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日本と東アジアの環境と貿易(二) アジア研究所 小山 直則 1 今日学ぶこと 天野(2001)『地球温暖化の経済学』、第1章 2 第1章 環境問題の基本的原因 ●環境問題と外部効果 ⇒「ある経済主体の活動 によって、①その活動 の付随的な影響が② 市場取引を経由しない 形で③直接他の経済 主体に及び、④それに 対して何の経済取引も 伴わないことがある。」 ●例 ①生産活動に伴う排煙 ②大気を通じて広がる ③付近住民への健康被 害 ④工場は何の補償もしな い ⇒このような効果を外部 効果という。 3 第1章 環境問題の基本的原因 ●環境問題と外部効果 ⇒「ある経済主体の活動 によって、①その活動 の付随的な影響が② 市場取引を経由しない 形で③直接他の経済 主体に及び、④それに 対して何の経済取引も 伴わないことがある。」 ⇒このような効果を外部 効果という。 ⇒他の経済主体に不利な 影響が及ぶ場合には 負の外部効果(または 外部不経済)という。 ⇒正の外部効果(外部経 済)の例は? 4 第1章 環境問題の基本的原因 ●例 ●負の外部効果 ⇒「ある経済主体の活動 によって、①その活動 の付随的な影響が② 市場取引を経由しない 形で③直接他の経済 主体に及び、④それに 対して何の経済取引も 伴わないことがある。」 ①ある漁業者の生産性の 向上(魚群探知機の導 入) ②海の使用に対する市場 が存在しない。 ③魚の量が減ると他の漁 業者が魚を発見しにくく なり、生産性が低下す る(ストック外部性) ④海の使用量を負担しな い。 5 第1章 環境問題の基本的原因 ●環境問題の基本的原 因は何か? ⇒環境資源(大気、水、天 然資源など)に対する 所有権が明確ではない ことから環境問題が発 生する。 ⇒所有権が明確ではない ことから、 ⇒この場合、負の外部効 果が発生することがあ る。 例. 環境汚染、漁業など ⇒この負の外部効果に対 する費用を外部費用と いう。 6 第1章 環境問題の基本的原因 ⇒しかし、環境資源の所 有権は一般的に明確で ●外部費用とは? はないことが多いため、 ⇒企業は労働力や資本 ⇒企業は環境資源を利用 (工場、機械など)など するときに、負の外部 の生産要素を用いて生 効果をもたらし、 産活動を行う。 ⇒これらの生産要素には ⇒その利用費用を支出し 所有権が存在するため、 ないで生産活動を行っ ている。 労働力や資本を利用す るためには、労働費用 ⇒このような経済主体の 意思決定の外に置か や資本費用などの私的 費用の負担が伴う。 れた費用を外部費用と いう。 7 第1章 環境問題の基本的原因 ●私的限界費用 ⇒10個生産している企業 が追加的にもう一単位 生産するために掛かる 費用を限界費用という。 ⇒企業は一般的に環境汚 染や資源利用の費用を 考慮しないで生産活動 を行っているので、これ は私的限界費用である。 価格、限界費用 供給曲線 需要曲線 私的限界費用 (労働費用、資本費用) 10個 需要量、供給量 8 第1章 環境問題の基本的原因 価格、限界費用 ●社会的限界費用 ⇒企業が実際に費用を負 担する労働や資本の私 的限界費用だけではな く、 ⇒環境汚染や天然資源 の利用費用(限界外部 社会的限界費用 費用)を含めた費用を 社会的限界費用という。 供給曲線 限界外部費用 需要曲線 私的限界費用 10個 需要量、供給量 9 第1章 環境問題の基本的原因 価格、限界費用 ●市場価格 ⇒市場価格と均衡取引量 は需要と供給が一致す るところで決定される。 100円 ⇒100円のとき需要量と 供給量が一致し、均衡 取引量は20個となる。 供給曲線 需要曲線 私的限界費用 20個(均衡取引量) 10 第1章 環境問題の基本的原因 価格、限界費用 ●企業の供給行動 ⇒ミクロ経済学で学んだ ように 価格=限界費用 100円 となるところで利潤が最 大化されるため、このと 70円 きの供給量が最適供給 量(20個)である。 供給曲線 需要曲線 私的限界費用 100円 10個 20個(均衡取引量) 11 第1章 環境問題の基本的原因 価格、限界費用 ●企業の供給行動 ⇒市場価格が100円のと き、10個供給するので あれば、限界費用は70 100円 円なので、 価格>限界費用 70円 となる。 ⇒したがって、企業はさら に生産量を拡大した方 が利潤を最大化できる。 供給曲線 需要曲線 私的限界費用 100円 10個 20個(均衡取引量) 12 第1章 環境問題の基本的原因 価格、限界費用 ●限界外部費用 ⇒企業が生産物を一単位 生産するごとに近隣住 民に1円分の環境汚染 100円 被害をもたらすとしよう。 限界外部費用 ⇒追加的な生産物一単位 1円 あたりの外部費用を限 界外部費用という。 供給曲線 需要曲線 私的限界費用 20個(均衡取引量) 13 第1章 環境問題の基本的原因 価格、限界費用 供給曲線 ●社会的限界費用 ⇒企業が20個生産する場 合、実際に負担する私 的限界費用は100円で ある。 ⇒汚染による限界外部費100円 需要曲線 用(1円)は負担していな 限界外部費用 1円 私的限界費用 い。 ⇒したがって、20個生産し ている場合の企業の社 会的限界費用は、 20個(均衡取引量) 100+1=101円である。 14 第1章 環境問題の基本的原因 価格、限界費用 供給曲線 ●汚染者負担原則 ⇒政府が環境税を導入し て限界外部費用を企業 に負担させるとしよう。 ⇒すると、20個から21個100円 に生産量を拡大させる 需要曲線 限界外部費用 と、私的限界費用は 1円 私的限界費用 100円であるが、限界 外部費用は1円である。 ⇒価格100円<私的限界 20個(均衡取引量) 費用100円+環境税1円 15 第1章 環境問題の基本的原因 価格、限界費用 供給曲線 ●汚染者負担原則 ⇒20個の場合 価格100円<私的限界費 用100円+環境税1円 100円 ⇒企業の追加的な生産費 用の方が大きいので、 需要曲線 限界外部費用 1円 私的限界費用 生産量を減らした方が利 潤が大きくなる。 ⇒環境税の導入によって 20個(均衡取引量) 企業に外部費用を認識 させることができる。 16 第1章 環境問題の基本的原因 ●再生可能資源 来期の魚の量 ⇒漁業資源や森林資源な どそれ自身が回復能力 を持つ資源を再生可能150万 資源という。 ⇒今期100万の数の魚が 100万 いるとしよう。 ⇒漁業を行わなければ、 来期には150万の数に 増加する。 45度線 100万 今期の魚の量 17 第1章 環境問題の基本的原因 ●再生可能資源 来期の魚の量 ⇒漁業を行わなければ、 来期には150万の数に 増加する。 ⇒今期に50万だけ漁獲す150万 ると来期は100万となる。 100万 ⇒毎期50万だけ漁獲すれ ば毎期100万の数の魚 を維持できる。 ⇒50万以上漁獲すれば、 魚の数は減少していく。 100万 45度線 今期の魚の量 18 第1章 環境問題の基本的原因 ●再生可能資源 来期の魚の量 ⇒魚の数が60万を下回る と、魚の数は毎期毎期 減少し、最終的に絶滅 150万 する。 45度線 100万 60万 100万 今期の魚の量 19