Transcript LES2

LESを用いた流れの先行研究の紹介
ーNakanishi (2000)の
接地層と放射霧のシミュレーションー
古本淳一
はじめに
• Nakanishi(2000)が開発したLESコードに基づく
シミュレーション結果を紹介。
– 湿潤過程を考慮したLESコードを開発。
– 接地境界層の霧の
シミュレーション
基礎方程式
運動方程式
連続の式
熱力学式
水蒸気収支
u:風速
g:重力加速度
p:平均密度で割った気圧
Θ:基本場の温位
Θv:仮温位
Ω:自転角速度
θi:液水温位
θ:温位、T:気温、ρ:密度
F:放射フラックス
Lv:潜熱、cp:定圧比熱
G:水滴の重力落下フラックス
qw:全水分量
τ:サブグリッドスケールの
乱流フラックス
δij:クロネッカーのδ記号
εij:Levi-Civistaの記号
サブグリッドスケール(SGS)の取り扱い
• 従来のモデル:Smagorinskyモデル
渦粘性係数
Δ:格子間隔
Kolmogorovの仮定を考慮したら、
Cs = 0.18
e: 乱流運動エネルギーTKE
鉛直シアの大きいときなどは
Csをもっと小さくしないと現象を再現できない。
→ Dynamic SGSモデル
• Sullivanのモデル
• 気象分野で広く使われている
• 等方部分と非等方部分を分離して計算する。
Nakanishi (2000)のシミュレーション
• オランダで1977年に発生した放射霧のデータ
– 200mタワー+ラジオゾンデ
• 観測された鉛直分布に小さな微小変動を加
える
• 96x96x60格子、格子間隔4m
• 上方に10層分のReyleigh摩擦層を加える
• タイムステップ0.4秒
霧のシミュレーション結果
生成期の逆転層内の風速水平変動
逆転層の高さ:12m
24m
背景風に直交する成分の風速変曲点は境界層内にない
変曲点不安定の可能性は低い →さらなる解析が必要
発達期
鉛直流変動、液水積分値
水平波長:175m
シア層の厚さ:28m
位相速度:1m/s
シアの強い14mでの風速に一致
鉛直断面図(y=190m):風速、液水温位、凝結水量
K-H不安定の線形論による理論値と一致
Klassen and Peltier (1985)
消散期
乱流エネルギーフ
ラックスのうち
シアI(s), 浮力I(B)生
成項
0600UTC
0800UTC
地表面加熱により、対流不安定が発生し、様々な
不安定現象が発生
→リモートセンシング技術により観測的に明らかになることが
期待される。
まとめ
• Nakanishi(2000) は境界層内における湿潤仮定を考慮
したLESコードを開発
– SGSモデルとして、Sullivan et al (1994)のモデルを採用
– 渦粘性の影響に関して経験的な扱いをしている部分は
Dynamic SGSモデルが将来有効であろう。
• 霧の発生シミュレーションを行った
– 発生、発達、消滅の3つの段階に分かれた。
• 発生期:風向に沿った縞模様→さらなる細かいLES解析が必要
• 発達期:K-H不安定理論に合致する擾乱が発生
• 消滅期:地上付近から消滅し始め、地表加熱による対流不安定
により様々な構造が見られる。
• 観測による検証が重要
– リモートセンシング機器:レーダー、ライダー
計算流体力学手法
– RANS(Reynolds-Averaged Navier-Stokes Equations) model
• 一般の気象予報数値モデル
• レイノルズ平均<・>
f=<f> + f ’, g = <g> + g’ とした場合
<<f>> = <f>, <f ‘> = 0, <<f> <g>> = <f> <g>, <<f>g ’> = 0
アンサンブル平均や時間平均操作などが対応
• レイノルズ平均で表される緩やかな変動を対象
– LES (Large Eddy Simulation)
• 平均処理に代り「フィルタリング」による処理
• 計算格子で捉えられる渦は直接計算
• それ以下のサブグリッドスケール成分の影響(SGS応力)をモデル化
– DNS (Direct Numerical Simulation)
• 乱流の最小スケール(Kolomgorovのマイクロスケール)まで解像。
• 格子数: レイノルズ数の9/4乗 → グリッド数が膨大
気象予報モデルにおけるRANSとLES
LES
RANS
• 基礎方程式
• 基礎方程式
– Navier-Stokes方程式、連続の式
– Primitive 方程式系
• 平均化処理
• 平均化処理
– フィルタリング処理
– アンサンブル平均
– 平均化のスケール
• 擾乱場スケールより十分大
• 平均場スケールより十分小
平均場と擾乱場スケールが大きく異な
るときに、平均場の動きを良好に解析
できる。
モデルグリッド
乱流渦
– 慣性小領域にフィルタスケールが
来るように設計
• 大きな乱流による乱流輸送を明示的
に解析
アンサンブル平均から外れる極端な現
象を表すのに適する。
モデルグリッド
乱流渦
粗度の大きいときの境界層構造
zi
Mixing Layer
(混合層)
5 zH < 0.1 zi
5 zH
Surface Layer
(接地境界層)
相似則が成り立つ領域
3 zH
Roughness Sub Layer
(遷移層)
zH
Canopy Layer
(キャノピー層)
キャノピー層が高い場合には遷
移層が高くまで達し、
モニン・オブコフ相似則が成り立
つ接地境界層が明瞭に形成され
ない場合がある。
遷移層に発生する、大規模な乱
流構造がエネルギー・物質輸送に
重要な役割を果たしている。
森林上空の疎度境界層の基本的構造
温度変動
平均風速プロファイル
Shaw et al 1989
群落高
Mayer et al 1986
鋸波構造(ランプパターン)が
キャノピー層の数倍の高さまで見られる
コンター:気温
矢印:風速
森林大気間のフラックスの約40%がラン
プパターンの前後10数秒のうちに輸送
Liu et al (1994)
群落乱流のLES (Watanabe 2004)
水平断面図
8h
u
19.2h
h:群落高
グリッド間隔:0.1h
19.2h
w
微細前線の水平断面図
u
p
w
スカラー量
p
スカラー量
群落乱流の生成要因
• 混合層乱流のアナロジー仮説 (Finnigan,
2000)
– 風速分布が植生上端で変曲点をもつため、
不安定が発生、発達する。
– ロール構造の渦間隔スケールが理論計算と
一致する場合が多い。
• Watanabe (2004)
– アナロジー仮説によるものより、大きいスケール
のロール構造が発達している。
– 渦が上層から群落に進入してくる様子が見られる。
– 上層からの渦と下層渦の相互作用
さらなる先行研究調査が必要
リモートセンシングによる、風速、気温、水蒸気の測定が有効