「環境」の意味空間分析

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Transcript 「環境」の意味空間分析

テクスト意味空間分析法 1班
~環境~
政策・メディア研究科1年
石崎一樹
総合政策学部4年
吉池拓麿
ごみに関する定義の
傾向と多様性
政策・メディア研究科1年
石崎一樹
国語辞典の定義

物理的な意味
–

言い換えて詳しく説明した意味
–

ちり・あくた
汚い不用なもの、つまらぬ取るに足りないもの
類義語
–
–
くず:切れたり砕けたりして廃物になったもの、よい部
分を選び取った後に残ったつまらないもの
破棄物:不用として破棄されるもの
法律の定義

廃棄物処理法の定義
–
–

汚物・不要物
固形状・液状
ごみの定義の変遷
–
–
–
法律:汚物掃除法(明治33年4月)→清掃法(昭和29年4
月)→廃棄物処理法(昭和45年12月)
法律上の定義:汚物→汚物→廃棄物
廃棄物の定義におけるごみの定義:塵芥→ごみ→ごみ
百科辞典の定義

入口としての広義の定義
–
–
–

主体:個人・事業所・社会
価値判断:不用になったもの、役に立たないもの
扱い:利用や所有を破棄(廃棄)されたもの
少し厳密な定義
–
–
–
領域:自らの活動領域や空間の外部に置くこと
権利:利用権や所有権を放棄した廃棄物
影響:人間を中心とする生命体が生きていくうえで不都合
なものが生成されるもの
言語使用の多様性

新聞投書欄におけるセンテンス数
–
–

「ごみ」「ゴミ」において直接係り受け関係にある動詞
(1以上の頻度)
–
–

ごみ:839
ゴミ:1,354
ごみ:動詞の種類:205(母数:687中)
ゴミ:動詞の種類:112(母数:441中)
「ごみ」「ゴミ」へ対応する動詞(行為)は多様である
言語使用の傾向(1)

「ごみ」・「ゴミ」において直接係り受け関係にある動
詞(10以上の頻度)
–
「捨てる」:109
話題:捨て場所、捨て方等
–
「出す」:47
話題:捨てた事実、捨てた時間等
–
「なる」:42
話題:利用・所有物→ごみ、ごみ→資源
–
「拾う」:41
話題:公共清掃、ごみから資源を拾う等
–
「減らす」:25
話題:排出抑制、リサイクル等
言語使用の傾向(2)
①
②
①
④
③
②
③
④
⑤
自らの活動領域や空間
「捨てる」「出す」
「拾う」
本来、ごみを捨てる場所
ごみを捨てるべきではない場所
⑤

「ごみ」「ゴミ」への対応は減量化・資源化よりも、排
出・破棄を導く傾向がある
考察






定義が「ごみ(ゴミ)」では、排出のイメージが強い
利用頻度の度合い、愛着などの主観的判断は個人差がある
排出される「ごみ」は最終的廃棄ではない
資源化可能な「ごみ」は「ごみ」とはよばれなくなりつつある
リサイクルを念頭においた循環型社会形成を目指す今日で
はより定義が複雑になる
循環型社会に資する活動を導くために、「ごみ」を再定義す
る必要がある
「環境」の分析
総合政策学部 4年
吉池拓麿
国語辞典の定義
「環境」
 取り囲んでいる周りの世界。
人間や生物の周囲にあって、意識や行動の面
でそれらと何らかの相互作用を及ぼし合うもの。
また、その外界の状態。
自然環境の他に社会的、文化的な環境もある。
 周囲の境界。まわり。
新聞別「環境」の出現頻度数の推移
10000
9000
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
19
80
19
82
19
84
19
86
19
88
19
90
19
92
19
94
19
96
19
98
20
00
20
02
20
04
0
朝日新聞 全国版
読売新聞 全国版
日経新聞 全国版
産経新聞 全国版
19
80
19
82
19
84
19
86
19
88
19
90
19
92
19
94
19
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19
98
20
00
20
02
20
04
環境を含む語の推移
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
環境
複合語
環境を含む語の推移


「環境」は緩やかな上昇傾向にある。
環境を含む複合語(環境問題・自然環境など)は
92年をピークに急増している。
その後は減少するが、2000年前後にも増加して
いる。
→92年前後から多用されるようになった概念、
「環境を守る」と「地球規模の環境」の2つに注目。
1989年から急増し、1992年がピークの語
1400
1200
1000
800
600
400
200
19
80
19
82
19
84
19
86
19
88
19
90
19
92
19
94
19
96
19
98
20
00
20
02
20
04
0
環境問題
環境保全
環境保護
環境対策
地球環境
92年をピークに急増しているタイプの語の推移
10000
9000
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
19
80
19
82
19
84
19
86
19
88
19
90
19
92
19
94
19
96
19
98
20
00
20
02
20
04
0
「環境」
その他
「地球」系
「対策」系
1992年の「環境」出現頻度の割合
92年は「環境を守る」系と「地球規模の
環境」系で半分以上を占めていた
12%
環境問題:14%
82年は比較的「~
環境」が多い
環境保全:10%
52%
環境保護:9%
環境対策:5%
36%
2002年は比較的
「環境~」が多い
環境整備:2%
地球環境:12%
「環境」
環境保全
環境整備
その他
環境保護
地球環境
環境問題
環境対策
82年の「環境」出現頻度の割合
2002年の「環境」出現頻度の割合
39%
34%
環境省:5%
経済環境:4%
環境問題:4%
国際環境:3%
15%
環境保全:3%
25%
生活環境:2%
環境整備:3%
自然環境:1%
環境対策:3%
環境保護:2%
環境庁:5%
地球環境:4%
経済環境:2%
46%
「環境」
その他
経済環境
国際環境 生活環境 自然環境
環境庁
40%
「環境」
環境保全
地球環境
その他
環境整備
経済環境
環境省
環境対策
環境問題
環境保護
環境の言語使用



以上のように、92年前後を境に言語使用が変化
したことが考えられる。
また、92年前後には、以前にはなかった環境の
新しい語り方が生まれたと考えられる。
そこで、92年以前と以後との環境概念を調べる
ために、新聞の投書からスクリプト分析を行った。
(84~91年と、92~99年の8年間ごとの比較)
環境の語り口の変化(84~91と92~99年)


形容動詞
- 大切 48→68
- 豊か 24→40
- 深刻 10→22
→環境が大切であると捉えられるようになった。
動詞
- 思う 89→226
- 考える 72→134
- 守る 43→64
- 取り組む 11→32
→環境のことを考えたり、守ることや取り組みを意識
するようになった。
環境の新しい語り口が生まれた



形容詞
- 優しい(やさしい) 7→31
→やさしいという語り口が使われるようになった。
形容動詞
- 積極的 8→36
→環境に対して受身ではなく、積極的であることがより
意識される。
動詞
- 整える 7→34
- 整備する 9→18
- 配慮する 0→14
- 考慮する 0→12
→環境を整える・整備するという意識が増し、さらに、環
境に配慮する・考慮するという語り口が生まれた。
係り受け関係でみる環境の語り口





環境問題の受けとしては「取り組む」が最も多くある。
91年以前では環境と「豊か」の係り受けが多く見られた
のが、92年以降はなくなっている。
「環境を守る」の組み合わせが増えている。
環境と「整える」「保つ」の係り受けが生まれた。
「大切にする」の係り受けは以前から見られたが、「大切
である」の組み合わせは91年以前になかった。それが、
92年以降は「大切にする」と同じぐらい出現している。
「環境」+助詞別の出現頻度
19
84
19
86
19
88
19
90
19
92
19
94
19
96
19
98
20
00
20
02
20
04
1000
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
環境は
環境が
環境を
環境に
環境で
助詞別にみる環境の語り口
92~99年
84~91年
環境
が
整う
5
を
守る
14
作る(つくる)
11
に
ある
環境
が
ある
を
整える
19
守る
19
作る(つくる)
24
5
に
6
整備する
6
破壊する
5
考える
5
提供する
5
整えること
5
ある
8
配慮する
6
優しい
5
考察










身の回りの「環境」から、より広い地球規模の「環境」へ。
「環境」に対する意識が増え、配慮されるようになった。
「環境」は大切に扱うものから、大切であるものへ移ったのではない
か。
「環境」は存在するものから取り組むものとしての性質が増した。
「環境」は整えるもの、改善するもの。
「豊かな環境」はなくなり、「環境に優しい/厳しい」ことがポイントに
なった。
「環境」に対する責任が生まれた。
持続可能な「環境」を保つことが重要視されるようになった。
時代を反映した「環境省」や「京都議定書」などの新語が生まれた。
「教育環境」「社会環境」など「環境」をキーワードにした語の流行。
携帯やインターネットの普及により、情報「環境」という概念が生ま
れたのではないか。