Transcript デジタルカロリメータ
リニアコライダー実験用カロリメータの設計研究 2006/03/01 筑波大学 山口佳博 研究目的 • リニアコライダー実験における、ジェットエネルギー分解能と、 ハドロンカロリメータのエネルギー分解能の目標を満たすカロ リメータを設計することが、本研究の目的である。 – 分解能の目標値は以下である。 ジェット ハドロンカロリメータ jet E jet 30 % E jet E E ( 50 %) 2 ( 2 %) 2 E – リニアコライダー実験で新しく用いる事が考えられている、デジタルカ ロリメータの有効性について評価する。 • デジタルカロリメータとは、カロリメータのエネルギー測定方法として、従来 のアナログ(波高)読み出しではなく、デジタル(ヒット数)を用いて測定を 行う。 2006/03/01 2 リニアコライダー計画・検出器 • リニアコライダー実験とは リニアコライダー検出器 – 電子・陽電子衝突型線形加速器 – 重心系エネルギー 210GeV 1TeV – トップクォークの精密測定 – ヒッグス粒子の探索 – 新粒子の発見 検出器 紫: バーテックス検出器 赤: タイムプロジェクションチェンバー 緑: 電磁、ハドロンカロリメータ 灰: ソレノイド (3T) 青: ミューオン検出器 2006/03/01 3 カロリメータ ハドロンカロリメータ 130 層: 6.5 0 シンチレーター 2mm 12cm 分割 1212 • Parameter List • Endcap Inner R = 40cm • Barrel Tower Front R = 210cm • Endcap Tower Front R = 270cm 鉛 8mm 電磁カロリメータ 38 層: 27 X0 シンチレーター 1mm 12cm 分割 33 2006/03/01 鉛 4mm 4 PFA (Particle Flow Algorithm) ee Z0H qq, s 500 GeV • ジェットを構成する粒子 – 荷電粒子 65% – 光子 25% – 中性ハドロン 10% • ジェットのエネルギー測定法 = PFA (Particle Flow Algorithm) – 荷電粒子は飛跡検出器で測定された運動量を使用する。 – 光子は電磁カロリメータでエネルギーを測定。 – 中性ハドロン粒子はハドロンカロリメータでエネルギーを 測定。 2006/03/01 5 デジタルカロリメータ • PFA を用いた場合、ジェット内の粒子同士のシャワーの 重なりを小さくするために、カロリメータの横方向の分割 を細かくする必要性がある。 • チャンネル数が膨大になり、従来のアナログ読み出しで は回路が複雑になり、費用がかかりすぎる。 デジタルカロリメータ – – – – タイルサイズを十分小さくする。 ヒットが有ったか無かったか、というデジタル情報を用いる。 測定されるエネルギーとヒット数の間には比例関係が成り立つ。 読み出しが容易で、費用も安い。 • アナログ読み出しとデジタル読み出しの違い Etotal = EEM EHD (Analog) = EEM W NHD (Digital) 2006/03/01 6 Jupiter & Satellites Used Geant4.07.01.p01 and root4.04.02 2006/03/01 7 Cheated PFA Cheated PFA And idealistic hit 2006/03/01 8 単一粒子による分解能 • 使用した事象 – – – – – パイ中間子 3 100 GeV 3000 事象 電磁カロリメータ: 4cm4cm ハドロンカロリメータ: 1cm1cm 3cm3cm • 右図より、高エネルギー粒子では測 定されたエネルギーとヒット数の相 関に大きな広がりが存在。 ハドロンシャワー中で高エネルギー の電磁シャワーが発生したため。 2006/03/01 測定されたエネルギーとヒット数の相関 閾値 0.5 MIP タイルサイズ: 1cm1cm ハドロンカロリメータ Area 1 Area 2 9 シャワーの違い (パイ中間子 100GeV) ハドロンシャワー Area 1 EMCAL 電磁シャワー成分が支配的 Area 2 HDCAL EMCAL HDCAL ピンク;電子 青;ミュー粒子 赤;パイ中間子 緑;陽子 2006/03/01 10 デジタルカロリメータ 変換係数 W W < EHCAL > / < NHCAL > NHD Etot EEM WNHD EEM NHD2 NHD 3GeV 100GeV Nhits 2006/03/01 11 エネルギー分解能 分割依存性 閾値依存性 閾値: 0.5MIP タイルサイズ: 1cm1cm 分割による依存は低エネルギー では少ないが、高エネルギーではタ イルサイズが小さいほうが良い。 2006/03/01 閾値依存による分解能はそれほど 違いが見られない。 12 セミデジタルカロリメータ デジタル = 1ヒット / 1タイル しかし、1タイルのヒットの重複度 が大きい セミデジタルカロリメータ ヒットの定義 パイ中間子 50GeV 測定されたエネルギー / タイル 2006/03/01 • セミデジタルは 2bit の情報を読 み出す。 • 閾値は3つ設定できる。 • 1つ目の閾値は 0.5 MIP に固定。 • 残り2つの閾値を最適化する。 • タイルサイズ: 1cm1cm MIP 測定されたエネルギー (MIP) ヒット数 0 0.5 0 0.5 n 1 n n2 n n2 n2 13 閾値依存性 閾値依存性 閾値: 0.5, 10, 100 MIP タイルサイズ: 1cm1cm 閾値が 0.5,10,100 MIPの場合、最 も分解能が良くなることが分かった。 2006/03/01 デジタル読み出しと比べ、エネル ギーとヒット数に1次の相関がはっきり とみえる。 14 応答一様性 応答一様性 線形性のずれ E E 2006/03/01 E measured E fit E fit 15 エネルギー分解能 デジタル: 0.5MIP セミデジタル: 0.5, 10, 100 MIP タイルサイズ: 1cm1cm エネルギー分解能 E 2 stochastic E cons tan t 2 • Analog ; sto = 48.9 0.6 % con = 5.0 0.2% • Digital ; sto = 37.0 0.9% con = 13.8 0.2% • Semi ; sto = 45.1 0.6% con = 6.8 0.1% 2006/03/01 16 ジェットイベント • ee qq (u/d/s)、 s = 91 GeV, 350 GeV, 500 GeV • 両ジェットがカロリメータのバレル部 に入る事象を用いた。 • デジタルの閾値は 0.5 MIP に固定。 • 解析にはPFAを用いるので、デジタ ルカロリメータに関係するのは、主 に K0L中間子と中性子である。 2006/03/01 ee qq、s = 350 GeV 17 • ee qqbar, s 300GeV • ここでは “タイルに入った粒子数” を、1タイルに入った親粒子の数と 定義する。 親粒子 1個 親粒子 2個 タイルに入った粒子の割合 [%] PFAによる分割依存性 タイルに入った粒子数 • • • 青いタイル: 1粒子 赤いタイル: 2粒子 2006/03/01 1cm1cm: 1粒子 ~ 100 % 2cm2cm: 1粒子 ~ 70 % タイルサイズが1cm 1cm と 2cm2cm とで粒 子数の割合が大きく違う。 分割は 1cm1cm であることが望ましい。 18 デジタルカロリメータ • Wight factor を求める EnergyDeposit / Nhits 2006/03/01 EnergyDeposit 19 K0L中間子の分解能 s = 91 GeV ジェット中のK0L中間子が実際に 持つエネルギー。 ほとんどが数 GeV のエネル ギーしか持たない。 2006/03/01 各エネルギー領域で、カロリメータで測定し た値をジェネレータから得た値で割り、ガウ スフィットして得られた分解能。 低エネルギーではアナログとデジタルで 差は無い。 20 ジェットエネルギー分解能 カロリメータで測定されたエネル ギーを用いて、PFA によりジェット エネルギー分解能を算出した。 タイルサイズが 1cm1cmの場合 は、デジタル読み出しでアナログと同 程度、もしくは良い分解能を得られる。 2006/03/01 21 まとめ • シミュレーションにより単一粒子を入射させた場合と、 ジェットの場合でのデジタルカロリメータの性能を調 べた結果、十分なジェットエネルギー分解能を持つ ことが分かった。 – 単一粒子入射の場合 • デジタル読み出しでは、50 GeV 以上の入射エネルギーを持った 粒子に対するエネルギー分解能が悪い。 • タイルサイズは小さいほうが良い。 • 分解能は閾値にはそれほど依存しない。 • セミデジタルでは 100GeV までのエネルギー領域で、ほぼアナロ グ読み出しと同等の分解能が得られる。 – ジェット事象の場合 • タイルサイズが 1cm1cmの場合、s 500 GeV までの事象にお いては、デジタル読み出しで目標となるジェットエネルギー分解能 の性能を持つことが分かった。 2006/03/01 22