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生活保護制度の概要
下記、厚生労働省資料より引用、一部修正・改変
1 生活保護制度の目的
○ 最低生活の保障
⇒ 資産、能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する者に対し、困窮の程度に応じた保護を実施
○ 自立の助長
最低生活の保障
① 資産、能力等をすべて活用することが保護の前提
・不動産、自動車、預貯金等の資産
・稼働能力の活用
・扶養義務者からの扶養
・年金、手当等の社会保障給付 等
◇保護の開始時に調査
(預貯金、扶養義務者の状況及び扶養能力、年金、手当
等の額、傷病の状況等を踏まえた就労の可否等)
◇保護適用後にも届出を義務付け
② 支給される保護費の額
・厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費から収入を差し引いた差額を保護費として支給
最
低
生
活
年金等の収入
費
収入としては、就労による収入、年金等社会保障の給付、親族に
よる援助等を認定。
預貯金、保険の払戻し金、不動産等の資産の売却収入等も認定
するため、これらを使い尽くした後に初めて保護適用となる。
支給される保護費
自立の助長
・世帯の実態に応じて、年数回の訪問調査
・就労の可能性のある者への就労指導、病院入院者の在宅への復帰促進
等
1
2 生活保護基準の内容
生活保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要
な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでな
ければならない。(生活保護法第8条第2項)
生活を営む上で生じる費用
対応する
扶助の種類
支
給
内
容
生活扶助
基準額は、
①食費等の個人的費用(年齢別に算定)と
②光熱水費等の世帯共通的費用(世帯人員別に算定)
を合算して算出。
なお、特定の世帯については加算が上乗せされる。
→ 母子加算、障害者加算等
アパート等の家賃
住宅扶助
定められた範囲内で実費を支給
義務教育を受けるために必要な学用品費
教育扶助
定められた基準額を支給
医療サービスの費用
医療扶助
費用は直接医療機関へ支払(本人負担なし)
介護サービスの費用
介護扶助
費用は直接介護事業者へ支払(本人負担なし)
出産費用
出産扶助
定められた範囲内で実費を支給
就労に必要な技能の修得等にかかる費用
生業扶助
〃
葬祭費用
葬祭扶助
〃
日常生活に必要な費用
(食費・被服費・光熱水費等)
2
3 東京都区部等の支給額の例 (平成23年度)
生活扶助
標準3人世帯(33歳、29歳、4歳)※
住宅扶助含む
175,170円
244,970円
80,820円
134,520円
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳)
121,940円
175,640円
母子世帯(30歳、4歳、2歳)※
193,900円
263,700円
高齢者単身世帯(68歳)
※母子加算、児童養育加算含む。
4 生活保護の手続
事前の相談
・生活保護制度の説明
・生活福祉資金、障害者施策等
各種の社会保障施策活用の
可否の検討
保護の申請
・預貯金、保険、不動産等の資産調査
・扶養義務者による扶養の可否の調査
・年金等の社会保障給付、就労収入等
の調査
・就労の可能性の調査
保護費の支給
・最低生活費から収入を引いた額を支給
・世帯の実態に応じて、年数回の訪問調査
・収入・資産等の届出を義務付け、定期的に
課税台帳との照合を実施
・就労の可能性のある者への就労指導
5 保護の実施機関と費用負担
○ 都道府県(町村部)・市(市部)が実施。
○ 都道府県・市は、福祉事務所を設置し、被保護世帯に対して担当のケースワーカーを設定。
○ 保護費については、国が3/4、地方自治体が1/4を負担。
3
7 保護費支給額の算定
○ 保護費支給額
保護費支給額
=
○ 最低生活費
最低生活費
最低生活費
-
収入認定額
※ 各扶助は、世帯の実状に応じ、必要がある場合に算定
=
生活扶助
+
住宅扶助
+
教育扶助
+
医療扶助
+
介護扶助
+
出産扶助
+
生業扶助
+
葬祭扶助
=
勤労収入
+
その他収入
+
○ 収入認定額
収入認定額
・超過勤務手当、通
勤手当等含む(勤労
控除後※)
扶養義務者からの扶養
・児童扶養手当、年
金等の社会保障給
付
※ 勤労収入がある場合の収入認定額の算定方法
勤労収入
-
勤労控除額
-
実費控除額
・社会保険料や通勤費等
(勤労収入がある世帯の平均額)
65,830円
-
22,445円
-
4,863円
=
38,522円
平成16年 被保護者全国一斉調査
○ 勤労控除の趣旨
①勤労に伴う必要経費を補填
勤労収入を得るためには、勤労に伴って被服費や知識・教養の向上等のための経費が必要となることから、
勤労収入のうちの一定額を控除する。控除額は収入額により異なる(収入額8,340円までは全額控除)。
②勤労意欲の増進・自立助長
5
0.0
2011(暦年)
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
200.0
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
生活保護受給者(被保護世帯、被保護実人員)
の推移
万世帯、万人
250.0
被保護世帯数
被保護実人員
150.0
100.0
50.0
生活保護費(国・地方計)の推移
億円
38,000
36,056
36,000
34,630
34,000
32,501
32,000
30,000
28,264
29,365
28,683
28,589
2006
2007
28,000
26,000
24,000
22,000
20,000
2005
2008
2009
2010(見込み) 2011(予測)
年度
急増の背景
• 2009年ごろから急増を始めた生活保護率。
• 2008年ごろまで安定していた予算からは、
8000億程度上昇している。
• この背景として厚労省は、リーマンショックに
よって景気が急落・低迷していることを挙げる。
• しかし、その説明には無理がある。なぜならば、
リーマンショック後、3年以上が経過、震災前ま
で景気はずっと回復していたにも関わらず、生
活保護は前にもまして急増しているからである。
世帯類型別の生活保護受給世帯の前年比伸び率
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
2011年(暦年)
総世帯数
3.3%
2.7%
3.9%
10.9%
10.7%
7.2%
うち高齢者世帯
4.8%
5.0%
5.3%
7.5%
7.2%
5.7%
うち障害者世帯・傷病者世帯
1.9%
0.9%
1.5%
7.1%
6.8%
5.4%
うち母子世帯
2.3%
0.3%
0.5%
6.6%
9.2%
5.6%
うちその他の世帯
2.4%
1.3%
9.2%
41.5%
32.2%
15.2%
注)厚生労働省大臣官房統計情報部「社会福祉行政業務報告」(福祉行政報告例)より。
急増の原因
• 急増の直接の原因は、厚労省の政策変更。
• きっかけは、2008年末の年越し派遣村。
• 派遣切りより多かった若いホームレスなどに、
異例の基準で、即座に生活保護を認めた。
• それが前例となり、後追い的に厚労省が出し
た通達によって、従来は生活保護を認められ
なかった若く働ける層(稼働層)に生活保護
受給が拡大。統計上は、その他世帯が多い。
生活保護行政に関する近年の主要事項
の年表
年月
出来事
1998年4月頃から
ホームレスの急増と、病院退院者・施設退所者に対する敷金支給などの運用開始
2003年8月~2004年12月 社会保障審議会福祉部会「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」
2005年4月から12月
2006年3月
2008年12月
2009年3月
生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会、協議会終了後の生活保護適
正化に関する確認書
「生活保護行政を適正に運営するための手引について」厚生労働省社会・援護局
保護課長通知 社援保発第0330001号
「暴力団員に対する生活保護の適用について(通知)」厚生労働省社会・援護局
保護課長通知 社援保発第0330002号
年越派遣村設営
「職や住まいを失った方々への支援の徹底について」厚生労働省社会・援護局保
護課長通知 社援保発第0318001号
「現下の雇用情勢を踏まえた取組について」厚生労働省社会・援護局地域福祉課
長通知 社援地発第0318001号
2009年10月
「緊急雇用対策」における貧困・困窮者支援のために生活保護制度の運用改善に
ついて」厚生労働省社会・援護局保護課長通知 社援保発1030第4号
2009年12月
「失業等により生活に困窮する方々への支援の留意事項について」厚生労働省社
会・援護局保護課長通知 社援保発第1225第1号
いつまでこの状況は続くのか
水際作戦
ダ
ム
受給長期化
不正受給
詐欺事件
• ワーキングプアは、2010年の厚労省研究班の
調査では229万世帯、ほぼ生活保護受給世帯
の倍いる。
• 「捕捉率」が低い状況を支えていたのが、生活
保護受給の要件で一種のダムの役割を果たし
ていた。特に、稼働能力要件は主観も入る厳
しい基準で、その中には、水際作戦など批判さ
れたような行き過ぎもあった。
• この堰を切ったことで、急増している稼働能力
層は、景気が良くなっても減ることはなく、政策
変更なければダム湖が尽きるまで続く。
• 底流にある高齢化もこれからますます進む。
問題の所在
• ただ、2009年末時点では、生活保護に代わる
制度がなかったから、「緊急時の救済策」とし
ての緩和通達は正しかったと評価できる。
• 問題は、第二のセーフティーネットが整備され
たり、景気が回復したという状況変化にも関
わらず、泥縄式の対策を継続していること。
• 法律変更ではなく、通達行政なので、ケース
ワーカーの整備や自立支援策などが適切に
予算措置されず、現場が大混乱に。
• 特に都市部では、ケースワーカー1人あたり
のケース数が100を超えており、2、3か月に1
度の訪問では、不正の摘発や、自立に向けて
のケースワーキングなど不能(計算ワーカー
化)。不正受給の横行や、生活保護長期化の
背景には、こうした供給体制の量的ほころび。
• 手間のかかる住居支援できず、都市部では、
ネットカフェ難民から、ネットカフェ生活保護。
• また、デフレ下、賃金が減少する中で、10年
以上もまったく保護費が減らないために、相
対的に不公平感・労働意欲減。旨味多いので
貧困ビジネスが入り込む余地も大きくなる。
• 生活保護を増やすなら増やすで、体制整備と
自立に向けたプログラムやインセンティブを用
意すべきであり、戦後50年変わらない生活保
護法の改正を行ってきちんと予算措置をすべ
きである。
• あるいは、第二のセーフティーネットや給付付
税額控除(EITC)のような形で、生活保護に
至る前の段階で稼働層を自立させるというの
も一つの考え方。しかし、第二のセーフティー
ネット自体も自立に向かないバラマキと化し、
第二の生活保護に。EITCも全く進まず。
• 方針を決め、なし崩しはやめるべき。
稼働層の自立をどう進めるか
• 今後の稼働能力層については、安易な生活
保護はなるべく早期にやめるべき。生活保護
は最後の砦で、自立させる仕組みが乏しい。
その代り、(きちんと機能する)第二のセーフ
ティーネットや就労支援、給付付税額控除で
対処してゆくことが望ましい。
• 一方、生活保護に既に大量の稼働能力層が
いることは事実であり、その自立促進の仕組
みも合わせて整備してゆく。
• 方策は、アメとムチの両方が必要。
• ムチ・・・自立支援プログラムによる就労義務を
課す、有期制の導入(アメリカは5年、だが
EITCがあって初めて機能する)、現在の就労
促進の強化、ケースワーカーの訪問指導強
化・・・だが、既にやっていることには限界。
• アメこそが必要。「馬を川に連れて行っても、飲
ませなければ意味がない」。
• アメ・・・働いた分は働いた分だけ減らされてし
まう現行制度(正確には勤労控除で一部経費
認められる)では、保護費が相対的に高いこと
もあり、働かないのは当然。
• 保護費は、まずある程度のカットの必要あり。
少なくとも10年間のデフレ分はすぐにカット。
• 就労収入(勤労控除拡大)については、ワーキ
ングプアとの不公平が生じることから、議論が
長い間暗礁に。
• 一つの解決策は、「凍結貯蓄」方式。就労収入
は福祉事務所が預かり、就労自立後に返却。
自立後の初期資金としても重要。
• もう一つは、「最低賃金の適用除外」(障害者
の制度)。民主党になって100円近く上昇。東
京840円。大阪780円は彼らには高すぎる。
• 若い被保護者の希望職種や希望業界の求人
も出やすくなり、マッチングが進む。
• 見習いからスタートならば、就労のプレッ
シャーも低い。
• ずっと見習いは困るので、3年ぐらいの期間を
かけて市場賃金にして一定期間雇用する義務
を適用企業には課す。
• 最低賃金を下回っても、生活保護費の上乗せ
があるので問題がない。
• 効果の乏しいハローワークとケースワーカー
の連携、役人OB活用よりも、成功報酬で民間
就労支援にアウトソーシング(ブレア改革)。