データ統合・解析システムへの期待 - 国際情報農学研究室

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Transcript データ統合・解析システムへの期待 - 国際情報農学研究室

第2回「データ統合・解析システム」(DIAS)フォーラム
-データ統合は社会を変えられるか-
2008年5月9日 @東京大学 武田先端知ビル
ジャストインタイム農業がもたらす
農業イノベーション
司会進行: 二宮正士(農業・食品産業技術総合研究機構)
1: 溝口勝 (東京大学EDITORIA/大学院情報学環)
2: 中谷誠 (農林水産省農林水産技術会議事務局)
3: 総合討論 (会場)
第2回「データ統合・解析システム」(DIAS)フォーラム
-データ統合は社会を変えられるか-
2008年5月9日 @東京大学 武田先端知ビル
ジャストインタイム農業がもたらす
農業イノベーション
溝口勝1・二宮正士2・鳥谷均3
1東京大学EDITORIA/大学院情報学環・学際情報学府(UT)
2 農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)
3 農業環境技術研究所(NIAES)
穀物価格の急騰
• 背景
–
–
–
–
輸送コストや肥料価格に直結する原油などエネルギー価格の高騰
中国、インドなどアジアを中心とする有力な途上国の食糧需要増
気候変動に伴う洪水や干ばつによる収穫減
バイオ燃料生産のための穀物利用
• 影響
– 途上国を中心に食糧確保不安、各地で暴動の懸念
• 対策:途上国に緊急支援
– アジア開銀総裁が表明(5月3日)
– 7億7000万ドル(約800億円)の追加支援策を発表(米国:5月1日)
– 北海道洞爺湖サミットでも主要テーマか(5月3日読売新聞)
• 日本の役割と責任
– いまこそ日本の農業技術の出番!
ジャストインタイム
(JIT; Just In Time)
生産
流通
消費
• ジャストインタイム生産システム
– 経済効率を高めるための技術体系(生産技術)
– トヨタ自動車の生産方式(カンバン方式)
– 必要な物を、必要な時に、必要なだけ適切に生産
ジャストインタイム農業システム
(JITAS; Just In Time Agriculture System)
• ジャストインタイム農産物生産システム
– 必要な農産物を、必要な時に、必要なだけ適切に生産
– 生産性・安全性・収益性に留意した農作物生産方式
– 地上観測・気象予測・作物栽培データベースの活用
• グローカルな視点で農業現場の問題を解決
–
–
–
–
野菜の産地破棄を軽減
食料への農薬混入を防止
食料自給率を向上
農地を効率的に利用
Glocal:
地球規模で考えながら、自分
の地域で活動すること
Think globally, act localy
5
ジャストインタイム農産物生産システム(JITAS)
で扱う
短期
(日~週)
農作業管理
播種
防除
施肥
収穫
出荷
“時間“
中期
(月~年)
平年予測
適作
可能性
長期
(十年~百年)
将来予測
影響評価
温暖化時の作付図
ポイント
同じ作物プログラムが異なる気象条件下でそのまま使える
JITAS(短期)
播種
施肥
防除
出荷
収穫
農作業のタイミングが重要!
DIASで支援
7
DIASにおける具体的な目標
• コアシステムで提供されるデータ群を効率的に統合し
農業分野で利用できるようにする
• 誰でも簡単に知ることができ,政策決定者の判断のよ
りどころになるシステムを実現する
– 農業生産管理支援情報
– 地球温暖化による食料生産への影響等
• 安全で安心かつ安定的で高品質な食糧供給を求める
公共益に供する
– グローカルな視点でジャストインタイム農業システムを構築
8
⑧ 安全な農作物生産管理技術とトレーサビリティシステムの開発
(これまでの研究成果と今年の計画)
溝口 勝(大学院情報学環/農学生命科学研究科)・二宮正士(農業・食品産業技術総合研究機構)・鳥谷均(農業環境技術研究所)
1.
コアシステムにある地上気象観測データ群をメッシュ気象値化
・フィールドサーバおよびMetBrokerによる画像を含む地上気象観測データをコアシステムに
構築
・データベース生成ツールとフィールドサーバ画像データ解析ツールを開発
→ データの統融合による農作物管理情報生成の基盤ができた
3. 広域土壌水分モニタリング・評価システムの拡張
・東北タイにおける広域土壌水分モニタリングサイトを拡張
・全天日射量と炭酸ガス濃度モニタリング機能を追加
→ 衛星による土壌水分バリデーションサイトの運用基盤ができた
→ 土壌水分の有効利用による適地適作検証用サイトとしても発展させる
→ 高度データマイニングによる安全安心な農産物情報伝達ツールの開発につなげる
1.2
1
0.8
作
付
け
画像データと数値デー
タの統合利用ツール
0.6
0.4
画像算出被覆率の変動幅が
キャベツの生育と関係してい
るのかも知れない!
収
穫
2006/09/14 16:30
2006/09/17 11:30
2006/09/19 15:30
2006/09/22 10:30
2006/09/05 09:00
2006/09/07 13:00
2006/09/10 08:30
2006/09/12 12:30
2006/08/26 10:00
2006/08/28 15:00
2006/08/31 10:00
2006/09/02 14:00
2006/08/14 08:00
2006/08/16 12:00
2006/08/18 16:00
2006/08/21 11:00
2006/08/23 15:00
16:30
11:30
15:30
10:30
14:30
10:00
14:00
14:00
2006/07/14
2006/07/17
2006/07/19
2006/07/22
2006/07/24
2006/07/27
2006/07/29
2006/08/01
2006/08/04 09:00
2006/08/06 13:00
2006/08/09 08:00
2006/08/11 13:00
08:00
12:00
16:30
13:30
08:30
12:30
2006/06/30
2006/07/02
2006/07/04
2006/07/07
2006/07/10
2006/07/12
0
土壌水分バリデーションサイト
2006/09/24 14:30
2006/09/27 09:30
2006/09/29 13:30
0.2
06/27
07/23
08/12
08/22
08/02
コアシステム
地上観測データ群
GPV予報データ群
09/02
イネの湛水面積の変化
MetBrokerインタフェース
成長が速い!
土浦より1ヶ月早い収穫
同じ方式で全球レベルで栽培可能性を判定できる!
(ただし、現時点では十分な水があるという条件付)
水利用可能性とのリンクが必要
地上観測とGPVの比較
2. 長期気象予測変動データMetBrokerインタフェースの開発
水稲適地適作検証ツール
4. グローバルスケール・ボトムアップアプローチ農業生産モデルの開発
・Web水稲適地適作検証ツールを開発
・CMIP3/AR4長期気象予測変動データのグリッド化のためのプログラム開発
・多様な作物・品種の生育パラメータ推定を簡便化するツールを開発
→ 地上観測気象DBとGPV短期気象予報DBを時間軸上で統合した
→ 全球レベルでイネの適地適作予測が可能になった
→ 各種気象観測データ群をシームレスに統合できるようにする
→ 任意の作物・品種の栽培可能性をマップ表示できるようにする
9
4.グローカルの視点での農業生産モデルの開発
• Web水稲適地適作&収量予測ツール
• 多様な作物・品種の生育パラメータ推定を簡便化するツール
成長が速い!
土浦より1ヶ月早い収穫
同じ方式で全球レベルで栽培可能性を判定できる!
(ただし、現時点では十分な水があるという条件付)
水利用可能性とのリンクが必要
→ 全球レベルでイネの適地適作予測が可能
→ 任意の品種の収量予測値をマップ表示
10
Web版水稲収量モデル(最新)
気温
日射量
予測結果の表示
8月4日 宮崎
9月4日 出雲
9月22日 小出
10月15日 稚内:0 kg
10月15日 札幌
平均気温が5度上昇すれば稚内でも栽培可能?
外国でも適用可能
収量モデルに関する今後の展開
• 地上観測データのメッシュ化(柴崎Gと連携中)
• 日射量メッシュデータとの統合(沖Gと連携)
– 収量モデルに必須だが,地上観測はあまり無い
• 水文データとの統合(小池Gとの)
– 水条件の付加
• モデルの高速な計算機への移植
• 対応イネ品種数の増加,他の作物への展開
農作物生産
気象条件
固有条件
気温
土
降水量
水
日射量
農作業
品種
人間の判断
20
Thank you
2.データ統合・解析システムへの期待
DIAS「データ統合・解析システム」第2回フォーラム
データ統合・解析システムへの期待
農林水産省農林水産技術会議事務局 中谷 誠
国内外における農業の課題
• 変動する環境下での安定的生産
– 品種改良や適地適作による食料安定供給
– 食料需給構造の急速な変化への最適化された対応
• 高品質で低コスト・高収益
– 企業的経営による高収益,国際的競争力
– 自給率向上,輸出促進
• 低環境負荷と安全安心
– 農薬の適正使用,適切なリスクマネージメント
• その他
– 多面的機能の発揮ダム機能,気候緩和機能
それらの問題解決にむけた農水省でのIT関連研
究
• これまでの取り組み例
–
–
–
–
–
水稲の冷害早期警戒システム
水稲イモチ病の発生を予報
大陸からのイネ害虫飛来を予測
気候変動下での適地適作支援システム
リアルタイム海況情報システム
• 全てデータ統合基盤を必要としている
– データ統合について農水単独での取り組みは不十分で,
数多くのシステムやツールが十分に活かしきれていない
– 多くのデータは他分野と共有して利用できる
水稲の冷害早期警戒システム
• 多様な情報を統合化して冷害の程度と可能性を予報
–
–
–
–
気象観測値,短期気象予報値
長期季節予報
やませ情報
現地作柄情報,生育予測情報
• 農家は早めの対策で被害を最小化
冷
害
の
危
険
度
を
図
示
収量(kg),変動係数(%)
5(596, 4.8)
2(580, 14.6)
3(545, 6.8)
7(495, 15.2)
4(488, 28.1)
1(450, 16.6)
やませが襲来した水田
8(394, 38.1)
6(383, 29.6)
水稲イモチ病の発生を予報
• 多様な情報を統合化して病害発生の可能性を予報
– 気象観測値,短期気象予報値
– 現地作柄情報,生育予測情報
• 農家は的確な防除で被害を最小化
– ピンポイント防除で農薬代の節約と低環境負荷
イモチ病が発生した水田
イモチ病の発生可能性を表示
イネウンカ類
大陸からのイネ害虫飛来を予測
4 mm
3 mg
ウンカ類
飛来ルート
ウンカ類による被害
日本では越冬できない
梅雨期に長距離移動で侵入
下層ジェットで運ばれる
データ統合により飛来を予測
• 発生源となる水田の特定(衛星画像)
• 害虫の成育予測(発生源の地上気温等)
• 飛来ルートの予測(天気予報データと生物行動を考慮し
た粒子拡散モデル)
– 飛来害虫のサンプリングと逆軌道解析でベトナム北部地帯から
一度中国南部の水田を経由して飛来するという,2ステップの発
生源を特定
•
•
•
•
農薬の的確な散布による生産力・品質の確保
ピンポイント防除による低環境負荷,低コスト化
減農薬による消費者の安心
モデルを活用した国際連携により域内での生産性向上に
貢献
気候変動下で栽培に最適な作物・品種を見つけ出す
YR錦秋
10月1日定植
• 気温,地形,土性,土壌水分データの統合
– 平年値 現在の作付け可能性
– 長期予報値 未来の作付け可能性
データ統合・解析システムは水産業にも貢献
• リアルタイム海況情報システム
– 衛星画像(海表面水温,海色,海面高度)と船舶情報(海中水温)等を統合
– 海中水温図や魚群情報の提供など漁業者の操業を支援
データ統合・解析システムへの期待
• 多様なデータを統合的に利用できる基盤の整備が必須
– 気象,土壌,品種,土地利用など多様なデータの統合が必要
– 農業は地域性が高く,それぞれの地域特有のデータが必要
– 他分野と共有できるデータがほとんど
• 多様なタイムスケールへの対応
– 長期予測ばかりでなく,短中期的な日常的環境変動にも対応できる基盤
– 近年の極端な気象頻発の中,農家レベルでも,全球的需給対策でも必須
• 地域性を反映しながらグローバルにも展開できる対応(グ
ローカルなアプローチ)
– 品種など地域性を配慮できるモデルをグローバルに積み上げて精度向上
– 農家のためにも,逼迫する食料に関する全球的意思決定にも必須
• 専門家の手を借りずとも誰でも使えるシステム
– 自らの地域のデータをダイナミックに当てはめて利用
ありがとうございました
総合討論
司会:
二宮正士
農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)
「データ統合・解析システム」のインパクト
• 多様なデータを統合的に利用できる基盤
– 必要なデータの多くが他分野と共有して活用できるデータ
– プロジェクト内で提供されるデータを最大限活用
– 農業系も地上観測データを中心にデータを最大限提供
• 今日の農業・食料問題解決に向けた最適化された意思決定
– 効率的データ統合
– 多様なタイムスケールへの対応
• 観測データ,短期予測データ,長期予測データなどシームレスに連携
– 地域性を反映しながらグローバルにも展開できる対応(グローカルなアプロー
チ)
• 品種など地域性を配慮できかつグローバルに展開できるモデルを構築
– 専門家の手を借りずとも誰でも使えるシステム
• 個人農家や世界の誰もが利用して意思決定に役立てる使いやすいユーザ・インタフェースや
地域性の高いデータの提供