーション普及と同時期に開始
(むしろネットワーク接続のためにUnixを導入)
– 大学や研究者個々人の活動が触媒として有効
に機能した.
• 情報科学発展に対してはいまいち (各業界との交流があまり生まれな
かった)
• 大型計算機・スーパーコンピュータの発展には大きく寄与
• このことが逆に大学におけるネットワークの
運用を現在困難にしている
– 予算がないこともあり昔と同じままの体制
(使う人が作る人=利用者は高いモラルと技術
知識を持っていることが前提)
最低利用知識の確認
日本におけるInternet 文化
• 日本におけるインターネット文化
– Unixの文化の継承(古きよき大学の精神)
– 貧弱な管理運用体制
• 大学の精神に根ざす歴史的事情と貧乏とにより現在も昔(自力
更生時代)とあまりかわらない運用体制になっている
– 利用者は
• 自由な活動(自分で自分の環境を構築できる. 自分の責任にお
いて何をやっても良い)
• 高いモラル
• ボランティア精神
– 対応して個々人に要請されることは
• 自分のことは自分でやる(自力更生)
• 無保証であることの認識、覚悟
最低利用知識の確認
インターネット利用に関する法律
• インターネットの世界でも法律による規制がある
• 大原則:現実世界でやっていけないことは
インターネット空間でもやってはいけない
– 規制されていることはいろいろある
– 注意を怠れば罪に問われることも
• ネットに関連の深い犯罪
– 著作権法違反、不正アクセス禁止法違反、
名誉毀損罪、詐欺罪、個人情報保護法違反
• 法律も進化中
– 何が罰せられるかは日々変わる
– 国によっても違う
更なる飛躍に向けて
背景となる思想
• Vannevar Bush (1945)
MITの副学長, 第二次大戦中は国防研究委員会議長, レーダーから対
潜水艦作戦, マンハッタン計画にいたるまでの兵器開発計画の監督.
• 人類の課題=知の爆発への対応
人類にとっての真の挑戦は
原子をさらに細かく調べたり
生命の複雑さを探求すること
ではなく
科学技術が氾濫させる情報の
よりよい管理方法を発見すること.
http://en.wikipedia.org/wiki/Vannevar_Bush
• Memex
Bushの夢
– 関連がある異種の情報を結び付ける装置
– 誰もが自分専用の情報を整理蓄積できる
• 弁護士は、自分自身・友人・関係当局の関連意見や決定を
呼び出せる.
• 弁理士は, 数百万件もの特許を即座に調べることができる.
• 医師は、類似した症例を手早く調べたうえ, 解剖学や組織
学などの書物まで引くことができる.
• 膨大な記録を整理して誰も
が活用できるようにする
先駆的な職業も生まれる
だろう.
Memexの概念図
http://journal.systemone.at/spaces/
journal/members/Michael+Schuster
情報化時代の科学とは
• 情報化時代の科学(V.Bush1945)
– 科学者とは新たな知見を見出す人、情報を作る人
– 近年は著しい細分化専門化,情報の爆発
– 情報の流通,加工,掌握が科学においても大きな役割
• 観測や解析や数値計算に計算機やネットワークは必須
• 観測や計算機の吐き出すデータは膨大
• ちなみに、情報化時代の「先進国」の要件とは
– 情報の掌握が行えること(情報利用者だけの国は先進国から脱落)
– グローバリゼーションの恐怖を理解すること
– 日本では大幅な出遅れ
– 日本語の危機・日本の危機(?)=あたりまえがあたりまえでなくなる
V.Bush (1945)の実践
地球惑星科学の情報化
• 計算機に地球惑星科学の知識を教えていく
– 我々の知識の形を明らかにすること
• われわれが何を知っているかを知ること
– コンピュータが相互にやり取りできる知識データ
の構造
• 知識の標準化
– それぞれの専門分野の人々が情報科学の発見
発明をそれぞれの分野の知識の集積に対して実
際に活用して行うことが必要
世の中における展開
• Wikipedia
– 幅広い分野の知見を網羅
• ゴシップからサイエンスまで
• ハイパーリンクによる相互参照
• Google
– 「ネットワーク越しに計算機に聞くと答えてくれる」の
一つの形
• 米国産数値モデル・可視化ツールの流通
– 誰かが作ってくれたソフトウェア(理解の枠組み)を
使うだけの方が、短期的な業績効率は向上する
• MM5, RAMS, ARPS, MOM(流体数値モデル)
• Grads(可視化ツール), VIS5D
– …
• クラウド(雲)
ご近所での展開
• 遠隔計算・遠隔観測のためのネットワーク環
境の構築
– 苫小牧電波望遠鏡、
名寄天文台
• 各種サーバーの運営
苫小牧電波望遠鏡
http://astro3.sci.hokudai.ac.jp/~sorai/
– 情報発信環境の維持と情報提供の試み
• KS(東京大学) EPNetFan (北海道大学)
ITPASS(神戸大学) ?(岡山大学) ?(名古屋大学)
• 地球流体電脳倶楽部
地球惑星科学における展開
計算機に地球惑星科学の知識を教えていくこと
• ネットワーク上での知識提供実験 /
ネットワーク上での教育実験
– 参考: School of Internet (WIDE) (http://www.soi.wide.ad.jp/)
– 地球惑星業界でも同様な試みを
してみよう
• WIDE SOI にならった
我々の活動 = Mosir プロジェクト
• GFDセミナー・FDEPS・
森羅万象学校・
惑星科学フロンティアセミナー
http://www.cps-jp.org/~mosir
地球惑星科学における展開
計算機に地球惑星科学の知識を教えていくこと
• データの構造化, 知見プラットフォームへの試み
– 地球流体電脳倶楽部
(http://www.gfd-dennou.org/)
• 地球惑星(流体現象)にかかわる
諸々の知見をネットワーク上に
ためる
• そのための道具作りをおこなう
• 地球流体計算ソフトウェア群の
構築(簡単GFDから気候モデル
まで)
• 情報交換に便利な数値データ
構造の考察
• 地球惑星科学における知見
データの構造自体を考える
最低利用知識の確認
• 資源とその管理体制・運用管理者
– 北大外:SINET 国立情報学研究所
– 学内:情報基盤センターHINES
北海道大学キャンパスネットワークのプロバイダ
学部学生用計算機資源(メディア教育)と院生・研究者用計算機資源
(スーパーコンピュータなど)も提供
– 学部内:理学営繕掛/理学情報ネットワーク委員会
HINES 部局支線 = 理学研究院が配線管理
運用管理は HINES
– 建物内:EPネットワーク委員会
宇宙惑星科学分野・地球惑星科学関連有志による主として8号館(情
報実験環境)のネットワーク接続・主要サーバ群の掌握, 管理, 運用
– 各々の研究室等
各研究室の情報環境
情報実習関係のネットワーク運用体制
• EPネットワーク委員会 (netcom)
– http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~netcom/
• EPネットワーク技術支援グループ (epcore)
– http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~epcore/
– 学生ボランティアグループ, EPNetFan の運営
• EPNetFan
– http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~epnetfan/
– 相互扶助的勉強会, epcore メンバー養成, 情報実験運営
• 情報実習(INEX)
–
–
–
–
http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~inex/
支援グループ等々に迷惑かけないための啓蒙
ボランティア養成
情報科学的アプローチのできる地球惑星分野の科学者・技
術者へのきっかけ
ご近所での展開
• 知の情報化に向けた情報研究教育活動
– 情報実習
– EPサーバー群
– EPnetFaN
おわりに
• 今後の機材の利用
→EPNeTFan に登録
• 連絡先 [email protected]
• おしまい, おつかれさまでした.
参考書, 参考文献
• 新井紀子,2010: コンピュータが仕事を奪う
日本経済新聞出版社
• 山岸俊男,2000: 社会的ジレンマー「環境破
壊」から「いじめ」までー,PHP新書117,PHP
研究所
• 内田樹, 2005: 先生は偉い,ちくまプリマー新
書, 筑摩書房
• 内田樹, 2008: 街場の教育論, ミンマ社
参考書, 参考文献(初回掲載済)
• Bush, V., 1945: As we may think. Atlantic Monthly, 1945 July, 101108.
• 朝日ジャーナル編1989:世界経済三国志:覇権の150年, 42節, 朝日
新聞社
• 村井純, 1997: インターネット, 岩波新書 新赤 416, 岩波書店.
• 村井純, 1998: インターネットII, 岩波新書 新赤 571, 岩波書店.
• 村井純, 2010: インターネット新世代, 岩波新書 新赤 1227, 岩波書店.
• 歌田明弘, 2000: 本の未来はどうなるか 新しい記憶技術の時代へ, 中公
新書 1562, 中央公論新社
• D. Libes & S. Ressler 著, 坂本 文 訳, 1990: Life with Unix, アスキー.
• 坂村健, 2002: 痛快! コンピュータ学, 集英社文庫.
• 水村美苗, 2008: 日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で,筑摩書房,
330pp.
• ITホワイトボックスII http://www.nhk.or.jp/itwb/
• 山口 英, 2002: ブロードバンド時代のインターネットセキュリティー, 岩波
科学ライブラリー85