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生活困窮者の自立を支える地域社会づくりのために
(案)
ー 社会福祉法人を核とした多様な主体が果たす役割と「大阪方式」の構
築ー
平成26年9月
大阪府地域福祉推進審議会 地域福祉支援計画推進分科会
社会福祉法人の「さらなる地域貢献」とこれからの生活困窮者自立支援の
あり方検討部会
目
次
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅰ 社会福祉法人を取り巻く状
況 1.社会福祉基礎構造改革後の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.社会福祉法人の使命・役割
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅱ 今、求められる生活困窮者の自立支援
策 1.生活困窮者自立支援法の施行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
2.モデル事業の実施
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅲ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大阪府域におけるこれまでの取組み
1.これまでの取組みに係る効果検証
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅳ 社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割
・
1.生活困窮者自立に向けた「取組みの方向性」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.生活困窮者自立支援に係る各主体の参画・協力内
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
Ⅴ 容
「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.「大阪方式」の提案にあたって
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.大阪方式を提案する視点(福祉協働に向けた「一気通貫支援システム」の
・・・・・・・・・・・・・・ 18
・
・・・・・・・・・・・・・・ 19
構築)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
3.今後の具体的な取組み
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.留意すべき点
26
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
参考5.今後の工程
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
1.国の動き
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.大阪府地域福祉推進審議会委員名簿
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・ 31
3.社会福祉法人の「さらなる地域貢献」とこれからの生活困窮者自立支援のあり方検討部会
・
・・・・・・
・・・・・ 32
委員名簿
・・・・・
4.「社会福祉法人の『さらなる地域貢献』とこれからの生活困窮者自立支援のあり方検討部
はじめに ~大阪発!生活困窮者自立支援システムに向けて~
《生活困窮者自立支援法の成立》
生活困窮者自立支援法(以下「新法」という。)が、平成25年12月6日、国会において可決・成立した。生活保護に至る
前の自立支援策の強化を図るとともに、生活保護から脱却した人が再び生活保護に頼ることのないよう、あらゆる取組
みで支援
する。いわゆる“制度の狭間”をなくす、新たな地域福祉政策の体系構築をめざす法律であるが、一方、現場での施策化
や運用
を誤れば、政策と制度への信頼を大きく揺るがすことになる。新法の理念を、地域福祉の現場に形作る先導的な作業と
《大阪の地域福祉のルーツを今に》
実践が、
聖徳太子の時代、大阪・四天王寺に施薬院、悲田院等の四箇院が建立された。慈善・慈恵の精神に立ち、飢饉や天災、
私たちに求められている。
疾病等の犠牲者の供養とともに、病人や子どもをはじめ困難を抱える人々の救済事業が行われた。このように、大阪に
おいては、古くから労働者・庶民の生活課題等に対する社会事業の実践が試みられ、この実践の歴史は、民間社会事業
家を中心とした社会福祉法人の多様な活動として今日に受け継がれている。貧困者の実態調査や個別救護を実施する
先駆的制度である方面委員制度が地域福祉のルーツと言われる由縁は、脈々とした福祉の源流をもつ、ここ大阪で創設
されたからである。
《大阪発!生活困窮者自立支援システムの提案》
こうした大阪の地域福祉の実績は、今に受け継がれ、「これからの地域福祉のあり方とその推進方策について」
(H14.9大阪
府社会福祉審議会答申)の策定等を契機に、行政はもとより社会福祉法人など多様な主体がネットワークを組み、要援
護者
に対する総合的な支援体制づくりなど、他自治体のモデルとなる施策の実現に成果をあげてきた。
今、大阪を取り巻く状況は、生活保護率の高さや、全国平均を上回る高校中退率やニート、非正規労働者数など、生1
活困
窮に陥るおそれのある、複合的なファクターが重なり合う。本報告書では、大阪に内在するこれら社会環境の変化を踏
Ⅰ
社会福祉法人を取り巻く状況
1.社会福祉基礎構造改革後の現状
(①社会福祉基礎構造改革とは)
❏
超高齢社会という経験のない未来を目前に控え、社会福祉の共通基盤を構築するため、平成12年、介護保険法の成立を
契機とする
社会福祉基礎構造改革を実施した。
❏
関係法令の改正により、社会福祉サービスの利用制度が、行政主導の「措置制度」から利用者がサービス提供事業者と
の「契約制度」へ
転換された。そして、社会福祉事業の種類の充実が図られ、株式会社をはじめ、多様な主体の参入が促進された。
また、地域福祉の推進、社会福祉協議会や民生委員等の活性化も図られた。こうした取組みにより、サービスの多様化や
(②経済情勢の悪化と制度の狭間の問題の顕在化)
経営主体の多元
❏ 平成20年代に入り、社会情勢や地域社会に大きな変化が見られるようになった。リーマン・ショックによる経済情勢
化が進み、今や、社会福祉法人以外の経営主体の経営数が大幅に増加し、全体に占める社会福祉法人の割合は微減してい
の悪化が影響し、失
る。
業者や非正規労働者、就職困難者が増加した。さらに、団塊世代の高齢化、地域のつながりの希薄化や制度の狭間の課
題等が顕著
(③生活困窮者自立支援法の制定に向けて)
❏ になりつつある状況等、各種要因がそれぞれ交錯し、新たな生活課題、生活困窮者問題がクローズアップされてきた。
こうした現状を改善するため、国では、「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」を設置。委員メンバー
には都道府県代表
として、大阪府知事も参画し、生活困窮者が抱える様々な課題や、生活困窮者対策に関する具体的な制度設計について
議論を重ね、
平成25年1月に報告書をとりまとめた。その内容を踏まえた法律が、生活保護法の一部改正と生活困窮者自立支援法で
(④社会福祉法人を取り巻く環境)
ある。
❏ このように制度の狭間の課題が顕在化する中、社会福祉法人は、いわゆる内部留保やガバナンスのあり方など、制度の意義・
そして、いよいよ、来年4月、生活困窮者の自立を支える新法が施行される。
役割を問い
2
直す厳しい指摘を受けている。『社会福祉法人の在り方等に関する検討会(厚生労働省)』では、全ての社会福祉法人に対し
て公益的
Ⅰ
社会福祉法人を取り巻く状況
2.社会福祉法人の使命・役割
(①社会福祉事業のあり方)
❏
社会福祉法第24条に規定されているように、社会福祉法人は、公益性の高い社会福祉事業の主たる担い手として、既
に実施している
社会福祉事業を確実、効果的かつ適正に取組みを進めることは、当然の責務である。
❏
一方、昨今の国の動きや社会経済情勢により、生活困窮者や生活課題を抱える人等に対し、社会福祉法人、社会福祉施
設が、それ
(②内部留保のあり方と有効活用)
ぞれの施設種別の特性や強みを活かし、より積極的な支援活動を行い、地域のセーフティネットの核となる事業に取り組
❏ 昨今、いわゆる内部留保について、メディアを賑わせている。今年6月、規制改革実施計画では、「内部留保の位置付
むことが求められる。
けを明確化し、
福祉サービスへの再投資や社会貢献での活用を促す」と明記している。また、前述の社会福祉法人の在り方等に関する検
討会の報告書
(H26.7 厚生労働省)では、「社会福祉法人が自らの経営努力や様々な優遇措置によって得た原資をもとに社会福祉事業
を充実した
り、社会又は地域に福祉サービスとして還元しないのであれば、その存在意義が問われる」という厳しい記述もあり、内
部留保のあり方と有
効活用を喫緊の課題として検討していく必要がある。
❏ 一方、社会福祉法人は、地域福祉・地域介護を持続的に担うために必要な一定の財政基盤を確保するため、事業運営上、
(③財務状況の透明性の確保)
内部留
❏ 財務状況の情報開示については、自主的公表は4割程度(H25.7末時点)にとどまっている状況を踏まえ、前述の規
保はなくてはならない。社会福祉法人は、他法人に比べ、借入金の負担が少なく自己資本比率の高い財政状態を前提とし
制改革実施計
3
て法人認可が
画において、各法人が原則としてホームページ上で開示を行うように指導する旨、明記している(H26.4措置済み)。
なされた経緯もあり、施設維持・整備のための費用等、将来の資金需要への備えとして、内部留保を確保せざるを得ない、
これは、社会
法人ならではの
福祉法人については、幅広く国民一般に説明責任を果たしてこなかったことが影響しているものと考えられるが、社会
Ⅱ 今、求められる生活困窮者の自立支援策
1.生活困窮者自立支援法の施行
(①新法制定に至る背景と大阪の現状)
❏ 平成20年のリーマン・ショック以降、世界経済の落ち込みから、国内消費は急激に冷え込み、企業倒産や失業率の上昇、非正規
労働
者の増加等が顕著にみられるようになり、人々の収入は不安定な状態が続いた。また、生活保護世帯数も年々増加し、生活保護受
給者
❏数は、平成23年度2,067千人と過去最高を更新した。特筆すべきは、被保護世帯のうち、いわゆる稼働年齢層と考えられる「その他
この状況を受け、生活保護制度の見直しと生活困窮者対策を総合的に取り組むことで、あと少しで生活保護に陥ってしまう可
の世
能性のあ
帯」の割合が10年間で3倍以上、増加しており、地域社会とのつながりが途切れることのないよう、要援護者をサポートしていく必要
❏る人々を支える自立支援制度として、昨年12月、新法制定に至り、来年4月1日、施行される予定である。
大阪の状況をみると、全国より突出して高い生活保護受給率から勘案すると、将来、生活保護に陥る可能性のある人は、相当数
がある。
に上る
ものと考えられる。大阪府では、「大阪の成長戦略(H22.12策定、現在改訂作業中)」においても、この状況を踏まえて、就労可能な
人
達の労働意欲を高める取組みの必要性を指摘しており、新法施行を目前に控え、本格的な人口減少社会を迎える中で持続可能な
【図表①:生活保護制度の見直しと新たな生活困窮者対策の全体像】
成長を
第1のネット
社会保険制度・労働保険制度
図るためにも、行政としてさらなる取組みを期待するところである。
第2のネット
●「社会保障制度改革推進法(H24)」附則第2条にお
いて、生活困窮者対策及び生活保護制度の見直しに
総
合的に取り組むこと、就労が困難でない者に関し、就
求職者支援制度
(H23.10~)
労が
困難な者とは別途の支援策の構築等について明記
生活困窮者対策
(H27.4~)
●総合的に取り組むことで、要援護者の自立支援が進
むと
生活保護制度の見直し
及び生活困窮者対策に
総合的に取り組む
ともに、公的制度に係る歳出削減する効果も期待
第3のネット
生活保護
(生活保護基準及び 生活保護制度の見直し)
[資料出所]生活困窮者自立促進支援モデル事業等連絡会議資料を加工(厚生労働省 H26.4.24・25)
4
Ⅱ 今、求められる生活困窮者の自立支援策
(②新法の概要)
❏ 新法は、生活保護に至る前の段階の自立支援策の強化を図るため、生活困窮者に対し、自立相談支援事業の実施、住居確
保給
付金の支給その他の支援を行うため、7つの事業を規定している。なお、新法に規定する支援のみならず、多様な主体が独自で、
または相
法定事業
概要
互連携を図り、積極的に要援護者支援に取り組むことを妨げるものではない。
①自立相談支援事業
●就労その他の自立に関する相談事業、事業利用のためのプラン作成等(必須)
②住居確保給付金
●離職により住宅を失った生活困窮者等に対し家賃相当を支給(必須)
③就労準備支援事業
●就労に必要な訓練を日常生活自立・社会生活自立段階から有期で実施(任意)
④一時生活支援事業
●住居のない生活困窮者に対して一定期間宿泊場所や衣食の提供等を実施(任意)
⑤家計相談支援事業
●家計に関する相談、家計管理に関する指導、貸付のあっせん等を実施(任意)
⑥学習支援事業その他事業
●生活困窮家庭での養育相談や学び直しの機会提供等を実施(任意)
⑦就労訓練事業の認定
●就労機会の提供を行うとともに、就労に必要な知識及び能力向上のために必要な訓練等を行う事業を実施する
(いわゆる「中間的就労」)
施する場合、その申請に基づき、事業認定を実施(都道府県等)
国庫負担等
▸国庫負担3/4
▸国庫補助2/3
▸国庫補助1/2
―
(③新法の特長・ポイント)
❏ 従来法では決して支援対象とならなかった網の目からこぼれ落ち、“制度の狭間”にいる要援護者にスポットを当てた点が、新
法の最大の
ポイントであるが、これだけではない、新法には大きく3つの特長がある。ひとつめは、要援護者の状況に応じた支援メニューを提
示する自立
相談支援機能の設置である。生活困窮者の自立に向けた第一歩は、適切な初期対応にあると考える。
❏ 次に、生活困窮者を発見する機能の強化である。今回、国は、関係機関等との連携のもと、潜在する生活困窮者を発見し、ア5
ウトリー
チ(訪問支援)する手法を推進している。声なき貧困(サイレント・プア)に気づき、自立に向けた支援につなげていくことは大きな
Ⅱ
今、求められる生活困窮者の自立支援策
2.モデル事業の実施
● 国では、来年4月、新法の本格施行に向けて、各自治体において円滑な事業遂行ができるよう、昨年度よりモデル事業
を推進している。
● 昨年度は、全国68自治体が実施し、自立相談支援事業をはじめとした法定事業に取り組んでいるが、事業を進めていく
中で、支援方
法の標準化や社会資源の不足による就労現場の確保等が困難である等、様々な課題に直面している。一方、府内市町村
の実施状況
(①H25年度の大阪府における取組み)
❏ をみると、大阪市、豊中市をはじめ、5自治体がモデル事業に取り組み、来年度施行に備え、自治体の実態に即した支援
大阪府では、新法がめざす出口戦略である就労へ結びつけるため、就労可能な要援護者に対し、生活困窮状態からの脱却
体制を模索して
を図る就労
いるところである。
訓練事業(いわゆる中間的就労)の場を確保するモデル事業を実施した。事業内容は、大きく分けて、就労訓練事業の認知
度及び参
画可能性を確認する意向調査、認知度向上のための説明会、そして、参画意向を示す事業所と要援護者のマッチングへの挑
戦である。
❏
府内に立地する社会福祉法人をはじめ、民間事業所等、計1,500事業所を任意抽出して調査を行ったところ、まず、「中間
的就労の
認知度」については、「言葉くらいは知っている」が4割程度であり、「全く知らない」が5割弱であった。また、「中間的
就労の参画可能性」につ
いては、「実施意向あり、検討可能」が3割強(34.6%)あったものの、「今後も実施困難」が6割弱(57.5%)に上った。
❏
中間的就労の課題については、受入に前向きな事業所からは、「受入形態、作業内容、就労担当者の配置等が困難」「事
業所や法人
6
内部での意見調整が困難」という回答が多かった。加えて、受入が困難であるという事業所からも「就労担当者の受入体制、
作業内容が困
Ⅱ
今、求められる生活困窮者の自立支援策
[資料出所]中間的就労推進に係る意向調査報告書(大阪府 H26.3)
【図表②:中間的就労推進(生活困窮者自立促進支援モデル事業)に係る意向調査(概要)】
●実施期間:H25.11.19~H25.12.13
●対象事業所:大阪府内(政令市・中核市除く)1,500事業所(社会福祉法人800件、営利法人337件、NPO50件、消費生活協同組合13
件
●回収率:61.5%(923事業所)
[①中間的就労の認知度]
[③課題(前向き事業所)]
[②就労実績・今後の意向]
よく知っている
9.5%(87)
全く知らない
47.1%
(431)
言葉ぐらいは知ってい
る 43.4%(397)
[④課題(実施困難な事業所)]
[⑤中間的就労を広げていくために必要な
支援]
◇「今後実施したい」と回答した事業所が考える
課題
①受入形態が決まっていない(59.1%)
②就労支援担当者が決まっていない(50.0%)
③事業所内部での意見調整等(45.5%)
④作業内容が決まっていない(40.9%)
※「今後実施の検討はできる」と回答した事業所
も
似た傾向にある
[▼中間的就労とは]
◇中間的就労は、直ちに一般就労を目指すこと
が困
難な方に対して行う、支援付きの就労等のこ
と。
◇社会福祉法人、NPO法人、営利法人等の自
主
事業として実施される。
◇受入形態として、非雇用型(雇用契約を締結
せ
ず、訓練として就労を体験)と支援付雇用型
(②H26年度の大阪府における取組み)
(雇用契約を締結する支援付きの就労)があ
❏ 今年度、府内の市町村では、昨年度より9自治体増え、14自治体がモデル事業を実施する予定である。また、府では、
る。
◇「今後も困難」と回答した事業所が考える課題
①就労支援担当者の配置等受入体制がとれない
(59.6%)
②適した作業がない(55.1%)
③実施するための財源捻出が困難(34.4%)
④もう少し状況を見てから検討したい(22.5%)
今年度も昨
年度に引き続き、就労訓練事業(いわゆる中間的就労)に取り組み、参画事業所の促進と課題等を整理し、来年度の本
格実施に向け
7
て実績を蓄積していく。加えて、福祉事務所の設置のない郡部のうち一部の町村(豊能町、能勢町、太子町、河南町、
千早赤
Ⅲ
大阪府域におけるこれまでの取組み
1.これまでの取組みに係る効果検証
● 大阪府社会福祉審議会答申(H14.9)や同審議会意見具申(H15.9)等を踏まえ、大阪府では、全国初の取組みや大阪
の実態
に沿った様々な福祉課題を抱える要援護者に対する各種取組みを推進してきた。これから、生活困窮者自立支援のあり
方を検討していく
うえで、これまで、府域において各主体が取り組んできた特色ある施策の効果検証を実施する。また、府域におけるそ
(①CSW(コミュニティソーシャルワーカー)配置と援護を要する人への支援)
れぞれの取組みを通じ
❏ 誰もが住み慣れた地域で安心して暮らすことのできる地域社会づくりが重要である。そこで、援護を要する人を、地域
て蓄積された、そのノウハウ等を、本報告書で提案する「大阪方式」へ盛り込んでいく。
ぐるみで多様な主体
により早期に発見し、「声かけ・見守り」「相談」「つなぎ」等、様々な支援を行う重層的なセーフティネットを構築
する仕組みとして、大阪府が
前面に立ち、全国に先鞭をつけた取組みとして、府内市町村へのCSWの配置促進や地域住民の協力による支え合い活動
を支援する小
地域ネットワーク活動推進等を展開してきた。
❏
CSWの配置促進については、地域福祉セーフティネットを効果的に機能させるため、中核的な役割を担う者として府
内市町村、中学校
区に1名をめざし、配置を進めており、現在154名(H25年度末現在)のCSWが活発な活動を行っている。こうした取組
みを進める中で、
ごみ屋敷プロジェクトや徘徊SOSメール等の開発など、新たな支援スキームを生み出し、“制度の狭間”にいる人々を支
援している。
❏
8
また、小地域ネットワーク活動推進については、小学校区を支援対象ととらえ、地域住民による声がけ・見守り活動に
取り組んできた。地
Ⅲ
大阪府域におけるこれまでの取組み
(②生活困窮者への総合生活相談事業、その他地域貢献に向けた取組み)
❏
府域の社会福祉法人は、これまで蓄積してきた経験とノウハウを活かし、地域福祉活動の担い手として、平成16年度か
ら生活困窮者に
対する「総合生活相談機能」の拠点機能とあわせ、経済的援助支援に取り組む「生活困窮者レスキュー事業」を実施して
いる。
❏
この事業は、全国初の取組みとして、大阪府社会福祉協議会の社会貢献支援員20名が、府内全域の各老人福祉施設に常
駐する
CSW700名とともに、アウトリーチによる要援護者に寄り添った総合生活相談活動を実施している。そのうち、緊迫・急
迫した困窮状況
にある場合、現物給付などの経済的援助を実施し、要援護者の自立に向けてサポートを行っている。なお、この取組みに
は、大阪府社会福
祉協議会、老人施設部会の会員施設が特別会費として資金拠出し、社会貢献基金を組成し、社会貢献支援員や経済的援助
に係る
一切の費用を賄っているところである。
❏
昨年度の実績をみると、経済的援助を行った件数は503件、およそ3,000万円の現物給付を行っており、既存制度では
対応できない制
[資料出所]「社会福祉法人による生活困窮者への総合生活相談事業(生活困窮者レスキュー事
【図表③:社会貢献事業(生活困窮者レスキュー事業)の全体
度の狭間にいる生活困窮者支援のあり方に一石を投じ、社会福祉法人が自ら、法人の使命に則り、取り組んできたもので
業)
像】
(大阪府社会福祉協議会 老人施設部会作成)」より引用
ある。
大阪府社会福祉協議会
生活困窮家庭
老人施設
❏
また、大阪府社会福祉協議会保育部会の取組みとして、府内保育所に「スマイルサポーター」を配置し、地域の子育て
相談支援
9
家庭への相談活
拠出
社会貢献基金
動に力を注いでいる。身近に相談相手や援助者がいないことによる負担感やストレス増大を解消するサポート機能を担い、
現物給付
コミュニティソーシャルワー
保育分野の垣根
カー700人
社会貢献支援員20人
経済的援助:10万円まで
Ⅲ
大阪府域におけるこれまでの取組み
(③行政の福祉化)
❏
府では、府政のあらゆる分野において福祉の視点から総点検し、施策の創意⼯夫や改善を通じて「障がい者」や「⺟⼦
家庭の⺟」、「⾼齢
者」などの雇⽤・就労機会を創出し⾃⽴を⽀援する独⾃の取組みを平成11年度から全庁で進めている。
❏
官公需発注を通じた障がい者・就職困難者の雇用創出のひとつとして、まず、府有施設の清掃業務を知的障がい者等の
就労訓練場所
として提供する取組みを行っている。平成11年度にはじまり、発注施設は、85施設、訓練生は108名にのぼる(ともに
H24年度)。
❏
また、平成15年度から、全国初の取組みとして総合評価⼀般競争⼊札制度を導入した。本制度は、府本庁舎等の清掃業
務発注の際
に、知的障がい者等の清掃現場での就労や就職困難者等の雇用等の提案を評価基準に盛り込んだものであり、本庁舎等の
(④おおさかパーソナル・サポートプロジェクト)
大規模施設
❏ パーソナル・サポートの前身は、平成21年10月、貧困・困窮者対策を実施した国の緊急雇用対策である。一定の成果は
において実施したところである。さらに、知的障がい者や精神障がい者を対象に府の職場実習への受入や非常勤職員とし
あったものの、生
てのチャレンジ雇用
活上のリスクが複雑に絡んでいる生活困難者を支援するためには、既存の支援体制では問題全体を受け止めきれないと考
等も行うなど、大阪方式で障がい者雇用や就職困難者の雇用拡大・推進を図っている。今後とも、これまで蓄積してきた
えられ、当事者の
ノウハウ等を庁外へ
抱える問題の全体を構造的に把握した上で、支援策を当事者の支援ニーズに合わせてオーダーメイドで調整、調達、開拓
広く普及するとともに、生活困窮者支援等へ活用されることが望まれる。
する継続的なコー
ディネイトが必要であるという認識のもと、パーソナル・サポートプロジェクトが始まった。
❏
府域では、平成23年度より2年間、府をはじめ、府内市町村が、このプロジェクトに参加した。大阪の特長は、各自治
体が単独で支援施
10
策を講じるのではなく、広域自治体である府と基礎自治体である各市が適切な役割分担と連携により、就労・生活自立に
課題のある人たち
に伴走型支援を実施したことにある。平成23年度は、第2次モデル・プロジェクトとして、府をはじめ、豊中市、吹田市、
Ⅲ
大阪府域におけるこれまでの取組み
(⑤地域就労支援事業)
❏
大阪府では、今日に至るまで地域の雇用情勢に沿った就労支援を講じてきた。地域就労支援事業はその取組みのひとつ
である。平成12
年、職業安定行政の国への一元化と同時に、「雇用対策法」の改正により、地方公共団体に当該地域の実情に応じた雇用
施策に対する
努力義務が課せられたことにより、府では、平成14年、早速、市町村向けの補助制度を独自に設け、就職困難者を就労に
結びつける地域
就労支援センターの設置を推進してきた。さらに、センターに配置されたコーディネーターの養成研修を実施し、あらゆ
る課題に対応できるよう、
スキルアップを図っている。センターでは、就職困難者一人ひとりの状況に応じてきめ細かな就労に至る支援を展開して
おり、カウンセリングや職
業適性診断、サポートプランの策定、就職情報の提供から無料職業紹介や職場体験のあっせん等を行っている。
❏
現在、本事業の財源については、府から交付金として府内全ての43市町村へ交付しており、市町村のニーズに合った取
組みを進めている。
【図表④:大阪府域におけるこれまでの取組み(実績)】
[資料出所]第3回検討部会配布資料より加工(大阪府 H26.7.30)
また、相談者数、相談件数、就労者数の実績は、年々、増加傾向にあり、地域主体の雇用施策として、就職困難者の雇用
拡大に大きく
大阪の独自施策
①CSW配置等[H16~]
貢献しているところである。
主な実績
●CSW配置数:154名 ●交付額:約4.9億円(以上、H25年度)
(H24年度)
●相談件数:約8.8万件
❏
今後、府においては、新法施行に向けて、複雑化、かつ多様化する就労課題に直面するコーディネーターの質の向上を
②生活困窮者への総合生活相談事業
●施設に常駐するCSW:約700名 ●社会貢献支援員:20名
等[H16~]
●経済的援助:29,479千円、503件
図るため、研修等の
●スマイルサポーター数(累計):約1,400名(以上、H25年度)
取組みを強化するなど、広域自治体として、市町村の事業展開への支援が求められる。一方、基礎自治体である市町村で
③行政の福祉化[H11~]
●総合評価一般競争入札制度:対象施設数93箇所、雇用状況421名(以上、H24年度末)
ロジェクト[H23~H24]
●パーソナル・サポーター46名
●協力事業所数56拠点
⑤地域就労支援事業[H14~]
●相談者数6,451名 ●就労者数1,912名 ●相談件数22,451件(以上、H25年度)
④おおさかパーソナル・サポートプ
は、地域の関係
●新規相談件数2,434件、就労体験者4,616人日
11
機関等をフルに活用し、必要に応じて円滑につなぐことができるよう、相談体制の充実、連携を図ることが期待される。
Ⅳ
社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割
1.生活困窮者自立に向けた「取組みの方向性」
● 新法の施行を目前に控え、生活困窮者の自立支援の担い手は誰なのか。本報告書では、公益性の高い社会福祉法人を
はじめ、地
域福祉を支える多様な主体から、7つの主体に着目し、それらに求められる役割や取組みについて整理する。
● まず、この「取組みの方向性」を再確認する。ひとつは、社会福祉法人をはじめ、福祉サービス供給主体が、これま
での取組み実績・成
果を活かし、『さらなる地域貢献』として地域の福祉需要に対応していくことであり、二つ目は、大阪府が全体コー
ディネートを行い、サービス
供給主体の相互連携や官民協働の支援体制づくりを後押しし、地域社会を重層的に支えるセーフティネットを推進する
【図表⑤:「大阪方式」のセーフティネット(イメージ図)】
一気通貫の支援
[資料出所]第3回検討部会配布資料より抜粋(大阪府 H26.7.30)
生活困窮者自立支援法における各種事業
体制、いわゆる『大阪方式』を構築することである。この2つの方向性に沿い、生活困窮者自立支援法における各種事
業をはじめ、各主体
自立相談支援
一時生活支援
就労準備支援
就労訓練
職業的自立
(基礎能力形成)
(中間的就労)
がそれぞれ独自で実施するとともに、相互連携を図りながら取り組むなど、多様な担い手と手法によって要援護者の自
住宅確保支援
家計相談支援
学習支援
立をサポートする。
福祉サービス供給主体の「さらなる地域貢献」への取組み
大阪方式(一気通貫の支援体制):府がコーディネート
2.生活困窮者自立支援に係る各主体の参画・協力内容
● 「さらなる地域貢献」と「大阪方式(一気通貫支援)」の2点を生活困窮者自立支援を推進する方向性ととらえ、各主
体の参画・
12
協力内容を次頁のとおり、表にまとめた。
● なお、ここでは、①から⑦の各主体において、新法に基づく法定事業への積極的な参画を前提に、それにとどまること
なく、新法
Ⅳ
社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割
【図表⑥:各主体による取組み状況】 ◎新規 ○拡充 △継続 ◆その他
①社会福祉法人
②市町村
(※1)
③市町村社協
△各種相談
[資料出所]第3回検討部会配布資料より抜粋(大阪府 H26.7.30)
④府社協
△地域福祉
コーディネー
ター研修[H16
~]
⑤非営利法
人
⑥民間企業
△各種相談
◆支援プラ
ン作成等
⑦大阪府
(※2)
1
自立相談
支援関連
○総合相談窓口
等[H27.4]
◎自立相談
支援
[H27.4]
2
住居確保
支援関連
○住宅確保支援
[H27.4]
◎住居確保
給付金
[H27.4]
3
就労準備
支援関連
○就職活動支援
[H27.4]
◎就労準備
支援
[H27.4]
◎就労自立支援
[H27.4]
◎就労準備支
援[H27.4]
△自立生活
支援等
◆就労準備
支援
4
一時生活
支援関連
○経済的援助
[H27.4]
△一時生活
支援
[H27.4]
△各種貸付制度
受付窓口(一時
生活支援関連)
△生活福祉資
金貸付制度
(一時生活支
援関連)
[S30~]
△各種シェ
ルターの設
置
△一時生活
◆空き部屋
支援
等を開放
(一時宿泊、
シェル
ター)
5
家計相談
支援関連
○家計相談支援
[H27.4]
◎家計相談
支援
[H27.4]
△各種貸付制度
受付窓口(4以外)
◎家計指導相談
[H27.4]
△生活福祉資
金貸付制度(4
以外) [S30~]
◎家計相談支
援[H27.4]
△生活再生
貸付事業
◆金融教育
等
○家計相談支
援[H27.4]
6
学習支援
関連
○就学・学習支
援[H27.4]
◎学習支援
[H27.4]
△無料学習の支
援
◎学習支援
[H27.4]
△学習支援
(家庭教師
派遣等)
◆学習支援
(自社教材
の活用等)
○学習支援
[H27.4]
7
就労訓練
関連
○就労訓練
[H27.4]
◎就労訓練
[H27.4]
△地域就労
支援C等
◎就労訓練
[H27.4]
◎就労訓練
[H27.4]
△就労訓練
◆就労訓練
(コミュニ
ティカフェ
等)
◎中間的就
労認定等
[H27.4]
8
職業的自
立
○直接雇用等
[H27.4]
△地域就労
支援C等
◎直接雇用等
[H27.4]
◎直接雇用等
[H27.4]
△各種講座
等実施等
◆各種講座
実施、直接
雇用等
○要支援者と
企業マッチング
等[H27.4]
-
-
-
-
◎自立相談
事業
[H27.4]
◎住居確保
給付金
[H27.4]
◎就労準備
支援
[H27.4]
※1:生活困窮者自立支援法に基づく実施主体は、福祉事務所設置自治体。 府域の福祉事務所設置自治体は43市町村のうち、34市町及び大阪
府。
13
Ⅳ
社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割
(①社会福祉法人)
❏
社会福祉法人は、社会福祉法第22条の規定により、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人として、従前
より、生活困窮
者に対する総合生活相談や経済的援助(生活困窮者レスキュー事業)や地域貢献支援員(スマイルサポーター)の配置な
ど、要援護
者支援に取り組んできた。
❏
そして今、国の動きや社会情勢により、生活困窮者や様々な生活課題を抱える人などに対し、社会福祉法人が、それぞ
れの施設種別の
特性や強みを活かし、連携・協働して、より積極的な支援活動を行い、地域のセーフティネットの核となる事業に取り組む
ことが求められている。
❏
新法の施行を目前に控え、その趣旨に鑑み、これまで培ってきたノウハウ等を活かし、法定事業への参画はもちろん、
オール大阪の社会
福祉法人による独自の事業展開をはじめ、民間企業等、多様な主体とのネットワークの構築が期待されているところであ
る。
❏ 【図表⑦:「生活困窮者自立支援法」に関するアンケート調査概要(大阪府社会福祉協議会老人施設部会実施)】
こうした動きを踏まえ、大阪府社会福祉協議会老人施設部会では、今年5月、会員の社会福祉法人に対し、生活困窮者
●実施対象:大阪府社会福祉協議会老人施設部会会員 ●実施期間:H26.5.26~H26.6.18 ●アンケート回収率:33.92%(送付数451、回答数
支援の取
153)
[法律内容の認知】
[「中間的就労」の認知]
[「中間的就労を実施したいと思うか]
組み状況や法定事業(特に中間的就労)への参画意向等に係るアンケート調査を実施した。まず、法律内容についての認
無回答4%
全く知らない
知状況をみ
2%(3)
無回答
(6)
全く知らない
3% ( 5)
無回答
思う
9%
思わない
6% ( 9)
知っている
21%
知っている
( 13 )
ると、「少し知っている」法人を含めて、「知っている」法人が約7割弱(68%)である一方、あまり知らない法人も約
あまり知らな
2% ( 3 )
あまり知らない
22% ( 35)
あまり思わな
( 33)
27%(41)
い
27% ( 40)
3割(28%)近くに
い
26%(39)
26%
少し知ってい
どちらかと言え
上っている。また、社会福祉法人の使命として、「生活困窮者の自立支援、中間的就労へ法人全体で取り組んでいく」と
少し知っ
ている
( 39)
る
ば思う
41% ( 64)
いう法人もみられ
41%(64)
42%
14
( 65)
た。このように、社会福祉法人が原点に立ち返り、前向きな検討、積極的参画が求められるところである。
Ⅳ
社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割
(②市町村)
❏
府内市町村では、地域の福祉課題を各種機関等へつなぐコミュニティソーシャルワーカーの配置や各種福祉サービスの
提供、相談窓口
の設置・対応等を通じて、地域住民の安全・安心をサポートしている。特に就労支援では、地域就労支援センターを設置
し、相談事業を
はじめ、無料職業紹介やセミナー等、地域密着型の取組みを展開している。さらに、より効果的な就労支援を講じるた
め、その成否のカギを
握っているのは、市町村の雇用担当と福祉担当セクションの連携と情報量等によるものと考えている。
❏
また、新法に係る法定事業の実施主体(福祉事務所設置自治体)として、地域の実情に応じた支援メニュー等を充実さ
せ、多様な主
(③市町村社会福祉協議会)
体・社会資源との連携を図ることが求められているところである。一方、要援護者の発見や関係機関等へのつなぎ等の手
❏ 地域福祉の現場を支え、要援護者にとって一番身近な市町村社会福祉協議会では、市町村と密な連携を図り、地域の特
法、財源確保等
性を踏まえ
の課題をはじめ、自治体の取組み状況に温度差が生じることも懸念される。市町村は、生活困窮者支援の最前線である。
創意工夫を凝らした独自の事業に取り組んでいる。
このことを肝に
❏ 今後、新法施行に伴い、生活困窮者の発見に係るアウトリーチや関係機関等へのつなぎ等、要援護者の状況に応じた自
銘じ、要援護者の自立を第一に、創意工夫や多様な主体との連携などを図りながら、円滑な事業運営ができるよう、期待
主的な取組
される。
みも含めて、市町村をはじめ、地域を構成する多様な主体や社会資源と、今まで以上に連携強化を図りながら、地域社会
(④大阪府社会福祉協議会)
の核として、さら
❏ 府や市町村社会福祉協議会等と協調・連携を図りながら、府全域に配置されているコミュニティソーシャルワーカー
には、先導役として積極的な参画が求められている。
をはじめとした各種コー
ディネーター養成研修等の実施や権利擁護の窓口等、府域全体を網羅する、幅広い要援護者支援に取り組んでいる。
❏
15
今後、これまで取り組んできたノウハウ・実績等を活かしつつ、今まで以上に複雑な福祉課題に対応できる福祉人材
の養成強化や
府域の社会福祉法人が取り組む要援護者支援等、各種施策のサポート機能としての役割が期待されている。特に、今
Ⅳ
社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割
(⑤非営利法人)
❏
多様な福祉課題等の解決・就労支援等に取り組む非営利法人が府域に多数存在している。既に、府事業の委託先とし
て、ニート等、
若者の就職支援等に積極的に取り組んでおり、府の施策推進への寄与度も高い。
❏
昨年度、府が実施した生活困窮者自立支援モデル事業をみると、非営利法人における中間的就労への関心は高く、就労
等の受入先と
して参画・協力が見込まれ、要援護者の自立をバックアップする強力な支援主体と考えられる。
❏
今後、生活困窮者自立支援における各種事業を展開していく中で、地域に密着した社会貢献活動を進める非営利法人の
協力は不可
(⑥民間企業)
欠であり、多様な主体との連携や各種機能への参画が期待されている。特に、中間的就労をはじめ就労支援については、
❏ 社会貢献事業(CSR)の一環として、障がい者等の就職困難者に対する職場体験や実習等の就労支援に取り組む事例も
既に取り組んでい
増えつつ
る非営利法人も多く、そのノウハウ等を活かし、各主体の先導役としての役割も求められている。
ある。民間企業は、生活困窮者に対する就労支援についても、こうした企業CSRの一環として実施されている取組み、
さらには雇用の受入
れ主体としての役割が期待されている。特に、今、人材不足の状況が深刻さを増す中、人材確保の観点からも積極的な取
組みが求められる。
❏ 特に、職業的自立を支える中間的就労や雇用の受入れ先としての役割が求められており、行政をはじめ、多様な主体と
(⑦大阪府)
の連携は必須
❏ 府では、前述でも検証したとおり、地域課題を抱える要援護者を支援する施策を展開してきた。今後、我が国を取り
である。一方、新法の認知度をみると、公益性の高い社会福祉法人等に比べ、民間企業の認知度は低い状況にある。この
巻く福祉課題は、
状態を改善す
目まぐるしく動く社会構造の変化により、複雑かつ多様化する傾向にある。そのため、広域自治体である府が果たす役
るため、民間企業の人事担当者等への研修等を通じて、生活困窮者に対する理解を深める必要がある。
16
割は、ますます大きく
なる一方であり、生活困窮者支援においても、郡部(福祉事務所未設置自治体)については、府が法定事業を実施する
必要が
Ⅴ
「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
1.「大阪方式」の提案にあたって
● まず、「大阪方式」という用語について、要援護者による相談やアウトリーチによる対象者の把握をはじめ、生活支
援、学習支援、就労
訓練、そして職業的自立に至る、切れ目ないシームレスな生活困窮者自立支援に係る「一気通貫システム」と定義した
(①生活困窮者とは)
い。
❏
新法では、第2条第1項において、「現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのあ
● 次に、提案にあたり、大阪方式における「生活困窮者」の定義及び「さらなる地域貢献」の考え方について、検証す
る者をいう」と規定し
る。
ている。一方、生活保護受給者については、生活保護法の規定に基づく各種支援措置の対象である。このように、新法
と生活保護法では
対象者を棲み分けしているところであるが、本報告書における一気通貫システムの検討では、大阪の実態に沿った独自
の概念を定めること
❏
で、対象を幅広にとらえ、「生活困窮者」の自立支援に取り組んでいくこととする。
[資料出所]第3回検討部会配布資料より抜粋(大阪府
【図表⑧:大阪の実情(データ)】
H26.7.30)
大阪の実情をデータでみると、全国で最も高い生活保護率はもとより、全国平均より群を抜いて多い高校中退者や
高校中退率
要因
ニート、非正規労働(%)
[H24]
ニート(千
人)
[H24]
引きこもり(千
人)
[H22推計]
非正規労働者(千
人)
[H24]
生活福祉資金
(件)
[H24]
生活保護率(%)
[H26.4]
者数など、生活困窮者を生み出す要因が山積しており、生活困窮者と生活保護受給者の垣根を越えた総合的支援が必要で
大阪/全国
2.1/1.6
43/617
50/700
1,476/20,427
4,041/28,504
3.4/1.7
あると考える。
❏ こうした現状を踏まえ、大阪府における「生活困窮者」を次のとおり、①から③のいずれかに該当する場合であると
定義することとする。大
阪府をはじめとした多様な主体においては、要援護者へのきめ細かな対応に取り組むべきである。
①
現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある人(=生活困窮者自立支援法第2条第1項)
②
経済的な問題をはじめ、社会的孤立や家族の問題など複合的な問題を抱えており、これまでの対象者や分野ごとの仕組みだけでは対応が困難
な状況にある人
③
生活困窮状態に陥るおそれのある人、又は、陥っている人
(高校中退者、ニート、引きこもり、非正規労働者、生活福祉資金利用者、ホームレス、生活保護受給者等)
17
Ⅴ
「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
(②地域貢献から、さらなる地域貢献=「福祉協働(ソーシャル・パートナーシップ・プログラム)」へ)
❏
要援護者に狭間をつくらない新たな地域福祉の取組みは、社会福祉法人をはじめ地域における多様な主体が、これま
で以上に重層的
なネットワークを組むことで、“地域福祉を支え合う、自助、共助、公助の協働関係づくり”をめざすことに他ならな
い。これまでの地域貢献か
ら一歩進んだ、地域の共生と協働にもとづく「さらなる地域貢献」へ。本報告書では、これを「福祉協働(ソーシャ
ル・パートナーシップ・プログ
2.大阪方式を提案する視点(福祉協働に向けた「一気通貫支援システム」の構築)
ラム)」と呼び、これら福祉協働を担う各主体の自主性の尊重と信頼醸成を図りながら、「大阪方式」の施策提案を行
● 大阪における生活困窮者の自立支援について、これまで各主体が、それぞれの専門性を活かして取り組んできたとこ
いたい。
ろであるが、各主体
の相互連携による施策推進面で課題を残す。そこで、新法施行を契機に、これまで蓄積されたノウハウ等を踏まえ、大
阪の実情に沿った
「福祉協働(=さらなる地域貢献)」を進めるため、社会福祉法人を核としたオール大阪体制による「大阪方式(一気
通貫支援システ
ム)」を提案する。
提案の視点
具体的内容
● 大阪方式の提案にあたっては、下表(提案の視点)に記載のとおり「点(支援機関単体)」から「線(ネットワーク
【1】「福祉協働」の核としての社会福祉法人の役割と支援事業
化)」、「面(トー
の強化
《点を「つよくする」》
▸社会福祉法人が、地域福祉の実践において、“蓄積した成果“、”ノウハウや強み”を
活かし、福祉協働の核となる事業(相談から就労支援まで)を展開
タル支援)」へ、実施主体と施策の拡がりをイメージし、福祉協働に向けた一気通貫支援のシステム構築をめざす。
【2】社会福祉法人と多様な主体(民間企業、公益法人等)
とのネットワーク構築
《点から線へ「つなぐ」》
【3】ネットワークを活かし、福祉協働を、「トータルパッケージ(一
気通貫支援システム)」で提供
《線を面へ「ひろげる」》
▸社会福祉法人が備える高い公益性と、民間企業や公益法人等が有する専門性等を組
み合わせ、福祉協働をネットワーク展開
▸法定事業に含まれない(枠外にある)施策ニーズをも把握し、要援護
者にとって狭間や切れ目をつくらない、一気通貫の支援施策の仕組みを検討
18
Ⅴ
「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
3.今後の具体的な取組み
● 前述の「大阪方式」を提案する視点に基づき、社会福祉法人をはじめ、多様な主体における、これまでの取組みの成果と
して蓄積された
“ノウハウや強み”を活かし、以下のとおり、地域のセーフティネットの核となる生活困窮者自立支援策を検討、展開してい
く必要がある。
【1】 「福祉協働」の核としての社会福祉法人の役割と支援事業の強化
《点を「つよくす
●る」》
この取組み提案を実践していく過程において、適宜、実情に応じ、柔軟な検討を進め、「大阪方式」の一気通貫システム
(①法定事業への参画)
を構築されたい。
❏ 新法では、自立相談事業から就労訓練にいたる7事業を規定。府内34市町の福祉事務所設置自治体(島本町を除く9町
村について
は府が実施)が、法定事業の実施主体として、国庫補助等を活用しながら、直営又は委託方式で行うこととされている。
❏ なお、社会福祉法人においては、その専門性や経験を活かして、法定事業の受託者として積極的に参画することが期待
(②社会福祉法人独自の取組みの実施)
されている。
❏ これまで、社会福祉法人同士が連携を重ね、福祉課題を解決する地域密着型の施策を実践してきた。前述の大阪府社
会福祉協議
会・老人施設部会が取り組んできた生活困窮者レスキュー事業については、この制度の全国普及をめざし、各都府県へ
精力的に働きか
け、府域を越えた要援護者支援に取り組んでいる。加えて、居場所づくりや学習支援、就労訓練、直接雇用の受入れ
等、生活困窮者の
サポートに尽力してきた。そんな中、このたびの新法施行を機に、社会福祉法人は、福祉協働への積極的参画が期待さ
れており、地域の
実情に応じた独自の生活困窮者自立支援施策の実施検討が求められている。
❏
19
具体的には、生活困窮者レスキュー事業やスマイルサポーター事業等、既存の枠組みを活用し、参画施設を増やすな
ど、さらなる活性
化が期待される。
Ⅴ
「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
【2】 社会福祉法人と多様な主体(民間企業、公益法人等)とのネットワーク構築 《点から線へ「つな
ぐ」》
(③多様な主体との連携)
❏
生活困窮者自立支援では、入口(相談)から出口(職業的自立)までの一気通貫の支援メニューを備えることが必要で
ある。現在、
相談業務等の生活支援については、社会福祉法人が核となり福祉的サポートを展開している。一方、就労支援について
は、一部の社会福
祉法人で取り組んでいるが、人的・財政面を含めてその受け皿機能には限りがあり、これまでの社会福祉法人による先行
施策を、民間企業
☑ 「地域就労支援センター」との連携
をはじめ多様な主体の取組みにつなげ、拡げていくことが課題である。そのため、特に、就労支援については、社会福祉
❏ 地域情勢に応じた就労支援を展開する、府内全市町村に設置されている地域就労支援センターとの連携も重要である。同
法人は、民間企業を
センターでは、相
はじめ多様な主体と連携しつつ、得意分野へノウハウを結集し、福祉協働に取り組むことが期待されているところであ
談業務をはじめ、無料職業紹介やセミナー等、就職困難者と地域に根ざした民間企業等とのマッチング等に取り組み、就職
る。
に結びつくなど、成
☑ 「若者サポートステーション」との連携
果を上げている。こうした支援機能と社会福祉法人の要援護者支援を組み合わせることで、職業的自立の施策強化を図るこ
❏ さらに、若者やニートの就労支援に取り組む「若者サポートステーション」等との連携・活用も視野に入れたい。これ
とが可能になる。
は、働くことに悩みを抱え
る15歳から39歳の若者に対し、専門相談や就労体験等を行う国事業である。府域には、9か所整備されており、平成18
年度から実施し
てきた豊富な実績とノウハウを有している。社会福祉法人等においては、就労支援に取り組む中で、地域のサポートス
☑ 「民間企業等」との新しい連携
テーションと定期的な
❏ 生活困窮者自立支援システムを構築するには、福祉の垣根を越えた就労支援への本格的な参画が必須となる。そのため、
情報交換の場を設置し、若者やニートの就労支援の強化を図ることが可能になる。
社会福祉法
20
人は、民間企業をはじめ、多様な主体と新しいネットワークをつくり、要援護者を職業的自立へつなげていく仕組み整備が
期待されている。
❏
これまで、生活困窮者を、直接、企業へ結びつける機能は存在しなかったため、要援護者の職業的自立が進まないこと
Ⅴ
❏
「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
例えば、生活困窮者に対する就労支援の充実に向けて、社会福祉法人(大阪府社会福祉協議会等)が、民間企業、そし
て民間企
業を束ねる連合体等とともに新しいパートナーシップを組み、“就労に係る相談~就労体験~職業的自立”へつなぐ、要援
護者のキャリアを
育成する取組みについて、実現可能性も含めて検討を進めることを提案したい。
❏
施策展開にあたっては、要援護者の履歴や相談等を記載した就労支援カルテを作成。多様な主体が情報共有し、各主体
が有する政策
資源(専門人材、財源、ノウハウ等)を投入する等の工夫が必要となる。
❏
特に、これまで、就労訓練(いわゆる中間的就労)等に取り組んできた社会福祉法人においては、蓄積された支援ノウ
ハウを活かし、支
援員等(施設に常駐するCSW等)の派遣や訓練給付(非雇用型)・保険料等の費用助成など、人的・財政面から、就労
支援に取り
組む民間企業等を積極的にサポートすることが求められている。財源については、現在、要援護者の緊急的経済援助を中
心に活用してい
る社会貢献基金の使途に就労支援も加えるなど、創意工夫を重ね、福祉協働を推進することを期待する。
❏
このスキームが実現すれば、社会福祉法人(大阪府社会福祉協議会)と民間企業等との新しい関係構築に立った、画期
的な「大阪
方式の一気通貫システム」として、職業的自立へつなげていくことが可能になると考えられる。なお、この取組みを市町
村単位に応用し、前述
の地域就労支援センター、市町村社会福祉協議会、そして地域密着型企業等が就労支援パートナシップを組み、職業的自
☑学校法人等との連携
21
立へつなげる
❏ 貧困の連鎖を断ち切り、子どもたちが将来にわたって職業的に自立して生活できるよう、大学等の学校法人等と連携
仕組みづくりが有効であると考える。この場合、市町村の役割が極めて重要となる。
し、学生ボラン
❏ また、現在、社会福祉法人が行う入札は、一般競争入札が基本とされているが、応札事業者における生活困窮者の就労
ティアの派遣契約などを締結し、要援護者の子どもたちの学力向上をサポートすることも、大変重要であると考える。
Ⅴ
「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
【3】 ネットワークを活かし、福祉協働を「トータルパッケージ(一気通貫支援システム)」で提供
《線
を面へ「ひろげる」》
❏ 前述の【1】【2】のとおり、全国初の取り組みとして、福祉協働(ソーシャル・パートナーシップ・プログラム)を
先導的に進めるため、府には、
その“トータルコーディネート役”としての機能が求められる。多様な主体間の連携を「つなぎ」「ひろげる」ことで、施
策の体系化が図れ、オール
大阪体制の新たな生活困窮者自立支援の「トータルパッケージ(一気通貫システム)」を構築できる。
❏
また、府の様々な福祉施策に生活困窮者支援の視点を加え、行政として独自の取組みを検討していくことも必要。例え
ば、前頁において
提案している総合評価入札制度について、現在、府は、障がい者雇用の促進など、行政の福祉化の観点を評価基準として
盛り込んでい
[資料出所]第3回検討部会配布資料より加工(大阪府 H26.7.30)
【図表⑨:府域における生活困窮者自立支援制度の将来像(イメー
る。これを参考に、生活困窮者の雇用促進の観点を評価基準に加えるなど、大阪独自の施策として検討されることを期待
ジ)】
民間企業
経済団体
社会福祉法人
多
NPO
病院
様
者自立支援(就労訓練、雇用等)に取り組む企業等へのインセンティブの付与とともに、こうした施策が他の自治体へ拡
な
支援
支援
生活困窮者
がる中で、相乗的
主
学校
民生委員
体
な支援効果、まさに福祉協働の効果が発現するものと考える。
する。生活困窮
寺社
CSW
社会福祉協議会
大阪府
連携
府内市町村
22
■法定事業:郡部対象に、全事業実施
■独自事業:オール大阪体制の支援を検
討
(=一気通貫の支援体制を構築)
■法定事業:必須事業を実施。
■任意事業:市町村の判断による
(=地域実情に沿った取組み&府取組み
を併用した支援展開)
Ⅴ
「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
【図表⑩:今後の具体的な取組み内容(=大阪方式、一気通貫システムの構築)】
[資料出所]第3回検討部会配布資料より加工(大阪府 H26.7.30)
[▸:新規 ○:拡充]
自立相談支
援
点を
「つよくす
る」
法定事業
点から線へ
「つなぐ」
社会福祉法
人独自の取
組み
就労準備支
援
一時生活
支援
家計相談支
援
学習支援
就労訓練
職業的自立
▸社会福祉法人は、単独又はJV方式において法定事業を受託し、生活困窮者の自立支援に参
画し、
職業的自立へつなぐ
○総合相談窓
口
○就職活動支
援
○経済的援
助
○家計相談支
援
○就学・学習
支援
○就労訓練(中間的
就労)の受入
○直接雇用の受入
○生活困窮者レスキュー事業の拡大(施設数、資金拠出額 等) ○スマイルサポーター事業の拡大(施設数 等)
▸中間的就労等事業者への発注
(共同含む)
多様な主体
との連携
▸地域就労支援センターとの連携
○CSW等
との連携
○居場所
づくり
の設置
▸大学
(学生ボ
ランティア)
との連携
▸若者サポートステーションとの連
携
▸民間企業等との連携(支援法人、コンソーシアム
等)
▸総合評価入札制度の導入
線を面へ
「ひろげ
る」
トータル
パッケージ
機能
▸社会福祉法人をはじめ、多様な主体間の連携(上段参照)を「つなぎ」「ひろげる」こと
で、オール大阪
体制の新たな生活困窮者自立支援の「トータルパッケージ(一気通貫システム)」を構築
する
23
Ⅴ
「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
4.留意すべき点
● 今後、前述の具体的な取組み内容について、社会福祉法人をはじめ、多様な主体においては、次の点に留意しなが
ら、その実現に向
けて取り組むことを期待する。
(①「福祉協働」への参画意義)
❏
社会福祉法人は、社会福祉法の規定に基づき、社会福祉の推進に寄与することを目的として設立される法人である。こ
のため、多くの法
人が、それぞれの専門性を活かし、いわゆる社会福祉事業だけではなく、公益事業等、幅広く地域支援活動に取り組んで
きた。一方で、永
続的、安定的に社会福祉事業を行う必要があることから、様々な税制上の優遇措置を享受している。また、社会福祉法人
は、利益配当も
許されておらず、法人外への資金拠出も認められていない。
❏
すなわち、社会福祉法人は、税制上の優遇措置を受けているから社会福祉事業や地域支援活動を行うのではなく、本来
的に、これら事
業を行う法人として、税制上の優遇措置を受けているという制度の趣旨を踏まえる必要がある。
(②国の動き(法人外への資金拠出のあり方、法人税課税議論
等)
❏
❏ また、他の経営主体との公平性(イコールフッティング)についても規制改革会議などで議論されたところであるが、
社会福祉法人が福祉協働に取り組むためには、今まで認められていなかった法人の内部留保等の資金を外部拠出できる
社会福祉法人は、株
仕組みの整備
式会社等の他の経営主体と異なる役割を果たす使命を踏まえ、地域ニーズへの対応にしっかり取り組んでいく必要があ
が不可欠である。この点については、厚生労働省の「社会福祉法人の在り方等に関する検討会(H26.7)」において公
る。今後、社会福祉
益的活動の義務
法人においては、この参画意義を踏まえ、地域福祉の中枢として、セーフティネット構築に取り組まれたい。
化や資金使途の弾力化について検討すべき等、一定の方向性が示されたところであるが、引き続き、制度や運用の見直し
が行われるよう、
24
社会福祉法人においては、府とともに、機会あるごとに、国へ働きかけられたい。また、社会福祉法人を指導・監査する
立場にある府では、自
治体の裁量の範囲内で柔軟な対応を行うことが望まれる。制度や運用によって、社会福祉法人による福祉協働の取組みが
Ⅴ
「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
(③福祉協働に参画する主体へのインセンティブの付与)
❏
社会福祉法人の中には、中心的業務である施設運営に注力し、それ以外の取組みに対し積極的ではない社会福祉法人も
存在する。
❏
そこで、社会福祉法人が福祉協働に積極的に取り組んでいる場合、府のホームページ等により、広く公表したり、福祉
協働を証するプレー
トの付与や顕彰制度を設けるなど、行政主導でインセンティブの付与を検討すべきである。これにより、社会福祉法人の
取組みを広くPRする
ことで、地域社会と、よりよい関係が構築され、誰もが住みよい地域づくりへ寄与するものと考える。
❏
また、小規模の法人については、人的、財政的な理由から、単体での福祉協働への参画が困難な場合もあると思われ
る。対応策として、
(④トータルコーディネートとしての行政の役割)
複数法人での取組みも期待されるところであり、行政は、インセンティブを付与する際には、これら法人に対し、一定の
❏ これまで具体的な取組み内容を提案してきたところであるが、総合調整を行う行政の役割が期待されている。福祉事務
配慮が求められる。
所設置自治体で
❏ 併せて、現段階では、民間企業にとって、障がい者雇用のような法的拘束力を持たない生活困窮者支援への参画が難し
ある市町や府では、福祉分野に限らず、庁内連携による多種多様なネットワークを活用し、あらゆる社会資源の活用や関
い現状を踏ま
係機関等へのつ
え、生活困窮者支援へ振り向けるインセンティブについても検討されたい。
なぎ等を通じて、福祉協働に取り組む社会福祉法人をはじめ、多様な主体の取組みを下支えすることが求められる。
❏ また、法定事業では、府は広域自治体として、自立相談支援などの必須事業の充実と就労準備支援など任意事業への参
(⑤要援護者の状況に応じた支援)
画意義・重
❏ 前述の多様な主体との連携における具体的取組み内容では、職業的自立に重きを置いて提案しているところであるが、
要性について、市町村へ働きかけるとともに、市町村ごとに取組み内容に差が生じることのないよう、トータルコーディ
生活困窮者の自
ネートに尽力されたい。
立支援では、要援護者の置かれている生活や身体状況等に応じた支援を行うことが重要である。
❏
25
そのため、全ての生活困窮者を就労支援へつなげることを、最終ゴールに設定するべきではなく、新法の趣旨に沿って
「相談から
職業的自立」までつなげる大阪方式の一気通貫のスキームを整備する、あらゆるステージに対応できる切れ目をつくらな
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「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
5.今後の工程
● 本報告書での記述については、直ちに取り組めるもの、関係機関等の調整が必要なもの、財源措置が伴うものなど、
取組み内容の種
別により、実施時期等も異なることから、今後の工程を整理する。
(①法定事業への参画)
❏
まず、法定事業への参画については、社会福祉法人においてこれまでのノウハウ等を発揮できる施策分野であり、各市
町村の委託先公募
状況等に応じて、積極的な参画を期待したい。
(②社会福祉法人独自の取組み)
❏ 既に、実施している法人においては継続的な取組みを進めるとともに、新法の趣旨を加味した、施策拡充や新たな取組み
(マンパワー等)
についても速やかに検討されたい。なお、法人の施設種別や規模等を勘案し、中核事業である施設業務に支障が出ない範囲で
(③多様な主体による取組み)
取り組まれたい。
❏ 地域就労支援センター等との連携や総合評価入札制度の取組みなど、現行制度の枠組みを活用するものについては、そ
の実績を活か
し、生活困窮者の自立支援の視点を加えた施策展開を図るため、検討を進めることが期待される。
❏
一方、「民間企業」との新しい連携では、福祉協働への取組み経験やノウハウが少ない民間企業等との理解と参加が必
要なため、多くの
時間と労力を要するものと想定される。特に、社会福祉法人と民間企業等との連携による就労支援パートナーシップ(コ
ンソーシアム)構
(④5年後、10年後の大阪の姿)
築では、参画団体の調整や、その具体的な制度設計を行う必要がある。府は、連携を「つなぎ」「ひろげる」ための、
❏ 我々がめざすべき姿は、「真に必要な人に、必要なとき、必要なサービスが行き届く地域社会づくり」である。そのた
コーディネート役として積
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めには、本報告書
極的に取り組むことが必要である。まずは、前述の市町村単位での取組みに着手するなど、創意工夫を凝らして取り組ん
で提案した支援の取組みが、一人でも多くの要援護者の生きがいと暮らしを支える価値ある施策として、福祉現場で実践
でもらいたい。
されるよう、
参考1:国の動き[規制改革会議(抄)(社会福祉法人制度関係)]
27
[資料出所]第1回社会保障審議会福祉部会資料より抜粋
(H26.8.27厚生労働省)
参考1:国の動き[「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」報告書のポ
イント]
28
[資料出所]第1回社会保障審議会福祉部会資料より抜粋
(H26.8.27厚生労働省)
参考1:国の動き[法人税の改革について(抄)]
29
[資料出所]第1回社会保障審議会福祉部会資料より抜粋
(H26.8.27厚生労働省)
参考2:大阪府地域福祉推進審議会委員
明石
石原
○岩間
大谷
大舩
岡田
小田
木田
黒田
小尾
柴原
白澤
杉村
高岡
田垣
田中
谷口
中北
西田
農野
比嘉
藤井
藤森
◎牧里
牧野
水谷
森垣
吉田
□菊池
□関川
□西座
隆行
欽子
伸之
悟
一美
忠克
克彦
正裕
研二
隆一
浩嗣
政和
和子
國士
正晋
千余子
富士夫
清
孝司
寛治
邦子
博志
次勝
毎治
康幸
綾
学
初恵
繁信
芳孝
新二
名簿
種智院大学人文学部 社会福祉学科長
大阪府民生委員児童委員協議会連合会 会長
大阪市立大学大学院生活科学研究科 教授
大阪体育大学健康福祉学部 教授
社会福祉法人産経新聞厚生文化事業団 専務理事
関西大学人間健康学部 教授
大阪府市町村社会福祉協議会連合会 幹事
大阪府町村長会(豊能町生活福祉部長)
関西大学人間健康学部 教授
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 理事・事務局長
一般財団法人大阪府人権協会 業務執行理事兼事務局長
桜美林大学大学院老年学研究科 教授
公益社団法人大阪社会福祉士会 元会長
社会福祉法人大阪府社会福祉協議会 社会福祉施設経営者部会長
大阪府立大学人間社会学部 准教授
大阪府介護者(家族)の会連絡会 元会長
大阪府市長会(四條畷市健康福祉部長)
特定非営利活動法人ふくてっく 理事
社会福祉法人大阪府社会福祉協議会老人施設部会 副部会長
大阪大谷大学人間社会学部 教授
弁護士
神戸学院大学総合リハビリテーション学部 教授
一般社団法人大阪府医師会 理事
関西学院大学人間福祉学部 教授
公認会計士
社会福祉法人大阪ボランティア協会 事務局長
社会福祉法人大阪府社会福祉協議会 事務局長
関西福祉科学大学社会福祉学部社会福祉学科 教授
社会福祉法人吹田みどり福祉会 理事長
大阪府立大学人間社会学部 教授
社会福祉法人来友会 理事長
◎は会長、○は会長職務代理者、□は専門委員
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参考3:社会福祉法人の「さらなる地域貢献」とこれからの生活困窮
者自立支
援のあり方検討部会委員 名簿
○明石 隆行
種智院大学人文学部 社会福祉学科長
□菊池 繁信
社会福祉法人 吹田みどり福祉会 理事長
□関川 芳孝
大阪府立大学人間社会学部 教授
□西座 新二
社会福祉法人 来友会 理事長
森垣 学
社会福祉法人 大阪府社会福祉協議会 事務局長
○:部会長、□:専門委員
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参考4:「社会福祉法人の『さらなる地域貢献』とこれからの生活困窮者自立
支援のあり
方検討部会」開催経過
開催日(平成26年)
回数
議事内容等
第1回
◇社会福祉法人をとりまく状況
(厚生労働省大臣官房 審議官 古都賢一氏)
◇社会福祉法人による生活困窮者への総合生活支援
(社会福祉法人八尾隣保館 理事長 荒井惠一氏)
◇生活困窮者自立支援モデル事業の実施経過報告
6月17日
第2回
◇CSWの役割・これまでの活動と生活困窮者支援
(社会福祉法人豊中市社会福祉協議会
事務局次長 勝部麗子氏)
◇エル・チャレンジの取組みとこれからの社会的企業型事業協同組合モデ
ルの
検討
(大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合
理事兼事務局長 丸尾亮好氏
政策研究室
田岡秀朋氏)
◇報告書のとりまとめに向けて
▸大阪府域におけるこれまでの取組みに係る効果検証
▸社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割 など
7月30日
第3回
◇報告書のとりまとめに向けて
▸大阪方式の生活困窮者自立支援システムの構築
9月 3日
第4回
◇報告書とりまとめ
4月25日
など
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