スライド 1

Download Report

Transcript スライド 1

1. 生活保護制度の概要
下記、厚生労働省資料より引用、一部修正・改変
1 生活保護制度の目的
○ 最低生活の保障
⇒ 資産、能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する者に対し、困窮の程度に応じた保護を実施
○ 自立の助長
最低生活の保障
① 資産、能力等をすべて活用することが保護の前提
・不動産、自動車、預貯金等の資産
・稼働能力の活用
・扶養義務者からの扶養
・年金、手当等の社会保障給付 等
◇保護の開始時に調査
(預貯金、扶養義務者の状況及び扶養能力、年金、手当
等の額、傷病の状況等を踏まえた就労の可否等)
◇保護適用後にも届出を義務付け
② 支給される保護費の額
・厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費から収入を差し引いた差額を保護費として支給
最
低
生
活
年金等の収入
費
収入としては、就労による収入、年金等社会保障の給付、親族に
よる援助等を認定。
預貯金、保険の払戻し金、不動産等の資産の売却収入等も認定
するため、これらを使い尽くした後に初めて保護適用となる。
支給される保護費
自立の助長
・世帯の実態に応じて、年数回の訪問調査
・就労の可能性のある者への就労指導、病院入院者の在宅への復帰促進
等
1
2 生活保護基準の内容
生活保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要
な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでな
ければならない。(生活保護法第8条第2項)
生活を営む上で生じる費用
対応する
扶助の種類
支
給
内
容
生活扶助
基準額は、
①食費等の個人的費用(年齢別に算定)と
②光熱水費等の世帯共通的費用(世帯人員別に算定)
を合算して算出。
なお、特定の世帯については加算が上乗せされる。
→ 母子加算、障害者加算等
アパート等の家賃
住宅扶助
定められた範囲内で実費を支給
義務教育を受けるために必要な学用品費
教育扶助
定められた基準額を支給
医療サービスの費用
医療扶助
費用は直接医療機関へ支払(本人負担なし)
介護サービスの費用
介護扶助
費用は直接介護事業者へ支払(本人負担なし)
出産費用
出産扶助
定められた範囲内で実費を支給
就労に必要な技能の修得等にかかる費用
生業扶助
〃
葬祭費用
葬祭扶助
〃
日常生活に必要な費用
(食費・被服費・光熱水費等)
2
3 東京都区部等の支給額の例 (平成24年度)
生活扶助
標準3人世帯(33歳、29歳、4歳)※
住宅扶助含む
172,170円
241,970円
80,820円
134,520円
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳)
121,940円
175,640円
母子世帯(30歳、4歳、2歳)※
193,900円
263,700円
高齢者単身世帯(68歳)
※母子加算、児童養育加算含む。
4 生活保護の手続
事前の相談
・生活保護制度の説明
・生活福祉資金、障害者施策等
各種の社会保障施策活用の
可否の検討
保護の申請
・預貯金、保険、不動産等の資産調査
・扶養義務者による扶養の可否の調査
・年金等の社会保障給付、就労収入等
の調査
・就労の可能性の調査
保護費の支給
・最低生活費から収入を引いた額を支給
・世帯の実態に応じて、年数回の訪問調査
・収入・資産等の届出を義務付け、定期的に
課税台帳との照合を実施
・就労の可能性のある者への就労指導
5 保護の実施機関と費用負担
○ 都道府県(町村部)・市(市部)が実施。
○ 都道府県・市は、福祉事務所を設置し、被保護世帯に対して担当のケースワーカーを設定。
○ 保護費については、国が3/4、地方自治体が1/4を負担。
3
7 保護費支給額の算定
○ 保護費支給額
保護費支給額
=
○ 最低生活費
最低生活費
最低生活費
-
収入認定額
※ 各扶助は、世帯の実状に応じ、必要がある場合に算定
=
生活扶助
+
住宅扶助
+
教育扶助
+
医療扶助
+
介護扶助
+
出産扶助
+
生業扶助
+
葬祭扶助
=
勤労収入
+
その他収入
+
○ 収入認定額
収入認定額
・超過勤務手当、通
勤手当等含む(勤労
控除後※)
扶養義務者からの扶養
・児童扶養手当、年
金等の社会保障給
付
※ 勤労収入がある場合の収入認定額の算定方法
勤労収入
-
勤労控除額
-
実費控除額
・社会保険料や通勤費等
(勤労収入がある世帯の平均額)
65,830円
-
22,445円
-
4,863円
=
38,522円
平成16年 被保護者全国一斉調査
○ 勤労控除の趣旨
①勤労に伴う必要経費を補填
勤労収入を得るためには、勤労に伴って被服費や知識・教養の向上等のための経費が必要となることから、
勤労収入のうちの一定額を控除する。控除額は収入額により異なる(収入額8,340円までは全額控除)。
②勤労意欲の増進・自立助長
5
生活保護受給者(被保護世帯、被保護実人員)
の推移
%
万世帯、万人
250.0
6.0
被保護世帯数(左目盛)
被保護者数(左目盛)
5.0
完全失業率(右目盛)
200.0
4.0
150.0
3.0
100.0
2.0
50.0
1.0
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
0.0
1990
0.0
2014年7月時点で216万人(160万世帯)
生活保護費(国・地方計)の推移
億円
40,000
37,652
38,000
35,967
36,000
34,000
32,501
32,000
30,000
28,264
28,683
28,589
2005
2006
2007
29,365
28,000
26,000
24,000
22,000
20,000
2008
2009
2010
2011
年度
注)地方財政白書による決算ベースの生活保護費
急増の背景
• 2009年ごろから急増を始めた生活保護率。
• 2008年ごろまで安定していた予算からは、
8000億程度上昇している。
• この背景として厚労省は、リーマンショックに
よって景気が急落・低迷していることを挙げる。
• しかし、その説明には無理がある。なぜならば、
リーマンショック後、3年以上が経過、震災前ま
で景気はずっと回復していたにも関わらず、生
活保護は前にもまして急増しているからである。
世帯類型別の生活保護受給世帯の前年比伸び率
総 数
高齢者世帯
障害者世帯・傷病者世帯
母子世帯
その他の世帯
単位:千人
2012
2006
2007
2008
2009
2010
2011
1,074
1,103
1,146
1,271
1,405
1,492
1,552
( 3.3% )
( 2.7% )
( 3.9% )
( 6.2% )
( 4.0% )
474
498
524
563
604
636
678
( 4.8% )
( 5.0% )
( 5.3% )
( 7.5% )
( 7.2% )
( 5.5% )
( 6.5% )
397
401
407
436
466
489
475
( 1.9% )
( 0.9% )
( 1.5% )
( 7.1% )
( 6.8% )
( 5.0% )
(-2.8%)
93
93
93
100
109
113
114
( 2.3% )
( 0.3% )
( 0.5% )
( 6.6% )
( 9.2% )
( 4.2% )
( 0.7% )
110
111
122
172
227
254
285
( 2.4% )
( 1.3% )
( 9.2% )
( 10.9% ) ( 10.6% )
( 41.5% ) ( 32.2% ) ( 11.6% ) ( 12.3% )
注)厚生労働省大臣官房統計情報部「社会福祉行政業務報告」(福祉行政報告例)より。
急増の原因
• 急増の直接の原因は、厚労省の政策変更。
• きっかけは、2008年末の年越し派遣村。
• 派遣切りより多かった若いホームレスなどに、
異例の基準で、即座に生活保護を認めた。
• それが前例となり、後追い的に厚労省が出し
た通達によって、従来は生活保護を認められ
なかった若く働ける層(稼働層)に生活保護
受給が拡大。統計上は、その他世帯が多い。
生活保護行政に関する近年の主要事項
の年表
年月
出来事
1998年4月頃から
ホームレスの急増と、病院退院者・施設退所者に対する敷金支給などの運用開始
2003年8月~2004年12月 社会保障審議会福祉部会「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」
2005年4月から12月
2006年3月
2008年12月
2009年3月
生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会、協議会終了後の生活保護適
正化に関する確認書
「生活保護行政を適正に運営するための手引について」厚生労働省社会・援護局
保護課長通知 社援保発第0330001号
「暴力団員に対する生活保護の適用について(通知)」厚生労働省社会・援護局
保護課長通知 社援保発第0330002号
年越派遣村設営
「職や住まいを失った方々への支援の徹底について」厚生労働省社会・援護局保
護課長通知 社援保発第0318001号
「現下の雇用情勢を踏まえた取組について」厚生労働省社会・援護局地域福祉課
長通知 社援地発第0318001号
2009年10月
「緊急雇用対策」における貧困・困窮者支援のために生活保護制度の運用改善に
ついて」厚生労働省社会・援護局保護課長通知 社援保発1030第4号
2009年12月
「失業等により生活に困窮する方々への支援の留意事項について」厚生労働省社
会・援護局保護課長通知 社援保発第1225第1号
民主党政権前の状況
水際作戦
ダ
ム
受給長期化
不正受給
詐欺事件
• 生活保護行政は振り子のように左右に。
• ワーキングプアは、2010年の厚労省研究班の
調査では229万世帯、ほぼ生活保護受給世帯
の倍いる。
• 「捕捉率」が低い状況を支えていたのが、生活
保護受給の要件で一種のダムの役割を果たし
ていた。特に、稼働能力要件は主観も入る厳
しい基準で、その中には、水際作戦など批判さ
れたような行き過ぎもあった。
• この堰を切ったことで、急増している稼働能力
層は、景気が良くなっても減ることはなく、政策
変更なければダム湖が尽きるまで続く。
問題の所在
• ただ、2009年末時点では、生活保護に代わる
制度がなかったから、「緊急時の救済策」とし
ての緩和通達は正しかったと評価できる。
• 問題は、第二のセーフティーネットが整備され
たり、景気が回復したという状況変化にも関
わらず、泥縄式の対策を継続していること。
• 法律変更ではなく、通達行政なので、ケース
ワーカーの整備や自立支援策などが適切に
予算措置されず、現場が大混乱に。
• 特に都市部では、ケースワーカー1人あたり
のケース数が100を超えており、2、3か月に1
度の訪問では、不正の摘発や、自立に向けて
のケースワーキングなど不能(計算ワーカー
化)。不正受給の横行や、生活保護長期化の
背景には、こうした供給体制の量的ほころび。
• 手間のかかる住居支援できず、都市部では、
ネットカフェ難民から、ネットカフェ生活保護。
• また、デフレ下、賃金が減少する中で、10年
以上もまったく保護費が減らないために、相
対的に不公平感・労働意欲減。旨味多いので
貧困ビジネスが入り込む余地も大きくなる。
• 増える不正受給:2013年度に約3万6千件(前
年度比40%増)、全体に占める割合はわずか
2.4%だが、氷山の一角。不正の内訳は賃金
収入の無申告が約45%と最も多く、年金の無
申告(約25%)、収入を過小申告(約10%)
• 主な事件:滝川タクシー事件、大阪市西区の
中国人姉妹の親族とされる中国人53人が日
本への入国直後、生活保護受給、芸人次長
課長の河本氏の疑惑
• 不適正支出の問題:兵庫県小野市のパチンコ
規制
• 増加する貧困ビジネス。ただし、無料低額宿
泊所が直ちに貧困ビジネスではない。その多
くは必要性の高い施設である。ただ、住宅扶
助という制度の不備が貧困ビジネスを誘発す
る原因に。
• 就労の動機づけが全く無い生活保護制度に
より、「貧困の罠(後述)」に陥る生活保護受給
者が多い。低い勤労控除。就労するとタダ働
きになることが、不正受給を生むもう一つの背
景。
• 高すぎる最低賃金。生活保護受給者の仕事
が失われてしまう。
病院の貧困ビジネス
• 2008年6月に奈良県大和郡山市で、診療報
酬詐欺事件として摘発された医療法人雄山
会「山本病院」の事件。
• 架空診療報酬を請求。必要のない手術を行っ
て患者を死亡させた業務上過失致死事件。
• 食い物にされた人々の多くは、元ホームレス
の人々や高齢の日雇労働者で、現在は生活
保護受給者となっている患者達。
• そうした患者達に対して不必要で膨大な検査・
手術を繰り返し行なったり、長期入院患者の診
療報酬が制度的に引き下がってしまうために、
同種の病院ネットワークを使い、患者を短期間
で繰り返し転院させて診療報酬を荒稼ぎしたと
される。
• また、患者の意思や病状を無視し、診療報酬
が高いが危険な心臓カテーテル手術を、月20
件のノルマを掲げて実施していた。
• その中には相当数の不必要な手術、死亡例が
存在しているとみられる。
山本病院は氷山の一角
• 実は山本病院は、こうした病院ネットワークの
「下流」、いわば場末の病院。
• はるかに実入りの良い貧困ビジネスは、「上
流」の大阪市とその周辺にある病院が行なっ
ている。
• こうした病院ネットワークは、「行路病院(行旅
病院ともいう)」と呼ばれる種類の病院が多い。
• ホームレスの人々や高齢の日雇労働者が、
心筋梗塞や脳梗塞などで路上で倒れた場合
に、救急搬送先となる。
• その場合、「急迫保護」といって直ぐに生活保
護にかけ、生活保護費から医療費(医療扶
助)を支出できるようにする。
• こうした生活保護受給者の患者のほとんどは、
こうした病院の転院ネットワークの中でたらい
まわしにされ、その一生を終えてしまう。
なぜ行路病院問題が起きるのか
• 4つの要因。
• 第一に、ホームレスの人々や、高齢で仕事が
なくなった日雇労働者に対する診療の利益幅
が非常に大きい。
• 既に学んだように、ホームレスの人々、高齢
の日雇労働者は、長年、路上生活や不安定
な生活を続ける中で、糖尿病や高血圧、肝臓
病などの慢性疾患を患っている一方、医療保
険証を既に所有せず、持病を長年放置。
• 救急搬送された場合には、手術や検査などで
多額の診療報酬を請求できる重篤な病状。
• その後も検査で新たな病気を発見して治療を
する余地はいくらでもあるため、過剰な検査・
治療を行なうことの名目が立ちやすい。
• このため、最初に救急搬送される病院以外に
も、第二、第三の転院先でも、十分に検査や
治療を行なうことができ、十分な実入りを確保
出来る。
• 第二に、生活保護制度は、患者自己負担が全
く発生しないために、モラルハザード(患者、医
療機関の双方)が起きやすい。
• 医療扶助は自己負担がないため、過剰な検
査や手術に、本人、家族が文句を言わない。
• 患者側も、病気が原因で生活保護にかかって
いるため、たらいまわしを拒否した場合、病院
から追い出されるだけではなく、生活保護も同
時に打ち切られる可能性が高い。
• このため、過剰な検査、手術に苦しみながらも、
それに甘んじざるを得ない。
• 第三の背景は、行政側の診療報酬請求に対
するチェック体制の不備。
• 電子化されたレセプト情報を個人ごとに過去
から繋いでチェック(縦覧点検)ができない現
状。
• 生活保護行政を行なうケースワーカーには、
専門知識のある医療関係者がほとんどおら
ず、なかなか診療内容にまで立ち入る検査が
出来ないという問題。
• 第四に、行政と行路病院のもたれあいの構造。
第二のセーフティーネットと
その問題点
• 求職者支援制度(平成23年10月1日施行)
• それまでは、緊急人材育成・就職支援基金事
業として、平成21年7月にスタート。
• 求職者支援制度とは、雇用保険を受給できな
い失業者に対し、
– (1)無料の職業訓練(求職者支援訓練)を実施し、
– (2)本人収入、世帯収入及び資産要件等、一定の
支給要件を満たす場合は、職業訓練の受講を容
易にするための給付金を支給するとともに、
– (3)ハローワークにおいて強力な就職支援を実施
することにより、安定した「就職」を実現するため
の制度。
– 雇用保険が適用されない失業者とは、雇用保険
の適用がなかった者、加入期間が足りず雇用保
険の給付を受けられなかった者、雇用保険の受
給が終了した者、学卒未就職者や自営廃業者等
• 具体的な内容。
• ① 「求職者支援訓練」又は「公共職業訓練」
を受講。
• ② 訓練期間中及び訓練終了後も、ハローワ
ークが積極的な就職支援を行う。 「就職支援
計画」に基づき、ハローワークでの定期的な
職業相談。
• ③ 一定の要件を満たす方に「職業訓練受講
給付金」を支給。職業訓練受講手当 月額10
万円+通所手当(原則として最長1年)。
• 求職者支援資金融資
• 職業訓練受講給付金の受給者で、職業訓練
受講給付金だけでは生活費が不足する者は
、希望に応じて、労働金庫(ろうきん)の貸付
制度を利用することができる。
• 貸付の上限額は、同居又は生計を一にする
別居の配偶者等がいる場合は月10万円、そ
れ以外の場合は月5万円。
• 総合支援資金貸付
• 失業等により日常生活全般に困難を抱えてい
る者に対する、生活支援費(上限:2人以上世
帯月額20万円・単身月額15万円×最長12ヶ
月)などの貸付制度。住宅入居費40万円以内
、一時生活再建費60万円以内。
• 「総合支援資金貸付」は、失業等により日常
生活全般に困難を抱えている方を対象として
、生活の立て直しや経済的自立等を図ること
を目的とした制度。
• 社会福祉協議会とハローワークによる支援を
受けながら、社会福祉協議会から、賃貸住宅
入居時の敷金・礼金等のための資金や、生活
を支援するための資金などの貸付を受けるこ
とができる。
• 申請窓口は、市町村の社会福祉協議会。
• 貸付期間が終了してから6ヵ月後からが返済
のスタート。最長で20年以内での完済。
問題の対処をどう進めるか
• 生活保護法等改正
• 手続きの文書化(ただし、口頭申請も認める)
• 生活保護受給者の生活上の責務明確化(健
康管理、服薬管理)
• 不正受給に対する罰則を引き上げ、返還金に
ペナルティーを加算
• 不正を防ぐため福祉事務所の調査権限を拡
大
・扶養義務者に通知と調査
・指定医療機関の指定制見直し、指導強化、ジ
ェネリックの活用
→日弁連や活動家の反対運動が盛り上がる。
・①「水際作戦」の実質的合法化、②親族による
扶養義務の実質要件化、③調査権限の強化
→扶養義務に関しては、民法改正が必要。目安
として、ガイドラインの必要性。
• 生活困窮者支援法
• 困窮者向けの総合相談窓口を自治体に設置
。個別に支援計画を立て、自立まで継続的に
サポート。
• 「就労準備支援」として、「中間的就労」の場を
確保
• 多重債務問題の解決に向けた貸し付けと家
計相談を組み合わせた支援、家賃補助、低所
得世帯の子どもの学習支援
• 住宅手当の恒久化
• 就労自立給付金制度の創設
• 全ての貧困者を生活保護で救わなければなら
ない理由は無い(VS憲法学者)。就労可能者
には、生活保護に代わる支援を整備する。また
、生活保護受給者にも自立促進を行う。
• イギリスのジョブセンタープラス等の制度が参
考に。アメリカの現物給付の組み合わせ
• より根本的には、給付付き税額控除(EITC)に
よって、ワーキングプアも含めた包括的対策が
望ましい。
• 医療扶助の改革はより根本的に(国保加入、
自己負担よりも、アクセスコントロール)
<参考>貧困の罠(poverty trap )
• 消費と余暇の関数である (cは消費、lは余
暇)で規定され、個人は、自らの予算制約式
c  w( L  l )  A
• (ここで、wは賃金水準、Lは個人の有する時
間全体(すなわちL-lは、労働時間に対応。)
およびAは保有資産。)の下で、効用の最大
化を図る。
• 伝統的な公的扶助政策として実施されてきた
のは、最低「所得」保障。
• 低所得者が自ら稼得した所得 w( L  l )
が最低所得Gに不足する金額を、政府が給付
する。
• つまり、予算制約は、
c  w ( L  l )  max( 0 , G  w ( L  l ))
消費 c
C
無差別曲線
最低所
A
B
得G
O
労働時間
L-l
日本の場合には、先に触れた勤労控除という仕組みが
あるが、限界税率は100%に近く、限りなくこの状況に
近い。
負の所得税(Negative Income Tax)
・ノーベル経済学者Friedman(1962) が提唱。
・就労に対する深刻なディスインセンティブ効果
抑制する案。
・貧困層への給付額を労働所得の増加幅より
少なめに減らし、労働所得と給付額の合計
額を労働所得の増加とともに漸増させる
・最近では、Atkinson (1995)が、「ベーシック・
インカム」構想と線型所得税と結びつけた一
種の負の所得税を、「ベーシック・インカム/
フラット・タックス」提案として論じている。
• 負の所得税の税負担(負の場合は還付金)T
は、 T = -G+tw(L-l)という算式で決定される
。(ここで、Gは負の所得税の下で保障される
最低所得であり、tが所得税率である。)
• 所得税率tは、税収と還付額の総額が一致す
るように決められる。したがって、最低所得G
が寛大に設定された場合には、必要とされる
税率は高くなる。
• 個人の予算制約式は、
c  w ( L  l )  T  G  (1  t ) w ( L  l )
消費 c
無差別曲線
B
C
最低所
得G
A
O
労働時間
L-l
• 一方、負の所得税の有するもう一つの効果は
、最低所得保障制度においても既に就労して
いた低所得層(ワーキング・プア)の就労にデ
ィスインセンティブを与えるという効果がある
• 既に働いている個人にとっては、① 限界税
率が増加することによる代替効果、さらに②
負の所得税の下での還付金による所得効果
の双方が労働供給を低下させることによる。
負の所得税導入の際に、最低所得Gを維持
する限り、労働供給を減少させる低所得層が
生じることは避けられない。 。
消費 c
無差別曲線
C
B
最低所
得G
A
O
労働時間
L-l
• 米国政府は、一部の地域で「負の所得税」導入の社
会実験を行っており、そのデータに基づく実証研究
が多くなされてきた。
• 4つの実験例(New Jersey (1968-1972)、Rural
Iowa/North Carolina (1969-73)、Gary (1971-74)、
Seattle-Denver (1971-82))についての実証研究を
概観したRobins (1985)は、上記の理論的な説明と
整合的に、「負の所得税」導入により労働供給全体
が減少していることを指摘している。
• 労働時間は、5~25%程度、減少し、雇用率も1~
10%程度、減少している。(Robins (1985), pp573)
勤労所得税額控除(Earning Income
Tax Credit, EITC)
• 最近の低所得者に対する政策としては、米国
の勤労所得税額控除(Earning Income Tax
Credit, EITC)のように、低(勤労)所得に対し
補助金を付与する形の政策が取られている。
• まず所得が非常に低いフェーズイン段階(図
の線分OAに対応)においては、所得の一定
割合に対応する補助金が付加される(勤労所
得税額控除の場合には、還付の形が取られ
る。)
• もう少し高い勤労所得に対応する次のフラット
段階(同図の線分ABに対応)では、補助金の
額は上限に達し、一定となる。
• さらに高い勤労所得に対応するフェーズアウ
ト段階(同図の線分BCに対応)においては、
補助金は勤労所得の増加に応じ、徐々に減
額されていき、ある水準(同図では点C)で補
助金は0となる。
• なお、就労しない場合には、全く補助金は支
給されない。
所得
B
C
A
O
勤労所得
• フェーズイン段階:代替効果は、就労促進。所得
効果は就労抑制に働くが、非常に低所得の場合
は、所得効果は限定的。
• フラット段階:補助金の額は一定なので、代替効
果上の影響はない。他方、補助金分の所得効果
が発生するため、労働供給抑制の方向に働く。
• フェーズアウト段階:限界税率は正であり、代替
効果は労働供給の抑制。所得効果も労働供給
の抑制の方向に働く。
• フェーズアウト段階を置かずに、ある所得水準で
補助金を突然打ち切ると、その点で予算制約式
が屈折し、労働供給がその点に集中してしまう
(“bunching”)が起きる。
英国の就労税額控除(WTC)と予算制約式(単純化したもの)
所得
B
C
A
O
労働時間
勤労所得税額控除のように就労を前提とした所得補助の制
度の導入が進んでいる。オランダ、フランス、ベルギー、フィ
ンランド等の欧州諸国に加え、最近では、韓国も導入を決定
している。
tagging”(札貼り)
• 現実の福祉政策においては、多くの国におい
て、高齢者、母子家庭、障害者、失業者その
他のカテゴリー別に公的扶助政策が実施。
• 過去の経済学者の議論においては、カテゴリ
ー別の公的扶助政策が乱立した福祉制度より
も、負の所得税のような、より包括的な福祉制
度が望ましいとされてきた。
• しかしながら、Akerlof(1978)は、情報の非対
称性の下では、カテゴリー別の公的扶助政策
がより効率的となりうることを指摘。
• 事前情報により、貧困者はあるカテゴリー(例
えば、高齢者、母子家庭、障害者、失業者等)
に多く属していることが分かれば、そのカテゴ
リーだけを対象とした最低所得の給付を行う
ことで、貧困者に最低所得を保障するために
必要な税率を大幅に引き下げることができる
。高齢者、母子家庭、障害者、失業者等、平
均的に貧困者が多い集団を、執行当局が認
定(Akerlof (1978)の呼ぶ“tagging”(札貼り))
し、その集団に他の人々と違った特別の税率
表を与えることで、効率的な福祉制度を構築
することができるのである。
現金給付と現物給付
• 現金が手交される形の現金給付のみならず、同制
度の医療扶助のように、一定の財・サービスの提供
が受けられる形の現物給付も存在する。
• また、米国のフード・スタンプのように、一定の財・サ
ービスのみを購入できるバウチャーが交付される形
の現物給付が存在する。
• 伝統的に経済学者は、現金給付の方が、受給者の
選好を反映した消費が可能となるため、現物給付よ
り望ましいとしてきた。
非食料品
A
E
C
D
食料品
B
• 現物給付を支持する伝統的な意見としては、
消費者が経済理論が想定するように、常に合
理的に行動するとは限らず、ギャンブルやア
ルコール等に依存する傾向がある者も存在す
ること等を考えると、政府がパタナーリスティッ
クに給付金の使途を制限することが望ましい
ケースがあるとの指摘がある。
• さらに、最近の重要な指摘として、情報の非
対称性を考慮した場合、使途を制限する現物
給付が、受給者に自己選択(self-selection)を
行わせることを通じ、より効率的な公的扶助を
可能にするとの見方がある。