最低利用知識の確認

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Transcript 最低利用知識の確認

なぜ計算情報科学・技術を
学ぶのか?その2
最低限知識の確認とさらなる飛躍にむけて
北海道大学理学院
宇宙理学専攻
石渡正樹
[email protected]
2009年07月24日
目次
• 情報実験の目的の確認
• 最低限確認: 利用者的技術編
– 計算機の基本, Internet の基本, セキュリティーの基本
• 最低限確認: 利用者的知識編
– 日本のインターネットの歴史:日本の大学の特殊性
– 管理運営構造と自力更正
• さらなる飛躍に向けて
– 知の爆発, V. Bush (1945)
– 近所の活動あれこれ
•
•
•
•
教育・研究資料公開, 講義・セミナー動画配信
大容量高速ネットワークを介したデータ転送
遠隔計算, 遠隔制御
などなど
情報実験の目的の確認
• 立派な大人になる
• Internet の文化的背景と最低限技術を理解する
• 少なくとも,置かれている状況を慮ることを知る:
– 他人に迷惑をかけてはならない
– 自分のことは自分でやらなくてはならない
• 願わくば
– 相互扶助による運営へ協力ならびに貢献
– 地球惑星科学の情報化を真に進められる人材が育つこ
とを期待する.
最低限確認
利用者的技術編
最低技術知識の確認
これくらい知っとけよ, こんなこと周囲・管理者に聞くなよ
• 計算機あれこれ
– 基本
• Unix (Linux), X
– ハードウェアの名前とイメージ
• メモリ、CPU、ハードディスク、バ
ス、…
– オペーレーティングシステム
(OS) とそれにまつわる基本単
語
• ブート、シャットダウン、BIOS、…,
• 電源は切っていいとは限らない
最低技術知識の確認
これくらい知っとけよ, こんなこと周囲・管理者に聞くなよ
• ネットワーク基本単語あれこれ
– TCP/IP
•
•
•
•
•
IP アドレス (IP address)
サブネットマスク(sub netmask)
ゲートウェイ(gateway)アドレス
ブロードキャスト(broadcast) アドレス
MACアドレス
– ドメイン (domain)
• ホストネーム(host name)・ドメインネーム (domain name)
• DNS
133.
87.
45.
15
= 10000101. 01010111. 00101101. 00001111
1 byte = 8 bit
最低技術知識の確認
これくらい知っとけよ, こんなこと周囲・管理者に聞くなよ
• ネットワーク基本概念あれこれ
– サーバ・クライアントモデル
• プロトコル(protocol)
• デーモン(daemon)
• ポート(port)
– メール
• SMTP
• POP
21(FTP)
25(SMTP)
パケットの流れ
80(HTTP)
最低限確認
利用者的知識編
最低利用知識の確認
• セキュリティーに対する高い意識
– まずは自分を守る
• 自分のアカウントに侵入されない
• 意図しないプライバシーの全世界への公開
• ウィルス防御・駆除ソフトの導入は必須
– それは, 他人(仲間/プロジェクト)を守ること
• アカウントをとられると, 計算機内の他人/プロジェクト
の資源が危険にさらされる.
– それは, 世界(ネットワーク全体)を守ること
• 踏台にされ, 知らない間に他の重要資源攻撃に荷担
させられる.
最低利用知識の確認
• ネットワーク常時接続→計算
機は『危険物』
– 車と同じ
• 運用操作技術の習得, 適切な日常
点検, 適切な管理
• 計算機をかわいがることが重要
– でも車と違う。成熟した技術では
ない → 知識の更新が必要.
• 整備不良, 管理不備により深刻な
被害をもたらした場合は刑事責任
• ネットワークの機器のログの確保
提供義務
• 当局への提供においては個人情
報の扱いに注意必要
http:////www.atmarkit.co.jp/fsecurity/rensai/inci06/inci01.html
より転載
最低利用知識の確認
• パスワードと暗号化
– パスワード
• パスワードは最初にして最後の砦
• 正しいパスワード.
『辞書』(あらゆる辞典)にのってそうな単語はダメ
– 暗号化
• ネットワーク上では暗号化を施さなければまるみえ.
SSH (secure shell) 計算機アカウントアクセス時
SSL (secure socket layer) WEB アクセス時
最低利用知識の確認
• 不必要なネットワークサー
ビスは危険
– 不要なデーモンを停止
– ポートを閉める
• セキュリティホールをなくす
– セキュリティ情報のチェック
• JPCERT:http://www.jpcert.
or.jp
– 最新資源へのアップデート
JPCERTのトップページ
最低利用知識の確認
• 資源とその管理体制を理解する
– 何が何処の管理に属するか
• 重層的なハードウェア, ソフトウェア環境
• 対応した重層的な管理組織
• 技術管理者・政策管理者・危機管理者
– 障害発生レベルと対応した管理組織の掌握
• 例: メールの配送
– ネットワークの管理運用者
– 計算機資源のハードウェアと OS レベルの環境の管理運用
者
– メールサーバーソフトウェアの管理運用者
– メールリストの管理運用者
最低利用知識の確認
• 重層的なネットワーク環境
– SINET(国立情報学研究所)
– 大学キャンパスネットワーク
– 各部局、研究室
SINET3の構成
http://www.sinet.ad.jp/about_sinet3/sinet3_kousei.PNG
最低利用知識の確認
• 日本におけるInternet の歴史:
研究実験接続の時代
– WIDE 1988 年-現在 (村井純)
•
ネットワーク接続実験
– TISN 1989 年 ~ 1996 年(釜江常好)
•
•
•
日本のインターネットの拡大には高エネルギー物理
学がリード(∵金持ちでDEC持ち)
東京大学国際理学ネットワーク
最初の日米回線、 つまりInternet
村井純氏
http://biography.sophiait.com/imgb/bimu001.png
– 日本におけるインターネット文化
• Unixの文化の継承(古きよき大学の精神)
– 自力更生(自分のことは自分でやる)
– 無保証
– ボランティア(相互扶助)
釜江常好氏
http://www.slac.stanford.edu/
slac/faculty/hepfaculty/kama
e.html
最低利用知識の確認
• 日本におけるInternet の歴史:プロバイダへ
– プロバイダ=Internet 接続サービスを提供する「組織」
– SINET (1991 年末):大学・研究機関のためのプロバイダ
• SINET の下に各大学が独自のキャンパスネットを運営:HINES,
UTnet, Kuins, ...
– ISP (= Internet Service Provider):商用プロバイダ
• IIJ が1992 年末, 開業
http://www2.ttcn.ne.jp/
~honkawa/6200.html
最低利用知識の確認
日本におけるInternetの歴史
• 日本における Internet の発展に大学や研究者個々人の活
動は触媒として有効に機能した.
– WIDEプロジェクトの役割が非常に大きい
– Unixのワークスステーションとしての普及と同時期に開始, むしろ
ネットワーク接続のためにUnixを導入するようになる
– 日本の大学の触媒機能
• 情報科学発展に対してはいまいち(各業界との交流があまり生まれな
かった)
• 大型計算機・スーパーコンピュータの発展には大きく寄与
• Internet の発展には本質的に寄与
• このことが逆に大学におけるネットワークの運用を現在困難
にしている
– 予算がないこともあり昔と同じままの体制(使う人が作る人=利用者
は高いモラルと技術知識を持っていることが前提)
最低利用知識の確認
• 日本の大学では自力更正
– 貧弱な管理運用体制
• 大学の精神に根ざす歴史的事情と貧乏とにより現在も昔(自力
更生時代)とあまりかわらない運用体制になっている
– 利用者は
• 自由な活動(自分で自分の環境を構築できる. 自分の責任にお
いて何をやっても良い)
• 高いモラル
• ボランティア精神
– 対応して個々人に要請されることは
• 自分のことは自分でやる
• 無保証であることの認識、覚悟
更なる飛躍に向けて
背景となる思想
Vannevar Bush (1945)
MITの副学長, 第二次大戦中は国防研究委員会議長, レーダーから対
潜水艦作戦, マンハッタン計画にいたるまでの兵器開発計画の監督.
人類の課題=知の爆発への対応
http://en.wikipedia.org/wiki/Vannevar_Bush
メメックス(memex)
• V. Bush:
– 人類にとっての真の挑戦は原子をさらに細かく調べたり生命の複雑
さを探求したりすることではなく, 科学技術が氾濫させる情報のよりよ
い管理方法を発見することだ.
• Memex:
– 関連がある異種の情報を一つに結び付ける装置で, これにより, 誰も
が自分専用の情報を整理蓄積できるようになる.
• 弁護士はボタンを押すだけで, 彼自身の経験ばかりでなく
友人や関係当局の経験から得られた関連意見や決定を呼
び出せる. 弁理士も依頼人の希望に応じて, 数百万件もの
特許を即座に調べることができる. 医師も診断に迷った場
合には類似した症例を手早く調べたうえ, ついでに解剖学
や組織学などの書物まで参考に引くことができる. 膨大な
記録を整理して誰もが活用できるようにすることによろこび
を見いだす, 先駆的な新しい職業も生まれてくるだろう.
情報化時代の科学とは
• 科学者
– 新たな知見を見出す人
– 情報を作る人
– 一次生産者
• 情報化時代の科学(V.Bush1945)
– 細分化専門化,情報の爆発
– 情報の流通,加工,掌握が科学においても大きな役割
• 「先進国」の要件
–
–
–
–
情報の掌握
情報利用者だけの国は先進国から脱落
グローバリゼーションの恐怖
日本では大幅な出遅れ
V.Bush (1945)の実践
地球惑星科学の情報化
• 計算機に地球惑星科学の知識を教えていく
– 我々の知識の形を明らかにすること
• われわれが何を知っているかを知ること
– コンピュータが相互にやり取りできる知識データ
の構造
• 知識の標準化
– それぞれの専門分野の人々が情報科学の発見
発明をそれぞれの分野の知識の集積に対して実
際に活用して行うことが必要
世の中における展開
• Wikipedia
– 幅広い分野の知見を網羅
• ゴシップからサイエンスまで
• ハイパーリンクによる相互参照
• Google
– 「ネットワーク越しに計算機に聞くと答えてくれる」の
一つの形
• 米国産数値モデル・可視化ツールの流通
– 誰かが作ってくれたソフトウェア(理解の枠組み)を
使うだけの方が、短期的な業績効率は向上する
• MM5, RAMS, ARPS, MOM(流体数値モデル)
• Grads(可視化ツール), VIS5D
– …
地球惑星科学における展開
• 遠隔計算・遠隔観測のためのネットワーク環境構築
– Gbit大域のネットワークの設計と接続, 制御を自前で行う必
要
• http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~ssinet/ Super SINET
• http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~jgn/ JGN→post JGN
• 環境研究所, 天文台, 宇宙研のスーパーコンピュータの利用へ
• 遠隔授業,望遠鏡観測などのための
インフラ
北海道仮想天文台プロジェクト
http://madeira.cc.hokudai.ac.jp/ops/nw-key-men/index.php?snobs
地球惑星科学における展開
• ネットワーク上での知識提供実験 / ネットワーク上での教育実験
– 参考: School of Internet (WIDE) (http://www.soi.wide.ad.jp/)
– 地球惑星業界でも
同様な試みを展開
する必要
• WIDE SOI にならった
動画配信活動
Mosir プロジェクト
(http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~mosir/ )
地球惑星科学における展開
• データの構造化, 知見プラットフォームへの試み
– 地球流体電脳倶楽部
(http://www.gfd-dennou.org/)
• 地球惑星(流体現象)に
かかわる諸々の知見を
ネットワーク上に蓄積
• そのための道具作り
• 情報交換に便利な
数値データ構造の考察
• 地球惑星科学における
知見データの構造自体を
考える
情報実習の周辺における展開
最低利用知識の確認
• 資源とその管理体制
– SINET 国立情報学研究所
文部科学省の大学間接続を担うプロバイダ
– 情報基盤センターHINES
北海道大学キャンパスネットワークのプロバイダ
– 理学営繕掛/理学情報ネットワーク委員会
HINES 部局支線 = 理学研究院が配線管理
運用管理は HINES
– EPネットワーク委員会
宇宙惑星科学分野・地球惑星科学関連有志による主として8号館
(情報実験環境)のネットワーク接続の掌握, 管理, 運用
– 各々の研究室等
各研究室の情報環境
最低利用知識の確認
• 計算機資源の管理運用者
– 情報基盤センター(メディア教育)
学部学生用計算機資源
– 情報基盤センター(大型計算機システム)
院生・研究者用計算機資源
スーパーコンピュータ
– EPネットワーク委員会
地球惑星科学関係有志による主要サーバ群
dns, www, mail, news, ftp, router, ...
情報実習関係のネットワーク運用体制
–
EPネットワーク委員会 (netcom)
•
•
–
EPネットワーク技術支援グループ (epcore)
•
•
–
http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~epcore/
実働担当の学生ボランティアグループ, EPNetFan の運営
EPNetFan
•
•
–
http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~netcom/
政策決定, 運用責任
http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~epnetfan/
相互扶助的勉強会, epcore メンバー養成, 情報実験の運営
物理実験I(情報実験)
•
•
•
•
http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~inex/
支援グループ等々に迷惑かけないための啓蒙
ボランティア養成
情報科学的アプローチのできる地球惑星分野の科学者・技術者へのきっかけ
の
ご近所での展開
• 知の情報化に向けた情報研究教育活動
– 情報実習
– EPサーバー群
– EPNeTFan
おわりに
• 今後の機材の利用
→EPNeTFan に登録, 参加することにより,
– ルート(機材あたり1名)としての責任(セキュリティー対
策)を担ってもらう.
– 実験機材(3N+1,3N+2)は9月まで使える.
•
「手を挙げれば」3月まで利用可能.
– さらに 3N 機材担当者に昇格すると在籍中使える.
• VTA になってもらうけど.
• 連絡先 [email protected]
• おしまい, おつかれさまでした.
参考書, 参考文献
• Bush, V., 1945: As we may think. Atlantic Monthly, 1945
July, 101-108.
• 村井純, 1997: インターネット, 岩波新書 新赤 416, 岩波書
店.
• 村井純, 1998: インターネットII, 岩波新書 新赤 571, 岩波書
店.
• 歌田明弘, 2000: 本の未来はどうなるか 新しい記憶技術の
時代へ, 中公新書 1562, 中央公論新社
• 山岸俊男,2000: 社会的ジレンマー「環境破壊」から「いじ
め」までー,PHP新書117,PHP研究所
• D. Libes & S. Ressler 著, 坂本 文 訳, 1990: Life with Unix,
アスキー.
• 坂村健, 2002: 痛快! コンピュータ学, 集英社文庫.
• 山口 英, 2002: ブロードバンド時代のインターネットセキュリ
ティー, 岩波科学ライブラリー85