すざく衛星による超新星残骸 SN1006の観測

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すざく衛星による超新星残骸
SN1006の観測
○山口 弘悦、小山 勝二、中嶋 大(京大)、
馬場 彩、平賀 純子(理研)、
他 すざくSWGチーム
SN1006
shell領域からシンクロトロンX線を発見
Koyama et al. (1995)
→ ~100TeV電子の存在を示唆
SNRでは粒子加速が起こっている
10’
ASCA image of SN1006
北東部のMapping (馬場さん、春の天文学会)
3-5keV(非熱的X線)image
酸素輝線の
narrow band image
SN1006北東部
すざく
3-5keV
すざく
O band
非熱的X線
熱的X線
北東部だけでも分布が異なる!
空間分解能のよい
Chandra のimage
2枚のfilament状の
構造が見える。
緑枠 は
すざくXISの視野
SN1006北東領域のうち、
北部(Nrim)で非熱的成分、
東部(Erim)で熱的成分が
卓越??
SN1006北東部
Chandraのfilamentに対応する領域を
すざくのimage上から選び、スペクトルを抽出
Chandra
image
Nrim
Erim
imaging解析とconsistentな傾向
East : 強い酸素輝線(熱的プラズマ)の存在
North : 強いhard成分(非熱的電子)の存在
プラズマ密度や宇宙線加速効率は
場所によって大きく異なる?
調べたいこと
酸素輝線
(Erim)で強い
hard成分は
Nrimで強い
赤 : East (Erim)
青 : North (Nrim)
XISのスペクトル
・ 宇宙線加速現場のプラズマの物理状態
(密度や温度)が加速効率に与える影響
・ そもそも加速粒子の最高エネルギー ・
総エネルギーはどれくらい?
(= 非熱的スペクトルの純粋な寄与は?)
熱的成分と非熱的成分の
切り分けが必要不可欠!!
SN1006南東部
O band image
と言うわけで、、、
まずはプラズマ成分の様子を調べる
→ 非熱的X線放射がなく、熱的放射で
明るい南東部からスペクトルを抽出
しばらくは熱的成分の話を続けます。
O
Ne
Mg Si
S
Ar
S以上は初めて検出!
Ia型SNRでありながら、これまでFeなどの
重元素の存在はX線では未確認だった
Ca
黒: XIS-BI
赤: XIS-FI(3台の平均)
Fe
重元素輝線の中心エネルギー
中性 Kα(eV)
Line center (eV)
He状 Kα(eV)
Mg-Kα
1254
1345±1±5
~1340
Si-Kα
1730
1826±2±5
~1850
S-Kα
2307
2365±4±5
~2450
Ar-Kα
2957
3026±12±5
~3120
Ca-Kα
3690
3738±28±5
~3890
Fe-Kα
6400
6430±19±5
~6680
重い元素ほど低い電離状態!
Fe輝線のまわりを
電離非平衡(NEI)プラズマモデルで fitting
kTe = 5.84 (2.77-39) [keV]
net = 5.6 (2.4-8.8) x 109 [cm-3 s]
・ 高温成分の存在
・ 極めて低電離(Ne状程度)
RCW86(植野さん K18a)に類似
wabs*vpshock
黒: BI
赤: FI
低エネルギー側のスペクトル(1)
どのような輝線が存在するか
調べる (brems+Gausでfit)
730eV
920eV
575eV
O672eV
systematic error ~ 5eV
820eV Ne
730eV = Ne状Fe-L (3s→2p)
820eV = Ne状Fe-L (3d→2p)
ともに低電離のFe輝線
「XMM-Newtonのスペクトルに
Fe-L輝線の兆候が見られない。
Ne状まで電離が進んでいない?」
(Vink et al. 2003)
しかしながら、既存のNEIモデルでは
上図のような ~730eV(3s-2p)輝線と
~820eV(3d-2p)輝線の強度比(~4:1)を
説明できない。
(低電離での)Fe-L輝線のモデル化が不正確?
エネルギー分解能 ・
検出効率に優れる
すざくのスペクトルによって
低電離Fe-L輝線を発見!
低エネルギー側のスペクトル(2)
酸素輝線のエネルギー
730eV
920eV
575eV
672eV
He状 Kα ~ 570eV
He状 Kβ ~ 670eV
H状 Lyα ~ 650eV
He-Kβdominant!!
systematic error ~ 5eV
820eV
730eV lineを入れて
酸素輝線の周辺だけで fitting
極めて低電離な状態なら
このスペクトルを説明可能
kTe = 1.5 [keV]
nte = 4x109 [cm-3s] が best fit
高温
電離度大
best fit
SN1006南東部スペクトル All band
黒: XIS-BI
赤: XIS-FI(3台の平均)
既存のモデルでは説明できないので、
複数のbrems+Gaussiansで
現象論的にこのスペクトルを表現する
モデルを決める。
連続成分
kT1 = 0.1keV
kT2 = 0.5keV
kT3 = 7.2keV
北東部のスペクトル解析
Erimのスペクトル
熱的成分 ‥ 南東部で決めた形にfix、
強度のみがfree parameter
非熱的成分 ‥ power-law
Chandra
image
Nrim
Erim
broken power-law
thermal + power-law
黒: BI
赤: FI
Γ= 2.54
χ2/dof = 1.45
単一の冪では
表せない!
thermal + broken power-law
黒: BI
赤: FI
Γ1 = 2.38, Γ2 = 2.85
break E = 2keV (fixed)
χ2/dof = 1.12
北東部のスペクトル解析
Chandra
image
Nrim
Erim
Nrim
Erim
Erim
Nrim
Γ1 (soft側)
2.38 (2.35-2.42)
2.35 (2.33-2.40)
Γ2 (hard側)
2.85 (2.82-2.89)
2.71 (2.69-2.73)
break E [keV]
2.0 (fixed)
2.0 (fixed)
SB2-10keV [ergs/cm2/s/arcmin2]
2.68x10-13
3.54x10-13
2.2x1057
1.3x1057
EM = n2V [cm-3]
・ 非熱的成分はNrimで有意にhardかつ強い
・ 熱的プラズマ成分はErimで約2倍明るい
2つのfilamentの間に
明白な性質の違いを発見!
南西部のスペクトル解析
Γ1 = 2.39 (2.37-2.41)
Γ2 = 2.93 (2.90-2.96)
break (keV) = 2.0 (fixed)
n2V = 5.1x1057 [cm-3]
Chandra
image
SWrim
・ Erimよりもさらにsoftで、熱的成分は強い
power-law成分の冪は
加速粒子の最高エネルギーを反映
宇宙線加速効率とプラズマ密度の
間の相関を観測的に証明!
密度の薄いところで効率良く
粒子加速が行われている!!
密度大
プラズマ密度の加速効率の相関
SWrim
Erim
Nrim
加速効率良い
悪い
まとめ
• SN1006南東部のスペクトルからS, Ar, Ca, Feなどの
重元素輝線を発見。重い元素ほど電離度が低い。
• 低電離のFe-L輝線を発見。3s-2pが非常に強く、
既存の理論モデルでは説明できない。
• 酸素輝線はH-LyαよりもHe-Kβが支配的。高温・ 低
電離状態であれば説明可能。
• 北東・南西部のスペクトルから非熱的成分の寄与を
厳密に見積った。この成分は単一の冪では表せない。
• 北東部の2つのfilament状構造の間に、明白な性質
の違いがあることを発見。
• 宇宙線加速効率とプラズマ密度の間の相関を実証。
低エネルギー側のスペクトル(1)
730eV
高電離Feの
L-line920eV
575eV
O672eV
systematic error ~ 5eV
820eV Ne
どのような輝線が存在するか
調べる (brems+Gausでfit)
中性FeのLα輝線 = 705eV
低電離Fe-Kα輝線はreal
→ ~730eVのFe-L輝線が
存在しても不思議ではない
「XMM-Newtonのスペクトルに
Fe-L輝線の兆候が見られない。
低電離だからか?」
(Vink et al. 2003)
既存のNEIモデルでは、上図のような
~730eV(低電離)輝線と
~820eV(高電離)輝線の強度比を
説明できない。
理論モデルの適用範囲外か?
エネルギー分解能 ・
検出効率に優れる
すざくのスペクトルによって
初めて実証!