高エネルギーピーク BL Lac

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Transcript 高エネルギーピーク BL Lac

ジェットの本質的理解に向けて:
最新の話題から
ⓒ NASA/CXC/M.Weiss
片岡 淳 (東工大院理工)
VSOPグループセミナー 2007.06.20
お話の流
れ
ジェットと加速について
(イントロ)
「本当の」加速スペクトル
(Tavecchio+ 07)
X線で探るジェットの組成
(kataoka+ 07)
大規模ジェットとの比較
コメント & まとめ
(Stawarz+07/Uchiyama+05)
Centaurus A
In radio/X-ray
宇宙における様々な「ジェット」
optical
原始星L1551-IRS5
X-ray
パルサー PSR1509-58
X-ray
radio
超新星残骸 CasA
活動銀河
3C46
X-ray
BH(?)バイナリ SS433
ガンマ線バースト (想像)
なぜ活動銀河ジェットか?
M87
大きさ : Rg ~1013 cm ~1AU.
 近傍の銀河であれば、かなり
「根元」まで画像分解できる
(e.g., ~100 Rg for M87 )
 ジェットの構造、開き角や
絞込みに「直観的」な制限
パワー : Ptot ~ 1044-48 erg s-1
: Etot ~ 1058-60 erg
(寿命 ~ 10 Myr 程度を仮定)
個数 :
n ~ 10-7 AGN/Mpc3
近傍から最遠方のQSO (z~7)まで。
「宇宙線」加速の現場!?
~ 30 Rg
Junor+ 99
バルク運動 とランダム運動
ジェットの下流へ
並進(バルク)運動
jet ~ 10
シンクロトロン放射(電波・光学)
逆コンプトン放射 (X線・ガンマ線)
電子
jet ~ 10
ランダム運動
γ> 1000
ジェット全体は、BLK ~10 で並進(バルク)運動
相対論的電子は γ≳1000 でランダム運動
ジェット内での衝撃波加速
磁場
クーロン散乱 (熱化)
rc = 1.6 x 104 T82 nth,-4-1L-1 kpc
(T=108 T8 [K], nth=10-4 nth,-4 [cm-3])
磁場による散乱 (ラーマ半径)
rL =1.2 x 10-13 T8-1/2 B-6-1 kpc
粒子
(B=10-6 B-6 [G])
vup
vdown
地上と違い、宇宙では 「磁場散乱 >> クーロン散乱」
例: AGN ジェット: rL ~10-14 kpc << rc ~104 kpc
「無衝突」衝撃波 (collisionless shock) による加速
Fermi 加速による粒子分布:
En = (1+ 4β/3)n
N(E) = E-s (where, s~2)
「非熱的」な粒子分布
N(E)
熱的分布
非熱的分布 E-s
2003 国税局
(世帯あたりの所得)
電子のエネルギー
Emin
Emax
「加速」は、一般大衆(熱浴)から、お金持ち(非熱的)を作る
Emin … 熱浴電子が持つエネルギー (実は大勢を占める!)
Emax … 電子の加速限界: 加速・冷却の釣り合い
tacc =(20c/3vs2)rg z ∝ Ee
s
tcool =[ Ee/ (dEe/dt) ] ∝ Ee-1
… 加速の性質 (一次Fermi, s=2, 相対論 s=2.3 etc…)
高エネルギーで輝く AGNジェット: ブレーザー
ドイツ H.E.S.S. (ナミビアに設置)
米国 CGRO 衛
星
相対論的
ビーミング
GeVガンマ線(109 eV)で検出された
AGNは~70個。 全て“ブレーザー”
地上の大気チェレンコフ望遠鏡により、
>20個 の AGN からTeVガンマ線
少なくとも、幾つかのジェットは
(γ~106)まで電子を加速
ビーミング効果による増光 4
ジェットを研究する上で理想的
ブレーザーの多波長スペクトル
電波
光学
X線
GeV
TeV
ERC
Sync
SSC
QSO ホストブレーザー
(= QHB,
e.g. PKS0528-134)
低エネルギーピーク
BL Lac
(= LBL e.g., 0716+714)
低エネルギーピーク
(シンクロトロン)
LE
高エネルギーピーク
(逆コンプトン)
HE
高エネルギーピーク
BL Lac
(= HBL e.g., Mrk421)
Kataoka 02 Kubo+ 98
これまでの研究
「加速された」電子からの放射を対象
放射物理量への制限: R~0.01pc, B~0.1 G、γmax~103-6
明るいものほど、加速エネルギーは低い (Blazarシーケンス)
“Blazar シーケンス”
B[G]
1
BLR cloud
0.1
γmax
HBL
105
暗い
ブレーザー
(HBL/LBL)
LBL
104
明るい
ブレーザー
103
(QHB)
QHB
Log freq [Hz]
13
最大加速エネルギー: 冷却と加速のバランス
15
17
Kubo+ 98
tcool ~ 106 (1+usyn/uB +Γ2uext/uB)-1 B0.1G-2 γ6-1 [sec]
tacc ~ 106 B0.1G-1γ6ζ5 [sec]
γmax∝ (uB +usyn+Γ2uext)-1/2
Γ2 uext ~3x10-1 [erg/cm3] >> uB or usyn
γmax[HBL] ~102-3 γmax [QHB]
kpc-Mpcジェットの特徴
16 kpc
ノット
8 pc
FR I (M87)
ノット
700 kpc
ローブ
FR II (3C47)
ホット
スポット
電波銀河 :core と lobe の明るさの比で 2種類に分かれる
FRI : core bright
FRII : lobe bright
電波銀河とブレーザーの関係
FRI を真正面から見たもの ... HBL/LBL
FRII を真正面から見たもの ... FSRQ
kpc-Mpc ジェットのX線観測
Marshall+ 02; Comastri+02, Kataoka+ 03 ... and many !
radio
ノット
radio
ローブ
optical
ホット
スポット
X-ray
X-ray
M87 (FR-I)
3C219(FR-II)
FR-I. FRI-II ともに、X線で明るい
X線の放射機構?
FR-I ジェット
... Sync
FR-II ジェット
... Sync/EC(CMB)
ホットスポット ... SSC
ローブ
... EC(CMB)
詳しい話は
Kataoka &Stawarz 05
放射機構は、ブレーザー
と殆ど同じ!
AGNジェット;概観
BH
BHからの距離
10-5 pc
10-2~0 pc
BH近傍
inner jet
sub-pc 領域
10 3~6 pc
outer jet/ hotspot/ lobe
Kpc/Mpc領域 (大規模ジェット)
ジェットで重要な、3つの領域
BH 近傍 ... 円盤、形成、組成
VSOP2、観測が困難…
inner jet ... 最初の「輝き」
VSOP2、X線*、ガンマ線*
outer jet... コリメート, E輸送
VLA、 近年のX線, Hubble
AGNジェット:本当の謎(1)
降着円盤からプラズマを誘導し、噴出すには強い磁場が
必要(MHDシミュレーション)。一方で、観測からジェットは
「やや粒子優勢」
Kubo+98, Kataoka+02, 05, Kino+ 02
磁場の強さはせいぜい
0.1 -1G (ブレーザー)
μG~mG (電波銀河)
ブラックホールの周りで
磁場に捻られ放出する
ジェット
104~5 G ! (MHD計算)
Koide+ 99, Meier+ 01, etc etc ......
Private comm:
小出先生[熊本大]
AGNジェット:本当の謎(2)
ジェットが降着流の噴出しなら、バリオンが主体のはず。
一方で、電波による偏光観測は、e- e+ ジェットを示唆する
3C279
方法1: 円偏波成分の観測
3C279の円偏波成分が示す
周波数依存性
Faraday conversion
γmin ~ 20 を示唆
一方で、直接偏波は~10%
e-p で消偏波しないため
には γmin >100 のはず
Wardle+ 98
e-e+ ジェット(ペアプラズマ)を示唆
AGNジェット:本当の謎(2:続)
方法2: シンクロトロン自己吸収 (SSA)
SSA のピーク周波数
νm=8 B1/5Sm q-4/5(1+z)1/5
磁場 Bが求まる
SSA の条件
Ne B2 > 10-4/γmin
ガンマ線観測からの制限
Reynolds+ 96, Hirotani+99,05
Lkin =
Neq2
100 Neq2
(e-e+)
(e-p)
e-e+ ジェット(ペアプラズマ)を示唆
AGNジェット:本当の謎(3)
外部の熱的圧力/電波ローブの圧力
ローブの圧力平衡を考えると、相対論的電子だけでは
不足? 「見えない」陽子や「冷たい」電子の寄与?
熱的 >非熱的
ローブの大きさ [kpc]
3C442A (Chandra)
Hardcastle & Worral 00, Hardcastle+ 07
10
ローブの圧力
P= ue/3 ~ Ne<γ>mec2 ~ Nemec2 γmin ln(γmax/γmin)
γmin の重要性
ジェットの運動学に直接リンクする量である
i.e., 「少数の金持ち」より、一般大衆がジェットの運動を決める
円偏光を含め、ジェットの組成を知る手がかりとなる
(Kino & Takahara 04 も参照)
しかしながら、γmin は 電波で「見れない」?
3C279
nsync ~ 106 Bδγ2
γmin~10の電子の放射
は1MHz帯 で観測
強い吸収 (SSA)
X線ならγ逆コンプトン
散乱のγminを観測可
「本当の」加速スペクトル
Tavecchio, Maraschi, Ghisellini,
Kataoka, Foschini, Sambruna,
and Tagliaferri
2007, ApJ, in press
(astro-ph/0705.0234)
すざく衛星とは…
日本で 5番目のX線天文衛星
- 宇宙の構造形成を探る
- ブラックホール極近傍の調査
観測手段として
- 高分解能 X線スペクトル測定
- 軟X線~ガンマ線の広域観測
XMM や Chandra と相補的メリットを持つ
2005 7/10 に JAXA’s M-V-6
で無事、打ち上げに成功
2007年6月までに、400天体以上
を観測
すざくFM試験の様子
すざく衛星の観測装置
高分解能カロリメータ
(XRS: 0.3-10 keV)
硬X線検出器
(HXD: 10-600 keV)
X線CCD 撮像検出器
(XIS:0.3-10 keV)
すざく衛星のメリット
「広い」エネルギー帯で「高い」感度: 0.3~300 keV.
-1000 cm2 を誇る、XIS有効面積 (XMM衛星と5keV以上で同等)
-XIS,HXDともに超低バックグラウンドを実現
とくに 1keV 以下で、優れたエネルギー分解能
有効面積で規格化したバックグラウンド
SNR E0102.2-729のスペクトル比較
すざく XIS
チャンドラ ACIS
RXTE PCA
すざく HXD
「すざく」による 遠方QHBの観測
RBS 315 とは?
- Rosat Bright Survey で見つかった、z=2.69 の QHB ブレーザー
- 電波や光学でも明るい (461 mJy @ 1.4GHz)
- X線と光学・電波は全くつながらず、X線は逆コンプトン成分の
低エネルギー端 (~γmin)を見ている
- XMM で、極めて「フラットな」X線スペクトルと、折れ曲がり
Γ= 1.2 の PL
0.5
5
1
Energy [keV]
Page+ 05
「すざく」による広域スペクトル
RBS315
Gal abs
+Bkn PL model
0.4mCrab (@2-10 keV; 3C279 と同レベル)
HXD/PIN で 50keV まで初検出
ソースフレーム(z =2.7)では、E~200keV
までのスペクトルを探査
「すざく」によるスペクトル (XIS)
0.5
1
Energy [keV]
5
Tavecchio+ 07
10
強い吸収 (NH ~3x1022 cm-2 : 銀河系の >10倍)+PL
もしくは
折れ曲がりのある PL (Γ1 =0.7, Γ2 =1.4, Ebrk =1.2 keV)
で良くフィットされる
XMMの観測を比べると、PL成分のベキが大きく変化
“吸収”or“折れ曲がり”?
Page+ 05
RQ_QSO
BAL_QSO
RL_QSO (QHB)
折れ曲がり
吸収
Suzaku の
観測範囲
観測データから、二つを区別するのは無理
もし吸収ならば ... 遠方のQSO ほど、厚い吸収体に覆われて
る?
(QSO の宇宙進化と直接リンク?)
しかしながら、、、 光学では吸収の影響は全く見られない
ジェットの有無(RL/RQ)で吸収量が変わる?
ジェット放射の折れ曲がり?
Sync +ERC モデル
GLAST
シンクロトロン
逆コンプトン
逆コンプトン成分の「低エネルギー端」として、自然に説明。
物理パラメータ: B= 1G, Γjet=20, γp =102, γmax =104 ...
γmin ~1 でないとダメ
電子スペクトルのベキは s=1.5
エキゾチックな(?)加速スペクトル
Page+ 05
N(γ)
s=1.5
s=3.5
γ
γmin=1
γp=102
Γ<1.5 ⇔ s< 2
の電子スペクトル
γmax=104
通常の Fermi 加速で s<2 を作るのは困難。
γp ~100での「急激な (Δs=2)」折れ曲がりも、放射冷却
では説明できない
γmin ~1 の粒子は、そもそも衝撃波を跨げないのでは?
injection の問題
Injection 問題: “2-step” 加速
衝撃波面
電子のジャイロ半径は、エネルギーに比例
Rg = γmc2/eB
衝撃波には「厚さΔ」があるので、
Rg < Δ の低エネルギー電子は、いつまでも
衝撃波を跨げない (Bell 78, Eilek &Hughes 90)
厚さΔ~ 「熱的な」陽子のジャイロ半径 程度
(一声でいえば、γp~100-1000 ≲ mp/mp (質量比)
以下の電子は、加速プロセスにすら入れない!)
γmin → γp
(陽子→ 電子の加熱)
γp → γmax
- stochastic な 2次加速
- Two-stream instabilities (Hoshino+ 92)
- 磁場のリコネクション (Ramanova & Lovelace 92)
- 通常の衝撃波加速(1次加速)
X線で探る、ジェットの組成
Kataoka, Madejski, Sikora et al.
2007, ApJ, submitted
「見えない」陽子を検出するには?
RBS315 の例を見ても、陽子は「電子の加熱」に必要。。。
(1) 陽子シンクロトロン放射?
放射効率 ∝m-4 ; まず見えない
陽子が cold(加速されてない)なら、見えない
(2) pp → 2πを使う?
ジェットの中の、粒子密度がたりない
E~ 100 MeV の観測は将来計画
(3) バルクコンプトンを用いた「間接」検証
ジェットのバルク運動(Γjet~10) で、UV光子を叩きあげる
EBC ~ Γjet2 EUV ~ 102 ・10eV ~ 1 keV
バルクコンプトンの輝度は、ジェットの組成に依存
LBC ∝(ne/np)Ljet
バルクコンプトン散乱?
EUV
Γjet2 EUV
Γjet ~10
Ehν
γ2Ehν
基本は、通常の逆コンプトン散乱と同じ。
光子を跳ね返す母体が、相対論的電子
でなく、バルク運動をする “cold な”電子
AGN の周りに満ちている UV光を叩き
あげ、「鏡像」となるピーク(Sikora バンプ)
を、X線領域で形成するはず。
# “擬似”熱的スペクトル
観測ターゲットの選択
ジェットの強い放射を避けつつ、軟X線探査できるもの
ガンマ線ブレーザー PKS 1510-089 (z=0.361)
 ガンマ線輝度 L~ 1047 erg s-1
 Sync/IC の谷間に軟X線が来る
X線領域
 紫外バンプが明確で、軟X線超過?
BeppoSAX
UVバンプ
「Swift」衛星
BCバンプ
「すざく」衛星
電波、光学観測も含めて
世界的な多波長キャンペーン
Tavecchio+ 2000
電波(VLBA)でみた PKS1510-089
MOJAVE 2cm
Homan+ 01, Wardle+ 05, Jorstad+ 05
画像分解能: 5.03 pc/mas
見かけの速度: 606±61μas/y ~ 13.53 c
観測提案の準備。。。
すざく衛星 ... 公募式 (年に一度。AO-1で提案)。
A4 で 4ページ 日本語。倍率 3倍
Swift 衛星 ... 本来 GRB 観測衛星。fill-in ターゲットとして、
バーストの起きてない時間に観測
非公募式。Swiftチーム限定
A4 で1ページ。英語。倍率(~1倍!?)
地上望遠鏡 ... 友達に頼みまくる
世界中に友達を持つ
ことが一番重要!
採択されてから;観測のアレンジ
同時観測では、日程を厳密に決めて「こまめに」アナウンス
すざく衛星 ... 観測モードやオペレーションは自分で調整。
Swift衛星 ... Penn.State の友人にヘルプ。
希望の観測日程は、こちらで調整
光学/電波 ... 基本は「おまかせ」。データをとって欲しい
バンド と、日程だけ知らせる
(特に Phil Edwards に感謝!!)
2006 8/1
すざく
Swift
REM
ATCA/
RATAN
8/10
8/20
8/30
「すざく」による観測: XIS+HXD スペクトル
F2-10 keV = 0.5 mCrab
soft excess!
3日間 (120 ksec)にわたる、連続観測
非常に硬いスペクトル (Γ=1.2) と 軟X線バンプ の検出
- 加速された電子スペクトル: N(γ) ∝γ-1.4 (RBS315に類似)
- 軟X線バンプ Blackbody (~ 0.2keV)
「すざく」による観測:時間変動
Kataoka+ 2007
0.4-1 keV
3-10 keV
12-40 keV
0
1
Time [day]
2
軟X線の変動だけ、明らかに違う。。。
3
Swift/XRT による観測
期せずして、Suzaku/Swift のクロス・キャル ができた
50% 程度の変動と、スペクトルの変化を“初”検出
QHBも、明るくなるとハードになる!
Swift/UVOT による観測
約 2分ごとに、6種類の
フィルターを切り替える
顕著な時間変動はなし
Optical/UV データ (UVOT/REM/Heidelberg)
3つの望遠鏡で、完全にコンシステント
Cardelli et al. 1989 に従い、Gal. extinction を補正
→ x1.32 (V), x1.45 (V), x1.56 (U), x1.82 (UVW1),
x1.92 (UVM2), x2.06 (UVW2)
多波長スペクトル + ジェット放射モデル
逆コンプトン
(ERC)
シンクロトロン
逆コンプトン
(SSC)
一見すると、良く合っている。。。
# バルク・コンプトン成分は不要なのか!?
バルクコンプトンの検出?
(I) シンクロトロン成分
(II) 外部コンプトン成分
(III) シンクロトロン・自己コンプトン成分
(I) シンクロトロン成分
(II) 外部コンプトン成分
+ バルク・コンプトン成分
BC の方が良く合う。しかし、断言するには少し厳しい。。。
以下では軟X線超過を BC の上限値として計算
ジェットの組成への制限(1)
加速されてない(coldな)電子が、バルクコンプトンで失うエネルギーは
よって、cold な電子の運動エネルギーは
Suzaku 観測より、LBC < 2.6x1044 erg/s
一方で、ERCモデルフィットより 加速された(ホットな)電子の
運動エネルギーが求まり、Le, hot  8x1044 erg/s. つまり
Le, hot / Le, cold ≳ 30
もしジェットがペア・プラズマであるなら Le,hot / Le,cold <1 ゆえ
おかしい。 Le,hot / (Le,cold + Lp, cold) <1 であるべき
ジェットの組成への制限(2)
もしプロトンが、ジェットのエネルギーの大半を占めるなら
ここで Ljet  Lp,cold はジェットの全運動エネルギー
運動エネルギーの h 倍が線のフラックスに転化されるならば
PKS 1510-089 のγ線フラックス Lg =7x1046 erg/s や BEL の明るさ
LBEL = 5x1044 erg/s を代入すると. . .
1< ne/n p ≲ 5.6 x (hg /0.1)
hg はガンマ線へのエネルギー変換効率
つまり、ジェットは数的に電子が卓越するかもしれないが、
エネルギーとしては殆どをプロトンが担っている!
大規模ジェットでは?
Stawarz et al. (電子加速)
2007, ApJ, 662, 213
Uchiyama et al. (組成など)
2005, ApJ, 631, L113
理想的なラボ: Cyg-A
モデル : Begelman & Cioffi 89,
X線観測: Wilson+ 00
hotspot
-A
hotspot
-D
FR II (Cygnus A)
パワフルなジェット(FRII)… 「ホットスポット」, 「cocoon」 etc
ジェットが運んできた物質は、星間物質を押しのけながら、
“ゆっくりと”膨張 → ジェットのダイナミクス (Kino & Kawakatsu 05)
大規模ジェットの加速・相互作用を探る、理想的な実験室
Spitzer の Cyg-A 観測
Stawarz+ 07
8μm
8μm
hotspot-A
X-ray
hotspot-D
X-ray
Wilson+ 00
hotspot-A, D の両方から、有意な赤外放射を観測
Hotspot-A/D のスペクトル
νp=3x109 Hz
電波~赤外は シンクロトロン、光学~X線は SSCで説明
“標準的な” s=2 の電子スペクトルでは合わない (点線)
s=1.5 → 3.3 に急激に折れ曲がる電子分布
(実線)
ブレーザー PKS1510, RBS315 と同じ特徴
加速電子のスペクトル: 再考
多波長スペクトルから、磁場の強さ B  200 μG
放射冷却から計算される折れ曲がり νbr  1x1012 Hz
実際の折れ曲がり位置 (νp =3x109 Hz) は、別な起源
電子のエネルギーとしては、 γp 103 ~ mp/me に対応
陽子→電子へのエネルギー注入と、 2-step加速
PKS 0637-752 の場合…
Radio (ATCA: 8.6GHz)
Schwarz+ 00, Chartas+ 00
X線 (Chandra)
チャンドラ衛星で最初に観測した、記念すべき天体
(もともとは 「点源」のキャリブレーション用に観測)
z=0.651 の RL_QSO (ブレーザー)。
電波では、超光速運動 (βapp=17.8) が観測
プロジェクションの効果を考えると、~940 kpc の長さ
Spitzer による赤外ジェットの検出
Uchiyama+ 05
スペクトルと ジェット組成
Uchiyama+ 05
明るいノット
ノットの手前
BC成分の予想
シンクロトロン
逆コンプトン
(CMB/IC)
X線は逆コンプトン散乱された CMB光子 (e.g., Tavecchio+ 00)
明るいノットの「手前」 → 電子は “cold” (加速されてない)
CMB の BC 散乱が赤外で「見えない」: Lhot /Lcold ≳ 5
ジェットが純粋な e-e+ なら、加速の前提に矛盾
もうひとつの帰結 : nhot/ncold ≳ 0.1
この効率の良さこそが、陽子存在の動かぬ証拠
(個人的に)想うジェットの描像
step1: 回転するブラックホール近傍で、強い磁場に誘導されて
「バリオンジェット」が吹き出す
step2: 磁気エネルギーがバルク運動に転化し、粒子優勢ジェットが生成
step3: e-pの電子が高温コロナを散乱し、大量のガンマ線 (1-3 MeV)
step4: ガンマ線とコロナX線が消滅して、大量のe+ e- (レプトンジェット)
電波観測との矛盾は? (Wardle 説)
純粋なバリオン(e-p)ジェットの場合
直線偏光成分
- τ=1 (Sync の光学的厚み)
- N =15 (乱れた磁場の、領域数)
- ΔΦ=18°(偏光角)
- δ=0.25 (Bu/Brms)
円偏光成分
- nc/nr= 0.07 (個数比:cold/rel)
円偏光を用いた議論は、それほど単純ではない
→ Ruszkowski & Begelman 02 で詳細な検討
→ γmin , 粒子組成の選び方で“如何様にも”なる
e-p, e-e+ ジェットのどちらでも説明可能
→ e-e+ ジェットの場合でも、電子数密度の10%ほどプロトンが必要
電波観測との矛盾は? (Hirotani 説)
電波でSSAが起きるためには、BとNe が大きくないとダメ
Bは観測から一意に求まり、 Ne の下限も求まる
電子の相方が、「全部プロトン」だとすると、ジェットの運動
エネルギーが大きく (Lkin>1047 erg/s) なりすぎる
つまり、“pureな” e-p ジェットを否定しているだけで、
たとえば e+ が10%, p が90% 混在したような組成は
矛盾しない
MHDシミュレーションとの矛盾は?
Q) BH 近傍で B~1T もあった磁場が、ブレーザー領域
(sub-pc)で ~1G, kpc で 100μG程度まで減衰するの?
A) 知りません。MHD屋さんにお尋ねください! でも。。。
Kudoh+ 99
10
1
σ
σ: Poynting flux/Kinetic flux
@1000rg (ブレーザー領域)
0.1
α: ポロイダル磁場の距離依存
Bp ∝ r-(2+α)
r:回転軸からの半径
0.01
0.001
99年に、柴田先生と高原先生
の間で激しい議論アリ ...
0.01
0.1
α
1.0
α>0.6 ならば、観測を再現
まとめと結論(=私からの提案)
磁場 粒子優勢 粒子優勢
優勢 (e-p)
(e-e+)
個数としてはレプトン優勢。
エネルギーとしては バリオン優勢