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物理フラクチュオマティクス論
Physical Fluctuomatics
第8回 物理モデルにおける「More is different」と「ゆらぎ」
8th “More is different” and “fluctuation” in physical models
東北大学 大学院情報科学研究科 応用情報科学専攻
田中 和之(Kazuyuki Tanaka)
[email protected]
http://www.smapip.is.tohoku.ac.jp/~kazu/
本講義のWebpage:
http://www.smapip.is.tohoku.ac.jp/~kazu/PhysicalFluctuomatics/2007/
29 May, 2007
物理フラクチュオマティクス論(東北大)
1
今回の講義ノート
田中和之著: 確率モデルによる画像処理技術入門,
第5章, 森北出版, 2006.
参考図書
西森秀稔:相転移・臨界現象の統計物理学,
培風館,2005.
宮下精二:熱・統計物理学,培風館,1993.
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たくさんが関連して集まり構成されたシステム:
情報と物理が扱う対象に共通する概念
ビットが集まってデータを形成し,コトとなる.
主な研究対象
情報工学:コト
データ
物理:モノ
0,1
ビット
101101
110001
01001110111010
10001111100001
10000101000000
11101010111010
1010
コト(データ)
物質・自然現象
並びをきちんと決めることによって意味のある文章になる.
共通点:たくさんが関連
分子が集まって物質を形成し,モノになる.
分子
分子同士は引っ張り合っている.
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モノ(物質)
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More is Different
宇宙
社会
素粒子物理学
クォーク
中性子
生命
材料
陽子
原子核
物質
物性物理学
電子
原子
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分子
化合物
More is different
P. W. Anderson
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自然現象と物理モデル
水はなぜ氷になるのだろう?
冬になると何故,結露が起こるのだろう?
鉄は何故,磁石になるのだろう?
鉄や銅は何故,電流は流すのだろう?
低温になると電気抵抗がなくなる物質があるらしい!!
高温になると鉄は磁石にならなくなるらしい!!
・
・
・
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強磁性体と確率モデル


線分で結ばれたノード対の
スピン同士が同じ向きを向
くほど確率が高くなるよう
に確率モデルを設計
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
スピンがいくつか集まると周りのスピンの状
態をよく見ながら自分の状態を決めないとい
けなくなる もっとたくさん集まったらどうなるか?
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強磁性体の確率モデルと More is different
p
p
p


マルコフ連鎖モン
テカルロ法による
サンプリング
p




p が小さい
p が大きい
無秩序状態
秩序状態
More is different.
ある p の値の付近で
ゆらぎが大きくなる.
量が増えれば質が変わる
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外場をもつ簡単な磁性体のモデル
a  1
P (a ) 
e
h

exp( ha )

h  0
exp( ha )
e
+1
-h
-1
a  1
h が正値なので白(下向きスピン)の確率が高くなる.
平均
m 

aP ( a )  tanh( h )
h :外場
a  1
分散
V a  

2
( a - m ) P ( a )  1 - tanh
2
(h)
a  1
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相互作用をもつ簡単な磁性体のモデル
P ( a1 , a 2 ) 

exp( Ja 1 a 2 )
 exp( Ja 1 a 2 )
a1   1 a 2   1
a1   1
a 2  1
J  0
J :相互作用
e
J

e
J が正値なので白白と黒黒の
確率が高くなる.
平均 m 1 

V a 1  
 a1 P ( a1 , a 2 )  0


-1
e

+1
-J
-1
+1

a1   1 a 2   1
分散
-J
-1
J
-1
+1
+1

e


2
( a1 - m 1 ) P ( a1 , a 2 )  1
a1   1 a 2   1
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相互作用をもつ簡単な磁性体のモデル
P ( a1 , a 2 ) 

exp( Ja 1 a 2 )
 exp( Ja 1 a 2 )
a1   1 a 2   1
J :相互作用
a1   1
a 2  1
J  0
e
J

共分散
e
Cov a 1 , a 2 


 ( a1 - m 1 )( a 2
-J
-1
e

-1
J
-1
+1
+1

e
+1
-J
-1
+1

- m 2 ) P ( a1 , a 2 )

a1   1 a 2   1

 tanh( J )
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強磁性体の基本的な確率モデル

a  ( a1 , a 2 ,  , a N )


1
P (a ) 
exp  - E ( a ) 
Z
Z 

ai  1
ai  -1

exp( - E ( a ))
B:すべての最近接ノード対の集合
a

E (a )  - h

i 
ai - J

ai a j
ij  B
h
J
h
J

エネルギーの役割を果たし,エネルギーが低い
状態ほど確率が高くなるようにデザインされる.
どのノードから周りを
見回しても同じにみえる
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強磁性体の基本的な確率モデル

a  ( a1 , a 2 ,  , a N )


1
P (a ) 
exp  - E ( a ) 
Z

E (a )  - h
B:すべての最近接ノード対の集合
ai  1
 ai
- J
i 
ij  B
h  0

a1   1 a 2   1
Cov [ a i , a j ]  lim
h  0
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



h
J
J>0
 ai a j
N が有限値である限り,平均も共分散も J の解
析関数
m i  lim
h

N  |  | 9
| B | 12

ai P (a )
a N  1

a1   1 a 2   1



( a i - m i )( a j - m j ) P ( a )
a N  1
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強磁性体の基本的な確率モデル

a  ( a1 , a 2 ,  , a N )


1
P (a ) 
exp  - E ( a ) 
Z

E (a )  - h
 ai
- J
i 
N  
Cov [ a i , a j ]  lim
h
J
ai  1
J
どのノードから周りを
見回しても同じにみえる
ではどうなるだろう?
h   0 N  
m i  a i  lim

 ai a j
ij  B
lim
h



a1   1 a 2   1
lim
1
h   0 N   N


( a i - m i )( a j - m j ) P ( a )
a N  1
N
 
ij  B

ai P (a )
i 1 a
自発磁化 (Spontaneous Magnetization)
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大きさが有限と無限大でどう違うか?
ai  1


1
P (a ) 
exp  - E ( a ) 
Z

E (a )  - h
 ai
- J
i 
h
 ai a j
J>0
ij  B
N が有限であれば

h  0 
lim

ai P (a ) 
a

h   0 N   
lim

ai P (a )

N  |  | 9
 

P (a )   0
 a i  h lim
 0

a
N が無限大であれば
lim
h
J
| B | 12
h
J
h
J>0

a

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 

a
lim
P
(
a
)

i
N   
 h  0

a
lim
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どのノードから周りを
見回しても同じにみえる
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大きさが無限大だと何が起こるか?
ai  1


1
P (a ) 
exp  - E ( a ) 
Z

E (a )  - h


ai - J
i 
h
h
J
J>0
ai a j

ij  B
自発磁化 (Spontaneous Magnetization)
a i  lim
lim
h   0 N  


ai P (a )
0.8
a
0.6
0

 
-4
1/8
( J ))
  (1 - sinh

h   0 N   
a i a j  lim
1.0
lim
(sinh( J )  1)
(sinh( J )  1)

ai a j P (a )
J での微分が発散
0.4
0.2
1.0
0.0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
J
a
 /2
2


2
2
2
 J coth( 2 J ) 1  ( 2 tanh ( 2 J ) - 1) 
1 - k sin  d  
0



k 
2 tanh 2 J
ij  B
cosh 2 J
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
J
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1.0
大きさが無限大だとゆらぎは
どうなるか?


1
P (a ) 
exp  - E ( a ) 
Z

E (a )  - h  ai - J
i 
h
J
h
J>0
ai  1


どのノードから周りを
見回しても同じにみえる
ai a j
ij  B
1.0
Cov [ a i , a j ]

h   0 N   
 lim
lim

( a i - a i )( a j - a i ) P ( a )
a
ij  B
最近接ノード間のゆらぎが
J=0.4406...で最大になり,し
かも特異性を示す.
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0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0.0
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0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
J
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ゆらぎが大きいときに何が実
際に起こっているのか?
h
1.0
J
h
J>0
0.8
Cov [ a i , a j ]
ij  B
0.6
0.4
0.2
0.0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
J
1.0
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どのノードから周りを
見回しても同じにみえる
J が大きい
J が小さい
無秩序状態

ゆらぎが大きく点の近くのパターン
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秩序状態
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ゆらぎが大きいときに何が実際に起
こっているのか?
遠く離れたノード間で


| ri - r j | 
のゆらぎも大きく残る
h
J
h
J>0

 -1 / 4
Cov [ a i , a j ] ~| ri - r j |
Cov [ a i , a j ] ~
1

 e
| ri - r j |
 
- | ri - r j | / 
29 May, 2007
どのノードから周りを
見回しても同じにみえる
J が大きい
J が小さい
無秩序状態

ゆらぎが大きくなる点の近くのパターン
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秩序状態
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ゆらぎが大きいときのパター
ンを画像処理に使えるか?
h
1.0
ij  B

0.6
0.4
0.2
0.0
0.0
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h
J>0
0.8
Cov [ a i , a j ]
J
0.2
0.4
0.6
0.8
J
1.0
物理フラクチュオマティクス論(東北大)
どのノードから周りを
見回しても同じにみえる
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今回のまとめ
More is different
強磁性体の確率モデル
共分散におけるゆらぎ
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物理フラクチュオマティクス論(東北大)
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